山梨県都留市と大月市にまたがる鶴ヶ鳥屋山は、風情ある地名のとり合わせ。長すぎず、短すぎないハイキングコースです。
縦走路は、いくつもの小ピークを越えて行かねばならず、山頂に到着したときの喜びは、隣の本社ヶ丸に劣るものではありません。
地理院地図: 鶴ヶ鳥屋山
鶴ヶ鳥屋山の天気: 山梨県大月市 , 笹子駅 , 山梨県都留市
レポ: 本社ヶ丸
天皇誕生日の12月23日、鶴ヶ鳥屋山に行って来ました。天気予報どおり終日快晴で、富士山、南アルプス、奥秩父、小金沢連嶺などのすばらしい展望に恵まれました。少しだけ欲を言えば、この山は、本社ヶ丸、清八山とセットで登りたいところです。しかし冬至の翌日で日は短く、鶴ヶ鳥屋山だけの、ゆとりを持った計画にしました。
午前7時34分、笹子駅に到着。同じ列車から10人以上の登山客が下りましたが、鶴ヶ鳥屋山に向かっているのは私一人だけです。歩き始めると、早速「熊出没注意」の標識。この頃、これが増えてきたような気がします。
7時57分、林道の終点で船橋沢の左岸に渡ります。しばらく歩いて、また右岸に渡り返します。沢の水は少し増えていて、しかもとても冷たくなっているので、濡れないように飛び石を選びます。
沢沿いに登って行くと、ミソサザイがチチッと鳴きながらハンミョウ(昆虫)のように私の道案内をしてくれます。もともと小さな小鳥ですが、チャボのように尾羽を立てて、いっそう愛らしい姿で、沢のマスコットみたいです。
大きな送電鉄塔の下に来ると、少し展望が開けます。でもあまり遠くの山は、まだ見えません。林道の横断点で鉄はしごを昇ると、笹子雁ヶ腹摺山から滝子山までを、樹木に邪魔されることなく撮影できます。南アルプスはまだ見えません。さらに登って行くと、左前方から日が差してきました。木々の幹が輝き、落ち葉の敷き詰められた地面にその影が映る、とても気持ちの良い道を登って行きます。
9時25分、本社ヶ丸と鶴ヶ鳥屋山を結ぶ稜線に至ります。この近くにかつて宝鉱山からの鉱石を運ぶ索道のヤグラがありました。西方に雪化粧した南アルプス、八ヶ岳、奥秩父などが望め、一気に心が高ぶります。稜線上は風が強いので、少し鶴ヶ鳥屋山方向に進んだところの小ピークの陰で休憩することにします。こんもりと積もった落ち葉に座って、暖かい日差しを浴びながら行動食を口に。温かい紅茶を飲みながら、地図でコースの確認をしました。
地図上の水平距離では遠くない鶴ヶ鳥屋山ですが、そこに至るまでは、いくつかのピークを越えて進みます。そのたびに急なアップダウンの連続。あまり早く着き過ぎてももったいないので、これがこのコースの特色なのだと思って、楽しみながらのんびりと歩きます。
10時ちょうど、見晴らしの素晴らしい1340mピークに至りました。圧巻は何といっても目映いばかりの富士山。三ツ峠山の左側に堂々たる存在感です。西には本社ヶ丸、その右手奥に南アルプス。笹子雁ヶ腹摺山のはるか向こうには八ヶ岳。その右手には奥秩父の連山。血も踊り出しそうなこの美しいパノラマは、冬の透明な空気の賜物です。私の他に誰もいないとは、もったいない限りですが、今日は他の山からも素晴らしい眺望が得られていることでしょう。
10時22分、鶴ヶ鳥屋山の山頂に到着。南側に富士山がよく見えます。他の方向は樹木に囲まれていて、枝越しにしか景色が見えませんが、北に雁ヶ腹摺山、黒岳、大蔵高丸、ハマイバ、手前に滝子山が望めます。夏など木々の葉が繁っている季節には、北側の展望は望めないでしょう。
山頂から黒野田林道へ下る道は極めて急峻です。しかもこの季節は落ち葉が深く積もっていて、地面の状態が分かりません。運悪く木の根を踏むと、ズルリと滑ります。何度もバランスを崩しかけ、そのたびに懸命に体勢を立て直します。林道まで地図上のコースタイムは40分と書いてありますが、54分もかかりました。
黒野田林道に下りる直前の斜面はかなりザレていました。ロープが張ってあるので助かりますが、ささくれ立っている上に一部切れた箇所もあります。でも長い区間ではないので、慎重に歩けば問題なく通過できます。
舗装された林道を歩いて150mほど右に進むと、道志の山々を一望できる緩やかな坂があります。右手の御正体山から始まり、二十六夜山、今倉山と続く道志山塊の左手には秋山地域の前道志、さらに左に倉岳山、高畑山などの山並みが、思いのほか間近に望めます。澄んだ空気の中、木々がはっきり見えるので、近そうに見えるのでしょう。
12時1分、林道を100mほど戻り、道標に従って下山路に入ります。「恩六二九」石碑の分岐で右に進みます。石碑は倒れていますが、分かりやすい道標が立っています。ちなみに、左は唐沢橋への分岐で、「危険難路」との書き込みがしてあります。以後、やや長い尾根歩きが続きます。間違えやすい箇所には、枯れ枝で通せんぼがしてありますが、見落とさないように注意が必要です。もちろん、地図とコンパスを見ながら下れば、全く問題ありません。アカマツ林では、滑りやすい落ち葉もなく、どんどん下れました。
やがて、下の方から爽やかな沢の流れが聞こえてきました。見下ろすと水面が眩しく輝いて、里の近いことが分かります。12時51分、堰堤の下で登山道が終わり、光のあふれる沢を横切って、未舗装の林道に出ました。
13時7分、県道712号に降り立つと、すぐに「近坂橋」です。袂の銘板に、「ちがさかばし」と書いてあります。ここから丸太沢に沿って、初狩駅まで40分ほど県道を歩きます。県道から振り返る鶴ヶ鳥屋山の姿は、鶴の飛ぶ姿に似ていなくもありません。
この先、リニア実験線の工事現場を通過するところがお楽しみです。私たちが乗れるようになるのは、いつでしょうか。ここを通過すると、右手に高川山が姿を現しました。さらにJR中央線のレール下をくぐると、滝子山、お坊山、笹子雁ヶ腹摺山と再会します。ここを右折して線路沿いに進み、踏切を越え、通学路でまた右折すると、国道20号を全く歩かずにすみます。
13時49分、十分な余裕を残して初狩駅に到着。最後まで登山者には出会いませんでした。
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