山はいいなあ  >  中央沿線  >  田無瀬からセーメーバン

田無瀬からセーメーバン

葛野川と道志山塊

小和田から望む、早朝の葛野川と道志山塊

小和田山からセーメーバンに至るまで、道標の類はありません。地形図とコンパス必携です。

セーメーバンから南下する尾根では、深城線13号から3号までの送電鉄塔を順次訪ねることができます。

バス停 富士急山梨バス: 猿橋駅 → 田無瀬 登山口

地図 地理院地図: セーメーバン , 灰焼場

天気 セーメーバンの天気: 大月市 , 雁ヶ腹摺山


コース & タイム 鉄道駅 猿橋駅 バス停 6:53 == 7:09 田無瀬 7:09 --- 7:27 東光寺 7:28 --- 7:34 墓地の上の展望地 7:35 ---(道間違いによるロス12分)--- 7:58 四等三角点 7:58 --- 8:04 小和田山 8:06 --- 8:18 599m峰 8:21 --- 9:07 628m峰巻道 9:07 --- 9:24 灰焼場 9:26 --- 9:38 867m峰 9:38 --- 10:02 セーメーバン 10:20 --- 10:23 鉄塔13号 10:23 --- 10:35 鉄塔12号 10:37 --- 10:51 鉄塔11号 10:54 --- 10:56 送電線下の伐採地(大展望地)11:14 --- 11:22 鉄塔10号 11:29 --- 11:44 サクラ沢峠 11:45 --- 11:55 高ノ丸 12:03 --- 12:07 鉄塔8号 12:07 --- 12:15 鉄塔7号 12:15 --- 12:24 鉄塔6号 12:26 --- 12:30 トズラ峠 12:32 ---(道間違いによるロス15分)--- 13:01 鉄塔5号横 13:01 --- 13:08 富士山景勝地 13:09 --- 13:12 鉄塔4号(向山)13:16 --- 13:29 笹平 13:29 --- 13:39 鉄塔3号 13:39 --- 13:47 稚児落し 13:47 --- 13:53 大月駅への下山開始道標 13:53 --- 14:15 断崖上の岩尾根 14:18 --- 14:32 登山道終点 14:33 --- 14:49 浅利公民館 14:49 --- 14:55 中央道高架下 14:55 --- 15:13 大月駅 鉄道駅
※歩行時間には道草と撮影の時間と道間違いによるロスタイムが含まれています。
セーメーバン せいめいばん:標高 1006.2m 単独 2019.01.17 全8時間4分 満足度:❀❀❀ ホネオレ度:❢❢❢

1月17日(木)、10年越しで名前の気になっていたセーメーバンに登りました。登りは田無瀬バス停から小和田山を経てセーメーバン東尾根に乗るルート、下りは送電線沿いの尾根を南下し、稚児落しを経て、大月駅に下りるルートです。山は終日穏やかで、明るい日差しにも恵まれ、静かな冬枯れハイクを満喫できました。圧巻は深城線11号鉄塔から10号にかけての伐採地。思いがけない大展望に酔いしれました。鉄塔を番号順に巡った山旅も、楽しい思い出になりそうです。

田無瀬バス停より小和田へ

猿橋駅で乗った、6時53分発浅川行きバスは、猿橋を過ぎて5名ほどの中学生たちを降ろすと、乗客は私だけになりました。終点まで行ったら、通勤通学客を拾いながら帰ってくるのでしょう。人口過疎地の住民が減らないよう、自治体や国がバスの運行費用を援助しているに違いありません。神奈中バス、西東京バス、ほか山歩きに利用するバスでは、しばしば経験する貸し切り状態。登山口への行き帰りに利用できるありがたい路線バスが、いつまでも存続しますように。

田無瀬で下車し、カラになったバスを見送りました。回れ右をすると、そこはY字路。向かって左は今来た道。右は国道139号で、これから行く小和田への道です。緩やかな坂道を上って行くと、すてきな風景がありました。白く光る葛野川、両岸にたたずむ集落、その彼方には道志の山並みが、滑らかなサインウェーブを描いています。この絵本のような風景は、四季折々に定点撮影してみたいと思うほど。もし「大月市の美しい川12景」を選ぶとしたら、イチ推しです。

小和田下バス停で国道と別れ、右へ折り返す坂道を上ります。道なりに進んで行くと小和田地区の集落に入り、正面に緑青色の屋根の東光寺が見えてきました。あの東光寺が背負う尾根を登ると、小和田山に至るはず。東光寺に向かって坂道を登って行くと、道の右手に大きな三階建ての木造家屋がありました。旧養蚕農家でしょうか。上和田地区の斜面にも、こんな大きな家のあるのを見たことがあります。今、桑畑は見られませんが、現役の家には生命感があります。

セーメーバン小和田登山口

東光寺の門前に小さな駐車場があり、そこからも葛野川の流れる風景がよく見えました。先ほどよりも少し標高が上がった分、俯瞰が効いて、より楽しめます。振り返って東光寺を見ると、その向かって左手に、大月市の山々でよく見られる道標が立っていました。セーメーバンと書かれています。ここが紛れもない登山口。これは、れっきとしたハイキングコース、安心感をもって歩けそうです。この道標の表記を尊重し、この山行記でもセーメーバンと書くことにします。

登山道に入って、墓地を見下ろす地点まで登ると、葛野川の流れる風景が、さらに素敵に見えました。上の写真がそれです。もう少し日が高く昇れば、明るい風景になるでしょう。小和田を登山口に選んでよかった!と、つくづく思いました。これより、今立っている尾根をどんどん登ればいいはず。と思ったら、道を塞ぐように通せんぼの枝が置かれていました。でもその左に、登山道らしい道があります。この道に入って行くと、左手に竹林がありました。

そのまま進んで行くと、道形が薄れてきました。尾根に上がれそうな気配がありません。「道間違いだ!」と気付いて竹林まで戻ると、尾根に上がれそうな径路があり、赤テープが木に巻かれていました。この目印を見落として、タイムロス12分。ハイキングコースだと思って油断しました。気を引き締め直します。やがて本来の尾根道に復帰し、地理院地図に示された三角点も見つけました。明るい朝日を右後ろから浴びながら、落ち葉をサクサク踏んで登って行きます。

599mの寂峰

小和田山の頂には、小さな石造りの金刀比羅宮がありました。その後ろには壊れた旧い祠がありますが、このような祠は、片付けるのではなく、自然に帰るがままに置かれるのでしょう。新しい祠はきれいに保たれ、村人たちがお参りに来ていることが伺えます。私は体が十分に暖まったので、ベストを脱いでリュックにしまいました。この山頂にもセーメーバンを指す道標がありましたが、これは東光寺から数えて四つ目、そして最後の道標でした。

ここから先の概要ですが、ひたすら尾根すじをたどり、西に進んだり、北に進んだりを繰り返しながら灰焼場を目指します。北面には、宮地山、楢ノ木尾根の一部、オゴシ山から南に伸びる尾根などを望めます。また南面には、富士山が徐々に競り上がるのが楽しみです。尾根上には落ち葉がたくさん積もり、ザクザクと踏んで歩くと、しなやか過ぎる地面に足の力が奪われます。途中の小峰にはたいてい巻道がありますが、巻いても巻かなくても、大した違いはありません。

なお、セーメーバンまで、ずっと赤テープがありました。多すぎるような気もしますが、それもきょうのような好天の日に言えること。視界の悪い日には、赤テープがありがたいことでしょう。はじめに小和田山から西進してユルギと呼ばれる地点を過ぎると、599m峰がありますが、赤テープを追って、巻くこともできます。でも高尾山と同じ標高の峰には立っておきたいと思いました。誰もいない599m峰に、ひっそりと到着。登頂記念に温かい紅茶を一杯飲みました。

灰焼場へ

599m峰から北に転進します。すぐに600m+の小峰に至りますが、ほぼ同じ標高を持つ小峰が三つ、東西に並んでいます。この三峰を離れた場所から見たら、サインウェーブに見えるでしょうか? 三番目の600m+峰に差し掛かると、カモシカを目撃しました。このカモシカが私を見て立ち止まるかな、と期待したのですが、カメラを向ける前に行ってしまいました。残念。この峰を巻くと、再び尾根が北に転じます。落ち葉の上に昨夜降ったらしいサラサラの雪がありました。

地形図から分かるように、628m地点の手前からは、自然に北西方向に尾根を登ります。やがて西面にセーメーバンの南稜が見えるようになりました。煩雑な梢が邪魔ですが、目を凝らすと、3基の送電鉄塔が見えます。この時点では、鉄塔の番号は知りませんでした。そのうち、前方に急登が立ち上がると、気楽な稜線漫歩は一旦終了。現在地の標高は約700m。ここで靴の紐を結び直します。落ち葉の上の真っ白なサラサラ雪が、振りかけたグラニュー糖のようです。

気合を入れて急登に差し掛かりましたが、思ったよりも登りやすく感じました。気分よく高度を稼いで行きます。100mほど登ると、赤く塗られた石祠がありました。御神木のような木も立っています。そこから少し登って、右から来る尾根を合わせると、灰焼場に到着。短い2本のコンクリート杭と黄色のプラ杭とが固め打ちされています。どこかに灰焼場の名が書かれていないか探しましたが、何も見つかりませんでした。ところで灰焼場とは、どんな意味でしょうか?

セーメーバン登頂

灰焼場からは、セーメーバン東尾根を歩きます。再び稜線漫歩になりました。一部に尾根の細くなる区間もありますが、概して幅広で明るい美尾根です。北面の宮地山も、より近くに望めるようになりました。その稜線からは、きっと楢ノ木尾根や、雁ヶ腹摺山などもよく見えることでしょう。いつか大垈山と合わせて歩いてみたいと思います。そのためには、きょうのように風が穏やかで、明るい冬枯れの日を選んでやって来ましょう。なるべく楽なコース設定で。

セーメーバンが静かに近づいてきました。相変わらずの明るく穏やかな美尾根です。セーメーバンには、北稜と南稜と東稜とがありますが、北稜からのアプローチでは登頂感がなさ過ぎ、逆に南稜からではそれがあり過ぎ。東稜からの登頂が最適、などと頭の中で勝手な考えを巡らせます。そして、いつか登ろうと長年想い続けてきたセーメーバンに、ようやく登頂。「セーメーバン」「セイメイバン」などと書かれた標識を見て、きわめて私的な満足感をかみ締めます。

セーメーバンには展望がないという記事もありますが、冬枯れの今は開放感もあり、好ましい山頂だと思いました。ベンチの類はありませんが、転がった木に腰を下ろし、お茶とおやつにします。三角点石は、文字が北向きで読みにくかったのですが、三等と読めました。見上げれば木々の白い梢が、明るく青い空に映えてきれいです。北面を少し散策すると、白谷ノ丸、黒岳、滝子山などを望めました。あの峰々に次回登ったら、このセーメーバンを探してみましょう。

深城線(ふかしろせん)送電鉄塔11号下の大展望

セーメーバンでの休憩を終え、南へと尾根を下ります。まずはじめに出合うのが、深城線送電鉄塔13号。尾根の真ん中ではなく、少し右わきに立っています。周囲を木々に囲まれているので、外からはよく見えません。そこで、四つの脚の中心点から真上を見上げ、鉄骨が織りなす美しい幾何学模様を鑑賞します。この位置には特殊な電界と磁界とがあり、ラジオなど電子機器や方位磁針が必ずしも正しく働きません。一部の鉄塔マニアは「電磁結界」とか「結界」と呼びます。

尾根に戻ると、恩賜林石標51番があり、すぐ先には50番がありました。尾根の勾配が急になるので、スリップに注意。この南尾根をセーメーバンに向かって登る人には、最後の頑張りどころでしょう。そして鞍部まで下って少し登り返した標高960m+の地点には鉄塔12号。さらに下った先の鞍部から、地形図に出ない程度の膨らみを越えると、鉄塔11号。西面に小金沢連嶺の展望があります。この鉄塔11号に番号標識があったので、前後の鉄塔の番号も判りました。

鉄塔11号の展望が嬉しく、「結界」に入って滝子山などを撮影しましたが、実はそんなことをするには及びませんでした。11号鉄塔から尾根をわずかに下ると、送電線の下に長大な伐採地があり、思いもかけなかった大展望が出現したからです。魂を揺さぶる広大なパノラマ! その中心はもちろん富士山。豊かな奥行き感と拡がり感とを自ら造り出し、白い空気をまとうことで微妙な浮揚感を得て、素敵な絵になっています。ここで休憩すればよかった! いや、もう一度休憩!

深城線送電鉄塔を巡礼

大展望地から、下方の鉄塔10号を見渡せます。この伐採地は、送電線の通り道に十分な空間を確保するためのものだと思いますが、防火帯を兼ねているのかも知れません。きょうの歩行ルートでは、ここ鉄塔11号から10号に至る区間の展望が圧巻でした。反時計回りに山名を列挙すると、雁ヶ腹摺山、黒岳から滝子山への連嶺、富士山とその前衛、鹿留山と御正体山、道志山塊と秋山山稜、丹沢山塊、百蔵山と扇山、権現山稜です。なお、鉄塔9号は、鉄塔10号から望めました。

鉄塔10号を過ぎると森林に入りました。夏場は涼しくて安堵するかも知れません。尾根上にテレビの受信アンテナがありましたが、そのケーブルは北に続く作業道へと引かれていました。もしやこのケーブルを辿れば、金山鉱泉に行けるのでしょうか? そして灰焼場の南稜で見たのと同じ赤い石祠を見て、サクラ沢峠に到着。金山方面への山道を右に分けます。遅能戸バス停に下りることもできますが、初めて来たこの山域を知るため、きょうは尾根を真っ直ぐ行きます。

サクラ沢峠の先を10分ほど登り返して、高ノ丸に到着。昼どきなので、ちょっと一休み。私製の山名標が立ち木に結び付けてありますが、釘を生きた木に直接打ってないのは好ましいと思いました。念のため地図を広げて、進むべき方向を確認すると、道は高ノ丸の東南東の尾根です。電子コンパスで針路の東南東を正確に見定め、その尾根を下って行くと、すぐに鉄塔8号でした。さらに7号、6号と続き、小さな石仏の手前から左のプラ階段を降りて、トズラ峠に立ちました。

道を間違える

トズラ峠は小さな広場状になっていて、岩殿山を指す道標がありました。その広場の奥にも道標があり、笹平を指しています。ここで送電線巡視路のプラ階段を登るよう、目印の赤テープがあったのですが、「5号に至る」と書かれた巡視路の杭を見て、プラ階段を見落としてしまいました。赤テープと杭とが鉄塔5号への道を示していると思い込んだ私は、間違ってその先のトラバース道に進んだのです。その道は落ち葉に埋もれてはいましたが、ちゃんと歩けました。

ところが、ちゃんと歩けたのは始めのうちだけで、すぐに道形が不明瞭になり、どこを歩いたらよいのか分からなくなりました。「道が荒れちゃったんだなあ」と思っていたのが、「道間違いだ」と気づいたときは、相当に進んだ後でした。すぐに引き返すべきでしたが、この悪路を戻るのも嫌だと思い、上の尾根に逃げました。その尾根を歩いて、送電線巡視路に戻ることができたのですが、これにより約15分のタイムロス。強引に攀じ登ったので、体力も消耗しました。

その後、樹木の枝越しに、しばしば周囲の山なみを望めるようになりますが、無理して撮影する必要はありません。歩いている尾根のすぐ左手に鉄塔5号を見ると、間もなく「富士山景勝地」だからです。到着した時、すでに富士山は半逆光になっていましたが、それでもなお素晴らしい景観に見とれてしまいました。うるさい樹木の枝や電線など一切なく、のびのびとした開放感を味わえる場所です。そしてもう既に、鉄塔4号の立つ向山(標高730m+)が目と鼻の先でした。

向山・笹平・稚児落し

向山では、東面にすばらしい展望がありました。これまで何度も見えていながらも、繁る樹木で展望の苦しかった、権現山稜、扇山、百蔵山などが、今すっきりと望めます。視線を北に向け、来た道を振り返ると、梢越しに7基の鉄塔を数えることができました。このように展望に優れる向山ですが、その先では急階段が待っていました。安全第一、足を取られないよう、慎重に下って行きます。きょうは計画に大きなゆとりがある上に、バスの時刻を気にしなくていいのです。

きょう何度目でしょうか、また登り返します。そして檜林を抜けると、笹原に入りました。三角点を見て、ここが笹平だと判ります。行く手下方に大月市街地が見えますが、まだまだ遠い感じ。そして鉄塔3号を通過し、テープがやたらと多い分岐で右に下りると、「稚児落し」でした。痛恨の情のこもる、何とも恐ろしい名。崖っぷちの岩尾根は、強風の日などに通過すると、大人でも恐い思いをするかも知れません。稚児落しの上に鉄塔2号を、天神山の上に1号を望めます。

稚児落しの外れに、大月駅への下降点を示す道標がありました。でもその先に要注意箇所がいくつもあって、全く気を抜けません。鎖場もありました。さらにまた断崖の岩尾根を通過。やはりここは強風の日には歩きたくない、ちょっと特別なハイキングコースです。そしてまもなく登山道が終わろうとするところで、山との別れを惜しみつつ紅茶とおやつを楽しんでいると、ランナー風の熟年男性に追いつかれました。今朝バスを降りて以来、初めて出会う人です。

大月駅へ

ピカピカの新しそうな鎖が設置されている場所を過ぎ、短い鉄階段を下りて右折すると、登山道の終点が見えました。小沢を渡る短い橋があります。きょうの山歩きでお世話になった、現地調達の杖(木の枝)を、橋のたもとに置きました。これより駅まで舗装道路を歩きます。浅利川右岸のバス道路に出ると、きれいな流れを見下ろしながら、テクテク行くばかりなのですが、歩道がないので、車に注意しましょう。浅利公民館のすぐ先で、花咲山への道を右に分けます。

中央自動車道の高架下を通り抜け、Y字路でバス道路と別れて左に進みます。桂川に架かる橋を渡るとき、東の空に白い大きな月が見えました。旧暦12月12日の月です。大きな弧を描く坂道を上り、跨線橋を渡って歩道に下り立つと、完全に緊張が解けました。大月駅では上り電車との接続も良く、前方の車両に乗り込むと、朝のバスと同じガラガラの貸し切り状態。その後のことはよく覚えていません。道間違いが二度もありましたが、きょうはとても良い日になりました。

木の葉ライン

↓ 紙芝居



©2019 Oda Family  All Rights Reserved.