「城山」というのは、日本で最も多い山名(Wikipedia)です。ちなみに、二位は「丸山」。ある城山を他の城山と区別するため、「〇〇城山」という呼び名がしばしば用いられます。戸倉城山は、東京都あきる野市戸倉にあります。
城山の多くには、戦国時代に山城がありました。遠望が利き、アクセスもそこそこ好い山が選ばれたので、ハイキングの好適地にもなります。敵からの防御も必要だったので、険しい面も併せ持つのが普通です。
西東京バス: 武蔵五日市駅 ← 十里木
地理院地図: 戸倉城山
戸倉城山の天気: あきる野市 , 武蔵五日市駅
レポ: 夕やけ小やけから市道山・臼杵山
9月30日、戸倉城山に二度登りました。秋のハイキングの下見のためです。戸倉城山には四本の登山路があり、それらを仮に、(1)光厳寺(こうごんじ)ルート、(2)西戸倉ルート、(3)十里木ルート、(4)荷田子ルートと名づけました。
武蔵五日市駅から檜原街道を西に200mほど歩き、道標にしたがって左手のコンクリート階段を下りると、すぐに秋川橋に至ります。橋からは広い河原とその向こうに奥多摩の山々がが望めます。この河原は秋川橋河川公園として整備され、バーベキューの一大名所のようですが、平日の早朝とあって、人の姿は見られません。あきる野市デジタルアーカイブによれば、秋川がカーブするあたりは、カトリックの洗礼がなされたので耶蘇淵(やそぶち)と呼ばれます。開放感があって気持ちがいいので、この河川公園でしばらく川や山を眺めていました。
さて、城山に向かって秋川右岸の遊歩道を進みます。川が蛇行しているので大回りになりますが、できるだけ車の通らない道を歩きたかったからです。逆に檜原街道は車の往来こそ多いものの、城山に最短距離で向かう道であるばかりでなく、昭和レトロの味わいがあって楽しく歩けるとも聞きました。遊歩道の方は、ダリヤ畑で上段に上がり、大きなアーチの橋を右に見ながら上流に進みます。あゆみ橋というこの橋の名には、歩行者専用という意味と、鮎が見えるという意味とを掛けてあるらしいです。
遊歩道が右にカーブすると、右手に城山が見えるようになりました。キバナコスモスとコスモスが延々と咲く道は季節感も十分。コスモスが終われば、紅葉が始まることでしょう。やがて「聖牛」の説明板に行き着くと遊歩道が終わり、しばらく車道を歩きます。「和み花壇」の十字路は直進するつもりでしたが、右折して小和田橋に立ち寄りました。この橋から眺める秋川も風情があります。橋を渡りきると城山が見え、そのまま秋川左岸を西に進もうかとも思ったのですが、広徳寺に立ち寄りたかったので「和み花壇」に戻りました。
「和み花壇」の十字路から西に進むと左手に石仏群が並ぶ道が分岐します。ここが広徳寺の入口。やや傾斜の強い坂道を上って行くと総門が見えてきます。広徳寺は山門、大イチョウ、本堂、鐘楼など、目に美しいものが美しく配置されています。裏手のタラヨウの木は都内最大とされ、都指定天然記念物です。北の通路から少し下ったところで、きれいな訪問者用トイレを使わせてもらいました。
次は佳月橋。秋川に月が映るのでしょうか? 左岸から河原に降りることができます。橋の半ばに立つと、上流にぽっこりした城山を望めます。ここから沢戸橋まで右岸と左岸の両方に道があります。現在右岸(上流に向かって左)の道は土砂崩れによる修復工事のため通行止めだというので、左岸を歩きました。途中から河原に下りられます。この日はコサギの姿が見られました。このあたり、古道の散策が好きな方は、鎌倉古道を探して歩くと楽しいかもしれません。
適当なところで檜原街道に上がります。子生神社(こやすじんじゃ)のあるY字路で、旧道と新道が分かれるので左の旧道へ。すぐに青いアーチの沢戸橋があり、思いのほか均整の取れた城山が望めます。向かって左の山肩には急峻な崖も見えます。沢戸橋を渡りきると沢戸橋バス停、その向かいに秋川ドライブイン。バス道路を少し進んだ先に通学児童の横断歩道があり、左手の城山に行けそうな小道が現れました。
この道は私道のような趣があったので、遠慮気味に進んで行きました。やがて公道らしくなって、小学校の校庭を右に見ながら奥へと進みましたが、本当は小学校を左に見なければいけないと気がついてUターン。正しい道に戻って、坂道を上って行くと、光厳寺を指す標識がありました。光厳寺の門前には戸倉城跡の説明板が2枚立っています。この寺にも立ち寄ってみたいと思いましたが、すでに道草をたくさん食ってしまったので、ここは次回のお楽しみに。寺に向かって左の細道を下り、少し登り返すと登山道に出ました。
尾根に立つ道標に「城山山頂(急坂)」と書かれています。標高差はわずかですが、山道に慣れていない人と来る場合は要注意です。特に山頂の直前の岩場でスリップしたら、大きな事故につながりかねません。ハイキングといえども、運動靴やタウンシューズなど履いて来る人も考えられ、予め靴底にも注意を払わねばならないと思いました。このルートを往路に採用する場合、友人たちの協力を仰ぎ、ザイルを使用することも考えます。
山頂の眺望は抜群です。五日市方面しか望めませんが、城下はもちろん、遠方はるか東国一帯を監視するには絶好の位置です。ベンチが7脚とテーブルが1台あり、20人くらいは座れるでしょう。レジャーシートを持って行けば、最大100人くらい収容できるかもしれません。山頂にはトイレもあります。子供がいる場合、城跡の探索は危険な箇所があるので禁止するのがいいでしょう。小学生以下は、保護者同伴が参加条件です。
山頂トイレから、右に折れ、西戸倉ルートを下りました。安全上特に問題はなく、無難な登山路です。「戸倉」バス停に行くと、折りよく藤倉行きのバスが来るところでしたが、歩いて十里木まで行きました。土地カンを養っておくためです。十里木の三叉路から落合橋まで行って、付近の駐車場やトイレを下見。三叉路に戻り(旧)檜原街道を経て、ベンガラ色の人道橋、石舟橋に行きました。これは秋川に架かる景勝の橋で、大岩の峡谷を、白い飛沫を上げて流れる秋川を眼下に望めます。
石舟橋を渡りきると、庭園風の短い散策路を経て、瀬音の湯(せおとのゆ)に至ります。ここのベンチで昼食にしました。足湯があり、無料で利用できます。昼食後に約30分間、両足を浸しました。足湯の効果は、各地で幾度か経験しています。ここまで3時間ほど歩いた足の疲れは、一旦リセットされました。次は、荷田子の登山口に向かいます。
瀬音の湯の駐車場を抜け、白い大きなアーチの新矢柄橋(しんやがらばし)を目指します。車道の途中から左の狭い道を登ると、新矢柄橋の袂に出ることができました。これより檜原街道を西に少し歩き、信号機のある横断歩道を赤い郵便ポスト側に渡ると、すぐそこが登山口です。「荷田子峠・城山・臼杵山」を指している道標にしたがって梅林に入ります。電気フェンスの「通り方(開閉方法)」をよく読んで、無事に通過しました。
荷田子峠に登る道には、いろいろな山野草が咲いていました。眺望も優れ、荷田子峠からの稜線歩きでは大きな馬頭刈山を中心に、右手の金比羅尾根から左手の松生山(まつばえやま)や茱莄御前(ぐみごぜん)まで雄大に望めました。4本の城山登山路の中では、最も満足の行くのがこの荷田子ルートではないかと思います。ただし、所要時間は他のルートの2倍ほどかかります。
展望のよい稜線歩きは15分ほどで終わり、尾根道は暗い樹林帯に入ります。登山路が90度折れ曲がるピークの標柱に盆堀山(ぼんぼりやま)と書かれていました。名前に可愛らしい響きがありますが、展望もなければ、これと言って目立つものもありません。木漏れ日の下で静かに休憩するくらいでしょうか。私は腰を下ろして、始まったばかりのNHK朝ドラ「マッサン」を見ました。
その後、十里木への道を左に分け、二つの送電鉄塔をくぐり、再び城山山頂に立ちました。時刻は午後1時半。太陽光が半順光になっていて、色合いに温かみがあります。テーブルに着いて、昼食の残りを平らげました。考えてみると、私が同じ日に同じ山に2度登ったのは、記憶する限り初めてのようです。城山の各登山口は標高が200m以上あるので、高尾山の半分くらいの労力で登れるのではないでしょうか。
最後に十里木ルートを下りました。面白いのは竹(孟宗竹?)が上の方まで進出して、針葉樹と広葉樹と竹とが混植していることです。これで土砂崩れが起こりにくくなるならいいのですが、どうでしょうか? このルートも西戸倉ルートと同様、展望はありません。山野草も乏しく、25分弱で下ってしまいました。十里木バス停の前に下り立ちますが、武蔵五日市駅行きのバスに乗るには、三叉路の信号を越えて、バス折り返し所の前まで行かねばなりません。
私は次のバスまで15分ほどあったので、東隣の「坂下」バス停まで10分ほど歩きました。途中、橋の欄干に座っている猿を見ました。このあたりにいつも猿が出没するのかは知りません。それは別として、今年は山のドングリが少ないようで、多くの野生動物たちが人里にやって来るかもしれません。
来たバスは数馬からでした。車内を見回すとかなりの登山客。坂下から武蔵五日市駅へはバスで10分ほどです。阿伎留神社例大祭で、通りに並ぶ出店の賑わいが車窓から見えました。バスが駅に近づくと、何人かの熟年ハイカーたちが立ち上がり、駅に到着すると脱兎のように飛び出し、ホーム目指して走って行きました。せわしいことですが、体力を十分に残して下山するのはよいことです。急ぎすぎて階段で怪我をしませんように。私はゆっくり歩いて、同じ電車に乗れました。
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