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大山支尾根散策

弁天御髪尾根、梅ノ木尾根、鍵掛尾根を望む

大山 - 三峰山縦走路より、梅ノ木尾根と弁天御髪尾根を望む

梅ノ木尾根や弁天御髪(べんてんおぐし)尾根は、ヤセ尾根、急斜面、ミニ岩場、展望地など、変化に富んでいます。滑落、道迷い、ヤマビルなどに、十分な注意が必要です。

晩秋から初冬にかけての長雨を、山茶花梅雨(さざんかづゆ)と呼ぶそうです。紅葉が美しくなる条件を阻害するだけでなく、道に積もった落ち葉が濡れて滑りやすくなります。

バス停 神奈中バス: 伊勢原駅 → 大山ケーブル 登山口
バス停 神奈中バス: 本厚木駅 ← 広沢寺温泉入口 登山口

地図 地理院地図: 不動尻分岐 , 大沢分岐

天気 大山の天気: 伊勢原市 , 大山 , 大山ケーブル

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コース & タイム 鉄道駅 伊勢原駅 バス停 11:22 == 11:48 大山ケーブルバス停 11:50 --- 12:17 大山寺 12:22 --- 12:42 阿夫利神社下社 12:52 --- 13:19 見晴台 13:29 --- 14:17 不動尻分岐 14:17 --- 14:43 893m地点 14:43 --- 15:10 鍵掛分岐 15:11 --- 15:22 大沢分岐 15:22 --- 15:40 すりばち広場 15:43 --- 16:00 見晴広場A 16:02 --- 16:09 見晴広場B 16:09 --- 16:46 二ノ足林道擁壁 16:48 --- 17:26 広沢寺温泉入口バス停 バス停 17:26 == 18:10 本厚木駅 鉄道駅
※歩行時間には道草と写真撮影の時間が含まれています。
不動尻分岐 ふどうじりぶんき:標高 1135m 単独 2015.11.19 全 5時間36分 満足度:❀❀❀ ホネオレ度:❢❢

長雨の続く日々の11月19日、大山の東面に派生する梅ノ木尾根と弁天御髪尾根、それぞれの一部を探索してきました。紅葉の季節なので、大山寺、阿夫利神社下社、見晴台に立ち寄りましたが、厚い雲に覆われた山頂はパス。弁天御髪尾根は見晴広場Bで時間切れとなり、二ノ足林道に下りました。日照不足からか、山のモミジの多くは黄葉から落葉へと進んでいました。

段落見出し 初めて登る大山女坂

遅い出発でしたが、効率よく電車を乗り継げて、伊勢原駅到着は11時5分頃でした。平日だというのに、大山ケーブル行きバス乗り場には長い長い列。その列はバスを待っている間にますます長くなり、1台のバスではとうてい間に合わないと思っていたら、かなり多くの人々が次のバスを待つことにしたようでした。おかげで私の乗ったバスは、すし詰め状態にならなかったのですが、臨時バスが出ることになったのでしょうか。

バス道路は大山駅あたりから大変に狭くなり、対向車とすれ違うゆとりはないほどなのですが、運転士は慣れた様子で上手に走り抜けました。でもこの人出だと、ケーブルカーに乗る時も待たされるかもしれません。10月1日に新しくデビューしたケーブルカーに、大山寺まで乗ってみたかったのですが、歩くことにしました。考えてみると、ここの女坂を登るのは初めてです。「女坂の七不思議」が次々と出てきますが、今回初めて全部見ました。

大山寺の紅葉は、一枚一枚を見るともう終わりかなと思いましたが、離れてみるとそれなりにきれいでした。4日後の勤労感謝の日までは見られるでしょう。植栽のモミジは真っ赤になる木を選んであるのか、接木で増やしてあるのか、紅い色がひときわ鮮やかです。これは阿夫利神社でも同じ事情ですが、こちらは赤とオレンジが混植されている分、より好感が持てました。社殿を飾る菊の花もまだピンピン元気。菊は開花期の異なる鉢を少しずつ入れ替えることもできますが。

段落見出し 見晴台から不動尻分岐へ

見晴台の近くに、例年真っ赤に燃えるモミジがあるので、淡い期待を抱きながら行ってみます。下社から見晴台までの道は修復が済んで、歩き易くなりました。道の谷側にロープが張られ、安全と安心に配慮したのだと思います。その期待したモミジは、真っ赤と言えないまでも、緑まじりのきれいなオレンジ色になって、ちょうど雲のすき間から差し込んだ日差しを受け、「よく来たね」と言ってくれているようでした。日照不足は致し方ありません。

見晴台から見上げる大山山頂は雲の中でした。でも雲の上にコマ切れの青空もあり、雨の心配はなさそう。ここで遅めの昼食を取り、不動尻分岐を目指しました。見晴台からの標高差は約370m。ちょっと裏山に登る程度です。雷ノ峰尾根を登って行くと、右手の989m峰が次第に低くなって行きます。下山者たちと次々に行き違うのですが、後から来た単独男性が、荷物を何も持たずにハアハアと息を切らせて、私を抜いて行きました。若い人です。

不動尻分岐から、長く急な階段を降ります。冷たい山風も吹きつけてきました。まだ新しい丸木の土止め階段は歩きやすいのですが、こんなに長かったかなあと思うほど長く感じるのは、歩調が単純になるからでしょうか。長雨のせいか、鹿の臭いはしません。左手に三峰山と仏果山が重なって見えます。平野部には明るい日が差している模様。989m峰に長年放置されていたウィンチ車の残骸はスッキリと片付けられていましたが、部品の一部らしいものが転がっていました。

段落見出し 梅ノ木尾根へ

989m峰から、私の好きな道が始まります。芝生みたいな尾根道には休憩所もあり、天気が良ければ小学生たちと来ても楽しそう。以前に大繁殖していたマツカゼソウは減ったような気がします。この区間は展望にも優れ、東面(右手)を望むと、針葉樹でカバーされた鍵掛尾根と梅ノ木尾根、広葉樹でカバーされた弁天御髪尾根、両者が植え分けられた鐘ヶ嶽などを俯瞰できました。

893m地点の直前で、ロープを跨いで右折し、梅ノ木尾根に入ります。ところでこの893mは、「矢草ノ頭」とも呼ばれていることを最近知りました。「矢草」はおそらく893の語呂合わせだと思いますが、「ヤクザ」よりはマシです。入口に掛けられた、「入るな」という意味に取れるロープを跨ぐときは、「悪い道」に入るような思いがしたものです。実際、それまでとは打って変わり、急傾斜に濡れ落ち葉の積もった、「危ない道」になりました。

梅ノ木尾根とは、どこからどこまでを言うのか知りませんが、最後まで行くと、日向薬師の梅林に至ります。ここでは便宜上、あのロープから日向薬師までを梅ノ木尾根とします。私は一度、下り始めて5分ほどの左折点を間違えて直進し、無名の尾根を下って滝の上まで行ったことがあります。逆方向から来れば、間違いようはない箇所でした。そんなことを思い出しながら下って行くと、ここかしこに美しい紅葉が見られました。危ない道も苦になりません。

段落見出し 親切な人と親切な道標

前方から若い男性が登ってきました。カッコいい地下足袋を履いています。「こんにちは」を交わすと、「気をつけて行ってください。」と落ち着いた声で言われました。「この先、危険な箇所がありましたか?」とたずねると、「このあたりはずっと岩山なので、どこも危ないです。湿って滑りやすくもなっています。」とのこと。私は「十分気をつけて行きます。ありがとうございます。」と言って別れました。

鍵掛尾根の分岐点には、赤帽白杭への落書きのほか、目立つ新しい目印と、復活した古い私製道標がありました。これらがあるうちは、どちらから来てもここで道を間違える人はいないでしょう。梅ノ木尾根ルートは左へ続きます。その先10分ほどで、「大沢分岐」に至り、梅ノ木尾根ルートは右折、弁天御髪尾根ルートは直進です。弁天御髪尾根もどこからどこまでを言うのか知りませんが、ここではとりあえず、大沢分岐から大釜弁財天までとします。

大沢分岐の先は、感じのよい落ち葉の道でした。素朴に美しい紅葉や黄葉を見ながら、サクサク爽やかに歩きます。急な下りに差し掛かると、行く手に錦模様の弁天御髪尾根を見渡すことができました。先ほど989m峰の下りで俯瞰した、あの紅葉の尾根の真っ只中に来たわけです。トラロープのある岩場を過ぎると、やがて杉林の道となり、行く手下方に東屋がありました。東屋の横に道標があり、左は「巨木の森」、進行方向は「鐘ヶ嶽」となっています。

段落見出し 見晴広場Aへ

鉄条網の鹿柵を右に見ながら杉林を緩やかに下って行くと、左手に窪地が見えてきました。「すり鉢広場」という名が付いています。すり鉢の底に下りると、水はけが悪そうで、ぬかるんでいました。近くに道標があり、南東を指す腕木に「キャンプ場」と書いてありますが、地理院地図に道はありません。次の小ピークに登る途中で振り返ると、先ほど分けた梅ノ木尾根の稜線上に、黒っぽい針葉樹が立ち並んでいるのが見えました。

さて、この小ピークには、枝振りのよいモミジが立っていました。柔らかな緑色から柔らかなオレンジ色まで、びっしりと葉を繁らせています。地面も同様のきれいな落ち葉がいっぱい。きっと真っ赤に紅葉する年もあって、人は足を止めてこの木を見上げ、見とれるに違いないと思いました。再び鉄条網の尾根を緩やかに下って行きます。このあたり南面の紅葉が最も美しく、梅ノ木尾根、南東尾根の彼方に市街地、そして江ノ島の浮かぶ相模湾を望め、青空でないのが残念でした。

午後4時ちょうど、見晴広場Aと呼ばれる小ピークに到着。古い道標の腕木が松の根元に置かれています。振り返ると、あい変らず頭に雲を被った大山が青く霞み、宵闇の近いことを告げていました。この季節の午後4時は、普通ならもう下山していなくてはなりません。残念ながらきょうは時間切れ。弁天御髪尾根の完走は断念し、見晴広場Bから二ノ足林道に降りることを決めました。

段落見出し 見晴広場Bからエスケープ

見晴広場AからBに行く途上の尾根に、ヤブツバキの木がありました。すでに空の光は乏しいのに、明るい紅色の花や、ぽっちゃりしたつぼみがたくさんあります。花芯の黄色いシベも鮮やか。光沢のある濃緑の葉が、強い生命力を感じさせます。撮影は光量不足でフラッシュを使ったため、花弁のみずみずしい味わいが写っていません。このヤブツバキを、勝手ながら「弁天椿」と命名しました。長生きして、子孫をたくさん増やすといいです。

午後4時9分、見晴広場Bと呼ばれる小ピークに到着しました。ここで尾根道が二手に分かれます。弁天御髪尾根は、右の尾根を下り、弁天見晴 -- 上弁天 -- 中弁天 -- 下弁天 -- 大釜弁財天へと続きます。下界を見下ろすと、早くも照明が灯り始めていました。なのに、鐘ヶ嶽がまだずっと下の方に見えます。弁天御髪尾根の残りは宿題とし、左の尾根を下り始めました。

下るに連れ、鐘ヶ嶽が競り上がってきました。山神隧道の上に通じる道を左に分けると、後はひたすら鹿柵に沿って、真っ直ぐな尾根を下るだけです。足下にはまだ、空からほのかな残照がありました。そして二ノ足林道の白いガードレールが見えてくると、尾根の末端です。擁壁からどう下りたものかと考えましたが、擁壁の切れ目から簡単に下りられました。でもバス停まではまだ長い道のり。もう誰もいない、車も通らない、真っ暗な林道をテクテクと歩いて行きました。

段落見出し もうじきクリスマス

河鹿の沢バス停付近で、ようやく犬を連れた人の姿を見ました。広沢寺温泉入口では、折りよくやって来たバスに向かってダッシュ!...して...セーフです。本厚木駅前で下車すると、駅前広場にクリスマスの電飾が輝いていました。今年はあと何回、山に行けるでしょうか?

木の葉ライン

↓ 紙芝居



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