塔ノ岳は首都圏から手軽に霧氷を見に行ける山として知られます。気象条件によって様々な形状の霧氷や雨氷が見られます。
神奈中バス: 渋沢駅 ⇔ 大倉
地理院地図: 塔ノ岳 , 日高
塔ノ岳の天気: 塔ノ岳 , 秦野市 , 大倉
レポ: 雪降る塔ノ岳・霧氷満開
表丹沢やまなみ記録(秦野市観光協会)
2月4日(木)、立春の日、霧氷を見ようと塔ノ岳に行き、日高までピストンしました。雲に覆われ、小雪のちらつく稜線、南面の登山道には霧氷よりも雨氷が多く見られました。一方、塔ノ岳から日高にかけて、典型的な霧氷のほか様々な形状の雨氷や氷柱(つらら)などが見られました。
渋沢駅6時48分の大倉行き始発バスは、満席の他に3人の立ち客がいました。市街地を抜けると、車窓から表丹沢の山なみがよく見えるようになります。二ノ塔、三ノ塔は見えるのに、塔ノ岳だけが雲を冠って上半身を隠していました。山上の展望は難しいかもしれません。大倉に到着すると、朝焼けの空を眺めながら、念入りに準備運動をしました。登山ポストに用意されている、極めて簡単な計画書をサラッと書いて投函。空気が冷えているので、まずはローギヤで発進です。
観音茶屋あたりで、白いものがチララ、チララと舞い落ちてきました。見晴茶屋は工事中で裏側を迂回。駒止茶屋あたりに来ると、かなりの雪道になりました。ここで1回目の休憩とし、甘いミルク紅茶を飲みます。三ノ塔方面を望むと、稜線がよく見えないほどガスに覆われていました。どうやら今日はハズレかもしれません。この休憩所でアイゼンやチェーンスパイクを装着する人々がかなりいたので、私も軽アイゼンを着けました。
萱場平の少し上で、下りてきたチャンプさんと握手し、名刺をもらいました。「丹沢チャンピオン 5000回登山達成」と書かれています。その先、花立直下の階段には、雪がわずかしか残っていませんでした。晴れた日に振り返れば広く大きな海を望める場所ですが、今見えるのは雲の中にひっそり佇む堀山だけです。花立山荘の「しるこ旗」もきょうは出番なし。希望的なのは、ときおり青空の出る瞬間があることでした。
花立山荘前に下山中の若者二人組がいました。深夜1時過ぎに渋沢駅から歩いて登ったそうです。私が霧氷の様子を尋ねると、「山頂近くに歓迎のアーチの樹氷がありますよ」とのこと。とてもきれいだったそうです。花立山荘の寒暖計はマイナス1℃を示していました。暖かくなったのでしょうか? 山荘の付近では雪が融け、地肌が露出していました。私は少し焦り、足が幾分速く動くようになりました。
花立まで登ると、小さいながらも霧氷が見られるようになりました。樹木の小枝の風上側に、羽毛のように成長した結晶です。とても繊細で、手を触れるだけでパラパラと落ちてしまいます。しかしこの辺りから山頂にかけて多く見られたのは、霧氷のように木の枝の片側に成長した雨氷です。カチカチに凍っていて、杖で軽く叩いたくらいでは落ちません。下手に素手で触れると手の皮が剥けそうです。
塔ノ岳山頂の直前まで来て、はじめてアーチ状の霧氷がありました。残念ながら青空による朗らかな歓迎はありません。しんと落ち着いたモノクロームの光景です。山頂標に取り付けられた寒暖計は、マイナス4℃を示していました。周囲の展望は360度ゼロ。強い風が吹き付けて寒いので、すぐに北面に向かいました。強風を受けなければ、暖まった体を維持できます。嬉しいことに、南面と比べて、美しい霧氷が格段に多く見られるようになりました。
塔ノ岳から丹沢山にかけての稜線は、わが家からよく見えるということもあって、私のお気に入りの散策路です。富士、檜、蛭、ほか山や谷の素晴らしい眺望。緩やかな起伏。表尾根や大倉尾根のような混雑もありません。塔ノ岳を訪れる人は、丹沢山まで行かなくても、あと10分か20分でも山頂の北面に足を運ぶことで、きれいな雪や霧氷やシロヤシオの花などを見ることができます。この「山のあなた」の幸いは、めったに人を裏切ることがありません。
さて、塔ノ岳の北面に足を踏み入れたときから、足が遅くなりました。雪や氷の造形が素晴らしかったからです。これは花の季節でも同じ。感動するたびに立ち止まり、撮影していると、足がなかなか前に進みません。でも、このことを想定して、大幅にゆとりのある計画をもって来ています。心ゆくまで時間を使いました。きょうは氷の花には恵まれましたが、展望は期待できそうにないので、散策は短縮版、日高までのピストンとします。
稜線上では強い寒風を受ける場所も多くあります。日高に到着し、昼食にしようと風の当たらない場所に行ってリュックを開いていたら、西の空から青い空間が流れてきました。もうリュックはそっちのけ、懐からカメラを取り出しながら、稜線に走ります。青い限定空間が現れたのは、時間にして10秒から20秒。何とかして青い空を背景に霧氷を撮影したい! これは桜でも、モミジでも、霧氷でも同じです。被写体は動かないのに、高速で駆け抜けて行く背景!
その後、空飛ぶ青空とは、あと2回遭遇しました。そのたびにワクワクしながら、夢中でシャッターを切ったのは言うまでもありません。ところで、真っ白に輝く霧氷を撮影するには、青空だけでなく輝く太陽も必要ですが、山頂でそれが叶う時間が数秒間ありました。もう一度チャンスが来ないかと、しばらく尊仏山荘の軒下で待っていましたが、風が冷たいので下山することにしました。
花立まで下ると、秦野市街地と相模湾が望めました。天気予報通り、秦野市は晴れです。午後になっても、名物の泥濘(ぬかるみ)は、ごくわずかでした。堀山の家の直下、スリップの名所には小さなアイスバーンがありましたが、避けて歩けば大丈夫です。平日なので、茶屋は全部休み。雑事場ノ平からは時間調整をしながら歩きました。先の暖冬で大倉のロウバイの花はすでに茶色になっていましたが、白梅は立春らしく、ちらほらと咲き始めていました。
野菜の無人販売は格安なので、車の人は喜んで買っていたようですが、私はバスで、リュックも小さいので見るだけ。大きなキャベツや太くて長いネギなど、次回は小さく畳めるショッピングバッグを持ってきて買いましょう。大倉バス停には約10分のゆとりを残して到着しました。きょうは頻繁に立ち止まったからか、足腰にもゆとりがあります。服装と髪を整えているうちに、渋沢駅行きのバスがやって来ました。
大倉を7時頃に発って登るとして、塔ノ岳で霧氷が見られるのは、どんな日でしょうか。その確率の高いのは、(1)気温が低く、(2)山に湿った風が吹く日です。(1)気温は、天気予報で調べます。山頂への到着時に氷点下ならまず大丈夫でしょう。大倉の気温から7℃引いた温度を山頂の推定値とします。(2)湿った風は海から吹くので、これも天気予報を見ましょう。また、前日のヤマレコ投稿写真などを見て、十分な積雪があれば、これが湿気を保ってくれます。
では、青空と霧氷を共に見るには? 上記の条件に加え、天気予報が終日晴れの日を狙います。さらに当日の朝、富士山と丹沢がくっきりと見えていれば、早く登ることで青空を期待できます。お日様ぽかぽかで日中の気温が上昇すると、霧氷が消えてしまうかもしれません。快晴で、しかも日中気温の低い日に登るチャンスがあれば、本当に幸いです。早朝に山頂で霧氷を見るために、山小屋に泊まるなり、暗いうちに登り始めるなりする、熱心な霧氷ファンもいるほどです。
ところで、霧氷と樹氷の違いは何でしょうか? Wikipedia によれば、樹氷は霧氷の一種です。言い換えれば、すべての樹氷は霧氷だということになります。本記事ではこれに従い、より広い概念である「霧氷」を用いました。もちろん、雨氷や凍露は別物です。最後にひと言、美しい霧氷に魅せられると、やがて雪山の虜になるかも知れません。ご用心を。
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