秩父御岳山は、木曽御嶽山の王滝口を開いた普寛上人が開山しました。
秩父御岳山は、秩父鉄道終点の三峰口駅から歩いて登ることができます。贄川、強石、落合などに登山口があります。
ルート図 ヤマレコ
秩父御岳山: 秩父市贄川
10月6日(金)、絶好の秋晴れの日をねらって、秩父御岳山に行ってきました。この夏にあまり山歩きができず、筋力の落ちた足腰を慣らすためにと、手軽でほどほど登り甲斐のある山を選んだものです。季節柄か、山中で花、虫、鳥、獣などとの出遭いはありませんでしたが、登ること自体、歩くこと自体を楽しむには、ちょうどよい山でした。山頂の空気は清浄で心地よく、いろいろなことを祈ってきました。
自宅最寄り駅から初電に乗り、最初の関門、八王子駅での2分間乗り換えダッシュに成功。八高線の東飯能で西武鉄道秩父線に乗換えました。電車が奥武蔵の各駅に到着するごとに、その駅発、または着の山歩きが思い出されます。そして電車が最後の短いトンネルを抜けて秩父市内に入ると直ぐ、小鹿野の小高い山並みの上にさらに高く、両神山が見えました。まるで神々の要塞であるかのような存在感。車窓から望むのは初めてです。きょうのすばらしい登山が約束されたと思いました。
御花畑駅から乗った三峰口行き電車は、ガラガラに空いていました。平日の早朝、都心から遠ざかる電車だからでしょうか。私は先頭車両の最前部、進行方向がよく見える座席に着きました。前方の視界に秩父御岳山を探します。低山なので、手前の山に隠されているかも知れません。ところが終点に近づくと、貨物スペースを作るために電車の最前部がカーテンで間仕切りされ、結局、見えたのか、見えなかったのか、分かりませんでした。終点、三峰口駅で降りたのは、私だけだったと思います。
白川橋の手前から荒川右岸を経由する道路は、崩落があって、通行止めになっていました。白川橋を渡り、荒川左岸の国道140号に進みます。大型トラックやダンプカーが轟音を立てて行き交う、できれば歩きたくない道。そんな道でも、民家の前に咲く花にはたくさんの蝶がいて、由緒ありそうな荒川郵便局の窓辺にユウガオが咲き、深く見下ろす荒川には青緑色の流れがのどかです。国道のカーブに立つお地蔵様の前を過ぎると、強石バス停が見えてきました。
強石バス停のすぐ近くに「御岳山登山道入口⇒」と書かれた道標がありました。その表記からも推しはかれるように、ここは「入口の入口」です。その道に入ると直ぐ、強石の説明板がありました。昭和40年代までは、交通の起点として、各種の店や銀行の支店などが立ち並び、にぎわっていたようです。また「強石」には「怖い石」の意味も。現在工事中の「大滝トンネル」が開通すれば、長距離トラックはそちらを走り、強石は昼も夜も静かな里になりそうです。
強石の里には、道標がしっかりと、しかもたくさん立っていて、いわゆる「登山口での迷い」は全くありませんでした。バス停と山のピクトグラムの入った道標もあり、登山コースを整備してくださった方々の本気度が伺えます。強石の林道兼生活道路と思われる、ミニいろは坂のような車道を登っていくと、さまざまなアトラクションがありました。粗壁の土蔵、蚕室(?)をもつ家屋、足の病を治してくれるというお地蔵様、ナツメの実、キンモクセイの香りなどなど。
道路わきに咲くシュウカイドウやヒガンバナに、初秋の名残りが見られ、目を癒してくれました。ところどころで、南方に妙法ヶ岳を望むことができます。逆光だということもあってか、何か神々しい趣がありました。いつか三峯神社を経て、雲取山まで歩きたいものです。強石から40分ほど歩いた頃、昭和レトロ風の家屋があり、その先で車道が通行止めになっていました。ガードレールに「御岳山」を指す道標があります。ようやく「登山道入口」に到着しました。
登山道もまた、よく整備されていました。紙製の標識が頻度高く設置されていて、迷いようがありません。山の斜面はそれなりの急勾配ですが、登山路はジグザグなので、スタコラと登れます。でも急ぐ旅ではないので、いつもの省エネモードで登っていきました。注意書きがあり、「大雨の時や冬期間(12月中旬~4月上旬)は危険ですので通行を禁止します」とのこと。気象条件によっては、どんな山も厳しくはなりますが、御岳山の危険個所はどこなのでしょうか?
杉ノ峠から急登になりました。左手の林道を歩けば目前のピークを巻けるのではないか、と思いましたが、道標に従って急峻な尾根を登っていきます。途中で出会った下山者に、思わず尋ねました。「こんな急坂がまだまだ続くのですか?」「あと少し登れば、緩やかな道になります。」実際、杉ノ峠から標高差にして60mほど登ると小峰に達し、そこから先は緩い起伏の道になりました。左から林道を合わせます。この林道を経由したら、あの小峰を巻けたのでしょうか?
登山道が90度右に屈曲すると、廃鉄塔がありました。この辺りは、送電系統の統廃合があったようです。生命感を失くした、その鉄塔の下を通り抜けると、明るい空間に現役の鉄塔が立っていました。左手に望めるは、すっきりと屹立する御岳山。そして鉄塔下では北東方向が開け、きょう最初のすばらしい展望がありました。送電線下の樹木が伐採されているからです。眼下に荒川沿岸域の山々。その彼方に延々と、外秩父の青い山並み。右手ぎりぎりに武甲山も望めました。
先に進みます。直ぐに大きな反射板がありました。銘版に「御岳第一反射板、平成17年9月完成」とあるので、今から18年前にできたものです。反射板を遮るように高い樹木が立ち並んでいるのですが、電波は樹木のすき間を通り抜けることができるのでしょうか。この先も、杉林の道を緩やかに下り、また緩やかに登り返していきます。反射板から20分ほど歩いた頃、ふいに林道が現れました。その鋭いヘアピンカ-ブが、私のいる登山道を尾根ごと断ち切っています。
林道を横断し、その先に続く細い尾根を登ります。5分ほど行くと、トラロープの張られた急登になりました。体力を無駄に消費しないよう、省エネモードで登っていきます。急な尾根道が狭い岩稜になると、ロープに加え、鎖も設置されていました。この尾根を下る場合は、お助けになると思います。こんな岩稜を一旦登り切ると、無名の(?)のピークに至りました。後でヤマレコのログを見ると「秩父剣ヶ峰」という名がついています。展望はありませんでした。
登山道をもう一度下って登り返すと、T字路に至りました。道標があり、右は「猪狩山・古池・三峰口駅」、左は「御岳山・大滝」、来た道は大滝(強石)となっています。そこから目前の御岳山頂まで約1分、弾む足で駆け上がり、正午きっかりに登頂しました。石積みの台の上に小さな社があり、その傍らに半鐘、後方に方位盤があります。それを見る前に目を奪ったのは、両神山の威容。2次元のシルエットではなく、迫力の3次元で、隆々たる山体を見せています。
山頂でゆっくりと展望を楽しみました。小鹿野の二子山はすぐに判りましたが、方位盤がよく読めなくて、奥秩父の峰々は同定できません。飛龍山は分かりましたが、雲取山は樹木に隠されていました。こうした展望もさることながら、何とも心地よい山頂です。空がきれいだったこともありますが、清浄な空気が雑念を吹き飛ばしてくれたような感覚がしました。ここはスピリチュアルな場所なのでしょう。瞑想し、地球のこと、日本のこと、家族のことなどを祈りました。
山頂を辞す前に、鐘を鳴らしました。その余韻を耳に、来た道を少し戻って、三峰口駅方向に尾根を下り始めました。山頂直下の岩場はすぐに終わりましたが、やせた急勾配の尾根が続きます。そして尾根道が終わると、山腹の急斜面。その急斜面をジグザグに歩けるのはありがたいのですが、道幅が狭く、しかも斜面と同化気味です。スピードが付き過ぎないよう、小股でちょこちょこと下っていきました。このルートは、登りに取る方が歩きやすいかも知れません。
送電鉄塔三峰線26号にも好展望がありました。リュックを下ろして、お茶を一服。ところが、さらに1分下ったところに、もっと素晴らしい展望地がありました。荒川右岸域の山々と河岸段丘の眺望が見事です。三峰口駅を見下ろすと、行き違う2台のバスが見えました。ここは標高約420m。ちなみに三峰口駅の標高は約320mです。きょうの山旅も終盤になりました。最後は古い墓地を通り抜け、贄川の里に下り立ちました。等身大人形のような案山子がたくさんあります。
再び白川橋を渡り、荒川を眺め、三峰口駅にゴールインしました。次の電車は7分後。きょうも無事に山歩きを終えることができて感謝です。これからまた長い電車の旅。明日のために、靴を脱いで足を休めます。
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