JR中央本線、初狩駅と笹子駅の間を走行中、山頂にげん骨のような特徴のある山が見えます。これが滝子山です。
隣の笹子雁ヶ腹摺山と併せて、大月市の「秀麗富嶽十二景(四番)」に選ばれています。
地理院地図: 滝子山
滝子山の天気: 山梨県大月市 , 笹子駅
レポ: 寂惝尾根から滝子山・大谷ヶ丸 , 白野宿から滝子山 , 浜立山・滝子山 , 恵能野からアモウ沢乗越
五月晴れの5月17日、滝子山に登りました。午前8時に無人の笹子駅を出発。国道20号を東に向かって歩きます。まず、みどり屋に立ち寄り、笹子餅の5個入りを買い、登山中の行動食にしました。次いで酒遊館でギネス登録の世界最大の太鼓も見学。その先吉久保入口で騒々しい国道を離れ、のどかそうな集落に入ります。正面に滝子山を見上げながら、足取りも軽く、林道に入ります。ヤマフジがあちこちの木々をさわやかな藤紫で飾っています。
道証地蔵(みちあかしじぞう)で林道を離れ、登山道に入ります。スミ沢の清流が耳に心地好く、次々と現れる小さな滝も目を楽しませてくれます。この沢は山の中腹まで続いていて、大きな滝子山の優しい面をなしているようです。寂惝尾根(じゃくしょうおね)は、やや厳しい岩場のあるルートだそうですが、この沢ルートの方は危険そうな箇所が全くありません。やがて南方に富士山が真っ白に輝く頭を顕しました。
大谷ケ丸への分岐が二つあります。二つ目の分岐から尾根歩きとなり、樹木の背も低くなりました。ゼンマイの吹き出た緩やかな斜面で昼食を取り、昼寝でもしたくなるようなうららかさを満喫します。月曜日なので、出会う人もいません。こんな素晴らしい山を一人で歩くのは、本当にもったいない気がします。
鎮西ケ池は、池というにはとっても小さな湧き水でした。でも小さな家族がここに住むには十分な水量かもしれません。昔話の世界に迷い込んだかのような趣きの、古い小さな鳥居の傍に郵便受けがありました。この中に登山日誌とボールペンがあり、私は、「暑い!」と一言だけ書きました。
山頂には正午丁度に到着。富士山は少しかすみ始めていて、写真にはよく写ってくれません。でも見る分には申し分のない大パノラマです。眼前の本社ケ丸、鶴ケ鳥屋山、その向こうに三ツ峠山、みなどっしりと優雅な富士の露払い。やや左手に脇役のような御正体山。高川山と九鬼山はリニア実験線で結ばれています。目を北に転じれば、雁ケ腹摺山、黒岳、ハマイバの山並みが声の届きそうな近さ。西には北岳や甲斐駒ほか、南アルプスの峰々が白く光って血を躍らせます。
滝子山頂ではたっぷり1時間、このパノラマを堪能しました。1匹のヒオドシチョウが、私の持つ地図に止まり、次いで右肩に止まりました。冬越しをしてきたのか、かなりのボロ翅です。人馴れしているところを見ると、この山頂の主でしょうか。と、突然このヒオドシチョウが羽音を立ててものすごいスピードで飛び立ちました。どこからかやって来た、青い文様の輝くタテハチョウとくるくる舞っています。翅はボロでも体力は衰えてない様子です。
帰路は初狩駅まで約3時間の長い下りです。檜平で富士山に一旦別れを告げ、ジグザグの登山道をぐんぐん下ります。途中、蛇口つきの水場があり、顔と手を思う存分に洗いました。人里に入ると、おお、また美しい富士が顕れました。疲れた足もまた軽くなり、16時4分、初狩駅に到着。ホームから滝子山をもう一度じっくりと眺めているうちに、立川行き普通列車が静かに到着しました。
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