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鋸山・江月水仙ロード

保田の砂浜に咲く水仙

保田の砂浜に咲く水仙

千葉県の鋸南町は、日本の3大水仙群生地の一つとされ、「水仙ロード」と呼ぶ町道沿いに、延々と水仙の群落が続いています。

バス停 京急バス: 京急久里浜駅 ⇔ 久里浜港

船 東京湾フェリー: 久里浜港 ⇔ 金谷港 登山口

地図 地理院地図: 鋸山 , 江月水仙ロード入口

天気 鋸山の天気: 鋸山 , 鋸南町


コース & タイム 鉄道駅 京急久里浜駅 バス停 7:56 == 8:05 久里浜港 フェリー 8:20 ~~~ 9:00 金谷港 9:04 --- 9:10 浜金谷駅 9:11 --- 9:24 自然歩道・車力道分岐 9:25 --- 9:37 観月台 9:38 --- 10:10 石切場跡 10:30 --- 10:40 東京湾を望む展望台 10:56 --- 11:13 鋸山 11:16 --- 11:36 石切場跡 11:43 --- 11:55 ラピュタの壁 1:57 --- 11:59 北口管理所 12:01 --- 12:01 百尺観音 12:02 --- 12:07 山頂展望台(地獄のぞき、他)12:20 --- 12:33 日本寺大仏 12:40 --- 12:56 仁王門 12:57 --- 13:40 保田駅 13:41 ---{水仙ロード}--- 14:36 水仙ひろば 14:38 ---{水仙ロード}--- 15:53 保田駅(登山終了)鉄道駅 16:42 +++ 16:45 浜金谷駅 16:49 --- 16:55 金谷港 フェリー 17:20 ~~~ 18:00 久里浜港 バス停 18:15 == 18:25 京急久里浜駅 鉄道駅
※歩行時間には道草と撮影の時間が含まれています。
鋸山 のこぎりやま:標高 329m 単独 2019.12.24 全 6時間49分 満足度:❀❀❀ ホネオレ度:❢❢

12月24日(火)クリスマスイブの日、千葉県鋸南町の鋸山と江月(えづき)水仙ロードを歩いてきました。水仙がメインで、鋸山はついでの登山です。計画にあたって、当然ながら、水仙ロードの開花状況を知りたいと思いました。ところが、ネット検索で適切な開花情報が見つからなかったので、昨シーズンの開花情報を見て、晴天のこの日に行くことにしたものです。残念ながら、江月水仙ロードの開花率は1%未満、行くのが早過ぎました。

段落見出し 久里浜港からJR浜金谷駅へ

スタート地点の浜金谷駅へは、東京湾フェリーを利用することにしました。交通費は陸路で行くのとほとんど変わりませんが、心理的には近道であること、都心を通過せずにすむこと、海から富士山を眺められることなどの魅力で勝ります。本当は久里浜港7:20発の便に乗りたかったのですが、この日は1隻だけで運行するドックダイヤの日。その便はなくて、8:20発の便に乗船しました。客室はすいていて、好きな座席に何度も移動することができました。

明るく晴れ渡った東京湾の空。青い海原に浮かぶ大小の船、富士山、天城、丹沢、三浦半島、房州の山々をゆったりと眺めます。実は、甲板を歩き回って喜んでいるのは私だけでした。少しはずかしい気もしますが、初めて東京湾フェリーに乗ったのですから、しかたがありません。船内のアナウンスがあり、金谷港には9時ごろの到着予定、ということでしたが、実際に下船口が開いたのは、何と、9時0分ちょうどでした。切符は回収されます。

これより浜金谷駅へは約500m、徒歩6~7分です。海鮮料理を看板にしている食堂などをチラチラ見て、鋸山に向かって歩いて行くと、駅が見えました。写真で見た通り、パステル調水色の屋根瓦。シンプルな平屋建ての駅舎。そのまま絵本の挿絵になりそうです。この風土に似合っているのでしょう。京浜急行も、もうちょっと駅に風情を持たせてくれないかな? 余談はさておき、この浜金谷駅で、登山ログを開始しました。携帯は機内モードにしてあります。

段落見出し 石切場跡にすてきな記念物

さて、鋸南町も今年の台風15号・19号では甚大な被害が生じました。私のような他所から来たハイカーが、そのことを身をもって感じるのは、根こそぎ倒された数々の大木や、登山道の崩壊などの現場においてです。浜金谷駅から歩いて来て、まず初めにその影響に出遭うのは、車力道と関東ふれあいの道の分岐点。車力道は通行止めなので、後者を登ります。まず一本だけでも登山路を確保するため、骨を折ってくださった地元の方々に感謝です。

そのような努力の跡は、観月台を過ぎた頃から特に目立つようになりました。普通に注意して歩けば、安全に歩けるようになっています。ぬかるんだ道では足を滑らせないように注意が必要ですが、これもすべて台風の影響によるものかどうかは分かりません。足の置き場に困るような、水と泥でぐちゃぐちゃの個所も多数ありましたが、冬の表丹沢に比べたら、ずっとマシです。どんな障碍も、ほんの少しの我慢で通過できました。

鋸山で最も印象深かったのは、石切場跡です。人の手で切った絶壁ですが、その断崖直下の舞台に立ってみると、神話かファンタジーの時空間に迷い込んだような感覚になりました。かつては人々が働いていた作業現場。ここに放置された機械が3台あります。風雪を経て完全に錆び切り、外れた車輪が転がり、例えて言えば古代文明の遺跡のように、不思議な存在感があります。ダ・ビンチの設計による機械の残骸みたいでもあり、一種の愛おしさすら覚えました。

段落見出し 東京湾を望む展望台

次は「東京湾を望む展望台」です。「地球が丸く見える展望台」と呼ばれたこともあったようですが、同様の名が全国各地で使われて、ネームバリューがなくなりました。この展望台の真の素晴らしさは、文字通り東京湾を広々と望めることです。東京湾が見える場所は、神奈川県や東京都にいくらでもありますが、私にとって、この視点から東京湾を見るのは初めて。何もかもが新鮮です。特に保田の白浜と、内房の入り組んだ海岸線が美しく、印象的でした。

貸し切り状態の「東京湾を望む展望台」に腰を下ろします。熱い紅茶を飲み、眺望と開放感を楽しむことにしましょう。富士山は見えなくなりましたが、海に浮かぶ船を眺めているのも、なかなか楽しいものです。遠目には静かにゆっくりと走る船たち。西方から白いフェリー「しらはま丸」がやって来ます。11時きっかりに金谷港に着くことでしょう。その「しらはま丸」の姿が大きくなり、入港するのを見届けて、立ち上がりました。鋸山三角点峰に向かいます。

鋸山は、狭い意味では一等三角点のある329m峰のことですが、広い意味では一連の峰々全体を擁する山体を言うのでしょう。でなければ「鋸」の名が付くはずがありません。実際その後、幾度ものアップダウンを経て、やれやれと思いながら三角点峰に到着しました。「房州低名山 鋸山」の標識が立ち、北面に展望があります。すでに眺望に満足し、お腹も満ちていたので、三角点石にタッチだけして直ぐに引き返し、再び石切場跡に向かいました。

段落見出し その名も日本寺

鋸山329m峰から保田駅に行く場合、日本寺を経由するルートと、経由しないルートとが可能です。私は今が最初で最後の機会かもしれないと思い、前者を選びました。一旦石切場跡まで戻り、さらに少し下がったところの分岐より、日本寺に向かいます。途中で「ラピュタの壁」という絶壁を見ることができますが、もちろん無料です。北口管理所で拝観料600円を支払うと、「鋸山日本寺案内図」を渡され、通行止め箇所に赤ペンで線を引いてくれました。

日本寺の訪問記は省略します。一つ残念だったのは、千五百羅漢道が通行止めだったこと。拝観料を割り引いてほしいと思いました。よく知られた「地獄のぞき」の断崖は、日本寺境内にあります。さてさて、どんな風景が見えるのでしょうか? 突端の手すりに掴まって下を覗くと、見えたのは .... 地獄ではなくて、先ほど通った北口管理所でした。素晴らしいのは、むしろ展望台の方です。太陽光を反射してまぶしく輝く房総の海を見ることができました。

「鋸山日本寺案内図」の裏側に、日本寺の由来が印刷されています。これによると、「日本寺は今から約1300年前、神亀2年(725年)高僧行基菩薩によって開かれた関東最古の勅願所です。」「残念なことに、昭和14年11月、登山者の失火によって貴重な国宝仏像と堂宇をすべてうしなってしまいました。」ということです。私には『登山者の失火』ということばが、重く感じられました。

段落見出し 水仙をたずねて

日本寺から保田駅へは、随所に道標が立っていて、迷いはありません。表参道から農道のような道に出ると直ぐ、「水仙橋」があり、その袂にスイセンの一塊が植わっていました。でも花はありません。これは遅咲きの水仙かな? 気にもせず、駅に向かいます。開放感のある空、のどかな田園風景。季節がらか、人の姿は見えません。気持ちの良い空気を吸って、足が弾みます。途中から線路沿いの道に入りますが、初めて内房線が単線であることに気づきました。

保田駅は、駅舎が浜金谷駅に似ていました。駅名板に水仙が描かれています。ここからは本日のプログラム第2部、江月水仙ロードと江月山登頂です。駅前の観光案内所は定休日でしたが、駅前広場の看板に水仙ロードへの行き方が図示されていました。水仙ロードに至るまで、迷いそうな個所は全くありません。途中、家々の屋根のブルーシートが目立ちます。今年襲来した台風による、家屋の被害の夥しさを、今もなお各所に窺えました。

さて、いよいよ水仙ロードです。道沿いに密植するスイセンの優し気な緑色。うれしくなりますが、花はどこで咲いているのでしょうか? この先の大群生地でしょうか? 飛び飛びに、わずかながら咲いている水仙を愛でたり、撮影したりしつつ、地蔵堂へと向かいました。ところがどこまで行っても開花状況は変わりません。ようやく悟りました。今年は開花が遅いのだ! 観光客も私以外に見当たりません。私は来るのが早すぎました。

段落見出し 浜辺へ

「水仙ひろば」まで来て、あきらめてUターンしました。もう江月山に登る気力も失せました。保田駅までトボトボ帰って、登山ログを終了。次の電車までかなり時間があります。浜辺に行って、最初のスイセンが流れ着いた砂浜を見ておきましょう。駅からわずか200mの浜辺に行くと、まもなく沈もうとする太陽が、海原に光の一本道をつくっていました。きれいな砂浜に、波が寄せたり引いたりしています。海水に手をひたすと、とても温かく感じました。

砂のたまり場に、数株の水仙が咲いていました。最初に流れ着いたスイセンも、きっとこんな場所で咲いたのでしょう。初めてそれを見た人々は、何を思ったでしょうか? 生まれ故郷はどこだろうかと、海のかなたを見たかも知れません。細かなさざ波が、オレンジ色にきらめいています。ウミウらしい一羽の水鳥が、繰り返し、繰り返し、潜ったり、浮き上がったりしていました。

木の葉ライン

↓ 紙芝居



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