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宮地山・大岱山・セーメーバン

宮地山の山頂広場

宮地山の山頂広場

大月市の宮地山には、落葉樹やカラマツの美しい、なだらかな尾根があり、冬枯れの季節には明るく開放感いっぱいの尾根歩きを楽しめます。

宮地山にはまた、ところどころに道形の不明瞭な区間や急登があります。地図、コンパス、GPS等を携帯し、十分な体力を備えて臨みましょう。

バス停 富士急バス: 猿橋駅 → 林沢戸入口 登山口
バス停 富士急バス: 大月駅 ← 遅能戸 登山口

地図 地図: 宮地山 , 大岱山 , セーメーバン , ヤマレコ

天気 宮地山の天気: 大月市 , 雁ヶ腹摺山

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コース & タイム 鉄道駅 猿橋駅 バス停 6:59 == 7:20 林沢戸入口 7:22 --- 7:29 宝鏡寺薬師堂 7:30 --- 8:15 用沢分岐 8:15 --- 9:39 宮地山 10:04 --- 10:58 大岱山分岐 10:58 --- 11:05 大岱山 11:11 --- 11:16 大岱山分岐 11:16 --- 11:45 セーメーバン 11:56 --- 12:56 サクラ沢峠 13:02 --- 13:25 セーメーバン登山口 13:30 --- 13:47 遅能戸バス停 バス停 14:02 == 14:13 大月駅 鉄道駅
※歩行時間には道草と写真撮影の時間が含まれています。
宮地山、大岱山、晴明盤 みやちやま/みやじやま:標高 1112.7m、おおぬたやま:標高 1190m+、せいめいばん:標高 1006.2m 単独 2020.12.08 全 6時間25分 満足度:❀❀❀ ホネオレ度:❢❢❢

12月8日(火)、大月市の中央部にある1,000m級の3峰をプチ縦走しました。いずれの峰も展望には恵まれていません。しかし、落葉樹やカラマツが葉を落とし終えたこの季節、明るく広々とした尾根で、極上の山歩きを心ゆくまで楽しめました。このコースは脚力に応じて、4ヶ所から選んで下山できます。今回私は、最短路であるサクラ沢峠からの楽チン下山を選択。ゆとりのプランで、爽やかな山の空気にたっぷりと浸り、心身の洗濯ができました。

段落見出したわわの柿、宝鏡寺薬師堂

猿橋駅で電車を降りると、急いで改札を出て、南口に出ました。モルゲンロートの山々を眺めるためです。まず東の百蔵山と扇山。次に西の滝子山~ハマイバ丸。眼前の岩殿山。そして雁ヶ腹摺山と楢ノ木尾根。きょう宮地山を目指す動機の一つは、楢ノ木尾根を一望したいと思ったからですが、ここでそれが半分実現しました。山並みを照らす朝日が陰影を造り、程よい立体感を生んでいます。大峰~水無山~尾越山が欠けましたが、いつかカバーする機会があるでしょう。

さて、ゆっくりしているヒマはありません。小走りに北口に行くと、奈良子行きのバスが待っていました。2分後の発車です。6時59分発という微妙な設定は、狭い道路でのすれ違いを調整するためでしょうか。中学生が2人乗りましたが、きっと朝練のためでしょう。ガラガラで走るバスに乗っていると、もったいないとも思いますが、登山者にとってはありがたいものです。バスが林沢戸入口に近づくと、たわわに実った柿の木が数本、色鮮やかに並び立っていました。

降りたバスを見送り、宝鏡寺薬師堂に向かいます。途中で、大きな熟柿を一つもらいました。ぶよぶよした冷たい柿。潰さないよう、そっと上着のポケットに入れました。体が暖まったらいただきます。薬師堂で手短に安全祈願をすると、その裏手に回って、林道わきのコンクリート階段に行きました。目印は最下段の「宮地山入口」と書かれた赤い小さな標識。これより高度差約120mは、踏み跡の薄い急登です。本コース最初のプチ難関、さっそく取り付きました。

段落見出し宮地山への登り

幸いその踏み跡は、まずまず道形を成していました。しかもピンクテープが次々と現れます。難なく廃屋の手前まで登ってきました。冷蔵庫、洗濯機、耕耘機、その他、粗大ゴミが放置されています。南面が開け、セーメーバンの東尾根と思われる稜線を望めました。紅葉したモミジがあり、折しも届き始めた太陽光を受け、真っ赤に燃えています。ここで一息つきました。この先はひたすら尾根すじを辿る道です。と思ったら、ピンクテープが楽な道に誘導してくれました。

楽な道は5分ほどで終わりました。緩急のある尾根を登って行きます。孟宗竹林が進出していたり、共同受信用のUHF・VHFアンテナの遺物があったりして、まだ里山の延長のような趣がありましたが、それも用沢分岐まで。715m地点を過ぎると、山本番の雰囲気が濃くなりました。針葉樹林も一部ありますが、ほとんどは落葉樹林。前者は暗いけれども落ち葉が足に優しく、後者は明るいけれども足を滑らせないよう気を使います。この季節、どの山も同様でしょう。

樹木が多いので、なかなか展望に恵まれません。右手の樹木が薄くなった時、辛うじて三ツ森と権現山稜を望めました。ふと左手を見ると、大きな富士山に気が付きました。感激します! ただ梢越しで撮影するには苦しく、結局セーメーバンを過ぎるまで富士山をスッキリ望める場所はありませんでした。冬場は梢越しの眺望、夏場は眺望のない宮地山。魅力と言えば、ゆったりと開放感のある美尾根ですが、そこに至る前に、道形のない急登をこなさなければなりません。

段落見出し宮地山は今佳境に

その急登を一歩一歩こなして、いつしか最後の詰めに入っていました。ここが最大の頑張りどころです。ところが、手で掴めるものが乏しい上に、堆積した落ち葉で思うようにステップを刻めず、足場を確保できません。そこで、右手の針葉樹林との境目を登ることにしました。普通なら障碍物となる根っこや倒木が、ありがたいお助けになります。やがて急登の終点が見えてくると元気が増し、一踏ん張りで登り切りました。「山神大権現」の石碑と馬の置物があります。

馬の置物はブロンズ製のようです。一番大きな馬が横に倒れていたので、起こしてやると、気のせいか、馬がうれしそうに見えました。これより明るくなだらかな美尾根を、西に進みます。もはや気分は楽園の信徒。俄かに軽くなった足がどんどん前に出ます。相変わらず梢越しですが、南山麓に葛野川が光り、北面に泣坂ノ頭、大峰、水無山などを望めました。富士山も見えるだけで元気をくれます。こうして一気に宮地山頂に到着。薬師堂から正味2時間でした。

大月市の道標に「宮路山」と書かれています。読みは「みやじやま」でしょう。「宮地山」なら「みやちやま」とも「みやじやま」とも読めます。名称の正統性はさておき、いずれも意味のある名だと思います。ここでリュックを下ろし、熱い紅茶とお菓子で休憩しました。広々として、本当に気持ちの良い場所。撮影すべき風景も特にないので、三方の空を撮りました。真っ青な大空へと伸び上がる木々、枝々。平凡であっても、今ここにいる自分が目にする印象的風景です。

段落見出し大岱山へ

宮地山では小休止のつもりが、ついつい長引いてしまいました。発つ前に、倒木の上にカメラを置いて自分撮り:成功。次の大岱山に向かいます。引き続き広い尾根を西へと進むと、落葉樹に代わって、カラマツとアカマツの林になりました。相変わらず明るく、開放感があることに変わりありません。ショウジ峠は、うっかり通り過ぎました。行く手に1070m峰が見えてきます。道はその南側を巻いていました。地理院地図の破線とは異なります。この辺りは勘で進みました。

次の1060m峰も越えて行くと、樹形の整った樅の木が立っていました。挨拶のタッチをします。そのすぐ先の送電鉄塔は、深城(ふかしろ)線18号。その先の短い急登区間に、崩れたプラ階段がありました。これを辿って登ると、まともな登山道と出合い、「大岱山/セーメーバン/宮路山」を指す道標が立っていました。ここから大岱山まで往復します。落ち葉の積もった明るい斜面をサクサク登っていくと、直ぐに大岱山でした。大月市の山頂標は「垈」ではなく「岱」です。

大岱山の山頂標には、標高1179mと書いてありますが、地理院地図では、1180mの等高線がここに小さなマルを描いています。しかし、帰宅後に気付いたのですが、そこから北に300mほどの地点に、1190mの小さなマルがあります。つまり大岱山の最高地点は標高1190m+で、私はそこを見逃したのでした。なお、山頂付近には樹齢300年の白ブナの木があるそうです。そんなことは知らず、私は来た道を戻り、セーメーバンへと向かいました。

段落見出しセーメーバンと送電線の尾根

大岱山への往復が完了。以後はひたすら南下します。始めにやや急なプラ階段を下りますが、その先は美尾根の連続でした。気持ちよく、スタコラ、スタコラ歩き、あっさりとセーメーバンに到着。きょう最後の主目的地です。やはり展望は利きません。もう急ぐこともないので、ゆっくりと腰を下ろし、まだ熱い紅茶とお菓子でくつろぎました。そしてストレッチを念入りに行っていると、都合よく山頂に置かれていた頑丈な杖を発見。これを手に、下山の途に就きました。

この道を歩くときの楽しみは、深城線11号鉄塔付近の伐採地で望む、広大なパノラマです。その主役はもちろん富士山。ここに来て初めて何の障碍物もなく、その全姿を望めます。もっと美しい姿を求めるなら、他の富士山景勝地と同様、空気の澄んだ季節の、逆光でない時間帯が確実です。富士山の前衛には三ツ峠山をはじめ、鶴ヶ鳥屋山、本社ヶ丸。右には滝子山から野脇ノ峰、白谷ノ丸、黒岳まで。ここに初めて来た昨年1月には、ゆっくりと山座同定を楽しみました。

さらに下って10号鉄塔付近では、時計回りに、権現山稜、扇山と百蔵山の重なり、秋山山稜、丹沢主脈の焼山~蛭ヶ岳、そして道志山塊と御正体山などを望めます。一般に送電線ルートは、伐採による好展望があります。雄大な展望は、何と言っても登山の楽しみの中で大きな一つ。その空に架かる送電線が目障りだと思われる方もいますが、私自身は送電線の描く曲線が嫌いではありません。むしろ「猫バス」の通り道のような想像を加えて見てしまいます。

段落見出しサクラ沢峠から遅能戸へ

サクラ沢峠にやって来ました。きょうの縦走はここまで。まだ余力が十分にありますが、明日も使う足を労わって、金山に下ります。その道は、心配したザレや斜面との同化もなく、狭いながらもしっかりした道でした。エスケープルートとしても使えそうです。登山道の終点には「←セイメイバン」と書かれた道標がありました。セーメーバンからお伴をしてくれた杖をここに置きます。ここで先週と同様のミスを犯し、道を間違えましたが、すぐに気が付いて戻りました。

登山道終点から林道を右に下るのが正解です。この林道は奥山線ですが、すぐ下で橋を渡って、林道金山線に接続します。後は遅能戸(おそのうと)バス停まで、走行車両に気を付けて、テクテク、15~20分の道のりでした。バスの運行便数は少ないので要注意。私が乗った、遅能戸14時00分発の大月駅行きは、毎日の運行です。なお、遅能戸バス停付近に、お店や自販機はないようでした。最後に、登山者は「よそ者」です。当分の間、人里ではマスク着用を忘れずに!

ポケットに入れた熟柿のことを忘れていました。宮地山の急登の最中、ポケットの外へ汁が滲み出てきました。中でつぶれたのです。そっと取り出して食べてみると、トロトロの甘い実が口いっぱいに広がりました。ウ~ン、上手い! 金賞です。上着は帰宅後すぐに洗濯したら、きれいになりました。今回もまた、楽しい山歩きと無事の帰宅ができ、つくづく感謝です。

木の葉ライン

↓ 紙芝居



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