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矢倉岳

矢倉岳

矢倉沢のコスモス畑より望む矢倉岳

矢倉岳は、おにぎりのようにふくよかな山容を持ち、周囲から容易に見分けられます。

足柄峠周辺には旧跡や名所が多くあり、歴史を訪ねるハイキングの好適地です。

バス停 箱根登山バス: 新松田駅 ← 矢倉沢 登山口

地図 地理院地図: 矢倉岳

天気 矢倉岳の天気: 南足柄市 , 矢倉岳 , 足柄万葉公園

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コース & タイム 鉄道駅 JR足柄駅 7:57 --- 9:31 足柄峠城址公園 9:54 --- 10:01 足柄山聖天堂 10:06 --- 10:14 足柄明神社 10:19 --- 10:22 足柄万葉公園 10:52 --- 11:24 山伏平 11:24 --- 11:40 矢倉岳 12:24 --- 13:20 茶畑道のゲート13:20 --- 13:37 赤ソバ畑 13:41 --- 13:47 矢倉沢公民館(登山終了、散策)--- 矢倉沢バス停 バス停 15:32 == 16:05 新松田駅 鉄道駅
※歩行時間には道草と写真撮影の時間が含まれています。
矢倉岳 やぐらだけ:標高 870m 単独 2015.10.26 全 5時間50分 満足度:❀❀❀ ホネオレ度:❢❢

10月26日、矢倉岳に行ってきました。足柄峠の旧跡と足柄万葉公園を訪ねてのハイキングです。矢倉岳山頂では、ススキ越しの富士山、金時山、箱根、相模湾などを雄大に望めました。そこに飛んできたアサギマダラにはびっくり。山の紅葉はまだでしたが、下山地の矢倉沢では、ざる菊、赤ソバ、コスモスなどの花が、色鮮やかに咲いていました。

段落見出し はじめてのJR足柄駅

富士山に限りませんが、山は朝の早いうちほどきれいに見えます。そこで、朝のバスには乗らず、西丹沢行きに利用する、御殿場線松田駅7時23分発の沼津行き電車を利用することにしました。松田駅のプラットフォームからは、富士山、矢倉岳、金時山の三山が、単独峰のいでたちで目に入ります。空はよく晴れ、山々の呼ぶ声が聞こえるようでした。

うたたねから、ふと目を覚ますと、電車は足柄駅に着いていました。急いで下ります。プラットフォームは両方向から来た電車が停車していて、通学の高校生たちで賑わっていました。女性の車掌さんが切符を回収しています。切符を渡し、いつものように電車を後ろから撮影すると、車掌さんの帽子が矢倉岳に似ていました。ほっこり可愛らしいフォームです。

国府津行き電車が行ってしまうと、構内踏切の遮断機が上がりました。高校生たちがぞろぞろと、線路を横断して駅舎の裏側に歩いて行きます。駅舎に入ったのは私だけでした。改札機も券売機もない簡素な駅です。しかし駅舎を一歩出ると、金時山、富士山、三国山稜など、豪華メンバーによるすばらしい出迎えを受けました。清潔感のあるトイレもあります。

段落見出し 足柄峠へ

足柄駅から足柄峠への行き方は、Google のストリートビューを使って調べてきました。簡単に言うと、(1)駅前の踏切を渡る、(2)真っ直ぐ進んで青い案内標識に突き当たる、(3)左前方の道に進む、(4)小学校と児童公園を右に見ながら歩く、(5)コンクリート橋を渡る、(6)坂道を登って最初のカーブミラーで右折します。ストリートビューはここまで。以後は沢沿いの林道になり、ひたすら道なりに進めば足柄峠に至ります。

この沢は、苔生した大きな丸石がゴロゴロあって、岩石園のように目を楽しませてくれます。左手に嶽ノ下宮奥宮があり、絵のような赤い橋が見えました。その先、「戦ヶ入り」、「頼光対面の滝」、「銚子ヶ淵」など、初めて知る名所が次々と現れ、それぞれに古びた説明板が立っています。「虎御前石」への分岐から1分先で、県道78号に飛び出しました。出合には、不老山のイラスト道標と同種の物凄く古びた道標と、小山町の立てた普通に古い道標とが立っています。

県道を7分ほど歩くと、左手に山道が分岐していました。「赤坂古道」と書いてあります。石畳がありますが、歩き始めにしかないので、復元したものかも知れません。馬頭観音が古道の面影を残していますが、古の往来を偲ばせるものは他にないようです。この赤坂古道は15分ほどで県道と交差していました。今度は「足柄古道」と書かれています。この古道区間は5分ほどで終り、再び県道を歩いて10分ほどで足柄峠に至りました。峠の手前左の石段から足柄城址に上がれます。

段落見出し 足柄峠城址公園

石段を昇ると、足柄峠城址公園の中央広場(?)に出ました。「一の郭」だった場所です。たちまち富士山とオベリスクのような石碑とに目が奪われました。まずは石碑の台座に上がります。そこには窮屈さの全くない富士山の姿がありました。解放感と開放感に満ちた、広大な空間。フレームに制限された絵画や写真では取り込むことのできない、本物だけの自由。眺めるほどに痛快、爽快です。

「二の郭」に行くと、方位盤がありました。左手の明神ヶ岳から右手の不老山、丹沢山塊まで、いずれも個性的な姿で勢ぞろいして、ここでの山座同定は簡単です。特別席のようなベンチに腰を下ろし、早めの昼食にしました。温かいお茶が、お腹の中で幸福感を醸し出します。富士にはお茶とミカンがよく似合う!と私は個人的に思います。

「一の郭」に戻ります。隅に「相模之國南足柄領」と書いた高札が立っていました。ここで毎年1回、九月第二日曜に、神奈川県南足柄市と静岡県小山町の住民が、「領地争奪綱引き合戦」を行うと書いてあります。私は静岡県で生まれ育ち、神奈川県民として生きているので、どちらが勝っても「おらが國」です。いつかその平和な戦(いくさ)を見物したいものだと思います。

段落見出し 矢倉岳へ

その後、足柄関所跡、足柄聖天堂、足柄明神社、足柄万葉公園を巡りました。史跡名にも、万葉の歌にも「足柄」の二文字がよく出てきます。ちなみに金太郎伝説の足柄山というのは、足柄峠周辺の山々の総称とされています。足柄万葉公園には、樹木の名を含む万葉歌が、ほぼその樹の付近に紹介されていて、私はこちらの方に興味をそそられました。高尾山の「いろはの森」と同様の趣向です。ただ季節柄とはいえ、木に花のないのが残念でした。

足柄万葉公園で大道草を食ったので、矢倉岳に急ぎます。道はハイキングコースとしてよく整備されていて、軽快に歩けました。ただ矢倉岳の山容からも想像できるように、山頂の前後は傾斜が強くなっています。特に土止め階段は段差がやや大きめで、歩幅の小さな子供には少々きついかもしれません。山頂付近は草刈りをした直後で、切り落とされたリンドウの花を拾い上げると、まだきれいでした。

明るく開けた山頂広場に飛び出すと、草刈りの作業員たちが5人ほど、枯れ草の上で仰向けに寝て休んでいました。広めの山頂は、昼寝と展望の好適地と言えるでしょう。すでに富士山の色は薄くなっていましたが、眼前の金時山、神山、明神ヶ岳は迫力十分。南東に相模湾も望めて、海の向こうにも思いを馳せることができます。空気の澄んだ季節に来れば、さらに素晴しい展望を得られることでしょう。

段落見出し 天女

ベンチでミカンの皮をむいていた人の前に、ふわり、アサギマダラが舞い降りてきました。ミカンの香りに誘われてきたのかと思ったら、その方の鼻に止まりました。「アルプス一万尺」の歌みたいです。その方はちょっと面食らって、蝶をつまんで放しました。蝶はその後もあたりをフワフワと飛んだり、刈られた草の上で休んだりしていました。翅は羽化直後みたいにきれいです。やがて高く舞い上がると、上昇気流に乗って見る見る小さくなり、空に消えて行きました。

天女のように訪れて去っていった蝶を見送ると、私は靴紐を締めなおして、山頂を辞しました。落ち葉の積もり始めた道を下って行きます。温暖地の秋はまだ深まらず、紅いモミジは見当たりません。山にいる時間を楽しもうとゆっくり歩いたつもりでしたが、山頂から50分ほどで早くもコンクリートの道に下り立ちました。茶畑に来るための農道のようです。

茶畑から、丹沢表尾根を望めました。はじめ大山が見え、次いで二ノ塔、三ノ塔と続き、塔ノ岳と小丸あたりまで見えました。あの稜線をきょう歩いている人たちも、すばらしい眺望を楽しんでいることでしょう。途中に熊・猪除けのゲートがあるので、きちんと開閉します。茶畑の次はミカン畑、そして人里が見えると、実を着けた柿の木も。お馴染みののどかな風景ですが、矢倉沢の里にはこの季節、ある花が咲きます。

段落見出し ざる菊、赤ソバ、コスモス

民家の裏庭のような場所に、ざる菊が咲き始めていました。ざる菊というのは、地面にざるを伏せたような草姿に仕立てた菊です。普通は茶畑のように列を作るのですが、この家では4色の同心円で、大きな花の文様を作っていました。そして谷戸のような風景に、緑の棚田と、色とりどりの菊畑が見えてきました。その一つに近づきます。菊の花は初々しい三分咲き、色はチューリップのように、赤、白、黄、桃、紅紫の五色。午後の強い日差しに、いずれも色鮮やかです。

近くに赤ソバの畑もありました。花は終盤だと思いますが、まだ見られます。赤ソバ畑とざる菊畑で大いに道草を食いました。どうせ矢倉沢バス停は、午後の大空白時間帯です。矢倉沢公民館で登山行動はゴールインとし、バスの時刻までコスモス畑、関所跡、内川の土手などを、できるだけゆっくりと散策しました。いずれかの花畑から矢倉岳を望めば、季節感のある被写体になります。カメラの電池が切れるまで何度も撮影しました。

段落見出し 村おこし

ざる菊作りは、休耕田を活用しているのでしょう。村おこしとして、好い企画だと思います。詳しくは、「矢倉沢ざる菊祭り」を検索してください。

木の葉ライン

↓ 紙芝居



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