ウスバシロチョウは、五月の裏高尾では最もよく目にする蝶のひとつです。白いのですが、シロチョウ科ではなく、アゲハチョウ科です。
小下沢林道からの「富士見台の道」は急峻な箇所や、ザレ滑落の危険箇所があります。下りは避けるほうがよいでしょう。
西東京バス: 高尾駅北口 ← 霊園前
地理院地図: 八王子城山
八王子城山の天気: 八王子市 , 八王子城跡
レポ: 北高尾山稜
大型連休が終わりました。裏高尾にウスバシロチョウが飛ぶ頃なので、蝶の撮影を兼ねて裏高尾を歩き、北高尾山稜の富士見台に登って、八王子城跡を訪ねてきました。立夏が過ぎたばかりなのに、すでに夏の空気が満ち、緑陰の道に吹くそよ風が心地よく感じました。
高尾駅北口から歩きました。国道20号を西に向かい、上椚田橋(かみくぬぎだばし)から小仏川沿いの遊歩道を通って、湯の花梅林を目指します。遊歩道梅林に入ると、さっそくウスバシロチョウが飛んで来ました。1,2,3,4,5…多すぎて数えきれません。ウスバシロチョウは、アゲハチョウのような力強い飛翔はせず、やさしく、のどかにテフテフと飛びます。飛んでいるところを撮影するには、高級カメラを用意するか、腕を磨かねばなりません。でも、花があれば止まってくれるので、コンパクトカメラでも簡単に撮影できます。
しばらく遊歩道を進むと、栗畑があり、ハルジオンがたくさん咲いていました。ハルジオンは、俗に貧乏花と呼ばれる花です。あたかもキャベツ畑にモンシロチョウがたくさん集まるように、そこにはウスバシロチョウがたくさん来ていました。とにかく個体数が多いので、少し待っていれば撮影のチャンスが訪れます。一般に、蝶の撮影でお邪魔虫になるのは、(1)他の蝶、(2)通行人、(3)自分自身なのですが、これだけ蝶と花が多ければ、もう関係ありません。
ウスバシロチョウ以外では、アオスジアゲハ、クロアゲハ、モンキアゲハ、カラスアゲハ、コミスジ、モンキチョウ、テングチョウ、などが目立ちました。他にも、シジミチョウ類やジャノメチョウ類も見られましたが、種は未確認です。トンボで目立ったのは、ほとんどがニホンカワトンボでしたが、間違っていないか、写真をご覧ください。ところで、五月の里山は、白いウツギの仲間たちがきれいです。自生種ではヤブデマリ、植栽種ではオオデマリが、美しく咲いていました。
蝶ファンに人気の木下沢梅林では、ウスバシロチョウをわずか2頭しか見ませんでした。北高尾山稜を見上げると、夏の空に丸い峰が二つ並んでいます。向かって右が高ドッケでしょうか。梅林を通り抜け、小下沢林道に入ると涼しくなりました。やがて右手に森林公園の「1番口」がありましたが、富士見台への道を確認するために、大きな案内板のある「2番口」まで歩きます。すると、先の「1番口」が「富士見台の道」の取り付きであったことが分かりました。
とりあえず、「2番口」から取り付きました。3分ほど登ると「いざないの道」が森林公園内の道を、横に連絡しています。青草の濃い茂みをかき分けながら登って行くと、左手に橋が見えてきました。これが「いざないの道」です。右折して橋と反対方向に進むと、すぐに「富士見台の道」と出合いました。あとは、富士見台を目指してひたすら登るばかりです。これは谷すじの道で、角張った大小の岩がいっぱい。谷ではあるのですが、あまり水が流れないのかもしれません。
やがて、道が二手に分かれました。右は荒れた谷道。左は急峻な斜面。より面白そうな左に進むと、長いロープが設置されていました。ありがたい結び目が作ってあります。おかげで楽々登れましたが、ロープがなければ難儀したでしょう。さらに上の方には鎖もありました。高尾山域にこんな面白い道があるとは知りませんでしたが、あまり人が通っているような形跡はありません。ロープ場が終ると、再び谷道になりました。
道が谷から尾根に移りました。ジグザグ道がありますが、なかなか急峻で、しかも雨や自然崩壊で登山道が斜面化していました。足を滑らせないように緊張して歩きます。危険な場所では両手両足を駆使(四駆モード)して登りました。この道を子供や初心者を連れて歩くことはお奨めできません。下りはさらに危険です。下り始めは普通の登山道ですが、やがてロープを欲しくなるでしょう。さて、縦走路に至ると、私製の小さな標識があり、「小下沢 悪路」と書かれていました。
ちょうどそこを通りかかった男性から、小下沢林道に下りられるかと尋ねられました。「下りられるけれども危ないので、別の道から下りてください」と強く勧めたのは言うまでもありません。富士見台に着くと、真っ先に富士山を探しました。残念ながら、富士山は振り替え休日なのか、一面雲ばかり。近場の小仏城山、小仏峠、景信山の、くっきりとした稜線だけが望めました。このとき午後1時。遅くなりましたが、山頂のベンチで昼食にします。
お腹を満たすと、少しストレッチをしました。空を見上げると、瑞々しいコナラの新緑がびっしり。この柔らかそうな葉でミニ柏餅を作ったら、いくつできるでしょうか。リュックを背負うと、また通りかかった男性から道を尋ねられました。この方はガイドブックのコピーを持っていましたが、それには「富士見台の道」の状態について、書かれていないようでした。この方にも、安全な道を下りるように強く勧めました。
八王子城跡に向かうと、途中に「大天主跡」があります。大天主とはどんな姿をしていて、どのように使われたのでしょうか。本丸からもかなり離れています。また、「天主」と「天守」は、どう違うのでしょうか。説明板のようなものはありません。ここは、八王子城の「離れ」のような場所で、訪れる人も城跡と比べるとずっと少ないのでしょう。
本丸の手前に、ポンプ付きの井戸があります。ポンプの柄を押したら、勢いよく水が出たので、これで手を洗いました。飲めるかどうか、分かりません。松木曲輪に行くと、昼寝をしている人がいました。「兵どもが夢の跡」で、夢を見ていたかもしれません。あいにく都心方面は霞んでいましたが、南に高尾山を望めました。ところで高尾山は、どこから見ても、特徴を掴みにくい姿をしています。高尾山の人気は、その姿とは無縁だということなのでしょう。
八王子城山に登って、達成感を得るには、管理棟の前から登るのがいいと思います。富士見台から来ると、登ったというより、下りて来たという気分がするからです。城山という名のつく山は、一般に展望に優れ、城下からのアクセスがよく、防御のための峻険さを備えています。それ故、たいていの場合、今日ではハイキングの好適地になっています。八王子城山は単独でも十分に魅力的ですが、陣馬山からはるばる歴史を訪ねつつ歩いて来た人なら、万感の達成感を得られるかも知れません。
私は、八王子城跡前の長い石畳の参道が好きです。下山後に歩いても、何故か足が痛くなりません。往時どんな道だったのかは知りませんが、優れた道の要件の一つは、歩いても疲れにくい道だと思います。寺社、民家、庭園カフェ、石材店などはありますが、観光地にありがちな土産物店が軒を連ねていないので、普通の人里らしさがあって、安らぎを覚えます。
沿道にある宗関寺に立ち寄ると、キショウブの咲く小さな石庭がありました。キショウブの周囲に青みのある小砂利が張られています。これを水に見立てて、そっと歩いてみました。砂利が立てる「じゃりじゃり」という音が「じゃぶじゃぶ」です。それはごく短い時間でしたが、心地よい思い出になりました。
最後は霊園前から高尾駅までバスに乗りました。歩いても大した距離ではありませんが、交通量の大きな道路では、できるだけバスを利用するようにしています。
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