縞枯山と茶臼山のミニ縦走区間は、北八ヶ岳の魅力を手軽に楽しめる、初心者向きのショートコースです。
縞枯山と茶臼山のいずれも、山頂自体には展望がありませんが、それぞれに第一級の展望台があります。
アルピコ交通バス:茅野駅 → 北八ヶ岳ロープウェイ山麓駅 北八ヶ岳ロープウェイ:山麓駅 → 山頂駅(坪庭) アルピコ交通バス:茅野駅 ← 麦草峠
縞枯山 , ルート図 , ヤマレコ
縞枯山の天気: 茅野市 , 縞枯山
レポ: 【青春18】北横岳
7月29日(月)、青春18きっぷを利用して、北八ヶ岳の縞枯山に行ってきました。時間の制約のかかる中、バスとロープウェイを利用して、一気に標高2237mの坪庭へ。そして花や虫を愛でながら、縞枯山と茶臼山を越えて麦草峠に至る、楽ちんショートコースです。圧巻は縞枯山展望台からの大展望。貸し切りで贅沢な時間と空間を楽しみ、心の洗濯をしてきました。
甲信方面への定番列車、高尾6時15分発の普通松本行きに乗りました。茅野まで2時間半ほど乗り鉄を楽しむはずでしたが、電車に乗るのは車窓の風景を楽しむ人ばかりではありません。スマホ人間が増えたことで、液晶画面を見やすくするために、窓の日除けが遠慮なく下ろされてしまいます。車内の平和を優先して、しばらくは無風景の旅を我慢我慢。勝沼ぶどう郷に到着すると、おもむろにカメラを取り出し、日除けを少しだけ開けて、南アルプスを覗くように眺めます。
茅野に到着。計画通り北口に出て、SLの後ろ姿と縄文土偶オブジェの後ろ姿を撮りました。トイレを済ませて南口に行きます。アルピコ交通の窓口に行き、北横岳ロープウェイ山麓駅までの切符を購入。昨年より200円値上げされていました。バスはほぼ満席となりましたが、乗客全員が座れました。でも途中で乗った方々は立ち席です。終点のロープウェイ山麓駅では、バスを降りるのに予想外に時間がかかりました。運賃の支払い方式がなんとも非効率なのです。
ロープウェイの運賃は昨年と同じ、片道1400円。何と言うことか、私の前に並んでいた人はすぐに乗れましたが、私は次の便に一番で乗ることになりました。乗客100名+乗員1名という定員を厳格に守っているのでしょう。私はゴンドラの最前部に行き、体が上昇していく感覚を楽しみます。眼下の道を見下ろすと、ここは歩いて登っても楽しそうだと思いました。ロープウェイに乗るのは、時間を稼ぐためです。麦草峠から1本しかないバスを逃すわけにはいきません。
山頂駅を出ると、そこは坪庭という天然の山上庭園。ハイマツや亜高山植物の豊かな夢空間です。同じゴンドラに乗って来た皆さんは、坪庭を散策するか、北横岳に向かいます。私一人だけが坪庭を後に、縞枯山に向かいました。貸し切りになった遊歩道に入り、まず縞枯山荘を目指します。明るい日差しに誘われた虫たちも「撮ってちょうだい」と言わんばかりにお出ましです。カメラを向けても人通りがほとんどないので、まず逃げられることはありません。
山頂駅から正味15分ほど木道を行くと、青い屋根の縞枯山荘が見えてきました。緑の草原に佇む青い三角屋根がメルヘンチックです。山の花のイラストをあしらったバンダナ、オサバグサをデザインした山バッジなどが売られています。テーブルでコーヒーなどを飲んでいる人々もいました。でも私の関心は、この広々とした草原(八丁平)で虫と出遭うこと。するとその願いに応えるように、キベリタテハがやってきました。1回、2回、3回と私に接近して、飛んで行きました。
縞枯山荘からわずか5分ほどで、雨池峠に到着。ここで遊歩道と別れ、登山道に入ります。北八ヶ岳らしい、大小の岩石がゴロゴロした登山道。実を言うと、私はこのような道を好きではありません。土を踏んで歩く方が好きなのです。岩から岩へ、段差の大きな個所には巻き道がありました。巻き道は草や苔に覆われて足に優しそうです。でも多くの人がその巻き道を歩くと、そこが荒れて岩石が露出するようになるでしょう。大人は登山道本線を歩きましょう。
登山道は美しいシラビソの森にあります。「花の百名山」(田中澄江氏著)で紹介されたオサバグサも、所々で見つかりました。今は花期でないのか、花はありません。ゴゼンタチバナは、ほんの少しだけ咲いていました。花は乏しくても、スギゴケの仲間がきれいです。森の昆虫も、本当はたくさんいるはずですが、見つけたのはほんの僅か。見つかってくれてありがとうと言いたいほど。明るい場所にはトンボがたくさんいました。ムツアカネばかりですが。
登山道をエッチラ登ること30分ほどで、縞枯山に登頂しました。「ここは縞枯山(2403m)」と書かれた標識があります。これがなければ、山頂を知らずに通り過ぎたでしょう。ここからは楽しい稜線歩きです。俄然、展望が利くようになりました。南アルプスの峰々が、普段見慣れた順序とは違う並びになっています。向かって左より、鳳凰三山、北岳、甲斐駒ヶ岳、仙丈ヶ岳の順です。中央アルプス、御嶽山、乗鞍岳、そして北アルプスの一部も望めました。写真をどうぞ。
「縞枯山頂と展望台の中間部」の標識を過ぎると、縞枯帯に入りました。樹木が見事に枯れています。この縞枯帯は年々少しずつ移動するのだそうです。きょうの目的の一つは、この縞枯帯を現場で見ること。木々がこのような枯れ方をするのは、山や森にとって何かメリットがあるのでしょうか? おそらく人間の活動と直接の関わりはないと思いますが、野生の生き物たちにとってはどうでしょうか? 無数の枯れ木をまじまじと見て、自然界の不思議に思いを寄せました。
さて、いよいよ南八ヶ岳が視界に入ってきました。南アルプスには、昨年登った日向山の白砂も望めます。そして「縞枯山展望台分岐」から5分ほどで、展望台に立ちました。南八ヶ岳、南アルプス(北部)、御嶽山、中央アルプスの峰々がずらり。最高の気分です。山容に特徴のある、金峰山・瑞牆山、浅間山・黒斑山などもはっきり見えましたが、両神山を探すのを忘れました。ここで昼食にします。思うところがあって「あげパン番長」を持ってきました。
縞枯山展望台では、30分あまり、最高の時間を過ごしました。おもむろに展望台を辞し、茶臼山に向かいます。20分ほど南に下ると「縞枯・茶臼の鞍部」に至りました。道標の腕木の一つが、五辻・ロープウェイを指しています。茶臼山方向に進むと小さな縞枯帯がありましたが、ここは枯木に混じって若い樹木が育っていました。枯れた木々が倒れて分解し、山の肥やしになっているのかもしれません。その先でシラビソ帯に入り、15分ほど登り返すと、茶臼山の山頂でした。
茶臼山の山頂も、頂上感のない山頂でした。近くに展望台があるので、そこで休憩する人が多いようです。私は縞枯山展望台で十分に満たされてきたので、このまま麦草峠に向かいます。途中、中小場(2232m)という峰で小休止しました。ここがきょう最後の展望地。西天狗岳と東天狗岳を眺めまます。この中小場でも縞枯れを見ることができました。山頂の岩に、四等三角点の金属票が打ち付けてあります。空は曇って、見るものすべてが鈍い色になっていました。
帰りのバスは、15時20分発の茅野駅行き、1本だけです。私は時間調整をしながら、ゆっくりと山道を下っていきました。大石峠を過ぎると、再び木道が現れます。この辺りは、生きた木々と枯れた木々とが混ざりあっていました。最後に「茶水の池」をちょっとだけ見物して、メルヘン街道こと国道299号を横断し、麦草峠バス停に到着しました。時間があれば、広々とした「麦草園地」で山野草をさがすことができたかもしれません。これはまた次回の楽しみにします。
バスは麦草峠が始発地なのですが、一旦、白駒池入口まで行って戻ってきます。その白駒池入口でバスに乗った人たちの一部は座席を得られず、車内後部の段差に腰を下ろしました。下山後の疲れた足で、茅野駅まで70分以上も立ち続けるのは気の毒です。きょうは月曜日ですが、土休日にはきっと増便が出るのでしょう。私は窓ぎわできょうの山歩きを振り返り、楽しい思い出を反芻します。いつしか空が晴れ渡り、北八ヶ岳は蓼科山まで美しい色彩で望めていました。
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