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恵能野からアモウ沢乗越

ベニバナヒメイワカガミ

岩稜に咲くベニバナヒメイワカガミ

滝子山の東山麓に、恵能野(えのうの)という、古典ロマン風の地名を持つ集落があります。

アモウ沢源頭部の岩場には、イワカガミの群生地があります。

バス停 富士急山梨バス: 大月駅 → 遊仙橋 登山口
バス停 富士急山梨バス: 笹子駅 ← 吉久保入口 登山口

地図 地理院地図: アモウ沢乗越

天気 滝子山の天気: 大月市 , 滝子山 , 笹子駅

くし 大月市の民話


コース & タイム 鉄道駅 大月駅 バス停 7:00 == 7:15 遊仙橋 7:20 --- 7:44 恵能野子の神社 7:44 --- 9:01 山の神跡 9:12 --- 9:44 トヨミ沢大堰堤 9:48 --- 9:58 尾根取り付き 10:00 --- 11:11 イワカガミ群生地(撮影と昼食)11:55 --- 12:10 イワカガミの小峰 12:16 --- 12:22 縦走路屈曲点 12:22 --- 12:25 アモウ沢乗越 12:26 --- 12:37 鎮西ヶ池 12:39 --- 12:47 滝子山 12:57 --- 13:42 迂回路分岐 13:42 --- 14:35 道証地蔵下の小橋 14:38 --- 15:04 櫻公園 15:15 --- 15:32 吉久保入口 バス停 15:37 == 15:40 笹子駅 鉄道駅
※歩行時間には道草と写真撮影の時間が含まれています。
アモウ沢乗越 あもうさわのっこし:標高 1490m(推定) 単独 2018年5月5日 全8時間11分 満足度:❀❀❀❀ ホネオレ度:❢❢❢

5月5日(土・祝)、恵能野川源流域の岩稜に咲くイワカガミを訪ねました。この山域に入るのは初めてなので、松浦隆康氏著「バリエーションルートを楽しむ」の記事「恵能野川からアモウ沢乗越」のコピーを持って行きました。途中、山の神跡までは順調に行きましたが、その先の分岐点で道を間違えました。イワカガミの咲く岩場では、群生地を通り抜けるのに骨が折れたものの、愛らしく咲く姿によって十分に報われました。

段落見出し大月駅からバスで遊仙橋へ

大月駅7:00発ハマイバ行きのバスは、私一人を乗せて発車しました。遊仙橋で下車し、カラになったバスを見送ります。大きな「恵能野案内図」があったので見ると、何と、それは家屋の配置図。25軒ほどあり、住人の姓名が書いてあります。宅配便車のためでしょうか。まずは左に真木川を見ながら、道なりに進んで行きます。やがて真木川が離れ、代わって恵能野川が見えてきました。これから2時間あまり、右に、左に、流れを縫って歩くことになる川です。

陽ざしを浴びる恵能野の集落を通り抜けると、コンパクトな赤塗りの「恵能野子の神社」に至りました。ここから山道になります。すると左手に、廃屋のように古びた、不思議な佇まいの家屋がありました。道端には「鎌倉古道」と書かれた私製標識があります。いざ鎌倉へと駆け付けるような武士が、かつてこの奥に住んでいたのでしょうか? 神社から5分ほど歩くと、人が一人通れる幅の桟橋を通過しました。路上の黒い水道パイプを見ながら、山道を登って行きます。

右手下方に恵能野川が見え、涼し気な瀬音が聞こえます。堰堤があり、「昭和45年度治山事業」の銘板が入っていました。その堰堤のすぐ上流に、太い鉄管の残骸が横たわっています。ここで1回目の渡渉(右岸→左岸)をしました。これを皮切りに、合計8回の渡渉をしましたが、飛び石が程よくあって、靴を濡らすことは一度もありませんでした。道中、黄塗りのL字鋼で作られた、送電線巡視路の案内標柱が次々と現れますが、これがこのルートでは道標の役割をします。

段落見出し順調に山の神跡へ

逆「へ」の字に折れた木橋は、すぐ上流側で渡渉(左岸→右岸)できました。その4分後、3回目の渡渉(右岸→左岸)をすると、山の神跡直前まで、ずっと左岸を歩きます。今、渓谷は新緑の洪水で、心身が潤されます。ただ、ところどころに道のザレ、崩落、あるいは斜面との同化などが進んでいて、注意は必要です。落差約10mの滝もありますが、おしなべて緩やかな渓流の恵能野川。でも源流域には、大掛かりな治山事業が成されています。

「← No.18, No.19」(=共に左へ)の黄色標柱を見て、4回目の渡渉(左岸→二俣の中間)。少し進むと、青い屋根だけが残った山の神の祠がありました。ここで小休止し、お茶にします。昨夜お茶とスポーツドリンクを、それぞれのペットボトルに半分入れて冷凍し、今朝残り半分を充填してきました。冷たくて、のど越し抜群です。ここで念入りに準備運動。前後屈の運動で、体をぐっと後ろに反らせたら、空を埋め尽くすモミジの緑! 新鮮な感動を覚えました。

山の神跡から1分行くと、道が左右に分岐しました。黄色標柱があり、右は鉄塔18号、左は19号となっています。ここで松浦本のコピーを取り出して読むべきだったのですが、私は慢心していてそれを怠り、自分の直感で右の道に進みました。ネット情報を見ると、この分岐点から大堰堤と桑西林道に至るまで、かなりの人々がルートファインディングに苦しんできたようです。私の取った右の道は、遠回りにはなりましたが、結果的に、悩みなく林道に至ることができました。

段落見出しトヨミ沢を経て尾根に取り付く

右の道には、ピンクリボンや黄色標柱などが次々と現れ、進路は明瞭。巡視路なのだから当然かも知れません。トヨミ沢の各渡渉点にも目印があります。右岸→左岸→右岸→左岸と3回渡渉し、プラゴミの散乱した道を進んで行くと、古い車の屋根がありました。ほどなく、右に岡松ノ峰への踏み跡を分けます。なおもトヨミ沢に沿って進んで行くと、前方に大きな堰堤が見えてきました。左上方には林道も見えます。堰堤直前で、8回目の渡渉(トヨミ沢左岸→右岸)をしました。

右岸に造成された法面を登り、林道に立ちました。上から見下ろすと、その林道は堰堤まで下りて終わっています。これより尾根の取り付き点まで、このコンクリート舗装の林道を登って行きます。振り返ると、大久保山の肩に立つ鉄塔18号と、先ほどの堰堤が見えました。涼しかった渓谷の道から、明るく開けた林道になって、暑い日差しを感じます。その代わり見晴らしは好くて、これから登るアモウ沢乗越東面の尾根をはじめ、岡松ノ峰、小沢ドウミなどを望めました。

コンクリート林道を10分ほど登ると、左から上がって来た未舗装の林道に合わさりました。その出合点から立ち上がる尾根が、目指す尾根です。付近一帯は、黒い網のフェンスが縦横無尽に張り巡らされていましたが、ちゃんと尾根に行けるようになっていました。黒網フェンスの右を登って行きます。フェンス沿いに左折すると、大久保山の鉄塔18号から、滝子山東稜の19号へと、空を渡る送電線のかなたに、道志と丹沢の山なみを望めました。

段落見出し岩場に咲くイワカガミ

フェンスと別れ、尾根に乗りました。いよいよ急登の始まりです。あまり展望は利かず、花も見られないので、黙々と登って行きました。勾配がきつい分、早く高度を稼げます。時おり振り返ると、岡松ノ峰の左に雁ヶ腹摺山が見えました。といっても、樹間の小窓から辛うじて覗ける程度です。トウゴクミツバツツジも咲いていましたが、標高の低いところの花は終盤を迎えていました。登るほどに尾根は岩稜の様相を増し、雁ヶ腹摺山もよく見えるようになって行きました。

標高1370mあたりで、初めてイワカガミを見ました。小さな株で、花はありません。どこまで登れば、イワカガミの花と出会えるのかな? この尾根で大丈夫? 標高約1400mに達すると、大きな岩場が現れました。その手前で小休止し、冷たいお茶を飲んで、英気を養います。そして岩に触れるところまで近づくと、少し上にイワカガミが咲いていました。見上げると、あちらにも、こちらにもと、咲いています。あったあった! ベニバナヒメイワカガミの群生地です。

さて、ここは悩ましい場面です。人と花の安全を優先するなら、この岩場は巻くべきでしょう。でもイワカガミの群落に近づくためには、正面から岩場を登らねばなりません。ところが、イワカガミを傷つけないように登ろうとすると、この岩場は難度がやや高そうです。岩場を見上げて、登るルートをシミュレーション。自分とイワカガミとにとって、最も安全なルートを見定めると、岩に取り付きました。幸い、掴める木の根も程よくあって、考えた通りに登れました。

段落見出しイワカガミ、愛おしく

イワカガミは近くで見るほど可愛らしく、ニリンソウのように2輪ずつ咲く姿が微笑ましい花です。安全確保のため、両手での撮影は絶対に無理なので、写真はすべて片手で取りました。夢中でたくさん撮影しましたが、帰宅してからパソコンで見ると、NG写真がずいぶんとありました。もし今後イワカガミが増殖して密になれば、この岩場の正面突破はできなくなるでしょう。大げさかもしれませんが、その日には、この岩場がイワカガミの聖地になるかも知れません。

岩場を登りきったところで、イワカガミを愛でながら昼食にしました。標高約1430mです。その先には小さな鞍部が見えていました。時刻はまもなく正午。一人で過ごすのがもったいない、幸せなお昼どきです。厳しい岩稜に美しく咲くイワカガミを見ていて、人が恋しくなったので、ここでは、リュックサックだけを記念撮影しました。願いが叶った喜びをしばらくかみ締めてから、おもむろに立ち上がり、かなり軽くなったリュックを背負いました。

小さな鞍部を過ぎると、明るい落葉樹林になりました。尾根幅も広くなり、すこぶる快適です。大蔵高丸、白谷ノ丸、雁ヶ腹摺山が並んで見えるようにもなりました。足下の、白い小さな花はフモトスミレ。うす紫のタチツボスミレも見られます。すると、ちょっと見晴らしの利く小峰に至りました。標高1495mあたりです。ここにもイワカガミが咲いていました。こちらは、難なく撮影できます。私の脳内には花時計があり、それは美しい花を見ると止まる時計です。

段落見出し展望の滝子山へ

その小峰では、両手で楽しくイワカガミを撮影しました。そしていよいよ、この尾根の詰めに入ります。もはや尾根と言うより平地のようになった林を、ルンルン5分ほど行くと、見覚えのある道標が見えてきました。アモウ沢乗越の少し北、一般登山道がほぼ直角に曲がる地点です。男性3人組が昼食の支度をしていました。きょうバスを降りてから、初めて出会う人々です。「こんにちわ」を交わしながら、ロープの端を回って、縦走路に立ちました。

縦走路を南に下り、アモウ沢乗越に立って、下方を眺めました。極めて急峻ですが、アモウ沢で沢登りを楽しむ人もいます。でもそれはスポーツ登山。アモウ沢乗越という名があるということは、かつてこの谷を登る道が存在し、人や物が往き来していたのでしょうか? そして、アモウとはどんな意味でしょうか? はたまた、白縫姫一行は、どんなルートで、鎮西ヶ池に至ったのでしょうか? アモウ沢の大規模な治山工事を思うと、激しい地形の変遷があったかもしれません。

すばらしい晴天なので、滝子山に立ち寄って行きます。山頂直下の鎮西ヶ池は、青空とカラマツを映し、そのほとりには、青々とクリンソウの葉が育っていました。まだ花茎は立っていません。そして滝子山に登頂すると、ハイカーで大賑わい。ざっと数えて、60名ほどいました。皆さんは、私もそうでしたが、登頂するとまず富士山を見ます。私は今回初めて、アモウ沢左岸尾根を探しました。北面を見ると、雁ヶ腹摺山の手前、東方に長く落ちて行く尾根がそれでしょう。

段落見出し下山は、すみ沢(ズミ沢)ルート

これ以降は、話を端折ります。下山路は、すみ沢ルートにしました。その源流ではキラキラ光る白砂のせせらぎ、中流では癒しの瀬音と変化に富んだ滝、登山道終点では冷たい水を掬って顔を洗うなど、心身を潤してくれる大好きな沢です。櫻公園では時間調整の休憩をしました。吉久保の田には水が張られ、田植え準備完了。空を泳ぐ鯉のぼりは、滝子山とナイスマッチ。こうして無事に、吉久保入口バス停にゴールインしました。新田行きバスが、4分後に来るはずです。

鉛筆 あとがき

さて、帰宅して、桑西林道の航空写真と、地理院地図とを見比べてみました。上記の松浦氏の記事で登られているのは、アモウ沢左岸尾根ですが、私が桑西林道から取り付いた尾根は、その1本北の尾根でした。これら二つの尾根は、標高1450mあたりで出合います。ネット上の幾つかの山行記を見ると、どちらの尾根も歩かれています。なお、イワカガミを手軽に見るだけなら、縦走路の屈曲点から花の咲く小峰まで、10分程度で往復できます。

木の葉ライン

↓ 紙芝居



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