高柄山は、「山と高原地図--高尾山」のど真ん中に位置する山です。JR中央線に近く、駅から登って、駅に下りることができます。
幾多の峰々を登り降りしてようやく至る高柄山は、標高の割りに骨の折れる山です。
地理院地図: 高柄山
高柄山の天気: 山梨県上野原市
レポ: 秋山山稜
12月15日、山梨県上野原市の高柄山に行ってきました。地図上では存在感がありながら、中央線の車窓からは確認しにくく、長く気になっていた山です。初冬の低山らしく、一面に敷き詰められた落ち葉をサクサクと踏みしめながら、静かで暖かな時間を楽しんできました。
午前中に用事があり、四方津(しおつ)駅に着いたのは、午前11時47分。改札口は高柄山とは反対側にあるので、地下道を抜けて、川合橋に向かいます。桂川を越えると、あちらこちらのスピーカーから鳴り響く正午の音楽。きょうは、撮影などで道草を食う時間はありません。もっとも、今は花や虫の季節ではありません。幸い天候に恵まれ、北斜面ながら午後の空気は和んでいます。振り返ると明るい空に扇山と笹尾根が樹間に見え隠れして、自ずと足が弾みます。
深い沢すじを横切る部分では、親切すぎるほどにロープが張られています。この山を、それほど多くのハイカーが訪れるのでしょうか?大地林道を過ぎると急なアップダウンが多くあるので、低山とはいえ、あまり気楽な散歩気分で歩ける山でないことは確かです。石仏もいくつかあり、通行者を見守ってくれています。
御座敷の松の傍らには、大きな積み木のようなテーブルとベンチと椅子とがあります。これはちょっと黙って素通りできないオブジェです。きわめて単純なフォルムの椅子に腰掛け、行動食のよもぎ大福を食べました。すぐ目の前には林道の延伸工事現場、西の山間には富士山が眺められる、ちょっと素敵な休憩スポットです。御座敷の松のいわれを書いた説明板が立っていて、今の松は、平成15年に植え替えたものだとのことです。
舗装の進んだ大地林道に飛び出して、少し林道を下ると、右に大丸(おおまる)と大地峠への階段道があります。この階段を登らずにそのまま林道を下り続けると、左に高柄山への入り口があり、時間を節約できます。しかし、わずかな時間ですので、ここは大丸に登るのがお奨めです。山頂からは、行く手の高柄山方面に展望が開け、このコースの面白さを予感することもできるでしょう。
大丸から急な尾根を下ります。高柄山への直進路は林道で切断されているので、ハイキング道の案内表示にしたがって右折し、林道に再び降り立ちます。ここから林道を左に少しだけ登り戻すと、右手に高柄山への登山道があります。登山道といっても、いきなり急な下りです。その後も急なアップダウンを乗り越えて進むと、左に扇山や四方津の町並みへの視界が開けた箇所があり、四方津駅前の大きな斜行エレベーターがはっきりと見えます。ここからさらに少し下ると千足峠で、左に四方津駅への道を分けます。きょうは時間があまりないので、ここから高柄山まで往復し、すぐに四方津駅に下る計画です。
さらにアップダウンを繰り返し、14時27分、ようやく高柄山頂に到着しました。山頂からは、上野原市街地を展望できます。時間があれば、このまま進み、新矢野根峠、御前山経由で上野原駅まで歩きたいところです。南側には、丹沢と道志の山々が聳え立っていますが、あいにく雲に覆われています。展望を期待するなら、山は早い時間に登らなくてはなりません。
千足峠に戻り、四方津駅に向かって下ります。あまり人が歩かないのか、道の一部はすっかり斜面化しています。その上、落ち葉が積もって滑りやすくなっていました。歩いて登るには全く差し支えありませんが、走って下るには少々危険です。落ち葉を踏みしめてガサガサと歩いていたら、突然ヤマドリが飛び立ちました。落ち葉の上では保護色なので、見つけにくい鳥です。次から次へと5羽ほどが大きな羽音を立てて飛び立って行きました。一斉に飛び立つのではなく、1羽ずつ順番に、というところに何か訳があるかもしれません。
落ち葉の斜面はすぐに終わり、沢に出合います。春か夏だったら、頭と顔を思い切り洗うところです。沢の流れはところどころで小さな滝になります。岩の上を舐めるように流れる箇所もあり、新緑の季節は、さぞ美しいことでしょう。
千足峠から30分ほど下ると、千足の集落に至り、登山道はここであっけなく終わってしまいます。でも、この集落で、きょう初めて人と出会いました。小さな村で4人と出会っただけですが、どの人も目を合わせるとにっこり微笑んでくれました。「山もいいけど、人里もいいなあ」と感じるのは、山を下りてきて最初の人里に至ったときの常です。
15時58分、四方津駅に戻ってきました。プラットフォームに入ってきた高尾行き電車を撮影したら、電車だけ被写体ブレになっていました。年の瀬も近づき、山間(やまあい)の駅は、もう日が暮れ始めています。
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