城山と呼ばれる山は多くあります。そこの山城は戦のときに要塞として使われた、「兵どもが夢の跡」です。津久井湖畔の城山には、津久井城跡があります。他の城山と区別する場合は、津久井城山(つくいじょうさん、つくいしろやま)とも呼ばれます。
津久井湖と城山湖をセットにして、揚水発電が行われます。理科や社会科の見学教材として訪れることもできます。
神奈川中央交通バス: 橋本駅北口 ⇔ 城山登山口 神奈川中央交通バス: 橋本駅北口 ⇔ 津久井湖観光センター前
地理院地図: 津久井城山
津久井湖の天気: 相模原市緑区 , 津久井湖
4月13日、午後の空いた時間に津久井湖畔の城山に行って来ました。一日かけて行くほどの山ではありません。半日でも長すぎるほどです。そこで、もの足りなさを補うために、橋本駅から歩いて行くことにしました。
午後0時20分、橋本駅を南口から元気よく出発。西に向かって、ただひたすら歩くつもりです。チューリップと桜のきれいな橋本公園では、少しだけ道を逸れて公園内を通過。この公園を過ぎたあたりから、行く手に丹沢の山々が見えてきました。
はじめ、川尻交差点までひたすら真っ直ぐ歩くつもりでしたが、何かつまらなくなって来て、二本松こどもセンター交差点で右折。少し北の二本松交差点で左折して国道413号を歩きました。二本松交差点の近くに「久保沢道」と書かれた石標が立っています。そこから15分ほど西に向かって歩くと、大山参りの古びた道標があります。石の台に、大きく「大山」と彫られています。大山道(おおやまみち)は、いくつもあったんだな、と当たり前のことを思います。
川尻交差点と久保沢交差点を過ぎ、案内標識に従って、小倉橋方面に続く道に入ります。ここから車の流れがめっきり減って、とても静かになりました。ゆるい下り坂を軽快に下りて行きます。右手の小川に「女滝」と書かれた小さな滝があります。ムラサキハナナの咲く道を大きく左にカーブしてゆくと、木々の間から相模川に架かる小倉橋が見えてきました。
小倉橋は歩行者レーンがなく、大型車がすれ違うのも困難な狭い橋です。でもほとんどの車は平行して走る新小倉橋を通るので、小倉橋の交通量は少ないようです。相模川両岸の桜並木を眺めたり、新小倉橋を見上げたりしているうちに対岸に到着しました。
14時2分、やっと「城山登山口」バス停に到着。登山口を探していたら、工事現場で警備をしているお姉さんが、「ここですよ」と教えてくれました。地味で見落としそうな登山口です。
登山道は、すぐに男坂と女坂とに分岐します。ここは男坂に進み、「じゅうべい山展望台」で昼食にしました。ベンチと椅子が二つずつあります。この展望台は極めて展望がよく、正面に橋本の市街地、右に相模川流域、左に城山高校から南高尾山稜の一部が一気に見渡せます。色彩は春、光線はやわらかな順光。小さな祠の横にミツバツツジの澄んだ赤紫色の花が咲き始めていました。これらすべてのものが、昼食をいっそう美味しくしてくれるのです。
じゅうべい山から城山へは尾根道を上へ、上へと登って行きます。右手の樹木の枝越しに、津久井湖と城山ダムが見え隠れします。城山高校の野球部でしょうか、グラウンドで練習している掛け声が力強く響いてきます。
道はジグザグがほとんどなく、尾根を直登するのでかなり急傾斜の箇所があります。地面にたくさん残っている落ち葉で足もとが滑りそうです。でも手の高さにきれいな鎖が取り付けられているので、ためらうことなくこれを掴み、楽々登れます。それでもこの道を下りに使うときは注意を要するでしょう。鷹射場(たかいば)に飛び出すと、あとは山頂まで歩きやすい道になります。
鷹射場にもベンチが二つあり、東側の眺望が開けています。ピーク付近にシキミの木があり、うす黄色の花がたくさん咲いていました。この先、少し下ってまた登ると「堀切」(ほりきり:敵の攻撃を防ぐ障害物の一種)の実物が見られます。他にも山城の仕掛けについて、随所に説明板が立っています。
津久井湖への道を分けたところに、「宝ヶ池」と呼ばれる、石組みのとても小さな池があります。今は使っていないせいでしょうか、すっかり澱んでいます。でも枯れることがないと書かれているので、城にとって、宝のような水場だったことでしょう。水なしで城に立てこもることはできません。もちろん、現代の登山者の飲用には不適です。因みに、城山は「宝ヶ峰」とも呼ばれます。
樹齢推定900年の「大杉」は、斜めに立っていました。注連縄が掛けられ、天空に大枝を張って、山の主のようです。根っこにできた小さなくぼみにスミレの花を咲かせ、優しい心も持っているようです。
飯縄曲輪(いづなくるわ)と太鼓曲輪(たいこくるわ)はスキップし、山頂に直行します。山頂には、「城山」と書かれた標柱はなく、「築井古城記碑」(つくいこじょうきひ)の大きな石碑と説明板が立っています。今は小さな広場のようになっている所が、本城曲輪(ほんじょうくるわ)と呼ばれる、いわば本丸のあった場所です。
山桜とツバキが対照的な花をつけ、春の城山を装っています。ナミアゲハとアカタテハが鬼ごっこをしています。ヒオドシチョウは翅(はね)がボロボロ。カラスアゲハでしょうか、真っ黒な大きい蝶が一瞬太陽光を反射して、青緑色の光彩を放ちました。
この日はよく晴れて、山頂からは西に大山から大室山までの丹沢山塊、北には津久井湖越しに南高尾山稜と奥高尾山稜を望めました。ここに津久井城があった頃は、樹木を取り払って周囲360度に目を光らせたことでしょう。今は湖水の光る平和な景色ですが、現在の津久井湖の場所は、その昔ダム下流と同程度の深さの渓谷だったのかな、などと思います。
下りは、津久井湖畔の「花の苑地」に向かいます。傾斜はゆるく、道の状態もよいので、走って下りました。途中、足を止めたのは、ニリンソウの群落と「江川ひのき」の説明板を見たときだけです。
登山道はふいに、それまでとは別世界のような花園に飛び出します。「津久井湖城山公園」の一部、花の苑地です。満開の桜から散った花びらが地面に落ち、歩道や斜面を美しく飾っています。津久井湖の上に架かる高圧電線が邪魔にならない位置まで下りて行き、津久井湖越しの南高尾山稜を、もう一度ゆっくりと眺めました。
最後に城山ダムを貯水側と放水側から眺め、城山高校前からバスで橋本駅に戻りました。半日コースながら、とても充実した気分で帰宅しました。
Alt + < = 戻る。 Alt + > = 進む。 Internet Explorer では、最後に Enter を押してください。 了解