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宝永山

宝永火口

宝永山第一火口

富士山は、活火山です。最新の噴火は、1707年(宝永4年)の宝永大噴火。これによって富士山の中腹に宝永山ができました。

バス停 富士急バス: 御殿場駅 → 水ヶ塚公園(乗り換え)
バス停 シャトルバス: 水ヶ塚公園 → 富士宮口五合目 登山口
バス停 富士急バス: 御殿場駅 ← 御殿場口新五合目 登山口

地図 地理院地図: 宝永山

天気 宝永山の天気: 富士山頂 , 宝永山 , 御殿場口新五合目 , 富士宮口五合目

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コース & タイム 鉄道駅 御殿場駅 バス停 8:35 == 9:28 水ヶ塚公園 バス停 10:00 == 10:29 富士宮口五合目 10:36 --- 10:53 富士宮口六合目 10:55 --- 11:03 宝永第一火口縁 11:04 --- 11:14 宝永第一火口底 11:15 --- 11:52 宝永山 11:56 --- 12:03 宝永山馬の背 12:33 --- 12:35 大砂走り出合 12:35 --- 13:00 須山口下山歩道分岐 13:11 --- 13:29 二合五勺 13:29 --- 13:35 上塚の裾 13:35 --- 13:54 上塚(上双子山) 14:02 --- 14:10 二ツ塚分岐 14:10 --- 14:14 下塚(下双子山) 14:15 --- 14:19 二ツ塚分岐 14:19 --- 14:43 大石茶屋 15:00 --- 15:10 御殿場口新五合目 バス停 15:49 == 16:24 御殿場駅 鉄道駅
※歩行時間には、撮影や道草の時間が多く含まれています。
宝永山 ほうえいざん:標高 2693m 単独 2018.8.30 全 4時間34分 満足度:❀❀❀❀ ホネオレ度:

8月30日(木)、宝永山を訪ねました。富士宮口五合目から馬の背までは、皇太子殿下が歩かれた、プリンスルートと同じです。馬の背からは大砂走りを駆け下り、須山口下山歩道と二ツ塚の両山頂を経て、御殿場口新五合目に至りました。午前中は晴天に恵まれて迫力ある富士山を仰ぎ見ることができましたが、強風が吹きすさび、追い風に助けられたり、横風に脅かされたり。午後は雲が増えて、眺望はあまり優れませんでしたが、広大なお花畑を貸し切りで楽しみました。

段落見出し 山の天気はギャンブル?

事前に調べた天気予報では、「てんきとくらす」がC判定:『風または雨が強く、登山に適していません。』「登山天気」アプリには宝永山の予報がないので、代わりに富士山の予報を見るとA判定でした。前者はA~Cで、後者はA~Eでランク付けしています。このことから、富士山は絶好の登山日和、しかし宝永山は晴れても強風の荒天、と予想されました。そしてこれは現実のものとなります。小田急線と御殿場線の車窓からは、低空に立ち込める厚い雲が見えました。

御殿場駅前の広場に行っても、富士山の方向は雲に隠され、何も見えませんでした。でも行くと決めて来たので、躊躇なくバスの切符を買います。水ヶ塚公園行き往復が1750円。帰りは御殿場口新五合目から乗る予定ですが、往復切符の方が安くなります。切符はプラスチック製になり、汗でシワくちゃになる心配はなくなりました。言われた通り、1番乗場に行くと、私が1番。待ち時間を利用して準備運動をしていると、徐々に列が伸び、25人ほどになりました。

乗り心地の良い観光バスで行けるのかと思ったら、入線したのは、普通の路線バス用の車両でした。同時刻に発車する須走口五合目行きのバスも同じです。私は景色の良く見える、最前列左の高い席に座りました。バスが中央青少年交流の家を過ぎて、長い直線道路に入ると、正面に富士山が姿を表しました。よし、やった! きょうの判断は「当たり」です。もしハズレだったら、それは天気予報のせいにしましょう。山の天気の予想は、しばしば賭け事と似ています。

段落見出し バスで富士宮口五合目へ

8時15分、バスが御殿場口新五合目に停車すると、ほとんどの乗客が降りました。車内に残ったのは3人ほど。そして5名ほどの家族連れが乗り込みましたが、富士宮口から登って御殿場口に降りるのでしょう。バスは太郎坊まで徐行しながら下り、その後は樹林帯をほぼ水平に快走して、予定時刻通り、水ヶ塚公園に到着しました。私はバスから真っ先に下りると、真っ青な空と、右わきに宝永山を従えた富士山の雄姿を見上げました。

さて、空をよく見ると、宝永山の付近に白い雲がかかりそうにも見えます。早く行きたい! でも富士宮口五合目行きのシャトルバスは、今の時間帯には1時間に1本だけ。次のバスは30分後の10時発です。もどかしい気持ちでバスに乗りました。ずいぶんと席が空いていると思ったら、乗客が三々五々乗り込み、発車間際には補助席までほぼ満席。バスが富士山スカイラインこと、県道152号を走る間、車内ビデオで安全登山の講話が上映されました。

9時29分、富士宮口五合目に到着。階段を上がって、レストハウスのテラスに行くと、登山者でいっぱいでした。皆さん、高所に体を慣らすため、休んでいるようです。ガイドから説明を受けるグループや、レンタルの登山用品を受け取る人などもいます。いずれの必要もない私は、直ちに登山を開始。登山口には、大きな文字で、「富士山表口五合目 標高2400M」と書かれていました。富士登山の4ルートのうち、最も標高の高い登山口が、この「富士宮口五合目」です。

段落見出し あっという間に宝永第一火口縁

はじめ、溶岩のゴツゴツした道を歩きますが、これはすぐに終わりました。また富士宮ルートでは、登山路と下山路が共通なのですが、「登り優先」という山の約束を知らない下山者が多くいます。バスの車内ビデオで、山の基本エチケットを教えているのも、富士山ならではでしょう。ともあれ、すでに森林限界の上で、しかも晴天なので、展望は壮大です。ただ雲海も広大で、駿河湾、伊豆半島、御前崎などがすっきり見えなかったことだけが、ちょっと残念でした。

五合目から正味15分ほど歩いたら、早くも六合目でした。標高差にして110mほど登っただけです。雲海荘と宝永山荘の二つの山小屋の前を通ると、富士宮ルートを左に分け、宝永山遊歩道に入りました。ここからは、人の数が激減します。やや下り気味のトラバース道を、マイペースで気分良く歩いて行くと、10分も行かぬうちに宝永第一火口縁に到着しました。宝永山とその大きな火口を一望できる、すばらしい展望地です。311年前、正にここで、大爆発が起こりました。

黒を基調とする富士山の山肌に、赤く焼けた宝永山とその第一火口底。馬の背は、富士山にあって唯一の反り返る大曲線。宝永4年の大噴火は、16日間も続き、大災害となったそうですが、また同じ火口から火を噴くことはないのでしょうか? 富士山は間違いなく活きています。今は小康状態。白っぽい登山道が、滑らかな曲線を描いて徐々に火口底へと下りて行き、その先で大きな「く」の字を描いて、馬の背へと上って行きます。その道を歩く人々が蟻のように見えました。

段落見出し 猛烈な風に煽られて

いよいよ火口に下りて行きます。「足元注意」の標識にも促され、ていねいに足を運んで行きました。でも特に危険な道という訳ではありません。途中、フジアザミの株があり、大きな花が10輪ほど咲いていました。偉大な頭脳を持つ人が、謙虚に頭を下げているようです。火口底に近づくと「落石多発 厳重注意」と書かれた標識がありました。火口の上縁から転げ落ちて来る岩石がないか、注意しながら歩きます。ロープが張られ、火口底の中心部に立入ることはできません。

火口底で休憩していた3人家族が立ち上がりました。お父さんが男の子を背負っています。時々はお母さんと交替するのでしょうか? きっとすてきな家族なのでしょう。無事の下山を祈ります。さて、火口底からは馬の背に向かってひたすら登ります。風が強くなりました。この風は、宝永火口特有の現象でしょうか? それは分かりませんが、登り道の追い風なので助かります。砂礫を踏む足がズリ下がるので、ステップにやや損失感がありますが、大したことはありません。

「く」の字の屈曲部から、ますます強くなった風を、右後方から受けるようになりました。先ほどのお父さんは、ここで逆風を受けながら、よく頑張ったことと思います。馬の背に近づくと、宝永山頂への近道が右に分岐しますが、ここに道標の類はありません。私はもちろん近道を進みましたが、ここからが最も風の激しい区間でした。ようやく稜線に立つと、今度は風で体が飛ばされそう。風上に体を倒し気味に歩いて、きょうの目的地、宝永山頂に達しました。

段落見出し 特別な時間

宝永山頂には、大きな方位盤がありました。富士山は北西。丹沢山地は東。芦ノ湖は東南東。駿河湾は南南西など。これらを全部手でタッチしながら一周しました。あまりにも風が強いので、早々に立ち去ります。宝永山頂から馬の背に向かう稜線では、左から凄まじい横風を受けました。飛ばされないよう、稜線の左はじを小又で徐行。もし突風に襲われたら、とっさに伏せるしかないでしょう。かつて浅間山に登った時、前掛山への狭い稜線上で、同じことを考えました。

馬の背では、地面に座って一休みしました。あたりに草木は1本もありません。あるのは、黒っぽい大小の岩石とその破片と無数の石粒。それと青い空、白い雲、吠え猛る風。改めて宝永火口を眺めると、巨大な蟻地獄のようでした。整備された登山道につくづく感謝です。私は山が笑ってくれる時に登ろうとしますが、特別なミッションや夢を持つ人は、敢えて困難にも挑戦します。人間は蟻のようにちっぽけかもしれないけど、考える蟻だ!とパスカルをパクッてみました。

風を避け、東面に10mほど下ったところで、昼食の代わりに行動食を摂りました。両足にゲーターを着けます。馬の背にもう一度戻って、宝永山にさようならを言い、大砂走りへと踏み出しました。「大砂走り」は、御殿場ルートの下山道です。須走ルートの「砂走り」にあるような角張ったゴロ石がほとんどないので、思い切りザーック、ザーックと駆け下りて行きました。多少はブレーキもかけないと、スピードが出すぎます。みるみる高度を下げて行きました。

段落見出し 二ツ塚へ進路変更

さて行く手には、御殿場口新五合目まで続く長い道が、鮮明に見えています。下山路を示す白木の棒が点々と立てられ、白いロープが棒から棒へとつながれています。視界の悪い日には、このロープが大いに役立つのでしょう。下山路と登山路が最接近するところで、御殿場ルートを登る人々と出会いました。富士登山の4ルートのうちで、五合目から山頂までの標高差が最も大きく、骨の折れるのが御殿場ルートです。そこを黙々と登る人たちの姿が勇ましく思えました。

ブルドーザー道との交点を過ぎて少し下った時、ふと思いました。「この山行はもうすぐ終る。少々あっけない!」と。そこで、二ツ塚に登ってみることにしました。交点まで引き返します。わずかな距離ですが、大砂走りを登るのはけっこう大変。その交点まで戻ると、ブルドーザーを改装した運搬車が下りてきました。「山頂公衆トイレ・物資運搬車両」と書かれています。費用のかさむヘリでなく、ブルが使える富士山は、まだありがたいと言えるかも知れません。

交点に立つ道標を見て、須山口下山歩道に入りました。山腹を斜めにトラバースして行く、明瞭な踏み跡があります。行く手に人影は全くありません。見渡す限り、イタドリ、フジアザミ、オンタデなどの咲くお花畑。ちょっと地味ですが、そこは富士山ならではの広大な夢空間! きょうは私ひとりの貸し切り状態ですが、足に余力のある方にはぜひお奨めします。もちろん、砂ぼこりなどありません。そして、先ほどから見えていた二ツ塚が、どんどん近づいてきます。

段落見出し 花も蝶もいた二ツ塚

二ツ塚は、文字どおり二つの小山で、双子山とも呼ばれます。上にあるのが上塚で、下にあるのが下塚と、呼び名も単純。私は、須山口下山歩道の二合五勺を過ぎ、道が上塚から少し離れ始めた地点から上塚に向かいました。登山路のようなものが幾つか見えますが、向かって最も左のものが登りやすそうです。裾から山頂まで、10分ほどで登れると思ったのですが、途中で花や蝶と出遭ってしまいました。イワオウギ、イワツメクサなど、きょうは初めてここで目にします。

上塚からの展望は、とてつもなく雄大でした。ただ富士山の上部が雲に入ってしまったのが残念。それでも山腹に植物群のつくる、無数の緑の島々には目を見張りました。どれだけの花が咲き、どれだけの虫がいることでしょうか。ところで上塚の山頂では、数頭のキアゲハが高速の鬼ごっこをしていました。他にアカタテハと、ヒョウモンチョウやセセリチョウも。みんなのびやかに舞っています。ここは、よく晴れた日に、また来たい!と強く思いました。

上塚からの下山路が分からなかったので、二ツ塚分岐の道標を目標にして、斜面を適当に下りました。ついでに下塚にも登っておこうと思い、二ツ塚分岐から登ったのですが、あいにく濃いガスに包まれて、眺望は残念。山頂に立つ「始祖」の石碑だけ見て、すぐに下りました。あとは、大石茶屋を目指して下るのみです。次のバスまでの時間はたっぷりとあるし、早く下ってはもったいないので、山野草を探しながら、ゆっくりと最後の行程を楽しみました。

段落見出し また行きたい富士山

大石茶屋で大休止しました。そして御殿場口新五合目にゴールイン。ゲーターを外していると、バスに乗る前に体の埃を落としたくなりました。水の代わりに、ウェットティッシュで、腕や首筋を何度も拭きましたが、きれいさっぱりとはなりません。下山して来る皆さんも、見ると体中ほこりまみれです。新五合目にトイレはありますが、水の出る蛇口はないので、知っておくとよいと思います。私は御殿場駅に着いてから、顔や腕などをしっかり洗い直しました。

登る山でもあり、見る山でもある富士山は、様々な楽しみ方があります。富士山の噴火は、遠い昔の話ではなく、つい最近のできごとだということを、宝永火口は実感させてくれました。そして二ツ塚がすばらしい富士山の展望台であることも、確信しました。登山バスは10月28日まで運行しているので、秋の晴天日を狙って、また行きたいと思います。今回は、山歩きとしては楽チン過ぎたかも知れませんが、充実した感動がありました。何より無事に下山できて感謝です。

木の葉ライン

↓ 紙芝居



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