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金沢林道偵察

うす目を開けたハナネコノメ

うす目を開けたハナネコノメ

金沢林道は、正式には林道金沢線と言います。宮ヶ瀬金沢に沿う林道で、林道早戸川線とともに、野鳥撮影では人気の道になっています。

金沢林道は、2016年1月に発生した土砂崩れにより、通行止めとなりました。今も修復工事が続いていて、歩行者と自転車を含む一般車両の通行止めゲートが設置されています。

土砂崩れの画像 2016年1月22日撮影
路肩崩落の画像 同上

バス停 神奈中バス: 本厚木駅 ⇔ 宮ヶ瀬 登山口

地図 地理院地図: 林道金沢線起点 , ヤマレコルート図

天気 林道金沢線の天気: 清川村 , 宮ヶ瀬

関連記事 レポ: 栂立ノ頭(2016年1月22日)


コース & タイム 鉄道駅 本厚木駅 バス停 6:55 == 7:47 宮ヶ瀬 7:50 --- 8:28 金沢橋 8:35 --- 9:09 タロベエ峰 9:10 --- 9:11 新多摩線32号鉄塔 9:21 --- 9:57 金沢渡渉点 10:05 --- 10:29 崩落地復旧工事現場 10:34 --- 11:47 金沢の丸木橋 12:04 --- 12:41 林道金沢線終点 12:45 --- 12:50 鉄塔29号巡視路取り付きハシゴ 12:53 --- 13:34 間違いに気づいた地点 13:34 --- 14:17 巡視路の壊れたハシゴ 14:22 --- 14:38 鉄塔29号 14:44 --- 15:04 巡視路黄色標柱(一般登山道)15:04 --- 15:11 高畑山 15:20 --- 15:51 御殿森ノ頭この上 15:51 --- 16:05 汁垂沢ノ頭最高地点 16:05 --- 16:11 春ノ木丸への分岐 16:11 --- 16:58 岬の突端(ウィンチ)16:59 ---17:31 宮ヶ瀬バス停 バス停 17:50 == 本厚木駅 鉄道駅
※歩行時間には花探しと写真撮影と道間違いの時間が含まれています。
林道金沢線 りんどうかねさわせん 単独  2019.3.2 全 9時間41分 満足度:❀❀❀ ホネオレ度:❢❢❢

3月2日(土)、宮ヶ瀬金沢に春の光を探そうと、金沢林道を歩いてきました。現時点では、金沢橋から300m上流で林道の修復工事が行われていて、歩行者も自転車も通れません。そのため、タロベエ峰経由で迂回し、金沢の上流側から工事現場を見てきました。その後、ハナネコノメを訪ねましたが、まだつぼみの状態で、見頃になるのは、1週間ほど先かと思います。帰路は高畑山経由。ところがスズハラ沢で道を間違え、時間と体力を大きく消費しました。

段落見出し 宮ヶ瀬から金沢橋へ

宮ヶ瀬行き一番バスの乗客は、大部分が山に行く人々。煤ヶ谷で4人、土山峠で2人と、降りて行きました。宮ヶ瀬湖が見えるようになると、水位の低下にびっくり。白いガードレールの道が、深く下りて行くのが見えます。湖底が見えるのではないかと思うほどでした。でも、これまでに横浜市の水不足が懸念されるかのような話は聞いたことがありません。これでも巨大な水瓶の水量には、まだ余裕があるのでしょう。

バスは三叉路で4人、終点宮ヶ瀬でも4人を降ろして、本厚木駅行きになりました。バス停わきの桜の花がほころび始めています。と言っても、まだ1分咲き未満。観光地らしい定員の大きなトイレで用を済ませ、さっそく早戸川林道に向かいました。この林道は等高線に沿って、いくつもの尾根(湛水後は岬)を巻きながら進みます。これを地図で見ると、うんざりしそうなほど長く見えるのですが、歩いてみると湖岸や沢(湛水後は入り江)の景色が美しく、飽きません。

早戸川林道では、早朝から結構な数の人々と出会いました。最も多いのは、バズーカ砲を抱えた野鳥撮影者たち。早戸川橋方面から宮ヶ瀬方面へと歩いて来るので、自ずと顔を合わせます。鳥を多少気にしながら、小さな声で、または無言で「お早うございます。」そして普段は少数の釣り師たちも見られるのですが、水位が低すぎるせいか、きょうは歩いていません。さらに少ないのがハイカー。この日、宮ヶ瀬に帰還するまで、誰にも出会いませんでした。

段落見出し 栂立尾根へ

金沢橋東端が林道金沢線の起点です。2016年1月に起点から300mほど奥で発生した土砂崩れにより、起点から先が通行止めになりました。法面が大きく崩壊して林道に落ち、路肩も激しく破壊されたのです。しかし復旧工事はなかなか進まず、その間に多くの歩行者が自己責任で金沢林道に進入しました。現在は工事用の車両や重機のみを入れて、林道の復旧工事を進めています。起点に設けられた簡単なゲートには、「歩行者・自転車も通行できません」と書かれています。

私は、工事予定期間が書かれていないことだけを見届けて、右手の金沢橋を渡りました。橋の半ばから金沢を眺めます。上流側には、水没して枯れたたくさんの木々が、針の山のようにツクツクと立っていました。また下流側には、V字谷の底に細い流れが宮ヶ瀬湖に向かっていました。これでは釣りどころではありません。もっと言えば、生命感そのものが不在のように思えました。でも、このように谷の干上がったときは、土木工事の好機なのかも知れません。

金沢橋を渡り切ると、栂立尾根の取り付き点です。ここで準備運動をしました。きょうは栂立尾根を送電鉄塔32号まで登り、金沢林道に下りる計画です。崩落が起きなかったら、徒歩でわずか5分ほどの距離を、2時間近くかけての大迂回。いざ、出発です。登り始めの薮を抜け、栂立尾根に乗ると、焼山から黍殻山へと続く、東海自然歩道の稜線を望めました。499m峰で鹿柵を通過。ここで左折するのが金沢林道への最短路ですが、鉄塔32号まで行って休憩しましょう。

段落見出し 金沢林道へ降りる

鉄塔32号は、栂立尾根では楽しみな休憩地の一つです。大体、送電鉄塔の下は見晴らしが好いものですが、ここでは宮ヶ瀬湖、虹の大橋、仙洞寺山などを望めます。休憩する前にタロベエ峰を表敬訪問し、鉄塔のコンクリート台座に腰を下ろしました。ここに座ってお茶を飲んだりした過去の時間を回想します。この台座は、私のお気に入り。数えてみると、ここに座るのは今回が5回目です。しばらく思い出に浸ってから、立ち上がりました。来た道をほんの少し戻ります。

小さな鞍部まで戻ると、3方向に踏み跡があります。直進は金沢橋に至る道。中央と右の踏み跡は、仕事道です。栂立尾根を初めて歩いたとき、右の踏み跡だけが明瞭で、これに引き込まれて、金沢に下りてしまいました。少し進むと尾根沿いに立つ鹿柵にぶつかり、誤ってこの鹿柵の右斜面のジグザグ道を下ったのです。今再び歩いてみると、道形は薄くなり、斜面と同化した箇所も多々ありました。最近に作業のなされたような形跡は見られません。慎重に下ります。

斜面を下りきると、小沢に丸木3本の小橋が架かっています。ちょっと怖そうだったので、小沢に下りて渡りました。その先の仕事道は明瞭です。金沢左岸に至ると、林業の白い看板が2枚立っていますが、左の「公社造林地」の看板に現在地が示されています。金沢の流れは光にあふれ、唱歌「春の小川」の雰囲気。きょうの水量はあまり多くなく、天然の飛び石を踏んで、容易に右岸に移れました。斜面を登って、金沢林道に上がります。31号巡視路の黄色杭のすぐ近くでした。

段落見出し 復旧工事現場とハナネコノメ自生地へ

まず、林道を下って復旧工事現場のすぐ手前まで行きました。工事関係者の車両2台の他、重機類も入っているので、崩落した土砂の除去と路肩の修復はすでに完了したのでしょう。きょうは長いクレーンを使って法面の修復工事をしていました。いつ再び崩れるかもわからないような斜面に擁壁を造成するのですから、並みならぬ緊張感が漂っています。行って見るまでは、休工日なら歩いて通れるかな、と思っていたのですが、それは自粛すべきだと、強く思いました。

次は一転して、ハナネコノメ探しです。いくつかのWEBサイトで自生地の写真を見ていたので、その場所はすぐに分かりました。鵜の目、鷹の目で探します。ハナネコノメの花はとても小さいので、初めての人が見つけるのはちょっと難しいかも知れません。この日、きれいに咲いた花は見つからず、わずかに目を開けたつぼみばかりでした。でも、よく見るとたくさんあります。これをマクロモードで撮影して拡大表示すると、つぼみの中に赤い葯が見えます。可愛い!

それからは、金沢の上流に向かって林道を歩きました。何か、春の花は咲いていないかな?と。小さな花も見落とさないように、ゆっくり歩き、ていねいに探したつもりでしたが、見つけたのは赤いヤブツバキと白いアセビの花だけ。どちらも大きく、目立つので。送電線が金沢を越えるところに、丸木橋があります。木製電柱4本を組んでガッチリと造ったもので、ここは安心して対岸に渡りました。大岩に腰を下ろし、きれいな沢の流れを見ながら、熱いココアを飲みます。

段落見出し 巡視路さがしで大ミス!

さらに上流へと歩きます。岩を縫ったり、なめたりしながら流れる早春の金沢。その昔は砂金が採れたという話もあります。ふと、それまで曇っていた空から、サーッと日が差してきました。その瞬間、輝きを放つ水、岩、苔 ... ここは長靴を履いて、濡れることを気にせずに歩いたら、楽しさが何倍にも増しそうです。この辺り、岩の表面にツチグリがいくつもありました。これじゃツチグリと言うより、イワグリだ。そうこうしているうちに、林道終点に至りました。

林道を引き返し、鉄塔29号の巡視路を目指します。取り付きの目印は、林道わきに、金属の梯子と古い木の梯子とが掛けられた堰堤。その堰堤には、イノシシが倒れていました。小石を投げてもびくともしないので、既に死んでいるようです。堰堤に上がり、そのイノシシをしげしげと見ました。目だった出血は見られず、腐敗臭もありません。水を飲みに来て、この堰堤を降りられずに、体力が尽きたのでしょうか? 万一病死だと危険なので、あまり近づきはしませんでした。

この沢を登りながら、巡視路を探しました。しかし、ここで大きなミス! 巡視路を見落とし、沢の本流をどんどん登ってしまったのです。水がなかったので、遡行はさほど困難ではありませんでした。ふと振り返ると、はるか下方に鉄塔29号が見えて、間違いを自覚。悔しいけれども下ります。登りよりもずっと骨を折りながらの下りで、心身ともに疲労しました。巡視路は、あの金属梯子より100mほど遡行した地点から、左俣に入ると直ぐでした。壊れた梯子が目印です。

段落見出し 送電鉄塔29号を経て高畑山へ

疲れたので、壊れた梯子の手前で小休止し、熱いココアを飲みました。気を取り直して、巡視路に進みます。するとプラ階段の始まる地点が、木の枝で「通せんぼ」されていました。上の方で巡視路が崩壊しているのかも知れません。ここは素直に引き下がって、別の尾根を登りましょうか? 例えばワレヤノ沢右岸尾根とか。それでも何らかのリスクは覚悟しないといけません。まずはこの巡視路を「偵察」することにしました。元々これがきょうのメインミッションなのです。

プラ階段に大きな問題はありませんでした。時間が経って、土がしっかり締まったのかも知れません。手前に傾いた鹿戸を開けて通過するところは厄介でしたが、その後は難なく鉄塔29号に至りました。ここは栂立尾根を眺める好展望台です。苦楽の思い出も豊かなその尾根をまじまじと見つめ、しばらく感傷にふけりました。そして引き続き、気を緩めることなく、巡視路尾根を登って行きます。鉄塔より上にプラ階段はありませんが、危険個所は全くありませんでした。

丹沢三峰の一般登山道に飛び出すと、黄色の巡視路杭があります。ここで左折して尾根すじを辿り、高畑山に登りました。大好きなカラマツの歓迎を受けます。すでに時刻は午後3時を回り、美しい西日が差していました。誰もいない静寂の山頂。ベンチでまだ熱いココアを飲みながら、山に来ていることの幸せをしっかり感じておきます。そして地図を広げ、下山路を思案。とりあえず汁垂沢ノ頭まで行き、バスの時刻に合わせてその先の道を決めることにしました。

段落見出し 汁垂隧道の上を歩いて下山

ここから先は、話を端折ります。汁垂沢ノ頭(568m地点)で時計を見て、汁垂隧道の尾根に進むことにしました。途中で栂立尾根を縦に眺められます。今回は、野生の猿とも出遭いました。汁垂隧道の尾根に入る地点を慎重に見極め、やや急勾配の尾根を下ります。汁垂橋を見ながら、汁垂隧道の真上にいることを実感。途中、ヤマザクラの木が2か所に立っています。花を見たいですね。そして、ウィンチのある岬の先端を回り込み、今朝歩いた早戸川林道に上がりました。

午後5時30分、宮ヶ瀬バス停に無事帰還しました。きょうの山歩きは、やや酔狂じみたところもありましたが、終わりよければすべてよし。また新たな楽しい思い出と、反省すべき思い出とを胸にしまい、バスの座席で夢路に就きました。

木の葉ライン

↓ 紙芝居



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