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檜岳・伊勢沢ノ頭・シダンゴ山 漫遊記

伊勢沢ノ頭から望む富士山と丹沢湖

伊勢沢ノ頭から望む、富士山と丹沢湖

雨山から檜岳を経て伊勢沢ノ頭へと続く檜岳山稜は、穏やかな起伏と好展望で知られます。しかし現在、寄沢から雨山峠に通じる登山道は利用できません。

檜岳山稜へのアクセスには、寄大橋から林道秦野峠線を経て、檜岳もしくは伊勢沢ノ頭に至る作業径路がよく利用されています。

バス停 富士急湘南バス:新松田駅 ⇔ 寄 登山口

地図 地理院地図: 檜岳 , 伊勢沢ノ頭 , ルート図

天気 檜岳の天気: 松田町 , 檜岳

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コース & タイム 鉄道駅 新松田駅 バス停 7:20 == 7:45 寄 7:59 --- 8:35 寄大橋 8:36 --- 8:38 周遊歩道A取りつき 8:39 --- 9:39 753m峰直下の鞍部 9:39 --- 10:43 檜岳(大休止) 11:08 --- 11:48 伊勢沢ノ頭 12:13 --- 12:42 展望の草原(中休止) 12:58 --- 13:25 秦野峠 13:25 --- 13:58 林道秦野峠 13:59 --- 14:46 シダンゴ山(大休止) 15:23 --- 16:39 寄バス停 バス停 16:55 == 17:20 新松田駅 鉄道駅
※歩行時間は道草と写真撮影の時間を含みます。
檜岳、伊勢沢ノ頭、シダンゴ山 ひのきだっか:標高 1166.6m、いせざわのあたま:標高 1177m、しだんごやま:標高 757.9m 単独 2024.1.26 全 8時間40分 満足度:❀❀❀❀ ホネオレ度:❢❢

2024年1月26日(金)、檜岳山稜とシダンゴ山を歩いてきました。終日快晴、空気が澄んで富士山がきれいに見える日を選び、丸一日、美しい山での時間をたっぷり楽しむというプランです。大休止2回半、道草し放題。好展望地では好きなだけ足を止めて、山座同定と鑑賞と休息を楽しみました。

段落見出し新松田駅からバスで寄へ

小田急電車が秦野、渋沢を過ぎ、新松田に近づいていくとき、車窓の富士山を追いかけます。とても美しく、とても大きい富士山。どうしてこんなに大きく見えるのでしょうか? きょうは早朝から完璧な快晴。単独行なので顔には出しませんが、心は大きく弾んでいます。電車は時刻表通りに新松田に停車。きょうは時間にゆとりを持ってきたので、急ぐこともなくバス乗り場に行きます。案内係(?)のおじさんに頼んで往復切符を買いました。約1割引きになります。

乗った寄(やどりき)行きのバスは、やや小ぶりでしたが、乗客全員が座席に着けました。左の窓際の席は、途中の深い谷を見下ろせる道を走るとき、スリルを少々味わえるようです。でも今回は、右の窓際に座って、のんびりと行きました。25分ほどで終点の寄に到着。バスを降りて準備運動をしていると、乗ってきたハイカーの皆さん、あっという間にどこかに行ってしまいました。ロウバイ園に行ったのでしょうか? 今は「ロウバイまつり」の真っ最中です。

ロウバイの明朗でかわいい花と、透き通るような香りは、そこに春が近づいているような、不思議なよろこびを醸します。私は、特に咲き始めの、ほのかに漂う上品な香りが好きです。けれども、強くなったロウバイの香りは、強すぎる香水のように苦手。いずこのロウバイ園にも入ったことはありません。私の嗅覚が敏感過ぎるのでしょうか? 準備運動が終わる前にバスが去って、独りバス停に残されました。登山届用紙を1枚もらってサラサラと記入し、ポストに入れました。

段落見出し寄から寄大橋へ

中津川沿いの真っ直ぐな舗装道路を、上流方向に歩きます。行く手に檜岳山稜を望める、すてきな道です。でも、この直線道路を高速道路のように突っ走る車があるので、要注意。はじめ雨山とその平坦な稜線が見え、次いで檜岳が見えてきました。さらに伊勢沢ノ頭まで見えるかな、と思いましたが、その「頭」は確認できませんでした。道は途中から秦野峠林道に移行します。その付近に公衆電話ボックスがありました。携帯が使えない場合に備えてあるのかも知れません。

寄大橋の入口に来ました。雨山峠を指す道標に注意書きがあり、「寄~雨山峠~ユーシン区間は令和3年大雨被災の為、当面の間通行できません」とあります。その「通行できません」の文字が大きく、太く、赤い字になっています。雨山峠に関して、何も新しいニュースはありません。きょうはその道を歩く代わりに、檜岳への近道でもある作業径路を歩くつもりで来ました。赤い寄大橋を渡って中津川を越えます。

寄大橋を渡ると、直ぐに車両ゲートがあります。閉鎖・施錠され、「玄倉方面、路肩崩落により、通り抜けできません」と大きく書かれた看板が取り付けられています。ゲート前に駐車することは禁じられていますが、少し離れたところに3台の車が停めてありました。登山者の車だとしたら、どの山に行ったのでしょうか? 私はゲートのわきを通り抜けて進みます。作業径路に取り付くための遊歩道を探していくと、ゲートのすぐ先に「周遊歩道A」の入口がありました。

段落見出し遊歩道と作業径路と

「周遊歩道A」に入りました。とてもよく整備されているようです。登っていくと「『やどりき水源林』周遊歩道案内図」が立っていました。図を見ると、アップダウンのほとんど無さそうなコースなので、いつか足腰が弱り、山歩きが難しくなったとしても、楽しく歩けそうです。この遊歩道を20分ほど歩いた分岐点に道標があり、「この先作業用径路、迷いやすく危険です」と書かれた腕木が下に落ちていました。ここで遊歩道と別れます。よくある普通の山道になりました。

一般に、現役の作業用径路は、歩きやすいものです。森林の作業員が、チェーンソー、燃料、ほか諸機材を、安全に担ぎ上げられるようにできているのでしょう。山頂に至るまで、多少なりとも厄介な個所は、全くありませんでした。山の空気、土の感触を楽しみ、自然の中に包まれる喜びを味わいながら登っていきます。日向にはミツマタの可愛らしい花が1~2輪、慎まし気に咲き始めていました。また日の当たらない場所には霜柱が立っていました。

「周遊歩道A」の入口から約1時間で、753m峰直下の鞍部に至りました。檜岳山頂への行程の、ほぼ中間点で、ヤマレコでは「中沢橋分岐」となっています。この先は、等高線の詰まった尾根筋をひたすら登るのですが、作業径路はありがたいジグザグ道でした。尾根の傾斜が30度ほどもあるようなところでも、道の勾配は緩やかで、靴が地面をしっかりと掴んでくれます。やがて尾根の傾斜が40度近くになりましたが、ジグザグ道の歩きやすさは変わりませんでした。

段落見出し檜岳

稜線に近づくと、針葉樹林帯を抜け、明るい落葉樹林の美尾根に変貌しました。左手に、箱根~天城~利島~伊豆大島などが望めます。光る酒匂川が光る相模湾へと流れ着いています。その手前に松田山、そのまた手前はシダンゴ山。それぞれ、山頂のハゲで見分けられます。まだ富士山は見えませんが、足がすっかり軽くなりました。ほどなくして稜線が見えてくると、道が右手の檜岳方向に引き寄せられ、縦走路に合わさりました。極上の縦走路です。

檜岳山頂の手前で、二人の女性と、山頂で単独の男性と出会いました。山中で出会ったのはこの3人だけです。今朝は朝食をとる時間がなかったこともあって、山頂に着く前から腹がペコペコでした。でも私は、団子より花派。まず、同角山稜と檜洞丸を撮影。次いで銀嶺を連ねる八ヶ岳、眼前に大きく聳える蛭ヶ岳。そして黒い杉林の切れ目に真っ白な姿を見せる巨大な富士山。どうしてこんなに大きいのでしょうか? その理由を知っていても、素直に感動してしまいます。

感動をカメラに収めると、山頂の最高地点に行き、昼食にしました。そこは、江の島、三浦半島、房総半島などを望める特等席。昼食は私の冬の定番で甘い菓子パン、そして初めての試みでホットカルピス。みかん味です。魔法瓶を傾け、熱々、フーフー。なかなかいけます。昼食後、山頂に立つヒノキを鑑別しました。檜岳ですから、サワラではいけません。葉の裏をよく見て、ヒノキであることを確認。最後に、山頂標柱の上にデジカメを置き、自撮りをしました。

段落見出し伊勢沢ノ頭へ

伊勢沢ノ頭に向かいます。美尾根ルンルンの、平坦な縦走路です。見通しが良く、行く手に伊勢沢ノ頭、その左遠方に金時山、神山、天城山地などをよく望めます。さらに少し進むと、伊勢沢ノ頭の右肩に富士山が見えてきました。この富士山を大パノラマで見ることが、きょうのねらいの一つです。この美尾根でルリビタキ♂が姿を見せました。この日、山で見た唯一の野生動物です。動き回るので、きれいには撮れませんでしたが、可愛い姿を見れただけで満足でした。

伊勢沢ノ頭に近づくと、右手に小金沢連嶺を望めました。ハマイバ丸から大菩薩嶺まで、冠雪はほとんど無さそうです。そして伊勢沢の頭に到着すると、南アルプスの聖岳~荒川岳、塩見岳~農鳥岳を遠望できました。こちらは、美しい銀嶺です。間ノ岳と北岳は、手前の山々の上に頭だけを見せていました。そして富士山はここでも巨大な姿です。ただ、私がきょう見たいのは、青い丹沢湖を前に置き、うねる西丹沢の山並みを従え、大空間に美しく鎮座する富士山です。

山頂付近は、樹木の枝が繁っていて、スッキリした眺望はありません。そこで地図を見て、山神峠方向に尾根を下りてみました。落差にして30数m、錆びたモノレールの終点の先まで行ってみましたが、あきらめて山頂に戻りました。3日後、ヤマレコユーザーの old-diver さんが「あと20-30m下れば、わずらわしい木々も無くなって、すっきりと富士山と丹沢湖が見える場所に出ます」と教えてくださいました。もう少しだけ我慢して、下りてみればよかったのでした。

段落見出しシダンゴ山から寄へ

後に心を残しながら、下山の途に就きました。ところがです。秦野峠へと下っていくと、素晴らしい展望地がありました。優美な裾野を広げた富士山、青い丹沢湖、うねる西丹沢。願ったり、叶ったりとはこのこと。心ゆくまでこの美空間に浸ります。先回来たのは、7年前の5月8日。春霞のため、この展望が目を引きませんでした。今は冬、空気は透明です。心が満たされた後、少し下って大野山、江の島、大山などが良く見える草原に腰を下ろし、2回目の昼食にしました。

以後は、話を端折ります。シダンゴ山を左手はるか下方に見やりながら、急な尾根を慎重に秦野峠まで下りました。沢を越えて、うんざりする登り返しを我慢します。鹿フェンスに挟まれた隘路を通り抜け、林道秦野峠に到着。ダルマ沢の頭はパスして林道虫沢線を歩き、シダンゴ山に登りました。山頂で檜岳山稜をもう一度とっくりと眺めます。ここでバスの時間調整を兼ね、ベンチで大休止。ホットカルピスは固形化が始まり、飲むヨーグルトのようになっていました。

シダンゴ山東尾根を下ります。もう日陰になっていて、きょう初めて寒さを感じました。でも最後は茶畑と里山風情を楽しみながら、のんびりと歩き、寄バス停に無事ゴールイン。10人ほどのハイカーが、16時55分の新松田駅行きを待っていました。来たバスは朝に乗ったバスと同じように小ぶりでしたが、全員が着席。私は充足感に満ち、きょうの日を想い返しながら、車窓の風景を眺めていました。そして、空が暗くなった頃には、もうすっかり夢路に迷い込んでいました。

木の葉ライン

↓ 紙芝居



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