山はいいなあ  >  丹沢・道志  >  ガタクリ峰

ガタクリ峰・焼山

不動ノ峰、白馬尾根、蛭ヶ岳、榛ノ木丸

林道奥野線より、丹沢主脈の稜線と榛ノ木丸を望む。

早戸川北岸の尾根に、ちょっとデコボコした三峰があります。ガタクリ峰と呼ばれるのは、最高峰の中峰(860m+)、または標高の記された西峰(860m)のようです。本記事では、この尾根を仮に「ガタクリ尾根」と記すことにします。

焼山は、丹沢主脈最北端の峰です。頂上に展望台とシラカバ林があります。

バス停 神奈中バス: 橋本駅 → 鳥屋 登山口
バス停 神奈中バス: 三ケ木 ← 焼山登山口 登山口
バス停 神奈中バス: 橋本駅 ← 三ケ木

地図 地理院地図: ガタクリ中峰 , 焼山

天気 ガタクリ峰の天気: 相模原市 , 袖平山 , 鳥居原 , 青野原

関連記事 レポ: 伊勢沢左岸尾根 , 焼小屋沢左岸尾根 , 焼山沢右岸尾根・焼山北尾根


コース & タイム 鉄道駅 橋本駅 バス停 6:55 == 7:39 鳥屋バス停 7:47 --- 8:03 コッコパーク 8:03 --- 8:18 奥野隧道 8:19 --- 8:36 水沢橋車両ゲート 8:36 --- 9:02 松茸山自然の森公園奥野口 9:02 --- 9:18 展望地 9:34 --- 9:49 取り付き 9:49 --- 9:55 稜線鞍部 10:00 --- 10:42 813m峰 10:44 --- 11:04 865m峰 11:18 --- 11:38 860m峰 11:39 --- 12:30 1101m峰 12:36 --- 13:03 東海自然歩道出合 13:05 --- 13:21 平丸分岐 13:22 --- 13:52 焼山 14:13 --- 16:14 焼山登山口バス停 バス停 16:23 == 16:43 三ケ木 バス停 16:50 == 17:30 橋本駅 鉄道駅
※歩行時間には道草と写真撮影の時間が含まれています。
ガタクリ峰、焼山 がたくりみね:中峰標高推定 865m、西峰 860m、やけやま:標高 1056.6m 単独
2015.12.18 全 8時間27分
 満足度:❀❀❀ ホネオレ度:❢❢

山と高原地図「丹沢」(2015年版)を見ると、林道奥野線に「南側の展望よい」と書かれています。南側といえば、丹沢三峰と栂立尾根ですが、どんな風に見えるのでしょうか。他にも、マニアックな響きのするヌタノ丸、地図に888m地点が記載された名称不詳の尾根なども至近距離。これはぜひ行って「見たい!」と思っていました。行くなら空気が澄み、ヤマビルが影をひそめる季節、今からです。

段落見出し 鳥屋バス停から出発

橋本駅北口から乗った、鳥居原ふれあいの館行きのバスは、下稲生でほとんどの乗客が下りました。私は終点の一つ手前、鳥屋(とや)で下車。バスは最後の一人を乗せて走り去りました。ここに来るのは初めてなので、辺りを少し散策します。萱葺き屋根の立派な門を構えた家、明け方の冷え込みがつくった白い霜、水面の光る串川に浮かぶカルガモ。バス停近くの三叉路には白い杭が立ち、「ここは道場 標高二九一米」と書かれています。

まず目指す「松茸山自然の森公園」へは、三叉路を右(西)に進みます。串川沿いの道を歩いて行くと、昔懐かし昭和レトロの風情を保つ、家屋や納屋などが見られました。雄鶏が時をつくる声が響いてくると、「宮ヶ瀬たまごひろい公園 コッコパーク」です。さらに焼山登山口(柏原ノ頭経由)を右に見ると、すぐに奥野隧道でした。トンネルは全長50m、出口の先に松茸山自然の森公園の大きな看板が見えます。

トンネルを出ると、パッと松茸山が現れました。せっかくの機会なので登ってみたい衝動が起こりましたが、きょうの予定は情報の少ない未知のルート。時間とエネルギーをできるだけ保存する方が大切です。私の山歩きの特徴である“道草三昧”も慎まねばなりません。案内板に示された「奥野林道」を歩いて、最短時間で「公園奥野口」に向かいました。

段落見出し 「南側の展望よい」のはどこだ?

水沢橋のゲート前にバイクが1台置かれていました。ここまで車で来て、周回ルートを歩くように計画することもできそうです。一般車両が通れないゲートが二つあり、右は「林道伊勢沢線」、左が私の行く「林道奥野線」です。ゲートを越えると、標高がぐんぐんと上昇して行きました。右手(北面)に焼山と丹沢主脈最北部の稜線が、とても高く見えます。帰りはあそこから下りるのかと思うと、これから行く道がとても遠く思えてきました。

「公園奥野口」にも大きな案内板と駐車スペースがありましたが、一般車はここまで入って来れません。そこからわずか3分歩くと、ガタクリ尾根の末端が林道に接続していました。ここからガタクリ尾根に取り付いて、黍殻山まで歩き通せば充実感が得られそうです。でもこの尾根の東部はヤブが多く、展望が乏しいらしいので、きょうの目的には適いません。「南側の展望よい」場所を求めて林道を歩き続けました。

「公園奥野口」から10分ほど歩いた頃、南面に本間の頭が見えました。その北尾根の大部分を隠している、辺室山に似た山容を持つのがヌタノ丸でしょう。その1本左の尾根に888m地点があるはずですが、どこなのか私には分かりません。そしてさらに5分ほど行くと、南面の樹木が切れ、蛭ヶ岳を中心に、不動ノ峰から姫次付近までを荘厳に望めました。そして特筆したいのが、榛ノ木丸の雄姿。主脈から少し離れ、独自の山体を持って、どっしりと座っています。

段落見出し ガタクリ尾根へ

「南側の展望」を十分に楽しんだので、林道歩きはここまでとし、ガタクリ尾根への取り付き口を探します。右手の擁壁は所々で切れているので、どこからでも尾根に取り付くことができるかもしれません。私は尾根の鞍部に林道が最接近する地点まで歩き、斜面に取り付きました。踏み跡はあるような、ないような感じでしたが、5~6分で容易に尾根の鞍部に立てました。念のため、「よいこのみなさんは、林道を歩いてください」と書いておきましょう。

尾根の鞍部で準備運動をしました。暗い杉林ですが、首の運動をした時、真っ青な空が見えました。これより、813m峰を目指します。杉林の地面には、杉の葉がたくさん積もって、踏み跡は全く判りません。初めのうちは尾根の真ん中を無理なく登って行けましたが、次第に傾斜がきつくなり、何かを掴まないと体を安全に引き上げられないようになりました。幸いロープ代わりの強靭なトウヅル(山藤の蔓)がたくさんあり、大いに助かりました。

スズタケが目の高さに向かってきます。ゴーグルは用意していません。途中にある小さな露岩と大きな露岩は、いずれも右側を巻きます。そしてこの大きな露岩を巻き終えると、ようやく一息つけました。露岩の向こう(東方)に仏果山とその山なみを望めます。西に少し進むと、うれしいことに明るい幅広の尾根になりました。とても気持ち良く歩けます。露岩の下は地獄、上は楽園、でも下りでなく、登りでよかった、と思いました。

段落見出し ガタクリ峰へ

気持ちの良い尾根を10分ほど登った頃、813m峰に到着しました。標識類はありません。展望もよいとは言えませんが、行く手の865m峰がよく見えました。山頂からほぼ真西に向かって下ります。これまでとは打って変わったヤセ尾根になりました。ヤセ尾根と言っても木々がたくさんあります。もし木々がなくなれば、土も失われ、険しい露岩の尾根になってゆくでしょう。ヤセ尾根に大きな木が堂々またがっていられるのは、歩く人が少ないからだと思います。

813m峰からゆっくり20分ほどで、865m峰に着きました。ここにも標識類はありません。11時を少し回り、明るく小広い山頂は、ぽかぽか日差しがいっぱい。気持ち良さそうな落ち葉の座布団に座って、昼食にしました。まず温かいミルクティーを飲みます。来る途中できれいなヤマドリを見ましたが、なぜか小鳥たちの声も、獣の声も聞こえません。ところで、ここがガタクリ峰でしょうか?

食べ終わるとすぐに、次の860m峰を目指しました。でも立ち木があって、すぐ近くにあるはずの860m峰が見えません。適当に西に向かって下って行くと、左の尾根の先に860m峰が見えてきました。道間違いです。来た道を登り返すと、大きな倒木のある側に、赤テープがありました。地図を見ると、確かにここで尾根が分かれていて、南側が正しい尾根です。このヤセ尾根には、根こそぎ倒れていながらも、多くの葉を茂らせている逞しい木がありました。

段落見出し 1101m峰へ

865m峰から道間違いと倒木観察の時間を含め、約20分で860m峰に着きました。先の865m峰と似たような山頂です。「860mガタクリ峰」と書かれた山名標が、立ち木に括り付けてありました。手作りの味わいある名標ですが、私製標識によく見られるように、針金を生きた木の幹に固く巻きつけてあるのが、気にかかります。ときどきやって来て針金を緩めてやるか、スプリングタイプに変えるか、別途支柱を立てるとかすれば、長く愛される名標になるでしょう。

860m峰から、1101m峰を目指します。また西に下って行くと、地面の霜柱が目立ってきました。鞍部を越え、幅広の明るい尾根を登って行きます。左手に丹沢三峰がくっきりと見えてきました。ここから望むと、東から二番目の峰、無名ノ頭が意外と大きな存在感を持っています。かつて地図に「中峰(円山木ノ頭)」という名が冠せられていた峰です。あの榛ノ木丸の山頂(1310m+)も見え始めました。頂の北東面にガレ場のあるのは、榛ノ木丸1292m峰です。

1101m峰への登りは、歩きやすいのですが、長くてなかなか骨が折れました。下りなら気分よく飛ばせるかもしれません。12時半、ようやく1101m峰に到着しました。神奈川県のマークの入った石柱があります。北面は、敷き詰められた落ち葉に、白い雪がまぶされたように残っていました。ここでお茶休憩にします。毎度のことながら、魔法瓶とはありがたいものです。火がなくても熱々の紅茶が飲めるのだから。

段落見出し 東海自然歩道スタコラ

1101m峰を西に少し下ると、いよいよ最後の登りに差しかかります。ありがたいことに、はっきりした道が現れました。しかも足にやさしいジグザグ道です。これを楽々登って、最終ピーク(1250m+)の東尾根に立ちました。東海自然歩道まであと少しです。ここで、意外にも階段が出てきました。歓迎されたような気分で登ります。道は緩やかに右に転じ、明るい檜林の中に、小雪の積もった道が黍殻山に向かっていました。かつて逆方向から見たことのある、懐かしい風景です。

13時3分、目印のアカマツが見え、壊れた鹿柵とゲートをくぐって、東海自然歩道に飛び出しました。待ちに待った瞬間!嬉しさを伝えたくて、アカマツにハイタッチします。ここまで、誰にも出会いませんでした。ここからは、よく整備された道を焼山まで歩きます。日の当たる道に落ちたカラマツの葉は、暖かそうな紅殻色。白い霜柱と小雪の残る日陰の地面は、青みがかった寒い色。道は下り基調の中に緩い起伏があり、軽快な稜線散歩の時間となりました。

平丸分岐、鳥屋分岐と、順調に通過し、焼山山頂にやって来ました。さっそく展望台に上ります。探さなくても目に入る、宮ヶ瀬湖、蛭ヶ岳、ほか東丹沢の山々。探して見つけた、横浜ランドマークタワー、東京スカイツリー、房総の富山(とみさん)。きょう歩いて来たガタクリ尾根は、丹沢三峰の手前にありました。午後の光を受けて、ヌタノ丸、宮ヶ瀬尾根、ゴジラの背尾根などの陰影も明瞭。肉眼には見えていた日光男体山は、影が淡すぎて写真に写りませんでした。

段落見出し ゆっくり下山

日の当たる白樺林でのんびりお茶を飲もうと思って来たのですが、残念、寒風が吹き付けていました。バスの時刻まで2時間少々もあるので、ゆっくり歩くことにします。楽しみは、中腹部から得られる奥多摩や笹尾根の展望。小石の積まれた露岩を過ぎたあたりで、きれいに見えました。前景に、赤い坊主頭の石砂山があります。以後も、時計を見ながらゆっくりと歩き、バスの来る10分前に、焼山登山口にゴールインしました。

木の葉ライン

↓ 紙芝居



©2015 Oda Family  All Rights Reserved.