JR藤野駅の南方、気軽に歩いて行ける距離に、金剛山と名の付く低山が三座あります。日連(ひづれ)金剛山、名倉(なぐら)金剛山、鶴島(つるしま)金剛山です。これらに「藤野園芸ランド遊歩道」を絡めると、様々なハイキングプランができそうです。
地理院地図: 鶴島金剛山 , ヤマレコルート図
金剛山の天気: 石老山 , 藤野駅
レポ: 峰と甲州古道 (日連金剛山)
道標の番号: 藤野・なぐら地区てくてくまっぷ
11月15日(土)、終日快晴で穏やかな小春日和。名倉金剛山と鶴島金剛山を、ミクロ縦走してきました。はじめ、日連金剛山も含めて、「金剛山トリオ散策」を考えていたのですが、藤野駅の観光案内所の方から奨められた、より楽しそうなコースに計画を変更。「藤野・なぐら地区てくてくまっぷ」を片手に、紅葉と展望を期待しつつ歩き始めました。
山歩きは、入笠山に行った6月25日以来、約5ヶ月ぶり。この間に筋力がすっかり落ちてしまいました。もとより寄る年波には敵いませんが、80歳でエベレスト登頂を果たした三浦雄一郎さんに倣って、再び筋力アップを図るしかありません。そこで考えたのが、名前の良い不老山に登ること。甲東不老山なら、現在の体力でも無理なく登れそうです。ところが痛恨の朝寝坊! 仕方なく、こんな時のために残しておいた、藤野の金剛山トリオ散策に計画を変更しました。
遅い出発となり、藤野駅に到着したのは10時15分。でも驚くほど大勢のハイカーがホームに下り立ちました。その大多数は陣馬山に向かうのでしょう。私は名倉地区の絵地図をもらうために観光案内所に行きました。係の男性が「これです」と「藤野・なぐら地区てくてくまっぷ」を開いて、おすすめのコースを説明してくれました。私は金剛山トリオを一筆書きで歩きたかったのですが、通行止めの区間があって、それは難しそう。金剛山デュオに計画を変えました。
駅舎を出て、国道20号を右に進みます。車に注意して国道を横断しましょう。ここで早くも素晴らしい眺望を目にし、心が躍ります。眼下に桂川、その対岸にラブレターと京塚山、背後にはお馴染みの山々が勢ぞろい。右手に見える白いアーチ橋が、弁天橋です。快晴の青空、深緑色の桂川、色づき始めた山の木々を眺め、きょうは来てよかった!と思いました。たっぷりと睡眠をとって来たので、体調は万全。久々にトレッキングシューズを履いた足も喜んでいるようです。
私見ですが、弁天橋は、名倉地区屈指の展望地です。桂川下流方向を眺め、上流方向を眺め、深まった秋の山水苑を楽しみました。中でもお気に入りは、上流方向にスッキリそびえ立つ権現山で、ここから望むその山容は一幅の絵。橋は川面からかなり高度感があるのですが、釣り糸を垂らしている人々もいました。受けた案内に従い、橋を渡って左折し、「緑のラブレター」を目指します。標識の[A21]から[A25]までを順次辿り、難なくラブレターの上方に立ちました。
さて、この視点から見下ろしても、白い封筒と黒い指がよく分かりません。赤いハートだけが、何とか認識できました。ある意味、「がっかり名所」と言えるかも知れませんが、それを補うかのように、「愛の鐘」がありました。私はそれを軽く打ち、響きが物足りなかったので、もっと強く打ち、それでも音色があまり心に響かなかったので、三度目に力を込めて打ったら、ようやく素敵な音がしました。なるほど、だから「愛の鐘」ですか。自分流に、ちょっと納得です。
次は、[A26]と[A20]を経て京塚山へ行きました。その山頂直前で見た真っ赤なモミジが、この日、一番きれいな紅葉だったと思います。山頂からわずかに南へ下がったところに展望地があり、お馴染み北丹沢の稜線と、石砂山の双耳峰を望めました。この風景はその後、少しずつ視点を変えながら、数か所の見晴らし台や山頂から眺めることになります。そして展望の利かない場所を歩くときは、紅葉狩りが楽しめるのですが、山野草の花はあまり見られませんでした。
一本松山の山頂では、熟年男性たちのグループが饗宴の真っ最中だったので、「こんにちは」だけ言って通過しました。[A06]で「芸術の道」と言う車道に入ります。路線バスも走るこの道をてくてく歩いて、「包丁岩」のビューポイントから、北面の山々を眺めました。御前山群~扇山~権現山稜~三頭山~笹尾根のパノラマがくっきりとして、なかなかの好展望です。この風景もまた、その後少しずつ高度や光線を変えつつ、何度も眺めることになります。
先ほどから感じていた、何やら賑やかな雰囲気は、シュタイナー学園の校庭で開催中の「藤野まるまるマルシェ」からでした。覗いてみると、そこは農産物やグルメの出店、リサイクル衣料、草木染め、子供の遊び場など、楽しい秋の縁日。美味しい匂いが私のすきっ腹に沁み込んできます。散財しないうちに、会場を出ました。昼食は、どこか見晴らしの好い場所で取ることにしています。引き続きてくてく、芸術作品を見て、てくてく、「山の目」を見て、てくてく .....
葛原(とずらはら)で芸術の道と別れ、高倉山を目指して右手の車道に進みます。左手に桂林寺の屋根が見えてきました。平地ながら展望が利き、小金沢連嶺から奥高尾山稜までを広大に一望できます。その先、[B07]から高倉山に登るつもりでしたが、水道施設の門が、その道を閉ざしていました。古びた道標だけが空しく佇んでいます。高倉山へは、天神峠[B06]から往復するしかありません。もちろん、秋山川橋付近の通行止め措置を尊重する限りにおいて、ですが。
高倉見晴しには送電鉄塔が立っていましたが、展望が利かないので通過。鞍部[A08]に下って、登り返すと「山の目」の上に立ちました。でも ... 「緑のラブレター」と同様、離れたところから眺めるべきものです。やはりな、と思いながら高倉山頂に行き、遅い昼食を取りました。三等三角点があります。展望は苦しいので、きれいな黄葉を眺めながら、おにぎりをパクつきました。高倉山には悪いですが、来なくてもよかったかな? 熱いお茶が、のどを心地よく流れ下ります。
天神峠に戻りました。ここからがきょうの本番。金剛山出入口[B05]から、階段道を登ります。すると、木々の黄葉が西日を受け、黄金色の光彩を放っていました。この光彩の山道はその後もずっと続き、見晴し台~名倉金剛山~柏の木のある小峰~鶴島金剛山へと至ります。そしてその各所で、すばらしい眺望が得られました。しかもアップダウンは軽く、遊歩道なみの楽チンルートです。名倉金剛山頂では、山野草の花を、きょう初めて撮影できました。
それぞれの金剛山には、独特の歴史や信仰や文化的価値があるはずです。ただ、展望という一点に絞って比較すると、鶴島金剛山がピカイチです。南面の丹沢もいいのですが、北面に景観伐採がされたのでしょうか、視野を妨げるものが一切ない、一大パノラマは息をのむばかり。名倉金剛山から容易に到れるので、ついでに立ち寄るだけで、大いに報われるに違いありません。他方、しっかり山登りをしたい人は、湖南団地から登れば、登頂時の達成感もひとしおでしょう。
鶴島金剛山の眺望を十分に楽しみました。山頂を辞し、その北尾根を湖南団地に下ります。勾配は急峻ですが、お助けのトラロープが延々と続いていたので、ありがたく使わせてもらいました。慎重に下りながらも、西日に輝く黄葉を愛でながら、山にいる時間を愉しみ尽くします。道が平坦になると、通せんぼの枝があり、右の斜面に登山路が続いていました。ほどなく鶴島古峯神社。侘しそうに立っています。その参道をトコトコ下って、舗装路に下り立ちました。
さて、目の前に十字路。湖南団地入口バス停へは左の広い道ですが、地図を見ると、正面の狭い車道を下って行っても、上野原駅まで道が続いているように見えます。しかもちょっと楽しそう。ここで愚かにも、正面の道に進んでしまいました。すると5分も行かないうちに、「この先通行止め」と書かれていました。近くの住人の方からも、「この先、道が険悪になって、きっと戻って来ることになりますよ」とのこと。即引き返し、湖南団地入口バス停に行きました。
さて、バス停から上野原駅まで、県道35号をテクテク歩きます。狭い上に歩道がないので、カーブから突然現れる車で何度か怖い思いをしました。バスの時刻表を調べておけば、あの間違った道には入らず、15時25分のバスに乗って帰ったことでしょう。逆コースなら、朝のバスを利用することもできます。県道が山間部を抜けて、田園地帯に入ると、ようやく安心できました。最後に、桂川橋から眺めた夕暮れの風景が、歩いたことへのご褒美になったかな、と思います。
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