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白谷沢から 棒ノ嶺

手に乗ったツマグロヒョウモン

棒ノ嶺山頂のツマグロヒョウモン

棒ノ嶺は、主として埼玉県側の呼び名で、東京都側では普通、棒ノ折山と呼びます。登りで採用した白谷沢コースは埼玉県側なので、本記事では棒ノ嶺と書くことにします。

蝶は蜜だけでなく、水分や塩分も摂取します。汗ばんだ体やシャツに蝶がとまることは、珍しくありません。

バス停 国際興業バス: 東飯能駅 → 河又名栗湖入口 登山口
バス停 西東京バス: 川井駅 ← 清東橋 登山口

地図 地理院地図: 棒ノ嶺

天気 棒ノ嶺の天気: 飯能市 , 棒ノ嶺 , さわらびの湯 , 川井駅


コース & タイム 鉄道駅 東飯能駅 バス停 7:49 == 8:30 河又名栗湖入口 8:31 --- 8:48 有馬ダム 8:51 --- 9:04 白谷沢登山口 9:05 --- 9:25 入渓点 9:36 --- 9:46 藤懸の滝 9:51 --- 10:09 天狗の滝 10:14 --- 10:22 白孔雀の滝 10:31 --- 10:40 出渓点 10:40 --- 10:56 林道わき休憩所 11:06 --- 11:18 岩茸石 11:24 --- 11:45 権次入峠 11:57 --- 12:11 棒ノ嶺 12:52 --- 13:33 山の神 13:33 --- 14:06 清東橋バス停 バス停 14:10 == 14:23 川井駅バス停 14:23 --- 14:26 川井駅 鉄道駅
※歩行時間には道草と写真撮影の時間が含まれています。
棒ノ嶺 ぼうのみね:標高 969m 単独 2018年7月3日 全5時間35分 満足度:❀❀❀ ホネオレ度:❢❢

7月3日(火)連日の真夏日から一時的にでも脱出しようと、白谷沢から棒ノ嶺に登りました。沢をジャブジャブと歩けば、涼しく愉快だろうとの想い着きです。三つの大きな滝はいずれも迂回し、小滝だけを登りました。尾根すじでは汗をかいたものの、谷から吹き上がる涼風を浴びて終始快適。奥多摩の百軒茶屋に下山するまで、爽快に歩けました。唯一残念だったのは、今回使った防水カメラが、沢すじで性能を発揮できず、ブレとボケのNG写真を量産したことです。

段落見出し河又名栗湖入口から歩く

JR八高線は、小宮・拝島間で多摩川を越えます。車窓から、進行方向左側の風景を見ましょう。ここで奥多摩の山々がどう見えるかで、その日の天気を占えます。きょうは、薄曇り、青空らしい青空は無し。山なみの陰影は薄いのですが、雲に隠れた山はありません。南方(左手の、そのまた左)には、富士山も全容を見せています。この季節としては、上等の登山日和。写真は眠たい色になるかも知れませんが、ギラギラの太陽光を浴びるよりはましです。

東飯能駅で、名郷行きバスに乗ります。平日の車内はガラガラ。観光バス気分で、入間川沿いの風景を楽しんで行きました。河又名栗湖入口で、私を含め5名が下車。広い車道を、さわらびの湯方面へと歩きます。途中、曹洞宗龍泉寺の前を通りましたが、禅寺はきれいにできているので、5分間だけでも覗いてみればよかったと、後で思いました。分岐点の公衆トイレを過ぎて、5人とも白谷沢に向かうようです。さわらびの湯バス停を左にチラリと見て、有馬ダムへと進みます。

名栗湖の水位は、かなり低いように思いました。しばらくは、今まで以上に水を大切に使わねばなりません。堤頂を歩いてダム右岸の周遊道路に入ります。白谷橋から下を見下ろすと、ありゃりゃ、全然水が流れていません。でも地表に水が滲み出ているので、白谷沢の水が伏流しているのかも知れません。こんな状況で、白谷沢をジャブジャブと歩けるでしょうか? 実際、白谷沢に行くと、水はちゃんと流れていましたが、腰より上を濡らすことはありませんでした。

段落見出し白谷沢ジャブジャブ

登山ポストから20分ほど歩いた地点で、沢に下りました。念入りに準備運動を行います。特に股関節と膝と足首の関節をよくほぐしました。大岳沢での失敗で懲りたので、財布とスマホは2重にジップロックで防水します。デジカメは、防水仕様なので、そのまま首にぶら下げました。もちろん、ヘルメットは着用します。準備万端で、静かに入渓。水がひんやり、とてもいい気持ち!登山道もそれなりに涼しかったのですが、もっと涼しい!

きょうは沢の流れが少な目なのかも知れませんが、ジャブジャブするには十分です。小滝があれば、できるだけ水をたくさん浴びるように上って行きました。緑の苔がとてもきれいです。もしかして、ヒカリゴケ?(いいえ) 始めの10分は足慣らし、と思っていたら、早くも藤懸の滝に至りました。2条の細い滝が2段に落ちています。下段は容易に上れましたが、上段は一目見て巻くことにしました。藤懸の滝とは風流な名ですが、春にヤマフジが咲くのでしょうか?

藤懸の滝を巻き終えると、また小滝が続いていました。鮮やかな苔やシダに飾られて、美しい絵になっています。優し気な白い花はヤマアジサイ。ここでは、サワアジサイと呼びましょう。モミジガサやイワタバコなどもありましたが、花はもう少し先のようです。岩に着いた緑色の苔はOKなのですが、赤茶色の苔は滑るので要注意。気が付くと、沢沿いに付けられた登山道を歩く人々が、どんどん登って行きます。道が沢を横切る地点には、たいてい道標がありました。

段落見出しゴルジュと白孔雀の滝

天狗の滝にやって来ました。正面から見ることができます。落差があって、小気味の良い滝ですが、水がもっと多ければ、勇壮豪快な滝になるのかもしれません。遡行はできないので、左を巻きます。しっかりした岩道があるので、安心して登れます。天狗の滝の上流には、ロックガーデン風のきれいな場所がありました。そのうち、イワタバコの花が添えられるでしょう。そしてそのすぐ上流に、白谷沢最大の名所ともいえる、ゴルジュがそそり立っていました。

ゴルジュとは、岸壁に挟まれた隘路を言いますが、左右の岸壁が巨大であるほど、スリル感が増します。ここ白谷沢のゴルジュもなかなかの迫力。山歩きの人も、沢歩きの人も、この隘路を通過します。このゴルジュで、きょう初めて「こんにちは」を交わしました。前方に鎖場が見えます。鎖を手に、後ろ向きに下りる女性と、その人の通過を下で待つ人がいました。頭上を見上げると、左右の黒い岸壁の上に緑の木々が繁り、その間に狭い空が見えました。

鎖場の手前から水流を辿れば、白孔雀の滝の下に出られます。その前に小滝がありますが、その岩が赤茶色の苔でヌルヌルしていました。上ることはできますが、白孔雀の滝の下からここに戻るときに難儀しそうです。跳び下りるのも危なそうなので、あっさりと諦めました。鎖場を登ります。登山道から白孔雀の滝を覗くと、一条の白い滝が黒い岩をなめ気味に落ちていました。きっと水量の多い日に、白い孔雀がどこかに現れるのでしょう。

段落見出し岩茸石と権次入(ゴンジリ)峠

白孔雀の滝を後に、上流に進みます。まだ幾つかの小滝が見られましたが、きれいな小滝はめっきり減りました。歩くと、沢の底から泥が舞い上がったりもします。やがて、低木の枝がゴチャゴチャと茂って、楽しく歩けなくなったので、登山道に上がりました。整った登山道をスタコラ登って行きます。最後に丸木の土止め階段を登りきると、林道を横断しました。ベンチがコの字に置かれた休憩所があります。腰を下ろし、靴と靴下と帽子を山歩き用に替えました。

休憩所から岩茸石までは、0.4kmです。始めの急登を過ぎると、残りはほぼ水平の道だったので、楽々と岩茸石に到着しました。ここに来たのは46年ぶり。今回はひとつ上ってみましょう。高さは約5m。左側から容易に上れます。上ってはみたものの、どうと言うこともなかったので、すぐに下りました。権次入峠に向かいます。道標によれば、岩茸石から0.6km。ここから先は本格的な登りです。多少汗をかきましたが、左の谷からの涼風のおかげで、苦も無く登れました。

権次入峠のベンチで昼食にしました。まだ半分凍っていたお茶とスポーツドリンクとを、交互に飲みます。あたりは目を潤す緑のミズナラ林。暑い夏の日、食事をするなら、明るい山頂広場よりも、緑陰豊かな権次入峠がお奨めです。エネルギーが充填できたところで、山頂に向かって発進。この区間も汗をかきますが、左から吹き上げる涼しい谷風を受けながら歩くことで、すんなりと登りきってしまいました。山頂広場に飛び出すところは、映画の一場面のようです。

段落見出し棒ノ嶺山頂で蝶と遊ぶ

棒ノ嶺山頂には、180度の広大な展望があります。奥武蔵の峰々も、少しずつ同定できるようになりました。山頂広場には5~6頭のツマグロヒョウモンがいて、全部オス。しきりに追いかけっこをしています。縄張りを争っているのでしょう。1頭が近くの草にとまったので、私の手を差し出してみました。汗でかなり塩辛いはずの手です。その蝶は乗って来ませんでしたが、逃げもしませんでした。ただ私の差し出した手をじっと見つめているように思えました。

私はその場をいったん離れ、大きなヤマザクラの下で涼を取りました。数分後、彼の縄張りに戻って、左手を差し出すと、すぐに乗って来ました。ストローの先で私の指先をスキャンしているように見えます。すっかり夢中になったようなので、左手を引き寄せて、右手のカメラで撮影しました。これが上の写真です。ついでに動画も撮影しましたが、これはピント外れになっていました。こうしてしばらくの間、至近距離でツマグロヒョウモンの行動を観察しました。

ところで、手の汗はすでに乾いていて、塩分の微粒子が残っていただけだと思うのですが、どうして蝶はこれを吸い取ることができるのでしょうか? タテハチョウが半液体の樹液を、あのストローでどのように吸い上げるのか、という疑問と共に不思議です。蝶は蜜を吸っているのではなく、ストローの毛細管現象で取り込んでいると言います。固形物を液化する仕組みでもあるのでしょうか? ところで、ミヤマサナエか、ウチワヤンマか、大型のトンボが低く飛んでいました。

段落見出し下山

棒ノ嶺山頂では、かれこれ40分ほど過ごしました。「棒ノ折山」と書かれた、東京都の管理番号の付いた道標から、百軒茶屋に下ります。温泉のある名栗方面に下りるのもいいのですが、分水嶺を越えるような歩き方が、私は好きなのです。それに西東京バスの2016年ダイヤ改正で、清東橋を始発地とするバスが、平日午後は7便に増え、下山に利用しやすくなりました。下山路はよく知った道なので、時計を見ながら時間調整をし、発車4分前にバス停にゴールインしました。

川井駅での接続は悪く、30分以上待って青梅行きの電車に乗りました。バスも電車も冷房がよく利いていて、ちょっと寒いほど。心地よさではやはり、谷の流れや、山の風にかないません。車内でウトウトしながら、きょうのすてきな沢歩きと山歩きの余韻に浸りました。今回も無事に下山でき、本当に感謝です。

木の葉ライン

↓ 紙芝居



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