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日向薬師と日陰道

ヤママユ

日向薬師にいたヤママユ(蛾)

伊勢原市日向には、文化財や花の名所を巡るハイキングコースが整備されていて、特にヒガンバナの咲く季節には、多くの人々が訪れます。

バス停 神奈中バス: 伊勢原駅 → 日向薬師 登山口
バス停 神奈中バス: 伊勢原駅 ← 藤野入口 登山口

地図 地理院地図: 日向薬師

天気 日向薬師の天気: 伊勢原市 , 日向薬師

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コース & タイム 鉄道駅 伊勢原駅 バス停 6:35 == 6:55 日向薬師バス停 6:56--- 6:56 ヒガンバナ散策路 7:08 --- 7:10 日向神社(白髯神社) 7:14 --- 土産店 --- 7:36 日向薬師 8:50 --- 9:34 浄発願寺 9:47 --- 10:05 石雲寺 10:20 --- 10:49 浄発願寺奥ノ院閻魔堂跡 10:59 --- 11:24 大友皇子之陵 11:25 --- 11:46 神明橋 11:46 --- <日陰道> --- 12:20 高橋バス停 12:47 --- 13:00 ソバ畑とヒガンバナ自生地 13:32 --- 13:35 藤野入口バス停 バス停 13:38 == 14:05 伊勢原駅 鉄道駅
※全体に道草と撮影の時間が多く含まれています。
日向薬師 ひなたやくし 単独 2018年9月23日 全6時間39分  満足度:❀❀❀ ホネオレ度:

9月23日(日)秋分の日、日向薬師とその付近を散策してきました。本来は山歩きを計画していたのですが、山の天気予報と現地の空模様とを見て、平地の散策に変更したものです。この日は彼岸の中日でしたが、ヒガンバナは既に終盤。それでも遠目にはまだきれいで、老若男女、多くのアマチュアカメラマンが、大きなレンズを向けていました。また、今回初めて「日陰道」を歩いてきました。

段落見出し ヒガンバナ散策路へ

秋の長雨が続く日々、秋分の日は貴重な晴天日になりそうだと知って、日向薬師から大山、または順礼峠方面を歩こうと思いました。どうして日向薬師からかと言えば、5年前にまだ改修工事中だった日向薬師で、少年時代から親しんだ懐かしいヤママユを見つけ、今年また会いたいと思ったからです。平成の大改修の終わった日向薬師も拝観できるし、秋の遅い温暖地ならヒガンバナにも間に合うかも知れません。どの山を歩くかは、日向薬師で決めることとしました。

バスが終点「日向薬師」に到着すると、すぐにヒガンバナ散策路に行きました。入口で開門を待ちます。午前7時ちょうど、地元の方が来て、「どうぞ」と開けてくれました。ヒガンバナの多くは、すでにくたびれていましたが、まだ元気な花も少数見られました。少し離れて眺めれば、十分に美しい初秋の谷戸風景。この時点で山々に青空はありませんでしたが、大山の一部は朝の光を浴びていました。すでに刈り取られた稲束が稲木に掛けられ、天日干しされています。

ヒガンバナ散策路を通り抜けると、白髯神社に行きました。社殿の壁や柱や屋根を見て回ります。ヤママユやクスサンなどがとまっていることがあるからです。ここに目指す蛾はいませんでしたが、スズメバチの巣が二つあり、巣を警護する蜂たちの姿がありました。子育てモードなので、近寄ると危険です。神社の由緒書きを読んで、白髯神社というのは旧名で、昭和8年から「日向神社」になっていたことを知りました。鳥居の扁額には「白髯神社」の名が残っています。

段落見出し 日向薬師で野蚕さがし

日向薬師バス停の「半額セール」の店で、訳ありのお土産品を半額未満で買いました。訳ありというのは、割れたせんべいとか、賞味期限ぎりぎりの名物菓子などです。そしてきょうのメインである日向薬師に向かいました。参道に期待してきたシュウカイドウは、意外にもほんのわずか。摩耗の進んだ玉ねぎ石の石段と、大杉の並木道は、もちろん健在でした。仁王門でも、蛾を探してキョロキョロ。その対象は野蚕(やさん)と呼ばれる大型の蛾の仲間です。

参道を昇りきると、薬師堂の大きな萱葺き屋根が目に飛び込んできました。簡素の美と言えばいいでしょうか。薬師三尊の、いわば現世の仮住まいのようなものですが、その本来の姿を久々に見つめました。まずは表敬のため、薬師堂内を拝観します。次いで虚空蔵菩薩のお堂、鐘堂と銅鐘、幡かけの杉と、時計回りに巡って行きました。そして手水場に戻ると、破風板にヤママユを発見!やはりいました。触角は....よく見えません。近くに配偶者はいないでしょうか?

配偶者かも知れない蛾は、菊の茂みの中、地面からあまり高くないところにいました。仰向けにとまっているので、翅の裏側がよく見えます。きれいな羽毛のような触角があるのでオスです。大きな目を持っていますが、口はありません。成虫のヤママユガ類は、飲まず食わずで繁殖に専念するのです。このオスは、よく見ると触角がわずかに動いています。やがて体が暖まったら、どこへ行くでしょうか?

段落見出し 浄発願寺と石雲寺へ

本堂裏手の梅林まで登り、これからどこへ行こうかと、思案しました。伊勢原市の「1時間天気」予報は、朝から晩まで晴れなのに、「登山天気」アプリでは、大山山頂、下社駅ともに終日曇り。少し不思議な気もしますが、山の天気は、天気図を見るだけでは予想できないことがよくあります。上空の大気の状態に関するデータがあってこそ「登山天気」が可能なのでしょう。ともかく、きょうは山歩きをやめ、文化財と花や虫を訪ねて、この付近を巡り歩くことにしました。

もう一度ヒガンバナ散策路を通り抜け、日向林道をテクテク、浄発願寺(じょうほつがんじ)に行きました。きょうは、彼岸の中日とあって、墓参者の車が頻繁に出入りしています。私は今回、初めて三重塔を拝観しました。靴と帽子を脱ぎ、中に入ると、開祖である弾誓上人の像でしょうか、皮下脂肪や筋肉のほとんどない、肋骨が洗濯板のように浮き出た僧侶の座像がありました。弾誓上人は木食僧で、穀物の代わりに、木の実を食べたそうです。

次は、石雲寺(せきうんじ)に行きました。正面の石段は工事中で通行止め。右手の車道を上って行くと、まず竹林、白萩、ヒガンバナに迎えられ、境内に至ると金木犀が香っていました。本堂では、秋彼岸法要の準備をしているようです。ふんわりと、ニンジンやゴボウを煮る香りに、懐かしさを覚えました。白砂利の敷き詰められた庭には白花のヒガンバナが立ち上がり、コムラサキの実が流れるように枝垂れています。石雲寺は曹洞宗の禅寺。きれいに造られています。

段落見出し (伝)大友皇子之陵と日陰道へ

林道に戻り、日向川でバーベキューや鮎釣りを楽しむ人々を見たり、山野草を撮ったりしながら、大山九十九曲コース入口まで行きました。きょうはここでUターン。浄発願寺奥ノ院閻魔堂跡の東屋に行って休憩しました。目の前に首なし六地蔵があります。他の首なし仏と同様、首の代わりに石ころが置かれていて、夜見たら不気味なことでしょう。首は取った後、返さずに壊してしまったのでしょうか? お地蔵様は寛容ですが、夢見の悪い人はいたかも知れません。

次は、伝承による大友皇子(おおとものみこ)の墓に行きました。日向林道から片道5分、立派な石柱に「(伝)大友皇子之陵」と記されています。(伝)が付くのは、言い伝え以外に根拠がないということでしょうか。墓石の位置に石造五重塔のレプリカが建っています。本物は、先ほど訪れた石雲寺の境内に移設してあるとのこと。ここは、自然災害や泥棒や不信心者などから文化財を守ることを教えてくれる教材ではあります。帰り道で、きれいな栗の実をいくつか拾いました。

さて、陽があれば必ず陰があるように、日向には日陰道(ひかげみち)という古道があります。頼朝の家臣や北条政子が通ったともされる、由緒ある道です。地元の方々によって整備され、ハイキングコースになっているというので、歩いてみましょう。神明橋で日向川を越えると、林の中や、田畑沿いに、のどかな道が続きます。緩やかな棚田で頭を垂れる稲穂は、とてもきれいで健康そうな色。その向こう側に、今朝歩いたヒガンバナ散策路が見えます。

段落見出し ソバの花とヒガンバナ

全長約1.5kmの日陰道を歩き終えると、高橋バス停です。少し待たされて、伊勢原駅行きのバスに乗ったのですが、車内は大変に混雑していました。バスが走り始めたら、左手に白いソバの花が咲く畑が見えたので、降りようとしましたが、満員で身動きが取れません。さらに二つ先のバス停で、何とか下車し、歩いて戻りました。ソバ畑の最寄バス停は「藤野入口」です。ソバ畑は休耕田の活用でしょうか、白い無数のソバの花が、心安らぐ落ち着いた風景になっています。

ソバ畑の向うの丘には、ヒガンバナの自生地が見えます。この風景は、ポピーの咲く南欧や北アフリカの春に似ていると思いました。ポピーもヒガンバナも真っ赤な花。離れて見れば、ほとんど同じです。これは、ルノワールや印象派の画家たちに見てもらいたい!畦道を歩いてヒガンバナの丘に行くと、ヤギのいる草地がありました。そこにはコスモスの花もそよいで、風景の色彩を和らげていました。

和やかな風景できょうの記憶を上書き保存し、藤野入口バス停に戻りました。やって来た伊勢原駅行きバスは、さらに混雑していて、洗水(あろうず)あたり以降、途中のバス停で待っていた人々は乗れませんでした。私を含め、車内で立ち続けた人たちも苦しかったと思いますが、乗れただけましです。神奈中さん、こんな日には、増便をお願いします。幸い、伊勢原駅で乗った快速急行新宿行き電車は空いていて、座るとたちまち夢見心地になりました。

木の葉ライン

↓ 紙芝居



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