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焼山沢左岸尾根・焼山北尾根

焼山の手前に桃ノ木沢ノ頭

焼山沢(左)と桃ノ木沢ノ頭(中央手前)

ここで言う焼山沢左岸尾根は、北丹沢の焼山沢の左岸尾根です。桃ノ木沢ノ頭を頂点とします。

バス停 神奈中バス: 橋本駅 → 鳥屋 登山口
バス停 神奈中バス: 三ケ木 ← 青野原診療所前 登山口
バス停 神奈中バス: 橋本駅 ← 三ケ木(乗り換え)

地図 地理院地図: 桃ノ木沢ノ頭 , ヤマレコルート図

天気 焼山の天気: 相模原市 , 袖平山 , 鳥居原 , 青野原

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コース & タイム 鉄道駅 橋本駅 バス停 6:55 == 7:43 鳥屋バス停 7:44 --- 8:19 奥野隧道 8:20 --- 8:34 林道崩落地点 8:36 --- 8:40 水沢橋車両ゲート 8:46 --- 9:05 焼山沢左岸尾根取り付き 9:06 --- 10:29 大岩 10:32 --- 10:40 狭い岩稜 10:42 --- 10:48 桃ノ木沢ノ頭 11:09--- 11:34 焼山東尾根取り付き 11:34 --- 12:28 焼山 12:55 --- 13:17 大きな松の木 13:17 --- 13:40 770m 荒井沢右岸尾根分岐 13:40 --- 14:42 西野々・伏馬田入口分岐 14:42 --- 14:50 402m 三つの石祠 14:51 --- 15:08 伏馬田入口バス停 15:08 --- 15:13 西野々バス停 15:13 --- 15:45 青野原診療所前バス停 バス停 16:25 == 16:43 三ケ木 バス停 16:50 == 17:42 橋本駅 鉄道駅
※歩行時間には小休止と道草と撮影の時間が含まれています。
桃ノ木沢ノ頭 もものきさわのあたま:標高 推定773m 単独 2019.11.20 全 8時間 1分 満足度:❀❀❀ ホネオレ度:❢❢❢

11月20日(水)、快晴。今季紅葉狩りハイク第2弾は、1年前に登った焼山沢右岸尾根のとなりの左岸尾根を登り、美しい紅葉の記憶の残る焼山北尾根を下るプランです。結果として、林道と山道の偵察山行のようになりましたが、紅葉・黄葉は、たっぷりと楽しめました。ただ、焼山東尾根の標高差200mに及ぶ急登で、ホネオレ度 が一つ増えました。

林道奥野線は全面通行止め

丹沢主脈の最北部に、東海自然歩道と重なる、なだらかな稜線。その一部、焼山と黍殻山を結ぶ稜線区間の南東面には、幾筋もの美尾根が並んでいます。4年前にガタクリ峰を歩いて以来、その美尾根を毎年1本ずつ登って来ましたが、今回いよいよ最後の尾根になりました。その旗頭は、桃ノ木沢ノ頭。焼山沢左岸尾根、あるいは桃ノ木沢右岸尾根とも呼べるでしょう。地形図で見ると、この山域としては、やや可愛らしい感じを受けますが、果たしてどうでしょうか?

橋本駅北口から神奈中バス、鳥居原ふれあいの館(いえ)行きに乗り、一日乗車券(1,050円)を購入します。しばらくバスの旅を楽しみ、終点の一つ手前の鳥屋(とや)で下車。ここで左折するバスを見送り、串川沿いの道を上流方向に歩きます。行く手の高みには、焼山を右端に、今は思い出深くなった稜線を、雲一つない青空にくっきりと望めました。奥野隧道を抜けると、美しい紅葉の公園です。眼前にド~ンと本間ノ頭の前衛峰。カメラを向けずにいられません。

公園のきれいなトイレで用を済ませ、水沢橋に向かいます。左手には紅葉の松茸山。右手の法面には、ホタルブクロがまだ咲いていました。ところが、その先に、「路肩欠壊・通行止」の標識が立っていました。路肩が崩れただけなら、歩くことはできるだろうと思ってそのまま進んで行くと、道が全幅崩壊し、「全面通行止」! 直ぐ右手に迂回路がありますが、進入禁止のロープが張られています。車両が入れば、この迂回路も崩れそう。ここは静かに歩かせてもらいました。

桃ノ木林道も一部決壊

水沢橋の車両ゲートに到着しました。もちろん、駐車車両はありません。ここでリュックを下ろして、準備運動をしました。ここから右手の林道伊勢沢線に進みます。ゲートのわきを通り抜けるとき、毎度のことながら、マイナールートに足を踏み入れることの覚悟で多少なりとも身が引き締まります。そして、ゲートの直ぐ先でも林道が大きく欠落しているのを見て、台風19号の及ぼした被害の凄まじさを実感しました。この先、何が待ち受けているでしょうか?

桃ノ木林道に入ると、路肩の崩壊に加え、大小の岩石が路上にゴロゴロ積もっていました。足元だけでなく、頭上からの落石にも要注意です。ヘルメットを持って来ればよかった、と思いました。その一方で、倉沢は小さな淵に青い水を湛え、とてもきれいです。日差しを浴びて輝く紅葉・黄葉と、道に敷き詰められた落ち葉。山は荒れる日もありますが、穏やかな日は優しく人を受け入れ、喜びを与えてくれます。う~ん、のどかだなあ、きょうという日は。

焼山沢に架かる小橋を渡ると、そこが焼山沢左岸尾根の末端。神奈川県の工事に関する掲示板があります。さっそく尾根に取り付き、壊れた鹿扉を通り抜け、急登が始まりました。体のウォーミングアップはできているので、バランスを崩さないようにだけ注意しながら登って行きます。尾根上の鹿柵の右側を登って行きましたが、この急傾斜地に鹿柵を設置した人たちの労力を想えば、私はただ登るだけ、エラいなんて全然言えません。ありがたく登らせていただきます。

プチ難所はあった

きょうは、おそらく私の他に誰もいない山での単独行。安全第一のエコモードで登って行きました。急登なら、その分ゆっくり登れば同じこと。疲れずにしっかり高度を稼げます。振り返って見下ろすと、なかなかの急勾配。山林の作業員は、こんな山でも連日働いているのですから、本当に凄い! 私も鮮やかな黄葉に励まされます。やがて尾根の勾配が緩み、取り付きから30分ほど登った頃、平坦地になりました。明るい針葉樹林を軽快に進みます。立派な樅の木にタッチ。

右手の樹間に、旧柏原登山道の松並木が見え隠れするようになりました。左手にも堂々たる松。すっくと直立し、クリスマスの樅の木のように枝を水平に拡げています。海岸の防風林の、曲がった松もいいですが、この尾根の松は、威厳をもって、松本来の天然性を体現しているように思えました。いつしか尾根が明るくなり、枝の隙間から丹沢三峰や蛭ヶ岳が望めます。真っ赤な紅葉こそありませんが、朱色、黄色の鮮やかさに、しばしば足が止まりました。

狭くなった尾根に大きな倒木がありました。根を張った尾根が痩せてしまったのでしょうか。ここは倒木の根を掴み、左側を慎重に巻きました。プチ難所その1。その先で少しずつ展望が好くなりました。昨年歩いた焼山沢右岸尾根は錦模様。当時はよく見えなかった幕岩も望めます。すると、行く手に大きな岩が立ちはだかりました。正面突破は危なそう。右と左を見て、右側の立ち木の助けを借りて、先ほどの倒木の時よりもさらに慎重に巻きました。プチ難所その2です。

桃ノ木沢ノ頭でくつろぐ

展望はさらに好くなりました。右手には、丸い頭の柏原ノ頭、ボサボサした風巻ノ頭、宮ヶ瀬湖と仏果山と高取山、東京スカイツリーなど。左手には丹沢三峰と呼ばれる四峰と丹沢山など。そして目の前には、より鮮やかになった紅葉と黄葉。これだけならよいのですが、その後に待ち受けていたのは、切れ落ちた岩稜。前道志にある大桑岩稜の短縮版のような趣です。左右は底知れぬ深い谷。立ち止まって、考えました。プチ難所その3です。

谷を見ると怖そうだったので、足もとと前だけを見てヒョイヒョイと渡りました。その先にも狭いプチ岩稜がありましたが、普通に注意しながら登れました。その途上でフキバッタの夫婦に遭遇、何とも微笑ましい姿です。マクロ撮影すると、おんぶされた旦那が笑っているように見えました。岩稜を過ぎ、平坦地になった先で、左右に下る尾根がありました。うっかり桃ノ木沢ノ頭を通り越してしまったのです。少し戻ると、私製の山名標が立ち木に取り付けられていました。

桃ノ木沢ノ頭で、もぐもぐタイムにしました。きょうはリュックが少々重いので、昼食は無し。おやつと熱いお茶でくつろぎます。付近には松の幼木が幾つも見られましたが、他の樹木との競争を勝ち抜いて成長できるでしょうか? もぐもぐを終えると、再び準備運動をしました。この先、焼山の東尾根を登るためには、しっかりと骨格を整えておかねばなりません。桃ノ木沢ノ頭では20分ほど休憩し、今は廃道となった旧登山道を、焼山方向へと下りて行きました。

焼山東尾根で骨折り

旧登山道は、焼山沢右岸尾根の手前に大きな崩落があり、長らく通行止めになっています。ここで転落事故があったという話を聞いたことはありませんが、私がその第1号になるのはマズいので、焼山東尾根を登るつもりで来ました。頃合いを見計らって、その尾根に取り付きます。近年に山林の作業がなされたので、多くの間伐材が水平に置かれ、あたかも土留のようになっていました。これを利用して登り、早く尾根の中心線に立てば、落石を受ける心配も最小化されます。

この東尾根には、もしかしたら作業道があるかな、と淡い期待を持って来たのですが、それはありませんでした。むしろその作業で伐られた大小の枝が地面を覆っていて、歩きにくいのです。勾配のきつさもさることながら、疲れが出てきて、足が重くなりました。きょうは5か月ぶりの本格的な山歩き。筋力の減退を実感します。エコモードをさらに徹底した省エネモードに替え、標高差約200mをじっくりと詰めて行きました。ヤマレコアプリが時刻と標高を伝えてくれます。

ようやく東海自然歩道に至りました。焼山山頂に向かいます。ここできょう初めて人と出会いました。ソロの男性ランナーです。焼山登山口方面への登山道の状況を尋ねられましたが、私は見ていません。「気を付けて」とだけ言って、見送りました。そして、シラカバの広場を抜けて、ようやく焼山に登頂。展望塔には相変らずトラロープが巻かれています。私は足と腰が疲れたので、きょう三度目の体操をしました。下山に備え、少しでも筋力を回復させねばなりません。

焼山北尾根うるわし

山頂で十分に休息しました。あとは下るだけですが、最後まで気を抜かないよう、自分に言い聞かせます。下山路は、一年前に歩いて、その歩きやすさと紅葉の素晴らしさが記憶に残る、焼山北尾根。下り始めこそ急峻ですが、きょうのルートは最初から急峻な尾根だらけ。この北尾根ですが、山頂直下を慎重に下れば、すぐになだらかになります。となりの尾根は東海自然歩道ですが、荒廃し、大小の岩石が露出した歩きにくい道。しかも現在は通行止めです。

北尾根を下って行くと、一年前に初めて歩いた時の記憶が、次々と目の前に現実となって現れました。優しさも、美しさもそのままです。気がかりなのは、そのうち北尾根が丹沢主脈縦走路のバイパスとして知られ、多くの人々が歩くようになり、その結果、荒れるのではないかということ。それを防ぐためにも、早く東海自然歩道が復旧することを願います。ただその復旧工事も、崩壊箇所がしっかり落ち着くまでは、始めることができないかも知れません。

北尾根の末端で、西野々に下りるか、伏馬田入口に下りるか、選べます。私は昨年歩いて、とても楽チンだった後者を、今回も選びました。3基の石祠のある地点から、幅広のジグザグ参道を歩き、人里に下ります。バス停に行くと、あれあれ?「台風19号の影響による運休のお知らせ」が貼ってありました。それでは三ケ木か鳥屋郵便局まで歩こうか、と歩き始めたのですが、西野々バス停まで来たとき、青野原診療所前まではバスが来ることに気付きました。

青野原診療所前にて

青野原診療所前バス停付近には、お店、自販機、休憩所、トイレなど、何もありません。歩道のコンクリートの縁に腰を下ろし、まだ温かいお茶を飲んでいると、地元の下校生徒が次々と通りかかり、「こんにちは」の連発となりました。山で人と出遭わなかった分、ここでまとめて人間とのふれあいを果たすことになったようです。生徒たちが一通り過ぎ去ると、寒くなりました。山では一度も寒いと感じなかったのに、ここでバスを待っていると寒いこと。でも幸せでした。

木の葉ライン

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