シロヤシオの季節が終わると、檜洞丸はひっそりとしてきます。山頂付近は、マルバダケブキが咲き、その蜜を求めてたくさんのアサギマダラがふわり、ふわり、と飛んでいました。
山頂から犬越路に至る稜線は、アップダウンの連続です。クサリ、梯子、ロープなどが助けてくれますが、かなりの体力が必要です。
東名高速道路: 大井松田IC → (国道246号) → (県道76号) → 西丹沢自然教室
地理院地図: 檜洞丸
檜洞丸の天気: 丹沢山 , 西丹沢
8月28日(土)、山の仲間たちと共に、檜洞丸に行って来ました。滝のような汗をかきつつ登りましたが、山上では爽やかな風に吹かれ、下山後は温泉で心身ともにスッキリしてきました。
東名高速道の大井松田ICから国道246号をJR御殿場線と酒匂川に沿うように走る区間は、電車でもバスでも、乗用車でも楽しみなコースです。県道76号に入り、丹沢湖を抜け、西丹沢自然教室に到着したのが、午前6時45分。まずストレッチを兼ね、吊り橋を歩いてきました。
7時に富士急の始発バスがやって来ます。私たちはつつじ新道を目指して出発。バス停から約400メートル先に、その入口があります。何だか薄暗い、寂しそうな入口です。登り始めるといきなり急坂で、ぐんぐん高度を稼ぎます。早朝だというのに、汗がだらだら流れます。でもいつしか傾斜がなだらかになり、広葉樹林の中、よく整備された道を楽しく進んで行きました。
7時58分、ゴーラ沢出合に到着。飛び石を踏んで対岸に渡り、小休止します。ここで本棚沢とゴーラ沢とが合流し、東沢となって丹沢湖に下って行きます。つつじ新道は、本棚沢とゴーラ沢との間の尾根にあり、ここが水の補給のラストチャンスのようです。青い空を見上げながら、草大福を1個ほお張りました。
この出合からの登りもかなり急ですが、NHKが紹介した「超ラク山登り」でペースを守ります。土曜日ですが、つつじの咲かないシーズンはとても静か。何という種か、里では聞かないセミの声がよく響きます。残念ながら目を慰める花も見当たりません。怪しげなキノコ類が、暗い山道のアクセサリーです。
登山道わきの小さな展望台から、辛うじて富士山が見えました。御正体山ほか周辺の山々は樹木に隠されて見えません。富士山の方角だけに窓が開いています。Tシャツは汗でずぶ濡れなので、休んでいるうちに体が涼しくなってきました。冷えないうちに歩くことにします。
無風の登山道でますます汗をかきます。背中の汗がリュックサックに染み込んで、気持ち悪くなっています。中身は一つずつビニールの袋に入れてありますが、背中を保護するために入れてある新聞紙は、かなりの汗を吸い込んだようです。下山にこの道をまた通るのは気が滅入る、と誰かが言いました。
大きなブナの木が立っていました。あいさつ代わりに幹を手でぽんぽんとたたきます。三つ葉のツツジ(トウゴクミツバツツジかな)が増えてきました。木製の階段が現れ始めると、五葉のツツジ(シロヤシオ)も目立ってきます。
10時すぎ、一人の若者が軽快に下ってきました。この日初めての対向者です。「どちらから?」と尋ねると、「大倉から。」「昨晩はどこで泊まられましたか?」には、「ずっと歩き通しです。」とのこと。丹沢主稜の徹夜登山をするなんて、すごい人もいるものですね。「お疲れ様です。」
なだらかな木道に至ると、シロヤシオツツジがさらに増えてきます。葉も美しいので撮影しましたが、花の季節はさぞかし壮観だろうと、容易に想像できます。ホソエノアザミがたくさん生えていて、長ズボンをはいていない人はチクチクと痛そうです。花も葉も細いアザミです。
10時40分、やっと山頂に到着。眺望はほとんどありません。小さな石の祠があり、かわいらしいカーテンが吊るしてあります。猛暑の折、やさしい心ですね。記念撮影をし、倒木に腰を下ろして、各自弁当をいただきます。
食べながらくつろいでいると、キアゲハやミヤマカラスアゲハなど、大型の蝶が次々とやって来ては、去って行きます。ロープで囲われた保護エリヤ内のフキの花には、アサギマダラが群がってています。すでに葉は黒くなり始め、花も盛りを過ぎていますが、まだ蜜があるのでしょう。じっくり見回すと、いるわいるわ、あちらにも、こちらにも、アサギマダラだらけです。私たちが食事をしている付近にも時折やって来ては、ふうわり、ふうわり、天女のように優雅に飛んでくれます。
下山は、犬越路(いぬこえじ)回りにしました。変化がある方が歩いて楽しいからです。山頂から北西方向、下山路の入口には、「…つつじ新道と比べて急斜面、崩壊地、岩場や狭い箇所が多いため…」との注意書きが立っていて、いっそう期待が高まります。
下り始めるとすぐに、明るく開けた尾根が待っていました。前方にいくつかのピークが待ち受け、その奥にどっしりと大室山が座っています。東には、今まで全く見えなかった蛭ヶ岳が堂々と聳えています。西の富士山方面は濃いガスで全く見えません。
花に乏しかったつつじ新道でしたが、この尾根は明るく、多くの花に彩られていました。右の写真をご覧ください。他方、樹木の立ち枯れも見られます。バライチゴの実が真っ赤でみずみずしく、美味しそうなので1個摘んで口に入れました。少しジューシーですが、とても苦くて食べられませんでした。
このコースは、熊笹ノ峰(1523m)、大笄(おおこうげ、1510m)、小笄(ここうげ、1288m)、ほかいくつものピークが連続しています。でも巻き道は一つもなく、まともにピークを踏んで行くしかありません。通過が難しそうな部分には、梯子や鎖が整備されています。技術よりも、体力と忍耐でがんばり抜く道。目に入る花たちが、疲れを半減してくれます。
13時45分、やっと犬越路に到着。寝そべって新聞を読んでいる人がいました。立派な外観の避難小屋を覗いてみると、内部もとてもきれいでした。電気、寝具はありません。水場はどこかな?
これより東海自然歩道を下るのですが、岩石がゴロゴロしていたり、ザレて滑りやすかったりで、疲れた足には歩きにくい道です。土の道が現れたときは、ほっとしました。ありがたいことに、谷間から時折吹き上げる風が神経を労わってくれます。
傾斜が緩やかになるころ、涸れていた用木沢(ようきさわ)にも水が流れ始めました。渡渉点で思いっきり顔を洗い、喉を潤します。澄んだ水が、所どころに小さなプールをかたち作っています。これは露天水風呂ではないか!水着に着替えてしばらく浸かって行きたいほどです。
15時15分、用木沢出合に到着。奉仕精神に富んだ若い仲間が、西丹沢自然教室の駐車場まで1.8kmの道を走って行って、車で迎えに来てくれました。つつがなく終わったこの日の山行、最後に中川温泉で一風呂浴び、爽快に締めくくりました。
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