三方山は、青梅丘陵ハイキングコースのハイライトです。伐採された北東面に展望があり、奥武蔵、都県境尾根、青梅の山々をはじめ、空気が澄んでいれば男体山や筑波山を望めます。
オキジョウゴは、吹上トンネルと、成木川と、黒沢川に囲まれた小さな山域にあります。ゴルフ場開発と石灰石採掘の狭間に残された、貴重な山域です。
都バス・西武バス: 東青梅駅 ← 青梅第七小学校前
地理院地図: 三方山
三方山の天気: 青梅市 , 石神前駅 ,
レポ: 青梅丘陵 , ノボリオイゾネ
このところ、青梅の山にハマっています。始まりは、ニホンカモシカを訪ねて12月2日に歩いたノボリオイゾネ。WEBでは得られないワクワクがいっぱいのルートでした。そして、翌週歩いた成木尾根。多くのハイカーが歩いたにもかかわらず、各所に不可思議が満載でした。ただ、いずれもカモシカと出遭えなかったのが心残り。そこで三度目のカモシカ探訪を企て、三方山から吹上峠を経て、オキジョウゴに至るルートに臨みました。ところが吹上峠への道を見つけられず...
計画したルートは、石神前駅より三方山に登り、41号鉄塔から作業道を辿って吹上峠へ、そして指倉峠を経てオキジョウゴに至るというものです。今回は友人を誘って、二人で歩くことにしました。12月23日の天皇誕生日、天気は快晴。八高線の車窓から紅富士を望み、心身ともベストコンディション。青梅線を走行中に友人とメールで連絡を取り、車内集合しました。そして石神前駅で下車。可愛らしい無人駅です。
石神前駅から国道411号(青梅街道)に出て、石神社(いしがみしゃ)に立ち寄りました。開放感のある境内の奥深く、巨大なご神木が威厳豊かに立ち並んでいます。青梅市指定天然記念物の大イチョウは、葉を落とした冬姿。氷点下まで下がった空気は研ぎ澄まされ、雑念の湧く余地はありません。
石神社を出て、踏切を北へ渡り、林道に入ります。杉か檜か忘れましたが、すらりと背の高い植林帯でした。空は明るくても地面はまだ暗く、平行して流れる小川のすばらしく澄んだ水を撮影することはできません。踏切から10分余りで、大きな分岐点にやって来ました。右の道が一般向けのハイキングコースですが、直進路もハイキングコースとなっています。私たちは一気に三方山を目指すつもりなので、直進しました。
その分岐から10分弱で木橋を渡ると、山道になりました。そして沢沿いに行けるところまで行き、踏み跡がはっきりしなくなると、ここぞと思う尾根に取り付きました。三方山の一つ西の尾根だと思います。周囲の尾根の上部には日が当たり始めていました。そして尾根の中心を外さないように登ること約30分、小さなコブの上に出ると、目の前に青梅丘陵ハイキングコースがありました。
三方山は、朝の光があたかも後光のようにまぶしく、その山頂の輪郭を浮かび上がらせていました。巻き道を離れて誘われるように頂へと登り、最初の目的地に到着。山頂の三角点付近には展望がありませんが、ほんの少し北に行けば、北面から東面にかけて、すばらしい眺望があります。友人がまず東京スカイツリーを見つけ、私は筑波山を見つけました。その手前には、これから歩く青梅の山々が尾根を折り曲げながら連らなっています。このときは、右手から朝日を浴びて、初々しくさえ見えました。
ここの展望がよいのは、斜面が広く伐採されているからです。三方山に登らなくても、巻き道からも同様の展望が得られます。私たちは「企業の森」の看板の立つベンチまで行って、お茶にしました。奥武蔵の山々も望めます。ここに、どなたが撮影したのか、日光男体山の写真がありました。きれいに写っています。雷電山で撮影とありましたが、よく目を凝らしたら、ここからも男体山が見えていました。手持ちのコンパクトカメラで写るでしょうか? 帰宅してPCモニタで見るまでは分かりません。
電線のない鉄塔(41号)の下で、青梅丘陵ハイキングコースと別れます。その先、林道の終端を横断して少し下り、登り返すと送電鉄塔12号が見えてきました。一般に送電線の下は樹木を伐採するので、見通しがよくなります。送電鉄塔12号の下からは、13号から16号までと、高水山、岩茸石山などを望めました。
ここまではすべて順調でしたが、問題はこの先でした。地理院地図には、390m台の峰の手前で右に分岐する破線の道があります。この破線は、390m台峰の南面の谷をトラバースして、南東の尾根を辿り、吹上峠に続いています。ところがこの道が見つからないまま、390m台の峰に着いてしまいました。頂上に基準点 No.54 があります。同地図には道が示されていませんが、この峰から南東に下りて吹上峠に行くという記事があったので、その踏み後を探しましたが、これも見つかりませんでした。
そこで来た道を戻って、もう一度、地理院地図に破線で示された道を探してみました。でも残念、見つからなかったのであきらめて、基準点 No.54 から北東に伸びる尾根に進むことにしました。ルート変更です。さて、行ってみるとこの尾根道はとても明瞭でした。現在地も常によく分かります。この尾根を最後まで進み、林道に下り立ちました。旧吹上トンネルに続く道です。
さて、吹上峠は目前ですが、あくまでも山道にこだわったので、当初予定していたルートへの復帰を目指しました。これはうまく行き、314m峰の西方、約150mの地点で復帰できました。私たちは南下して来たのでここで左折しましたが、当初の計画通り北上していれば、ここは右折点です。ここから少し下って登り返すと、314m峰に立ちました。基準点 No.57 があります。基準点 No.54 から基準点 No.57 まで、計画では30分程度を見込んでいたのですが、1時間近くかかってしまいました。
基準点 No.57 の先、鳥獣保護区の看板から左に進みます。なだらかな尾根歩きを楽しんだ後、少し急下降すると、第二の目的地、吹上峠でした。新旧の吹上隧道ができる前は、多くの人や物資が行き交った峠です。今見ると暗くて見通しが悪いので、追い剥ぎや山賊が待ち伏せしていたら怖そうだな、と思いました。吹上峠から北に上ると、何か謂れのありそうな露岩がありました。人影を隠せそうなサイズです。岩の利用者は、番人、強盗、山の神、妖怪、その他何でもありそうに思えました。
吹上峠の北、310m台の峰で、道は右折します。この峰で昼食にしました。林を貫く光線の具合や小鳥の声など、雰囲気は好かったのですが、座っていたら体が冷えました。寒い場所です。食べ終えて熱い紅茶を飲むと、すぐに立ち上がりました。これより正木沢(まさきざわ)峠を目指して、はじめ東へ、そして南東方向へと進みます。するとすぐに、日当たりのよい場所がありました。さらにそのすぐ先にも明るく広い場所があり、いずれも昼食の好適地だったと思います。
正木沢峠は、尾根歩きをするハイカーの立場から見ると、標高がザクッと落ちる吹上峠のように、ドラマチックな場所ではありません。石仏や祠の類など、立ち止まって見るようなものもないので、標識だけをチラリと見て、通過しました。地理院地図には、峠の両側に破線の道が里まで引かれています。その道にどんな魅力があるか、四季折々に歩いてみれば、発見するものがあるかもしれません。
正木沢峠北の340m台の峰では、展望がありました。南西の空に聳える大岳山がよく目立ちます。ほぼ西方にキリッと立つのは雷電山でしょうか。成木尾根やノボリオイゾネは、樹木に隠されてほとんど見えません。この峰には、基準点 No.51 が設置されています。ヤマレコでは、無名峰(むなみね:350m)とされていますが、地理院地図ではこの峰に350mの等高線はありません。
さて、この日二つ目の314m峰を通過するとすぐに、指倉峠(さすくらとうげ)でした。稜線の窪みを峠道が過ぎっています。なぜか、北に下る道は木の枝で通せんぼ。でも、もし通行できないのなら、その旨を書いた札を立てるでしょう。ハイカーが誤って入らないようにするだけのものかもしれません。付近には広葉樹の落葉が積もって、雰囲気は悪くありません。先ほどの正木沢峠と併せ、峠道ばかりを行ったり来たりしてみるのも、いつか将来の楽しみになりそうです。
指倉峠から10分、ようやく最後の目的地、オキジョウゴに到着しました。山頂が小広く伐採され、その切り株が腰を下ろせる高さでいくつも残されています。地元の小学生やお伽噺の動物たちが、ここを青空教室として野外授業を受けているのかもしれません。午後の明るい日差しが、周辺の立ち木の陰を使って、地面にいくつもの縞文様を描いていました。友人と私は、それぞれの切り株に腰を下ろし、バス待ちの時間調整を兼ねて、写真を撮り合ったり、お茶を飲んだりしました。
下山は、荒田(あらた)峠経由にしました。「峠」という文字に引かれたからですが、実際に来て見ると、あまり峠らしく見えません。でも荒田峠と書かれた私製の標識があったおかげで、下山路がすぐ見つかりました。すぐ下に見えている荒田林道まで藪っぽい斜面を下ります。林道に下り立ち、荒田峠を振り返ると、逆コースで登路を見つけ出すのは難しそうに思えました。
荒田林道は、雨で土がえぐられ、荒れた林道でした。おまけに廃車をはじめ諸々の廃棄物が豊富で、幻滅ムードも満点。次回、この林道を通るのは遠慮しておこうと思います。青梅第七小学校の校庭では、サッカー少年たちの元気な姿が見られました。子供たちの賑やかな声には、純粋の生命力を感じます。これにより、脳内の残留イメージが瞬時に入れ替わったのは幸いでした。気分よく歩いて行くと、道の突き当たりにバス停がありました。
きょうは予定しなかった回り道をして、時間と体力を消耗し、謎も残りました。いつかもう一度歩いて、謎を解きたいと思います。友人と二人で読図しつつ歩いた一日は、とても思い出深いものになりました。
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