仏果山と高取山の山頂には、それぞれ高い展望台があり、丹沢山塊や宮ヶ瀬湖の大パノラマを望めます。
神奈中バス: 本厚木駅 → 野外センター前(半原行き) 神奈中バス: 本厚木駅 ← 半原
地理院地図: 仏果山
仏果山・高取山の天気: 神奈川県愛甲郡清川村 , 宮ヶ瀬
レポ: 仏果山・高取山 2013 , 経ヶ岳・華厳山・高取山
11月28日、宮ヶ瀬湖畔の仏果山と高取山に行ってきました。よく晴れた日曜日、多くのハイカーが訪れるかな、と思ったのですが、行ってみたらとても静かな山でした。数々の思い出に満ちた東丹沢の山並み。しっとりとしながらも明るい雰囲気の宮ヶ瀬湖(みやがせこ)。ここに紅葉の(今シーズン)最後の輝きが添えられて、とてもすばらしい景観をゆっくりと眺めてきました。
小田急線本厚木駅前を午前7時20分発の、半原(はんばら)行き神奈中バスに乗りました。バスは満席で発車しましたが「野外センター前」まで乗って行ったのは、私一人だけでした。7時56分下車。石垣に取り付けられた「高取山・仏果山ハイキングコース」の案内板にしたがって、「愛川ふれあいの村 野外センター」に向かいます。畑の中の坂道を登って行くと、爽やかな朝の里山の空気が満ちていて、胸に心地よく沁みこんできます。
8時21分、石仏の角を左に下り、谷川沿いの細い道に入ります。この細い道は、「撚糸組合前(ねんしくみあいまえ)」バス停から続く、「関東ふれあいの道」です。8時25分、県道514号の下を通過。ここを真っ直ぐ進むと「宮ヶ瀬越(みやがせごえ)」への道ですが、左手の石段を登り、仏果山に向かいます。ここからいよいよ登山道です。
傾斜が急になると、体に異変を感じました。実は、今月に入ってから上室性期外収縮(じょうしつせいきがいしゅうしゅく)という不整脈が頻発し、医師から処方されたテノーミン錠を飲んでいます。これはベータ遮断薬という、心臓にあまり仕事をさせないようにする薬です。平坦な道を歩いていては気づきませんが、急な登り坂にさしかかると、本来上がるはずの心拍数がなかなか上がってくれません。あたかも空気の薄い高山を登っているかのような、軽い酸欠感があります。
この状態で10分から15分ほど経過すると、次第に体が慣れてくるようで、普通に登れるようになります。しかし休憩すると、また心拍が下がり、再び歩き出す時になかなか力が出ません。ちょうど起動のとても遅いパソコンを使っているようです。なるべく休憩回数を少なくし、その代わりゆっくりと歩くようにするのが得策のようです。(この薬は、2年後にやめました。)
まもなく12月になろうとしているのに、山道にはシロヨメナ、ヤクシギク、ヤマハッカ、マツカゼソウなどの花がちらほら残っていました。この温暖な低山は、秋の終わるまでに、まだしばらく時間があるようです。真っ赤な実をつけているのは、百両か、十両か、一両でしょうか。磨かれたラピスラズリのように真っ青な実を着けているのは、ジャノヒゲかリュウノヒゲ? 写真で判別できる方は、その名前を教えてくださるとうれしいです。
9時6分、林道を横断。ここから少し登ると後方の視界が開け、半原の町並みと中津川の流れを望めました。さらに進んで送電線の下を通過すると、右手に高取山が見えてきました。山を覆う紅葉は既に盛りを過ぎ、枯葉の色に変わりつつあります。さらに少し上ると、丹沢主脈の蛭ヶ岳、丹沢三峰、不動ノ峰、丹沢山が、一斉に姿を現しました。何度も歩いたこれらの山々を、少し離れたところからじっくりと眺めるのが、きょうのハイキングのねらいです。山頂に立てば、宮ヶ瀬湖を前景に、丹沢の山稜がいっそう美しく見えるはずです。
突然、行く手の尾根上でガサッ、ガサガサッと大きな物音。熊だったら怖いなあ、と思いながら慎重に進んで行くと、サルでした。美しい紅葉の下で、こっちを見ています。写真を撮ろうとしたら、背を向けられてしまいました。
10時5分、予定よりかなり遅れて、仏果山頂に到着。二人の男性がアンテナを立てて、アマチュア無線の交信をしていました。その一人は、高い展望台の上で、電波がよく飛びそうです。展望台といっても、鉄製のがっちりした構築物です。樹木に囲まれた山頂ですが、この高い展望台のおかげで眺望は抜群。期待を少しも裏切ることなく、紅葉の丹沢山塊と青緑色の宮ヶ瀬湖の大パノラマが今、眼前に広がっています。
心行くまで景観を楽しんでから、展望台を下りて、大きなテーブルで昼食にしました。徐々に人が増えてきましたが、サルたちもやって来て、テーブルの上を四足で我が物顔に歩いて行きました。何だか、人の来るのを見計らっていたようにも見えます。
10時43分、山頂を後にして、高取山に向かいます。20分ほど下り、宮ヶ瀬越という峠を通過。ここから遅い足で15分ほど登ると、高取山でした。この山頂にも、仏果山頂と同じような展望台があります。高取山の方が少し低いのですが、宮ヶ瀬湖をより広く見渡すことができます。ここから丹沢山塊をじっくりと眺めていると、また主脈を縦走したいという衝動が湧き起こってきました。いつの日か、大山から焼山まで通して歩いてみたいものです。山小屋で1泊することになるでしょう。
宮ヶ瀬ダムに下る道は、都会の公園の築山のように、きれいな階段になっていました。はるか下の方から、正午を告げる有線放送の音楽が聞こえてきました。ここはリズムよく、敷き詰められた落ち葉をサクサクと踏みしめながら、ぐんぐん下れます。羽があったら、ダムまでふわりと飛んで行けそうなほど、急傾斜です。幼稚園児のような子供たちとすれ違うと、「こんにちは!」「こんにちは!」と、元気いっぱいです。
宮ヶ瀬ダムまで400メートル地点の山腹で、展望の利く広場に出ました。眼下の宮ヶ瀬ダムと、正面の南山(みなみやま)とが雄大に眺められる好ポイントです。あまり早く山を下りてしまうのはもったいないので、テーブルの前に腰を下ろし、弁当の残りを広げ、ゆっくりと全部平らげます。
12時58分、宮ヶ瀬湖畔に到着。ダムの上を経由して対岸に向かいます。ダムの中央付近で、手すりから首を突き出して下の放水路を覗き込むと、その高さと迫力に圧倒されそうです。ダム上から無料のエレベーターで一気に降りることもできますが、急ぐことはありません。ダムの先の服部牧場に立ち寄り、あいかわ公園を散策し、ゆったりと半原バス停に向かう計画です。
服部牧場には、使い古されたジョンディアのトラクターが、公園の遊具のように幾つも置いてありました。小さな子供たちが乗って遊んでいます。廃車となってもなお風格を保っている蒸気機関車と同じように、この緑色のトラクターは、引退後も逞しい生命の輝きを放ち続けているように見えます。老兵に美を感じるのは、私も老いてきたからなのかも知れません。日曜日の午後2時、仏果山の上にはまだ明るい太陽が微笑んでいます。
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