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サルギ尾根・ロックガーデン・日の出山・白岩の滝

サルギ尾根

上高岩山の展望台より望む、御岳山、奥多摩、奥武蔵の山なみ

奥多摩のサルギ尾根には、素晴らしい展望台と、イワウチワの自生地があります。道標が朽ち、破損したり倒伏したままですが、修復が望まれます。

バス停 西東京バス: 武蔵五日市駅 → 大岳鍾乳洞入口 登山口
バス停 西東京バス: 武蔵五日市駅 ← 白岩滝 登山口

地図 地図: 上高岩山 , 白岩の滝

天気 サルギ尾根の天気: あきる野市 , 御岳山駅 , 御岳山


コース & タイム 鉄道駅 武蔵五日市駅 バス停 8:17 == 8:43 大岳鍾乳洞入口バス停 8:43 --- 8:44 養沢神社 8:56 --- 9:39 大名子ノ頭 9:39 --- 9:56 炭焼き窯跡 9:57 --- 10:14 標高909mの休憩所 10:23--- 10:50 高岩山 10:54 --- 11:30 展望台 11:45 --- 11:53 上高岩山 11:54 --- 12:07 芥場峠 12:07 --- 12:28 綾広の滝 12:30 --- 12:42 ロックガーデンの休憩所 12:47 --- 13:05 ロックガーデン下流端 13:12 --- 13:56 御岳神社石段 13:56 --- 14:52 日の出山 15:09 --- 15:57 白岩の滝分岐 15:57 --- 16:14 麻生平 16:15 --- 16:51 白岩の滝 16:55 --- 17:09 白岩滝バス停 バス停 17:33 == 17:48 武蔵五日市駅 鉄道駅
※歩行時間には道草と写真撮影の時間が含まれています。
高岩山、上高岩山 たかいわやま:標高 920m、かみたかいわやま:推定標高 1010m 単独 2019.6.6 全 8時間13分 満足度:❀❀❀ ホネオレ度:❢❢❢

6月6日(木)、梅雨入り直前の晴天日、サルギ尾根を登りました。蒸し暑い日、急登の低山に登る目的は、ずばり筋力トレーニング。昨年から右足の魚の目が悪化し、最近の山行は軽ハイキングとウォーキングばかりになっていました。このままだと足腰の弱体化が心配されます。高岩山と上高岩山という、峻険そうな名の入ったコースは、修験僧が拓いたともいわれ、筋力のメンテナンスにはお手頃かも知れません。季節柄、山ビルの多い山域は敬遠しました。

段落見出し武蔵五日市駅から養沢神社へ

私は普段、[足のサイズ+0.5cm]のスニーカーを履くのですが、登山靴は [足サイズ+1cm]を厚手の靴下の重ね履きで調節して履きます。しかし、長時間履いて歩くと魚の目が痛むので、[足サイズ+2cm]のトレッキングシューズが山に行くときの定番となりました。それでも痛みを感じずに歩けるわけではありません。最近の山行では、靴を履いて歩く時間を最小限にするため、クロックス履きを併用しています。一見すると、沢歩きに行くと思われるかも知れません。

山歩きが爽快だったゴールデンウィークから、はや1か月。山には行きたいが、どの山をどう歩くか、普段以上にしっかり考える季節です。今回は、以下のことに留意しました。

  • 楽過ぎない、かつ厳しすぎない山に行く。展望は気にしない。
  • 足の指に、あまり負担をかけないように歩く。
  • 熱中症を予防するため、体が暑くならないペースを守る。

朝8時、武蔵五日市駅の改札を出てバス乗り場に行くと、すでに数十人が並んでいてびっくり。人々の話し声から、三頭山に行くツアーグループであることが分かりました。まもなく都民の森行きの急行バスがあります。その前に上養沢行の小さなバスが入線すると、何人かが列から抜けて、新しい列を作りました。乗り込むと、ほどよく座席が埋まり、定刻ぴったりに発車。明らかに沢登りと見られる、男性二人組も乗っていました。

段落見出し養沢神社から急登の尾根へ

大岳鍾乳洞入口でバスを降りると、ミスジチョウがひらひらと飛んできて、目の前の養沢神社の石段に止まりました。山間の渓流域に来たことを実感させる、お迎えの蝶です。私の他に、1組の男女がバスを降りましたが、女性が神社のトイレに入ろうとして、何かためらっているようでした。私は境内に行き、念入りに準備運動をします。そして、手に提げて来た厚手の靴下2足と、トレッキングシューズを履きました。神社の右奥に、登山道の取り付き点が見えています。

サルギ尾根は一般向きのハイキングコースですが、養沢神社からいきなり大変な急登です。私は時々準備運動をさぼりますが、今回は入念にやって良かったと思いました。予想を上回る急登ですが、養沢神社を振り返ると、ぐんぐん増して行く高度感が気持ちいいほどです。登山道の周辺にはコアジサイが咲き始めて、涼し気な水色の花を見せていました。またこれから先ずっと、マルバウツギ、ガクウツギ、コアジサイなどの白い花を見ることになります。

緑陰の登山道には、爽やかな空気がありました。家で冷凍してきた、塩分入り清涼飲料水をこまめに飲みます。飲むとすぐに汗が出て、そよ風がひんやりと、体を労わってくれるようでした。体感はしませんが、すでに体の水分がかなり失われているのかも知れません。きょう、明るい尾根歩きではなく、涼しい尾根歩きを選んだのは、大正解だったようです。養沢神社から40分ほど登ると小峰があり、木の幹の高いところに「大名子ノ頭 656m」の私製標識がありました。

段落見出し炭焼き窯跡を経て、展望地へ

杉、檜、栂などの針葉樹と、コナラ、ミズナラ、アセビなど広葉樹の混交林を登って行きます。今、奥多摩は濃緑の季節。地面をフカフカにしてくれる針葉樹は、独特の香りを漂わせて森林浴ムードを醸します。他方、広葉樹は美しい緑色の葉で安らぎを与え、頑強な根で山の土を守ってくれます。尾根すじに並び立つ常緑照葉樹は、規模によっては防火壁のような効果もあるらしい。詳しくは知りませんが、いずれも山の住人として、互いに護り合っているのでしょう。

その後なだらかになった登山道を進んで行くと、炭焼き窯跡がありました。石積みは健在で、全体として原形をかなり留めています。ここで焼いた炭は、どのように里に運び出したのでしょうか? 今は使われなくなった仕事道が、昔はあったのかも知れません。炭焼き窯跡を過ぎると、再び急勾配の道になり、岩稜めいてきました。板を何枚も重ね合わせたような岩ですが、その板はバラバラに剥がれそうにも見えます。幸い、ここは岩を踏まずに登って行けました。

高岩山に到着したと思ったら、標高809mの地点でした。好展望とベンチがあります。御岳山、日の出山、大岳山など、喜んで撮ったのですが、後に展望台でもっと優れた景観が得られたので、ここで撮った写真は掲載しません。標高の低いところでは終わってしまったヤマツツジの花が、嬉しいことに、この辺りから上で、まだきれいに残っていました。しっかり水分を補給して、高岩山に進みます。もしこの展望地が名無しなら「下高岩」と呼んではどうでしょうか?

段落見出し命の謳歌、高岩山へ

やせた岩稜に差しかかると、立ち木と露岩が道を塞いでいました。巻くと危なそうなので、木と岩の間をすべり抜けます。この道のここかしこに赤いヤマツツジ。見上げれば、豊かに繁る緑の葉。葉と葉の重なりがつくる光と影。尾根を頻繁に行き交う黒い大型の蝶は、モンキアゲハとミヤマカラスアゲハ。ずいぶんと多いです。この色鮮やかな初夏の山にいるのは、私だけ? この日のサルギ尾根は、人の影も声も足跡もなく、倒伏した道標は落ち葉に埋もれたままでした。

くねくねと躍るようなアセビの密植地帯がありました。傍らに激しく燃えるヤマツツジ。さらに増えた蝶たちは、クモガタヒョウモン、ダイミョウセセリ、アカタテハ。足元に見覚えのある小さな葉は、フイリフモトスミレ。春に萌え出た諸々の生命が、今大きくなって力強い歌をうたっています。夏の低山の魅力は、溢れんばかりの生命を体感できること。来てよかった! でも熱中症には気を付けなくては。昨晩冷凍庫に入れ、今半分融けた氷水で、のどを潤します。

10時50分、予定より大きく遅れて、高岩山に到着しました。養沢神社から高岩山まで、地図に書かれたコースタイムは80分ですが、その1.5倍かけて歩いて来たことになります。もし80分で登って来たら、今頃は暑さでへばっていたかも知れません。高岩山頂にあまり展望はありませんが、大岳山の偉容は望めました。立ったまま、ゆっくりと水分補給をします。そして上高岩山に向かって踏み出すと、行く手の高みに小さく、赤い展望台が見えました。

段落見出し上高岩山の展望台へ

鞍部まで約70mの標高差を下ります。その下り始め、可愛らしいイワウチワの小群落がいくつかありました。この花の咲く季節には、花に目を奪われてあまり葉を見ませんが、真っ直ぐ突き上げる葉柄の先端に、団扇のように円い小さな葉が付き、その葉脈がきれいです。ベゴニアのような赤銅色を帯びた葉もあります。フラッシュ撮影したら、イワカガミのように葉が照り輝きました。この葉でしっかり光合成をして、来春に可憐な花を咲かせてくれることでしょう。

鞍部から約140mの標高差を登り返します。見上げると大変そうにも思えますが、ちょっと裏山に登るようなもの。ここで声援を送ってくれる白い花は、マルバウツギとガクウツギ。地表に頭を出したギンリョウソウ。いや、もしかしたら、これは繭かカプセルで、地球に送られた、宇宙人の落し子なのかも(ウソ)。変な物語を考えているうちに高度を稼ぐと、また壊れた道標がありました。南から合わさる尾根には、通せんぼの枝が置かれています。ここは迷いなく右折。

11時30分、展望台に到着。山頂ではありませんが、達成感があります。展望は、これぞ展望台と言える素晴らしいもので、男具那ノ峰(奥ノ院)から時計回りに、御岳山、日の出山、麻生山、金比羅尾根、関東平野、馬頭刈尾根、大岳山まで、視界を遮るものが何もありません。強いて言えば、鍋割山が見えにくいことくらい。蝶たちも入れ替わり立ち替わりやって来ます。アカタテハが私の右手親指の爪に止まりましたが、爪は汗をかきません。すぐに飛んで行きました。

段落見出し残りの話は駆け足で

話が長くなりそうなので、端折ります。上高岩山の山頂にちょこっと立ち寄り、芥場峠に向かいました。これまでの道と比べると、とてもよく整った、参道のような道を歩きます。芥場峠からロックガーデンに降り、花や虫を探しました。苔むす岩の美しい御岳沢。きょうは水量が少なめです。平日とあって、ハイカーも少なめでした。花はウツギ類の他に目を引くものがなく、やがてギンバイソウ、タマガワホトトギス、レンゲショウマなどが咲く前の、端境期なのでしょう。

その後は、神代欅を見て、日の出山へ直行。ここの展望は定評があります。日の出づる方を眺めながら、最後の休憩を取りました。そして、かつてのつるつる坂、今はよくぞ造ったと思える長い木段を下って、山容のスッキリ整った麻生山へ。その山頂手前の肩から、麻生平を経て、白岩の滝に下りました。谷間の日暮れは早く、滝も暗くて寂しそう。そして白岩の滝から15分で、白岩滝バス停にゴールイン。バスを待つ間に靴と靴下を脱ぎ、クロックスに履き替えました。

冷たいものを飲みたくて、格安の自販機で大缶のメロンソーダを買いました。飲み残しは空いたペットボトルに移します。バスと電車の車内で少しずつ飲み、全部飲み切りました。600ml入りの大缶でしたが、日の出山のトイレを使って以後8時間、深夜まで全く尿意を催しませんでした。のどが渇きを感じなくても、体は相当な水分を失っていたのでしょう。水は体の欲望だけに応じて飲むのではなく、理性的に、体の必要度に応じて飲むべきものだと、改めて思いました。

木の葉ライン

↓ 紙芝居



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