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あじさい電車・湯坂路

湯坂路のアジサイ

湯坂路のアジサイ

箱根の湯坂路(ゆさかみち)は、日本各地にある鎌倉古道の一つです。現在はハイキングコースとしてよく整備され、多くのハイカーたちに愛されています。

地図 地理院地図: 浅間山

天気 湯坂路の天気: 箱根町 , 小涌谷駅 , 箱根湯本駅


コース & タイム 鉄道駅 大平台駅 9:41 ---(あじさい電車撮影)--- 10:21 大平台駅鉄道駅10:27 +++ 10:43 小涌谷駅(登山開始)10:45 --- 10:56 千条の滝 11:02 --- 11:31 鷹巣山林道横断 11:31 --- 11:45 鷹巣山 11:50 --- 12:12 浅間山 12:30 --- 14:04 湯坂城跡 14:04 --- 14:26 旭橋(登山終了)14:27 --- 14:40 飛烟の瀧と玉簾の瀧 15:00 --- 15:20 箱根湯本駅 鉄道駅
※歩行時間には道草と写真撮影の時間が含まれています。
鷹巣山、浅間山 たかのすやま:標高 834m、せんげんやま:標高 802m
単独 2015.6.29 全 3時間42分 満足度:❀❀ ホネオレ度:

6月29日、湯坂路を歩いて来ました。1週間前に腰を痛め、以後数日間ほとんど動けなかったので、そのリハビリとして、楽に歩けて紫陽花の花も楽しめる湯坂路を選んだものです。この機会に、いつの日か見たいと思っていた、紫陽花の花をかすめながら走る登山電車の撮影スポットにも行きました。沿道の「あじさいの小径」はすてきでしたが、楽しみにしていた浅間山の「アジサイロード」は…

段落見出しあじさいの小径とあじさい電車

箱根町の、この日のピンポイント天気予報は、終日「晴れ」。実際どこかでは晴れていたらしいのですが、私が歩いたルートでは、青空は一度も見られませんでした。でも紫陽花の鑑賞にとって、梅雨空は悪くありません。大平台駅で登山電車を降りると、「あじさいの小径」を通って、駅から最も近い踏切に行きました。踏切には、係員が立っていて、カメラマンたちに、次はどちらから電車が来ると、教えてくれます。もちろん、保安のためであることは言うまでもありません。

電車は両方向から来るので、5分から10分ごとに撮影のチャンスがあります。走行速度も緩やかなので、どんなカメラでもよく写ります。私は懐かしい{モハ104号106号}が強羅に向かって登って行くまで撮影して、大平台駅に戻りました。スイッチバック駅なので、終着駅のように車止めがあり、電車の発着を真正面から眺めることができます。すると、運よく{モハ103号107号}が到着しました。まだまだ元気そうです。どうか体を大切にして、末長く活躍してください。(♥は3両編成の中間車)

大平台から再び登山電車に乗って、小涌谷に向かいます。大平台付近の紫陽花は背が低くなっていましたが、宮ノ下の手前あたりでは、電車の窓ガラスをバサバサと擦るほど、紫陽花が旺盛に繁っていました。

段落見出し千条の滝から山道へ

小涌谷駅で登山電車を降り、道標に従ってしばらく車道を登って、千条の滝(ちすじのたき)に行きました。高さ3mほどの岩壁から細い水が無数に沁み出すようにして、簾状に流れ落ちて行く滝です。約15年前に初めて来た時は、失礼ながら、朽ちた葉のたまった切通しを見るのと大差なく、「箱根のがっかり名所?」かと思いました。でも今回は季節柄か水量があり、濃い霧も利いています。少し離れて見れば、まずまずの風景になっていました。

ところで、滝の写真によく見られるのが、露出時間を長めにして流水をボカす手法です。夢のように美しい滝の絵ができるので、高感度のフィルムやCCDの時代になっても、常套手段のように多用されます。しかし、こうした夢のように美しい滝は、写真の中にしか存在しません。他方、実物の滝は、五感を通して、その存在感を伝えてきます。私には説明板にある「幽玄」への感性が足りませんが、この日この滝に潜む、暗い水と朽木の匂いは感じられました。

千条の滝のすぐ近くの橋で、左に蛇骨川を渡ると山道になりました。すぐ道が二手に分かれます。道標によれば、右は鷹巣山40分、左は浅間山30分。私は、まず鷹巣山を目指します。すでに午前11時を回っていましたが、樹林帯の山道は暗く、弱い雨も降り始めました。木の枝から大きな雫が首筋に落ちるたび、冷やっとします。山は濃霧がかかって、視界は50メートル程度でした。

段落見出し雨の日の山歩き

さて、私はことさら雨の日を選んで山に行くことはしませんが、梅雨時にしとしと降る雨なら、嫌いではありません。登山道が滑りやすくなることはあります。でも、濃い霧に包まれて道迷いにさえ陥らなければ、さほどに危険はありません。今、花の端境期とはいえ、箱根は山野草が豊富です。シロバナイナモリソウはその名の通り白い花。わが家のベランダに咲いているペンタスとは同じアカネ亜科で、花の形もよく似ています。

この日、最もすばらしかったのは、大きなモミジの木でした。はじめ、ブナのような迷彩色の幹に目を引かれました。見上げると無採色の空に大きく枝を張って、たくさんのカエデ葉が濃淡のある緑で描かれています。このような樹木や風景を、誰にも気兼ねなく、好きなだけ眺めていられるのは、単独行ならではの愉しみです。

このモミジのすぐ先で、登山道と林道が斜めに交差していました。道標に、左は浅間山10分、右は鷹巣山15分とあります。ここからは起伏の緩やかな尾根歩き。空も大きくなり、楽しく歩けます。果は不味いけど、花のきれいなバライチゴが、雨粒を避けるように俯いて咲いていました。実を言うと晴れの日も俯いています。シモツケはピンクの小花に水晶玉をふんだんにあしらった、あでやか姿。人目につかない雨の日だけのおしゃれです。

段落見出し鷹巣山と浅間山

いつの間にか、雨は止んでいました。そして鷹巣山に到着。「鷹巣城跡」の説明板があります。テーブルとベンチ一式がありますが、ご婦人のグループが食事中でした。一般に城跡は見通しの利く場所であることが多いものです。でもこの日のこの山頂は、樹木と濃霧とで展望は全くありませんでした。濡れた地面に腰を下ろして休む気分でもなかったので、1~2分休憩しただけで、浅間山に向かうことに。雨粒を頂いたノアザミの花だけ撮影し、来た道を引き返します。

林道との交点に戻りました。ここから浅間山までが「アジサイロード」です。緩やかに登って行くと、紫陽花が現れ始めました。私は素朴な紫陽花が群生して咲いている様を勝手に想像してきたのですが、花はまばらで株数もあまり多くありません。しかも、園芸種のような紫陽花がほとんどで、少々興ざめ。どこで紫陽花を撮ろうかと考えているうちに、浅間山に着いてしまいました。「アジサイに囲まれた山頂」と書かれた記事もありますが、来た時期が悪かったのか、残念!山上の紫陽花はハズレでした。

浅間山の山頂広場は、緑の草原になっています。明るくて気持ちのいい場所なので、ここで昼食にしました。東西二つの丘のそれぞれにベンチ・テーブルがありますが、すでに満席だったので、青草の上にビニール風呂敷を広げ、腰を下ろしました。時おり、ホトトギスの鳴声が遠くから響き渡ってきます。少し肌寒かったので、それまでたくし上げていた長袖を伸ばしました。暑い日差を予想して凍らせてきた緑茶を飲みましたが、本当は暖かい紅茶が欲しいところでした。

段落見出し湯本へ

体が冷えぬうちにと、下山の途に就きました。浅間山から湯本まで、湯坂路をひたすら下ります。土も岩も濡れていたので、足を滑らせないように、慎重に下って行きました。大平台分岐あたりは草地になっています。雨上がりのオカトラノオやノアザミなどに蝶や蜂が来ていました。突然けたたましく鳴くコジュケイ。姿は見えません。どうしてあんなに鳴くのでしょうか? 途中に城山と湯坂山があるのですが、峰らしい高みがないので、素通りしてしまいました。

樹林帯には、モミジの木がたくさんありました。その葉は、やや黒ずんでいましたが、秋の紅葉は美しいかも知れません。空気は、ずっと堆肥場の藁のような臭いがしていました。湿った種々の落ち葉が腐葉土になって、山を豊かにしてゆくのでしょう。湯坂路の終り近く、湯坂城跡の手前(上側)に、荒れた石畳があります。ここで二人連れの若い男女を追い抜きました。「歩きにくい道ですね。」「滑るので。」石畳が濡れて歩きにくく、女性の方が難儀していたのです。

国道1号に下り立つと、アーチ形の旭橋まで行き、一旦ゴールインとしました。ここから須雲川沿いに滝通りを歩いて、玉簾の瀧(たますだれのたき)を訪ねます。所要時間は、湯本橋から片道約10分ほど。玉簾橋を渡り、大きな温泉ホテルの軒下を通り抜けるところでは少しためらいました。ホテルの裏手に二つの滝があり、「飛烟の瀧」と「玉簾の瀧」と呼ばれています。私は滝よりも、そこで泳いでいた黄色のニジマスの方に興味を引かれました。「黄色いおさかなさん、こんにちは」と言った赤ずきんちゃん、本当に黄色い川魚がいるんですね。

段落見出し箱根山噴火

この日、箱根山に小さな噴火があったことが、後日発表されました。そういえば、湯坂路で頭の上をヘリコプターが飛んでいたのを思い出します。日本は火山列島。温泉や観光など、多大な恵みもありますが、得することばかりではありません。噴火の予知技術が、もっともっと進歩することを祈ります。

木の葉ライン

↓ 紙芝居



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