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大楢峠から鍋割山

鍋割山のミズナラ

鍋割山のミズナラ

奥多摩で屈指の人気を誇る御岳山と大岳山の間にあって、鍋割山は芥場峠よりもマイナーな通過点の位置に甘んじています。しかし、かつて参道として歩かれた痕跡の残る北尾根を辿れば、ハイキングの目的地としても十分な魅力を備えています。

地図 地理院地図: 鍋割山 , 大楢峠

天気 鍋割山の天気: 奥多摩町 , 御岳山 , 御岳山駅

道標 倒れる前の大コナラはこうだった


コース & タイム 鉄道駅 白丸駅 8:03 --- 8:07 < 数馬峡橋 > 8:10 --- 8:51 上坂の登山道始点 8:58 --- 9:52 大楢峠 10:04 --- 11:03 1010m(石の祠)11:05 --- 11:19 鍋割山 11:33 --- 11:53 男具那ノ峰(奥の院)11:55 --- 12:46 長尾平 13:31 --- 13:48 神代ケヤキ 13:49 --- 14:05 大塚山巻き道分岐 14:07 --- 14:59 林道横断 14:59 --- 15:43 御岳山登山口 15:48 --- 16:11 古里駅 鉄道駅
※歩行時間には道草と写真撮影の時間が含まれています。
鍋割山、男具那ノ峰(奥の院) なべわりやま:標高 1084m、なぐなのみね(おくのいん):標高 1077m
単独 2015.11.11 全 8時間8分 満足度:❀❀❀ ホネオレ度:❢❢❢

11月11日、奥多摩の白丸駅から大楢峠を経て、鍋割山の北尾根を登りました。山は白い霧に包まれ、紅葉や黄葉は鮮やかさを隠し、淡い神秘色に佇んでいました。色鮮やかなのは、地面に落ちた無数の紅葉だけ。大楢峠の大コナラは倒れたままで、ただ朽ちるのを待つ身に。その後も眺望は求めず、鍋割山からゆっくりと奥の院を周って、明るい長尾平のヘリポートで大休止。青空を完全にあきらめると、御岳山上集落を通り抜けて、丹三郎に下りました。

段落見出し白丸駅から上坂へ

前日調べた天気予報では、上記の3サイトとも、晴れになっていました。夜が明けると、空がどんより曇っていましたが、電車に乗っているうちに晴れるだろうと、楽観しながら家を出ました。古里駅のプラットフォームに下り立つと、すでに8時だというのに、いやに暗い空。数馬峡橋から望む多摩川は、眠たそうな色の紅葉で彩られていました。でも、本格的な撮影機材を携えて橋の上から撮影している人も来ています。皆さん、天気予報を信じてきたのかな?

多摩川右岸の遊歩道を歩いて、海沢を目指します。車道に出ると「東京都奥多摩さかな養殖センター」を左に見ながら、上坂(あがっさか)を目指すのですが、道なりに「城山トンネル」に入ってはいけません。このトンネルは、まだ地理院地図に掲載されていません。正しくはトンネル手前で右に分岐する車道に進むのですが、アメリカキャンプ村や海沢園地に通じる道に進まないよう、地図と案内板をよく見てルート判断をしましょう。海沢川を右に見る道が正解です。

上坂集落へは、奥多摩霊園に通じるかなり傾斜のある舗装路を、標高差にして約90mほど登ります。やがて右手の谷の向こうに、天地山の前衛の674m峰が見えてきました。今が紅葉の盛りで、日が射せばどんなに美しくなることかと思います。天地山は霧に煙った頭だけが見えますが、鋸尾根の方は全く雲の中。天気予報は外れたのでしょうか? 舗装路が左へカーブするところに、大楢峠・御岳山を指す道標が立っていました。

段落見出し上坂から大楢峠へ

道標の前で準備運動をし、登山道に入りました。暗く、湿っぽい杉林の道を、黙々と登って行きます。ジグザグはほとんどありません。正味50分ほどで、鳩ノ巣城山と大楢峠を結ぶ尾根に乗りました。以後、大楢峠までこの尾根に大した起伏はないので、歩くうちにスタミナを回復できます。ただ霧がどんどん濃くなるようなので、雨になるかもしれません。視界は悪く、コアジサイの黄葉が、どこに行っても目立ちました。人や動物の気配もなく、ひっそりとしています。

大楢峠に到着しました。聞いていたとおり、コナラの巨樹が豪快に倒れています。折れ口はかなり腐食していましたが、倒れてから腐食したのか、それ以前からなのか分かりません。樹齢4~500年と推定された巨大な樹ですが、2年前の8月に見たとき、あまり元気がないように思いました。その直後の台風で幹に亀裂が入ったそうです。ひこばえが出るといいのですが、もう出ないかもしれません。その根元から立ち上がっている木はモミで、コナラの分身ではありません。

大楢峠のベンチで、軽食を取りました。帰りは裏参道を下ってここに戻り、越沢経由で鳩ノ巣駅に下る予定でしたが、「越沢林道開設工事のため」ここから下は通行止めになっています。鳩ノ巣駅―大楢峠間の迂回路は、城山経由とのこと。WEBで登山道情報を見てくるのを忘れました。さてどうするかは、後ほど考えることにして、まずは目の前の鍋割山を目指します。

段落見出し鍋割山北尾根はカエデが豊富

大楢峠から裏参道を100mほど登ると、右手にはっきりとした踏み跡がありました。ここが鍋割山の取り付きです。その後もずっと道は明瞭で、山頂まで迷いそうなところや、危険な箇所はありませんでした。とにかく尾根の中心線を忠実に登るわけなので、たとえ踏み跡が見えなくても、大きな問題はなく歩けると思います。林相は西面が大体において針葉樹の植林、東面が大体において落葉広葉樹林なので、晴れた日の午前中には紅葉や新緑が輝くことでしょう。

カエデ類の木々はたくさんありました。山の中腹では、地面にびっしりと紅葉が敷き詰められたところが何箇所もあったことから見て、紅葉の最盛期は過ぎたと思います。普通、落ちた葉は乾くとカールしたり、縮んだり、色も褐色に変化して行くものです。ところが、雨が降ったばかりなのか、落ち葉が濡れていて、美しい形と色と光沢とを保っていました。そんな場所で見上げれば、まだまだ紅葉が見頃の木もあれば、すでに終盤になった木もありました。

霧はあい変らず濃く、少し離れたところの木々は、みな淡い色彩です。魔法がかけられているみたいでもあり、これはこれで好いものですが、陽が当たればどんなに輝くだろうと思わずにいられない、見事な紅葉もありました。面白いのはモミの幼木で、濃緑の葉に赤いモミジ葉がいくつも差し込まれ、いたずらっぽく紅葉を装っていました。葉は表と裏とで色が多少異なります。一面に落ち葉が敷き詰められた場所は、どこを切り取っても彩色豊かな絵になっていました。

段落見出し白ナギノ頭と黒ナギノ頭

この尾根のどこかに、白ナギノ頭と黒ナギノ頭という場所があります。まず白ナギノ頭を探しました。小ピーク、平坦地、沢の源頭部など、名の付きそうな地点を探しましたが、判りませんでした。「東京の里山100選」(石原裕一郎著、ゴマブックス)では、里山ハイキングの目的地として取り上げています。その場所は、標高836mとしていますが、「東京の山 一覧」によれば、標高871.3mとなっています。楽しみにして来たのですが、歩いてみたらどうでもよくなりました。

次に、黒ナギノ頭を探しました。961m峰の手前に古い道しるべの石があり、「右、山ミち」「㔫(鳥居マークあり)〇〇」と見られる文字が彫られています。〇〇は、大嶽か、犬神か、他の文字か、判読できません。道しるべが置かれたということは、ここが十字路か三叉路であったのでしょう。試しに右の踏み跡を覗いてみたら、仕事道のようなものがありました。でも深入りはせず、引き続き尾根を登ります。

黒ナギノ頭の候補地としては、961m峰と1010m峰の2箇所を予想してきました。961m峰には特に何もなく、1010m峰には石祠があったので、後者が黒ナギノ頭かと思いましたが、「ナギ」の意味が解らないので何とも言えません。白ナギノ頭も含め、「ナギ」とはどんな意味でしょうか。漢字では、凪、薙、和、などを思いつきます。「頭」との接合を考えると、「山の崩れ落ちたところ」 (Wictionary) を意味する「薙」がしっくりするように思いますが…。

段落見出し私だけの鍋割山

山頂の直前に、道を塞ぐように倒木があり、「この先、登山道ではありません」という注意書きが立ち木にくくり付けてありました。山頂から来る人に見える向きになっています。そして山頂に到着。霧が濃いせいもあって、展望は全くありません。あまり広くはない山頂に、ミズナラが立っています。幹は8本ありますが、根元を見ると3本の株立ちのように見えます。大楢峠で倒れたコナラもこのような株立ちになってくれないでしょうか。ついでに、ミズナラのことをオオナラとも呼びます。

山頂には、東京府の石標と東京都の石標があります。東京府のものは、歯周病のように根が30cmほど露出していますが、それだけ山頂の土が削られたのでしょう。蕎麦粒山の山頂で見た三角点標も同じようになっていました。鍋割山には、「高山境界票」と彫られた石標もあります。青梅市と奥多摩町の境界かなと思いましたが、山頂から北に3分ほどの地点にも「高山境界票」がありました。現在そこは、市町村界ではありません。

私が感慨深く山頂を眺めているのは、おそらく私が北尾根を登ってきたからです。大岳山や奥の院からやって来る人々には、何と言うこともない通過点なのかも知れません。鍋を伏せたような山容の鍋割山にしては、山頂が狭く、ベンチやテーブルを設置するのも難しそう。私は立ったままで昼食にしました。今ここに私しかいないからではなく、私だけに語れる物語がきっとあるに違いない鍋割山。他の多くの山々と同様に、この山も時が流れるに連れ、いとおしい山の一つになるでしょう。

段落見出し男具那ノ峰(奥の院)

山頂から奥の院に向かうと、人を見るようになりました。5分ほど下り、鍋割山を巻く道を右から合わせます。ここから人が増えました。その先を8分ほど登り返すと道標がありました。左に登る道は「奥の院山頂」、直進の平坦な道は「御岳山(長尾平)」となっています。左の道を見上げると、2本の大きな木が左右に仁王立ちしていました。謹んで通らせていただきます。するとわずかながら岩場があり、下りて来る人を待つほどになりました。

鍋割山頂から20分ほどで、「奥の院山頂」に到着。この山には、男具那ノ峰(なぐなのみね)と甲籠山(こうらさん)という名称がありますが、なぜか「奥の院」がしばしば山名のように扱われています。地理院地図では、山、川、谷など、自然物の名は斜字体で、人が造った寺社名や集落名などは立体で表記されていますが、「奥の院」は立体での表記です。山頂には小さな石祠があり、そのすぐ下に朱塗りの男具那社(武蔵御嶽神社奥の院)社殿があります。

奥の院の参道を5分ほど下ると、東面の展望が開けた箇所がありました。足下は崖になっています。見渡すと、平野部は晴れている模様。御岳山、日の出山、金毘羅尾根は曇天下ながら、紅葉の色彩が見えます。晴れていれば、はるかに都心とその彼方も望めるでしょう。ここが、きょう初めてのビューポイントです。やはり、広大な展望は山登りの大きな醍醐味。風景であれ、自身の内面であれ、山で見たものは、人生の土産になります。

段落見出し長尾平へ

その先も、奥の院の参道は美しい紅葉がいっぱいでした。私は植栽のモミジも好きですが、山中に生えている自然のモミジには、その何十倍も魅せられます。つまらない説明ですが、植物がきれいな花を咲かせるのは人に見てもらうためではなく、虫を引き寄せるためだと言います。しかし紅葉は木の生存や繁殖のためでしょうか。真っ赤にならずとも、他の色でもよいものを、緑色だった葉が散る直前に、これほどまで赤くなるのは奇跡ではないでしょうか。

長尾平では、ヘリポートの先の展望台に行きました。左手の大きな日の出山から、南へ麻生山を経て、延々と金毘羅尾根が伸びて行きます。右手にはサルギ尾根、馬頭刈尾根、ほか幾重もの山並み。誰かが「高尾山はどこ?」と言いました。これはやや難問です。遠方は霞んでいますが、目を凝らせばうっすら東京湾と房総半島も認められます。ふと、東京スカイツリーは?と探すと、日の出山の右肩に、その幽かな影が立っていました。

ヘリポートに戻ると、霧が晴れて男具那ノ峰と鍋割山の稜線が表れていました。左手には上高岩山と高岩山。もしかしたら、もう少し晴れるかも知れないと思い、草の上に座ってお茶にしました。目の前でノコンギクが水玉をつけて、ひっそりと咲いています。しばらく待っていましたが、分厚い雲は全く晴れそうになかったので、腰を上げました。

段落見出し下山

下山は裏参道の予定を変更して、丹三郎に向かいました。どこかで鍋割山をもう一度見ることができるはずです。すると大塚山巻き道の分岐付近から、鍋割山とその北尾根がよく見えました。山頂から北に、二つの小ピークを目でなぞると、まだ足に残る距離感とよく一致します。木の枝が邪魔なので、富士峰公園の階段を登って撮影しました。この分岐点にはベンチ・テーブルがあり、ひと際美しい紅葉が見られます。

願いが叶ったので、大塚山は巻きました。標高差にして約50mを登り下りしなくて済んだことになります。846m地点から境界尾根を見下ろすと、木々に色とりどりのテープがいくつも巻かれていました。丹三郎尾根は落ち葉が積もってフカフカの上、傾斜も緩やか、快調に下って行きます。飯盛杉(めしもりすぎ)を見物し、新しい林道を横断し、「大久保」の丸木ベンチで一休みしました。

登山口の電気柵を通ると、立派なトイレ兼休憩所ができていました。正面に惣岳山が見えます。里道に入ると、ドウダンツツジが真っ赤に紅葉していました。鮮やかさなら、モミジもドンダンツツジには敵いません。古里駅の方向には、惣岳山に似た山が見えますが、ズマド山でしょうか。登る意欲をそそられます。登ればさらに上のピークに誘われ、終には川苔山まで行ってしまうのかも知れません。

段落見出し古里駅へ

丹三郎屋敷は定休日でしたが、長屋門に置いてある、バザー商品のような小物を物色して楽しみました。万世橋から眺める紅葉は豪華版でしたが、「♪秋の夕日に照る山もみじ」でないのが残念。何せ、照っていません。でも歌のような情景は容易に想像できました。古里駅の跨線橋からは、キリッと立つ鳩ノ巣城山の稜線がきれいです。鳩ノ巣駅から大楢峠に行く人は、今後しばらくあの稜線で骨を折らねばなりません。

今回の山行は、ほとんど霧の中を歩いたので、レポは短くなると思いました。でも書いているうちにこんなに長くなってしまったのは、それだけ思い出深い日になったということでしょう。この秋、もう一度「照る」山モミジを見に、いずこかの山に登りたいものだと思います。

木の葉ライン

↓ 紙芝居



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