あきる野市の小峰公園の一角に、セリバオウレンの保護地があり、早春に可憐な花が見られます。
豆佐嵐山は、戸倉三山ルートにありながら、気づかずに巻き道を歩いてしまうことの多い山です。
西東京バス: 武蔵五日市駅 ← 沢戸橋
地理院地図: 豆佐嵐山 , ヤマレコルート図
豆佐嵐山の天気: 東京都あきる野市 , 八王子市 , 武蔵五日市駅
レポ: 金剛ノ滝から刈寄山
2月28日、セリバオウレンの実物を見ておきたくて、あきる野市の小峰公園に行きました。セリバオウレンの群生地としては、よく知られたスポットです。計画に当たって、その後の山歩きをどこにするか、なかなか決まりませんでした。戸倉三山を巡るのは、今の私にはちょっと大変。刈寄山だけにすると、下山路をどこに取るか悩ましい ... という訳で、一般にわき役の地位に甘んじている豆佐嵐山を表敬し、その後は分かりやすく舟子尾根を下るプランにしました。
なるべく人込みを避けようと、初電に乗って行きました。武蔵五日市駅に着いたのは6時25分。花を見るには早すぎるので、まず駅前のコンビニに行き、食料を補給しました。ゆっくり歩いて小峰公園に向かいます。駅前の信号から西へ、ほんの少し秋川街道を歩いて左手の階段を降り、秋川橋を渡ります。左岸に茂った木々に朝日が命を与え、生まれたばかりの赤ちゃんのよう。静止したかのような秋川の流れが、深い空の青を映し、美しい朝が始まろうとしていました。
小峰公園に行く途中で、バスに抜かれました。日が高く昇っていたら、駅から小峰公園までバスで行ってもいいでしょう。でも知らない道を初めて歩くのは、なかなか楽しいものです。沿道では白梅や紅梅がちょうど見頃。今年はまだ大きな梅林で花見をしていませんが、どこで咲く梅の花も、みなきれいです。留原は何と読むのかな? あ、交差点に「Totohara」と。隣の八王子市には、廿里町(とどりまち)があります。「とどはら」や「ととり」ではいけなかったのかな?
駅からゆっくり20分ほどで、小峰公園に到着。さて、セリバオウレンはどこに咲いているでしょうか? 行けば分かるだろうと、何も調べずに来ましたが、かなり広そうな公園です。人に尋ねようにも、誰もいません。とりあえず「けやき広場」に行ってみると、ハズレ。「冒険広場」に行ってみるも、ハズレ。少し戻って「桜尾根」に上がると庚申塔。その向こう側に下りると「ふれあい広場」でした。梅が満開ですが、あいにくまだ日陰です。ぐるり見回すと ... あそこだ!
あるある! たくさん咲いています。そこは「杉の木広場」という一角でした。背後に杉林があります。セリバオウレンは真っ白で、清楚な印象の花ですが、至近距離から見ると、つくりは精巧で優美です。5個ほどの長い花弁(実は萼片)と、10個ほどの短い花弁とが成す装飾は、精緻を尽くした美術工芸品のよう。ここでこの花をしっかり見て、脳内イメージを持っておけば、どこかで密かに自生するセリバオウレンを見つけ易くなるでしょう。照合と認識の精度アップです。
セリバオウレンに、雄花(雄しべだけを持つ花)と両性花(雄しべと雌しべとを持つ花)があることは予習してきました。雌しべは大きいので、花を見れば容易に区別できます。雄花と両性花の両方を咲かせた株も、わずかながらありました。ところで、雌花(雌しべだけを持つ花)はないのでしょうか? 実は雌花はあるそうですが、ここでは見つけられませんでした。陽が射して、花が輝き始めます。私しかいないので、事実上の貸し切り状態。手あたり次第、撮影しました。
ここはずっと以前からセリバオウレンの自生地だったと聞きます。今は人が踏み込まないよう、簡単な囲いで保護されていますが、きっとセリバオウレンの生育環境がよく保存されているのでしょう。植生を守るには、鹿柵のような植生保護柵も必要ですが、それ以上に環境保全が重要です。セリバオウレンは花後も葉が枯れず、栄養を蓄え続けます。願わくは、将来いつまでも、春の巡り来るたびに、この花が見られますように。すでに、きょうの目的はほぼ果たされました。
次は金剛の滝に行きます。杉の木広場から、小峰公園最高地点(336m峰)に登り、新多摩変電所を巻いて、谷筋に下りました。道標が随所に立っていて、迷うことはありません。滝の水が伏流していると思われる川原には、サルオガセに似た植物が、あちらこちらの木の枝にまとわりついていました。緑色のとろろ昆布のようです。帰宅後に調べると、キヨスミイトゴケという苔でした。川原の奥まで行くと、まず4mほどの雌滝があり、その横に小さな抜け穴があります。
一人がようやく通れるその狭い穴を、クサリを頼りにくぐり抜けると、目の前に雄滝が現れます。ここでリュックを下ろしました。春の水辺の花を探します。ねらいはネコノメソウの仲間。ざっと見て、目の届く範囲にそれらしい姿はありません。少し範囲を広げて探して見ましたが、空振りばかり。そこで、高い場所や遠い場所に目を向け、ていねいに視線をスキャンして行くと、赤い葯を出したハナネコノメが見つかりました。いくつかの固そうなつぼみもあります。
滝の上で咲いていた極小の花。脳内イメージがあったからこそ、見つけられた花だと思います。かつて小下沢で、ハナネコノメを踏みつけながらハナネコノメを探している人を見たときは、びっくりしました。ハナネコノメはとても小さな花なので、見たことのない人は、見ても気づかないことがよくあるようです。私も実物を見ておきたい花が、ラン科の花をはじめ、まだまだたくさんあります。ちなみに蝶は見慣れていて、飛び立つ前によく見つけますが、蛾は難しいです。
以後の話は端折ります。できればその後も早春の花を探し続け、例えばミスミソウやウスギオウレンなどを見つけることができれば大発見でしょうが、そうそう見つかるものではありません。金剛の滝を後にすると、今熊神社奥の院へ裏参道を登りました。今熊山頂では、都心方面に東京スカイツリーや西武ドームを遠望。少し下って今熊山園地からは、箱庭のような市街地を走るバスや電車を、そして薄いシルエットでしたが、遠く日光男体山と筑波山も何とか望めました。
今熊山から豆佐嵐山への道は、快適でした。この道は戸倉三山の縦走路です。起伏は緩やか、日当たりぽかぽか、風はほとんど無風。汗をかいたので、上着を脱ぎました。各所の道標を見て、刈寄山の方向に進めばよいので、地図は見る必要がないほどです。523m峰の巻き道で奥多摩三山の眺望が好かったので、峰に登って撮影しました。進むほどに、左から入山尾根が近づいてきます。入山尾根と縦走路が出合う地点が豆佐嵐山頂なので、見過ごさないようにしましょう。
豆佐嵐山を巻く道の分岐から左の尾根を登ると、すぐに豆佐嵐山頂でした。少々朽ちた標識が、立ち木に打ち付けてあります。山頂のスペースはまずまずの広さ。樹木のため展望は苦しいものの、蛭ヶ岳を頂点とする丹沢山塊は望めました。(←)今熊山と刈寄山(→)を指す古びた道標の腕木が、木の根元にそっと置かれています。かつて縦走路本線は、豆佐嵐山頂を通過していたのかも知れません。この豆佐嵐山は、今は歩き難くなった入山尾根の、尾根頭でもあるのです。
来た道を舟子尾根分岐まで戻ります。そこは変形四差路で、道標の落書き、送電線巡視路の黄色杭、特定猟具(銃)使用禁止の赤色看板などがあって、いやでも注意を引かれる地点です。ここを直進する尾根道を登ると、2~3分で「舟子尾根ノ頭」と呼ばれる小峰(610m+)に至りました。舟子尾根の最高地点です。結果を先に言うと、舟子尾根は大部分が送電線巡視路で、迷いそうな個所はありませんでした。また、昨年の大型台風による被害も、特に見られませんでした。
舟子尾根には、三基の送電鉄塔が立っています。新多摩線86号(赤白鉄塔)、新秩父線6号、新所沢線4号で、これらは歩く時のよい目標物になります。送電線巡視路に特有の黒いプラ階段が長くて、少々辟易気味に。でも、落ち葉をあまり被っていなかったので、むしろ安全に歩けました。舟子尾根全体を通じ、激しいアップダウンはありません。名のある峰は古愛宕山(509m)くらいなものです。その北東の尾根には枝で通せんぼがありました。舟子尾根は南北方向です。
こうして舟子尾根をひたすら下って、最後に林道境沢線に下り立ちました。このやや水たまりの多い林道を2分ほど歩くと、コンクリート橋で刈寄川を越えて、林道刈寄線に突き当たります。よく整った道を少し行くと「ホタル通り」という愛称が書いてありました。人里に下りて来た気分になります。ほどなく見えてきた橋は、新久保川原橋。渡ると檜原街道に出ます。左に少し行くと沢戸橋バス停。次のバスが14分後だったので、ここでゴールインとしました。
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