明星ヶ岳は、箱根外輪山を構成する連山の一峰ですが、山頂からの展望に恵まれず、その山頂を主目的地として登る人は決して多くありません。
箱根大文字焼きが行われる裸地は、箱根屈指の好展望地です。また奥和留沢見晴らしコースは、比較的歩きやすい登山路がしっかり整備されています。
地理院地図: 明星ヶ岳 , ヤマレコ
明星ヶ岳の天気: 箱根町 , 小田原市久野
レポ: 金時山・明神ヶ岳 , 明神ヶ岳・明星ヶ岳
2026年1月9日(金)、箱根登山電車の宮ノ下駅から、明星ヶ岳を越え、奥和留沢見晴らしコースを下り、富水駅まで歩いてきました。ハイライトは「箱根大文字焼」の行われる裸地からの展望。快晴の空の下、真っ白な富士山と、力ある箱根の山々、眼下には強羅や宮城野の家並みの眺望が欲しいまま。そして明星ヶ岳の「山のあなた」に久野の里を訪ね、咲き始めた小田原フラワーガーデンの紅白梅を愛で、おだわら諏訪の里公園からの雄大な展望を心ゆくまで楽しみました。
今回の計画は、1月8日に実行する予定でした。ところが7日の夕方から片頭痛が生じ、8日になってもその名残りがあったので、9日に延期したものです。結果的には穏やかな快晴日になり、体調も良く、絶好のハイキングコンディション。自宅の最寄駅で初電に乗り、小田原駅までは順調に乗り継いで行きました。ところが何と、箱根登山電車が運転見合わせ! 箱根板橋駅での車両故障の影響とのこと。それでも25分遅れで箱根湯本行き電車が発車してくれました。
箱根湯本駅で登山電車に乗り換えました。先頭車両に乗ったのですが、車内は冷え切った真冬日のよう。「暖房装置が故障のため、2両目、3両目に分散してご乗車ください」とのアナウンスがあり、2両目に移動しました。こちらはほっかほか。2年後に完全引退する100形でないのは少し残念ですが、ロングシートに座り、レトロ気分をちょっぴり味わいます。向かい側にはずらり女子高生たち。運行は順調で、3回目のスイッチバックの頃は、女子高生たちが皆眠っていました。
宮ノ下駅のホームに下りると、線路を歩いて渡り、簡易改札機をピッと鳴らします。駅舎を見ながら、何年ぶりだろう?と考えましたが思い出せません。(帰宅後に調べると18年ぶりでした。)足湯の湧出口(?)にかじかんだ手を浸すと、ほっかほかの歓迎温度。天下の温泉町、箱根に温かく迎えられたような気がしました。観光地とは言え、まだ8時前、人の姿は見えません。朝の空気は冷え込んでいたので、手袋を着用しました。国道1号へと、坂道を下りていきます。
宮ノ下から早川に下りようと思ってきたのですが、「千仞の谷」を流れる早川に、どこから下りられるのでしょうか? とりあえず国道1号を宮城野方向に歩きながら、下り口を探していきました。続いて国道183号です。八千代橋で、大きな明星ヶ岳をよく望めました。山頂部が滑走路のように平坦です。橋から蛇骨川を見下ろすと、青い空を映していました。そして橋の向こう、木賀温泉入口バス停の先に、手書き道標がありました。「どうがしまへ5分」と書かれています。
あまりメンテナンスされてはいないような石段を下りていきます。ここで怪我をしては笑い話にもならないので、慎重に行きました。川岸まで無事に下りると、自ずと右手に見える吊橋に誘われます。ちょっとわくわくしながら吊橋を歩くと、少しだけ左右に揺れました。早川の渓流を眺めながらの楽しい揺れです。重量制限は180kg。渡り切って、対岸の狭い遊歩道に進むと、宮城野(左)、宮ノ下(直進)、底倉(後)を指す道標がありました。宮城野方向に進みます。
ここから「早川渓谷自然探勝歩道」を登っていきます。左手に瀬音を聞きながら、時に小鳥の姿を追いながら、湿った歩道を登っていきました。道のわきに管理番号の小さな標識があります。ゆっくり7分ほど登ると、車道に飛び出しました。老人ホームのすぐ近くです。大きな案内板と、明星ヶ岳70分と書かれた道標とを見て、明星ヶ岳登山口に向かいました。この道では空が開け、行く手の高みには明星ヶ岳を、振り返り仰ぐと、二子山・箱根駒ヶ岳・神山を望めました。
宮ノ下駅から小1時間で「明星ヶ岳宮城野登山口」にやって来ました。道標に明星ヶ岳65分とあります。いざ、ここからが本番。登山道は概ね明るく、左右に延々と箱根笹が繁り、50mごとに管理ナンバーの小さな標識があります。道はかなり酷使されてきたのでしょう、大小の岩石を踏んで体をヨイショと持ち上げる場面が多く、登山道としての歴史を感じさせられます。右手には聖岳のシルエットと金色の相模湾、そして左手には薮や枝に邪魔され、じれったい富士山。
管理ナンバー20番を過ぎると、左に裸地が現れ、視界が大きく開けました。大文字焼の現場です。ようやく富士山をスッキリと望めました。その右に特徴的な金時山、東部外輪山の最高点に明神ヶ岳。でも圧巻は何と言っても、二子山~駒ヶ岳~神山~台ヶ岳と続く箱根中枢部の連山。強羅や宮城野の家並みを抱えて「これぞ箱根」と言わんばかりの眺望です。明神ヶ岳の長い稜線からも見られる風景ですが、ここからの距離感と視角がすばらしく、胸をドスンと打つのです。
大文字焼の頂点から、もう一度眺望を目に焼き付け、山頂に向かいます。標高差にして160mほどですが、もはや急登は無く、心理的には一足で明星ヶ岳の稜線に至りました。そこは、山頂の平坦地で、ヤマレコでは「宮城野登山口分岐」と呼ばれ、ピクトグラム入りの本格的な道標が立っています。その横の案内板には「明星ヶ岳山頂まで約300m」とあります。滑走路のような平坦地を右へ、ちょっと凱旋気分で歩き、山頂の「御嶽大神」石碑に至りました。午前10時です。
さて、明星ヶ岳山頂とされる地点に山頂標はありませんが、説明板が立っています。「小田原方面から見ると真西にあたる山の上に宵の明星が輝く」とのこと。ネット上には、明星ヶ岳の上で輝く金星の写真は見当たらないようですが、どなたか撮影してみてはいかがでしょうか?箱根町側から明けの明星を捉えてもいいですね。私はリュックを開き、菓子パンと熱いレモン紅茶で小休止しました。まぶしい日射し、無風でとても穏やかな時空間。好い日、よい山に来ました。
休憩を終え、奥和留沢見晴らしコースの下山口に向かいます。外輪山の稜線を明神ヶ岳の方向に進むのですが、背の高い笹が道の両側にびっしりと立っているので、空と笹と地面しか見えません。その代わり、風の強い日には笹が防風壁になってくれます。それでも所々で笹が途切れ、富士山や行く手の明神ヶ岳を美しく望めました。笹の海を切り開いて造られた縦走路は、絵本のような風景ですが、大変なメンテ作業の賜物でしょう。ハイカーの私はルンルンと歩くのみです。
ほどなく、奥和留沢見晴らしコースの分岐道標に到着。富士山の方向が景観伐採されていて(上の写真)、最後の見納めと撮影をしました。この分岐で右折して、奥和留沢見晴らしコースに入ると同時に、国立公園の外に出たことになります。そこに逆さ富士の形をした、文字の目立たない標識がありました。「明星登山道」「奥和留沢見晴らしコース」「美しい久野里地里山協議会」と書いてあります。久野(くの)とは、小田原市内の地名で「久野丘陵地帯」としても知られます。
下山の始めは、緩やかな九十九折で、足にやさしい道でした。箱根登山電車のスイッチバックに似ています。その代わり、標高はなかなか変わりません。5分ほど下ると、樹間に青い海を望めました。視界は狭いのですが、相模湾、三浦半島、房総半島、湘南の町並みなどを俯瞰できました。この先、どんな「見晴らし」が待っているでしょうか?そこからさらに8分ほど下ると、ロープ場がありました。急斜面のトラバースで、足場も狭く、すれ違いは困難、あるいは危険です。
分岐道標から30分ほど下ると、林道に下り立ちました。林道名は分かりません。林道を左に50mほど行くと、登山道の続きがありました。はじめは長閑な雰囲気の尾根で、葉の落ちた木々の枝を透かして下界が見えました。これは10分程で終わり、再びロープ場となり、狭い岩場が続いていました。「迂回路」の標識を2度見ましたが、いずれも現実的に迂回路の一択です。これを過ぎると道は緩やかになり、針葉樹林を抜けて再び林道に出ました。これは久野林道かと思います。
道標を見て林道を左に進むと、和留沢橋がありました。下を流れるのは熊木沢です。この橋を渡ったら、道標を見て右に下りていきます。やがて道が緩やかになり、錆びた骨だけの看板を見ると、そのすぐ先に明星登山道の道標がありました。直進を示す赤い矢印は「川増水時エスケープルート」となっています。ここで登山道は右折し、熊木沢に出ました。丸っこい岩石ごろごろの沢に少し癒されます。その左岸を3分ほど歩くと対岸に道標が見え、石伝いに渡渉しました。
熊木沢を渡ると、すぐに「奥和留沢見晴らしコース登山口」で、駐車場がありました。数十台停められそうですが、車両はゼロ。その少し先で日向林道を右に分け、舗装された和留沢農道に入ります。計画ではここから富水駅までスロージョギングで走り抜けるつもりでした。ところが走り始めてしばらくすると、左右股関節の腱あたりに変な痛みを感じました。どこで傷めたのでしょうか? ここは大事を取って、ゆっくり歩きます。紅白サザンカの咲く、きれいな道でした。
和留沢公民館の前で、再び青い海を望めました。今度は広々と見晴らせます。道端のところどころにスイセンの花が見られるようになりました。私の好きな茶畑があったり、紅白のマンリョウもあったりして、その度に足を止めて休みます。やがて右から日向林道と舟原林道を合わせると、少しずつ車も行き交うようになりました。左手に馬頭観世音の大きな石碑が見えます。いつしか熊木沢は大きな流れになって、久野川となりました。上河原橋で2車線の道路と出合います。
以後は、話を端折ります。上河原橋から先はバス停が道標代わりになりました。和留沢入口、北舟、ざる菊園前、総世寺前、諏訪原と進み、「小田原フラワーガーデン」を通り抜けます。その梅園には見頃になった紅白梅もあり、ほのかな香りを漂わせていました。梅園を出ると、そこはもう「おだわら諏訪の原公園」。丹沢方面にすばらしい展望があります。腰を下ろし、しばしティータイム。最後に公園「楠坂口」から出ると、飯田岡駅を経て、富水駅に無事到着しました。
「奥和留沢見晴らしコース登山口」(駐車場)からの長いロード区間は、残念にも計画通りに走れませんでした。しかも脚をかばってゆっくり歩いたので、想定外の時間を要しました。特に和留沢入口(上河原橋)から富水駅までの区間では、一般歩行者にも追い抜かれたほどです。それだけに、富水駅にゴールインした時は、完歩できた喜びがいつも以上に湧いてきました。今回も無事に帰宅できて感謝です。なお、脚の痛みは、翌日には消えていました。
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