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焼津から世附権現山

大仏ノ野より望む丹沢山塊中央部

大仏ノ野より望む、丹沢山塊中央部

大仏ノ野は、世附権現山と焼津の中間点にある、標高755mの小平原です。360度の展望に優れています。

世附権現山--浅瀬入口間の尾根は、急峻で「初心者に不向き」とされています。転倒や滑落には十分注意しましょう。

バス停 富士急湘南バス: 谷峨駅 → 丹沢湖 登山口
バス停 富士急湘南バス: 谷峨駅 ← 浅瀬入口 登山口

地図 地理院地図: 大仏ノ野 , 世附権現山

天気 世附権現山の天気: 山北町 , 谷峨駅 , 丹沢湖


コース & タイム 鉄道駅谷峨駅 バス停 7:55 == 8:16 丹沢湖バス停 8:20 --- 8:21 丹沢湖記念館 8:27 --- 9:00 千代の沢展望台 9:16 --- 9:43 焼津(登山開始)9:43 --- 11:00 大仏ノ野 11:33 --- 12:17 権現山登山道出合 12:18 --- 12:30 世附権現山 13:02 --- 13:51 ボデイ山 13:57 --- 14:18 境ノ沢ノ頭 14:18 --- 14:36 東京電力の施設 14:36 --- 14:54 浅瀬入口バス停 バス停 15:02 == 15:24 谷峨駅鉄道駅
※歩行時間には紅葉鑑賞と写真撮影の時間が多く含まれています。
大仏ノ野、世附権現山 だいぶつのの:標高 755m、よづくごんげんやま:標高 1018.4m
単独 2018.11.15 全5時間11分 満足度:❀❀❀❀  ホネオレ度:❢❢

11月15日、丹沢の焼津(やけづ)から世附権現山に登りました。焼津から登ったのは、大仏ノ野に行って見たかったからです。難斜面を登って到着した大仏ノ野では、期待以上の素晴らしい大展望が待っていました。これに続く急峻な砂ザレ帯から紅葉の緩尾根へと、様相の変化も楽しい権現山。その山頂からは、当初ミツバ岳に向かう予定でしたが、権現山南稜の美尾根を見て計画を変更。最高潮直前の新鮮な紅葉をたっぷりと楽しみながら、浅瀬入口に下りました。

段落見出し 丹沢湖バス停から千代の沢展望台へ

西丹沢行きのバスは、谷峨駅に15分近く遅れてやって来ました。私自身は平気ですが、玄倉で待っている小学生たちがちょっと気になります。まあ、遅刻扱いにはならないでしょう。バスが丹沢湖畔に差しかかると、紅葉の山々が一斉に現れました。あまり鮮やかとは言えませんが、これからどうなるでしょうか。植栽のモミジは別として、必ず鮮やかな色彩になるのは、太陽光が透過するときの紅葉や黄葉です。きょうは、それを心行くまで見ることになります。

ふと思い着いて、丹沢湖バス停で下車しました。永歳橋を歩いて渡ってみたくなったのです。丹沢湖記念館では、茅葺屋根の葺き替え作業をしていましたが、トイレの上の展望台に上がると、その葺き替え作業がよく見えました。もちろん、風景も素晴らしいのですが、ここで長居はしません。記念館を出て永歳橋を渡ります。歩き始めると、橋の途中で車道の横断はできません。欄干が高いので、風景を撮影するには、しゃがむか、背伸びしなければなりませんでした。

次は、初めて渡る大仏大橋。ちょっとワクワクします。橋の上から長い釣り糸を垂れる人々がいました。左手に世附権現山と大仏ノ野がとてもよく見えます。そして、千代の沢展望台に上ると、美しい冠雪の富士山を望めました。第一展望台と第二展望台とがあるのですが、第一の方が広く、富士山と権現山を同時に望めます。第二は狭いのですが、位置が高いので、富士山だけをひたすら眺めるには適。さてここまでで、きょうはもう十分に満たされた気分になりました。

段落見出し 焼津より、大仏ノ野へ

再び大仏大橋を渡り、学校前バス停から中川右岸の県道をテクテク、焼津に向かいます。中川沿いの展望は概ね良好で、焼大隧道を抜けると、青いアーチの中川橋を前景に、箒杉権現山と大室山を望める箇所がありました。一幅の絵のような、美しい構図です。焼津バス停を過ぎ、先方に中川洞門が見えてくると、山側に白い手すりの階段がありました。ここから、いよいよ登山開始です。すばらしい大道草を食って来たので、はや時刻は9時44分になっていました。

階段を昇りきって、数mほど右に行きますが、その先の道が分かりませんでした。キョロキョロと辺りを見回します。とりあえず、左に見える尾根を登ってみましょう。左下に中川のボート乗り場を見て、尾根に乗ります。少し登ると、紫色のパラフィンテープが木の根に結ばれていました。この紫色のテープは、その後も時々目にすることになります。でも落ち葉が積もって、踏み跡は不明瞭。しかも急勾配で足元が悪い。ここは立ち木の助けを借りて登って行きました。

地面に黒いケーブルが見られるようになりました。テレビアンテナ用の同軸ケーブルだと思います。ところが途中で切れていました。既に放棄されているのでしょう。頑丈そうなケーブルなので、お助けロープ代わりに掴んでも差し支えないと思います。西丹沢登山詳細図に記された鹿柵をくぐると、杉林となり、踏み跡がよく見えるようになりました。このまま大仏ノ野まで行けるでしょうか? ところが、ここできれいな紅葉に引かれ、尾根から逸れてしまいました。

そのきれいな紅葉を見に行ったら、そのまた先にきれいな黄葉もあって、ますます当初の尾根から逸れてしまいました。こうして私はズルズルと脇道に引っ張られて行くのですが、そこは登りの気楽さ、とにかく上を目指して行けば、何とかなるのです。でも、最小リスクと最小労力で登れるルートを求め続けるという、安全登山の基本は忘れません。ほどなく行く手が明るくなり、大仏ノ野への「分読み」区間に入りました。

段落見出し 大仏ノ野の陶酔と入場料

大仏ノ野は、何故ここにこんな空間が?と思うほど、不思議な大広場でした。膝の高さまでチカラシバが生い茂る草原。無造作にガサガサと歩き、アンテナ群まで行くと、文字通り、360度のパノラマが欲しいままでした。目に邪魔な樹木や構造物が何もないのです。圧巻はもちろん眼前の権現山ですが、全方位に見ごたえがありました。でもこの素晴らしい展望は、この秋一番か二番の晴天のおかげでもあります。きょう、ここに来れて本当に良かった!

ところで、座って休める場所がありません。一面に隙間なくチカラシバが繁茂しているからです。休憩の場所を求めて移動すると、鹿が寝たような跡がありました。そして気づいて驚きました。靴と靴下とにチカラシバの種が、無数に引っ付いていたのです。摘み取ろうとしても、繊維に食い込んで、容易に外れません。強引に引っ張ると、繊維の円い輪が出てしまいます。まるでダニのように、ズボンの中を巧みに腿まで這い上がり、チクチク食いついてきました。

チカラシバは本当に厄介でした。引っ付き虫の中には、ある程度の時間が経つと、自ら離れて行くものもあります。しかしチカラシバの種は、翌々日までしぶとく残りました。この季節に、このような場所に行かれる方は、スパッツを着用してください。私の場合は、このチクチクが痛い入場料になってしまいました。幸い、人目を気にすることなく、何とか歩ける程度にまで種を取り除くことはできました。嫌なことはすぐに忘れます。そして感動だけが記憶に残るでしょう。

段落見出し 権現山へ

大仏ノ野を後にし、山頂に向かいます。道標はなくても、行く道は明瞭でした。草木の乏しいザレ場が、スキーのゲレンデ、あるいは防火帯のように、幅のある裸地になっています。このザレ場を真正面に見上げた時、奥秩父の笠ヶ岳を思い出しました。見通しがよいので、一見大変な登りのようにも見えますが、大した標高差はありません。ザレ場と樹林の境界に、無数に露出した杉の根が良い足場となり、眺望にも励まされて、思いのほかスイスイと登って行けました。

杉林が終わると、広葉樹のまばらに立つ素敵な尾根になりました。ゆったりとした尾根に、赤褐色の落ち葉が絨毯のように敷き詰められ、サクサクと踏む足も軽く、極楽気分です。すると、きょう初めての道標が見えてきました。登山道と出合う直前、道標を裏側から見るのはいいものです。表側に回ると「権現山0.3km」とありました。そしてこの300mは、王様の道のようによく整えられ、美しく飾られていました。色も形も楽し気な木々。そして上品な富士山。

今回、一つの小ミッションを持って来ました。権現山頂にある三角点の標高は、現在の地理院地図によれば、1018.4mです。この三角点石と、1019mと書かれた山名標柱とが、共に権現山の最高点に並び立っていることを確認し、完了。広場のベンチに腰を下ろし、お茶にします。道標に「ミツバ岳分岐」と書かれていますが、傍らの張り紙に「ミツバ岳方面 登山道不明瞭 遭難事故多し 通行注意!」とは ... 間違えやすい地点に、道標を公設できない理由があるのでしょう。

段落見出し 大正解、権現山の下山路

さて、当初の計画では、ミツバ岳を経由して下山するつもりでしたが、権現山の美尾根を見てしまいました。ここは、山頂から浅瀬入口へと続く尾根を歩かねば、せっかくの紅葉がもったいない。立札に「踏跡不明瞭」とはありますが、要所要所にしっかりと道標があるはずなので、道を間違えることはないでしょう。「王様の道」を戻ります。そして先ほど裏と表とを見た道標を過ぎると、急激な下りが始まりました。万一滑落したら、どこまで落ちて行くでしょうか?

幸い、まだ落ち葉は少なく、土もよく締まっていたので、急勾配にもかかわらず、普通に歩けました。良かった! でもつまづきには要注意。こんな急勾配の登りはゴメンだな、と思いながら下ったのですが、登る人は逆のことを考えるようです。ともかく、紅葉と湖の輝きがどこまでも美しく、この尾根が終わることを惜しみ、時間が短く感じられました。時間調整もうまく行き、バスの時刻まで6分を残し、浅瀬入口にゴールイン。最後まで、誰とも出会いませんでした。

きょうは、前座の千代の沢展望台で見た富士山と丹沢湖をはじめ、大仏ノ野の全方位パノラマ、権現山の紅葉に彩られた尾根など、美しいものに満ちた一日でした。悪いことは、すでにほとんど忘れています。怖い落合トンネルも通りませんでした。何より、無事に下山できて感謝です。すでに秋も深まり、またヒル(蛭)休みシーズンが到来しました。丹沢の低山歩きが楽しみです。

木の葉ライン

↓ 紙芝居



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