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鉄五郎新道・御岳山裏参道

鉄五郎新道に咲くイワウチワ

鉄五郎新道に咲くイワウチワ

鉄五郎新道は、イワウチワの自生地がよく知られていますが、他にも多くの山野草が見られます。

御岳山裏参道は、緩傾斜の整備された登山道です。長い代わりに、足への衝撃が少ないのが特徴です。

地図 地理院地図: 広沢山 , 大楢峠

天気 御岳山の天気: 奥多摩町 , 御岳山駅 , 御岳山

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コース & タイム 鉄道駅 古里駅 9:16 --- 9:30 寸庭橋 9:32 --- 10:17 鉄五郎新道入口 10:17 --- 10:47 金比羅神社 11:35 --- 11:40 イワウチワ保護地 11:48 --- 12:36 広沢山 12:36 --- 12:59 大塚山 13:19 --- 13:33 富士峰園地 13:56 --- 14:05 御岳山裏参道出合 14:09 ---(裏参道)--- 15:26 大楢峠 15:34 --- 16:43 寸庭・鳩ノ巣分岐 16:53 --- 17:13 鳩ノ巣駅 鉄道駅
※歩行時間には花探しと写真撮影の時間が多く含まれています。
大塚山 おおつかやま:標高 920m 単独  2016.3.31 全 7時間57分 満足度:❀❀❀ ホネオレ度:❢❢

3月31日、奥多摩の鉄五郎新道と御岳山裏参道を歩いてきました。山と川に春の花を訪ねた道草ハイクです。金毘羅山のヒカゲツツジは、わずかに咲き始め。ミツバツツジはつぼみが色づいていました。イワウチワは開花が進んでいるものの、数がめっきり減ったようです。富士峰園地では開花したカタクリを1輪だけ見つけました。この日の暖かな陽気で、里の桜は各地で一気に満開の便りを発しました。山上に春本番が訪れるのも、もうすぐでしょう。

段落見出し 古里駅から寸庭橋へ

鉄五郎新道を歩くのは、4年ぶり、2度目です。今回も寸庭橋(すんにわばし)を渡り、大多摩ウォーキングトレイルに入りました。せっかくここまで来たので、道草を食って多摩川の河原に下りてみます。水ぎわの狭い砂浜に行くと、灰色をした滑らかな大小の岩が、半身を砂に埋めていました。風はなく、温んだ空気を胸に吸い込むと、流れる水も温んだ色に見えます。寸庭橋の赤いアーチを通り抜けると、今はない吊橋の橋脚だけが古城跡のように残っていました。

ウォーキングトレイルに戻り、越沢(こいざわ)右岸の山道に進みます。寸庭川から流れ落ちる「上の滝」と「下の滝」を見た先で、右に分岐する小道に進み、小橋の手前から川原に下りました。水辺に咲く花を探します。あります、あります、コチャルメルソウがいっぱいで踏みつけそう。でも花がとても小さいので、うまく撮影できません。ハナネコノメも多く、こちらは花弁が白いので、容易に撮影できます。

越沢の水辺をゆっくり歩き、一つ上流の橋の手前でトレイルに上がりました。東に分岐する階段の道を登り、寸庭集落に向かいます。寸庭川に架かる細いコンクリート橋を、先回は渡らなかったのですが今回は渡って、寸庭集落の緩い坂道を登って行きました。車道と出合うと、その角に檜造りの公設道標があります。ここは右折して「大塚山・御岳山」の方向に進みます。山里の春は、椿、ボケ、水仙、桜などの花で、のどかに彩られていました。

段落見出し 金毘羅山のツツジ2色

次の道標は、寸庭林道を指して「行き止まり」と書かれていました。ここで右手の細い道に進み、寸庭川を渡り返します。そのすぐ先、電柱の手前で山道が二手に分かれていました。ここにも道標があり、左は「行き止まり」、右は「大塚山・御岳山」、その下に「鉄五郎新道」と落書きがあります。おそらく、ここが鉄五郎新道の起点だと思われます。この先、公設の道標は大塚山までありません。ただし、登山路は一本道なので、迷うことはないでしょう。

寸庭から30分ほど歩いた頃、金毘羅神社の鳥居にやって来ました。さっそくツツジの咲き具合を見に行きます。ミツバツツジは、花と同じ赤紫色のつぼみが膨らんでいました。でも咲くのは、もう少し先のようです。ヒカゲツツジも黄緑色のつぼみが膨らんでいました。こちらも暖かい日がしばらく続かないと咲きそうにありません。どこかに咲いた花がないかと、山頂の大岩の下にも行って探しましたが、ツツジの木そのものがありませんでした。

もう一度神社の裏手に戻って、ていねいに探すと、咲き始めたヒカゲツツジが、2輪見つかりました。また断崖ギリギリの岩場でも咲き始めていました。ミツバツツジ、ヒカゲツツジとも見ごろになるのは、来週か、再来週か、天候次第でしょうが、里の桜が散ってからかも知れません。ヒカゲツツジとイワウチワをたっぷりと鑑賞するなら、坪山でしょうが、わずかながらも見られる金毘羅山は、貴重な自生地だと思います。

段落見出し イワウチワ自生地、たったこれだけ?

金毘羅神社から5分ほどで、「岩団扇保護地」に来ました。第一印象は、「あれ、少ないっ!」「たったこれだけ?」4年前の記憶にある花が、脳の中で勝手に増殖したのかとも思いましたが、そうではなく、株の分布密度が減ったように思います。でも咲く時を忘れず、可憐な花がここかしこに咲いているのは、うれしく思いました。「保護地」と書いてありますが、どのように保護しているのでしょうか? 根元が踏みつけられないことと、盗掘されないことを願うばかりです。

次の目標、広沢山を目指し、大きなツガやモミの立つ尾根を登って行きます。ツガとウラジロモミの見分け方は、栂立尾根に行ったとき覚えました。右手に高くそびえていた城山(じょうやま)が徐々に低くなり、代わって鍋割山北尾根の小ピークが見えるようになります。左手に見える丹三郎尾根にも、高さが接近して行きます。それにしても急登。こんなにきつい登りがあったかなあ、と思いました。どうも、苦しかった記憶は薄れ、楽しかった記憶は膨らむみたいです。

広沢山に至ると、しめたものです。この先、大塚山まで、いいえ、鳩ノ巣に下りるまで、きつい登りはもうありません。植林帯を軽快に歩いて、最後に電波塔わきの斜面を登り詰め、大塚山の山頂広場に飛び出しました。人はいませんが、ヒオドシチョウが飛んでいます。越冬した蝶なので翅はボロですが、タテハチョウ特有の力強い飛翔は、変わっていません。山頂のテーブルに着き、温かいミルクティーをのどに流しました。きょうは手軽にランチパックで昼食です。

段落見出し カタクリ、貴重な一輪

大塚山から富士峰園地に向かう緩やかな坂道でも、ヒオドシチョウやテングチョウなどと出遭いました。私の頭に止まろうとしたのはルリタテハ。テフテフとのどかに飛ぶシロチョウの仲間とは違い、耳元をかすめて飛ぶタテハチョウの羽音は意外と大きいものです。富士峰園地出入口の十字路(変形多差路)にやってくると、モミジの下のベンチで外国の青年が休憩していました。「こんにちわ。」「こんにちわ。」

富士峰園地に登ろうとすると、新しい柵が設置されていて、階段も閉じていました。「あれ、入れなくなったのかな?」でも張り紙があります。閉鎖期間は3月から10月、平日は終日閉じていますが、「施錠してないので、ご自由にお入り頂けます」とのこと。私が扉を開けて入ろうとすると、青年が「どういうことですか?」と尋ねてきました。「人間だけが通れるようになっているのです」と答えると、青年は即座に理解し、自分で開けて、また閉じて、登って行きました。

この園地では、カタクリを保護しています。私は花を探しましたが、葉はあっても、花やつぼみがありません。「草の根を分けてでも」という思いで探すと、咲いた花を1輪だけ見つけました。もともとカタクリがたくさん咲く場所ではなさそうです。でも何とか「保護」が功を奏して、すぐ近くにあるレンゲショウマの群生地のように、元気な株が殖えてくれることを願います。

段落見出し 御岳山裏参道

夫婦杉、子授檜、安産杉など、一通りタッチし、御岳山上集落に向かいます。裏参道出合を通り過ぎ、「原島荘」のすぐ先、アズマイチゲの咲く場所に行ってみました。3輪ほど、つつまし気に白い花を軽く閉じて、うつむいていましたが、日が差せば開くと思います。すでに午後2時を回っていました。ロックガーデンには行かず、裏参道から下山します。石垣に掛かる「裡参道 鳩の巣路」と書かれた木のプレートをチラリと見て、狭いコンクリートの路地に入りました。

裏参道は、傾斜の緩やかな、長い道です。歩いても、歩いても、あまり高度が変わりません。でも、気の長い人、膝の悪い人、静かな山歩きを楽しみたい人には向いていると思います。小仏城山の日影沢林道のように、すみれがたくさん咲いているといいのですが、あまり見つけられませんでした。等高線沿いの山道は、水の流れる小沢をいくつか横切ります。そんな湿った場所に生えているのはハシリドコロ。紫色のつぼみを付けていましたが、若葉も紫色を帯びていました。

いくつもの尾根と谷とを繰り返し回り込み、ようやく大楢峠が見えてきました。コナラの巨樹は倒れたままです。このまま朽ちて消えるのでしょうか? このコナラは、植林帯には子孫を残せなかったかも知れません。近くで見ると、根元が腐食しています。新緑の季節になれば、ひこばえが芽吹くでしょうか。ちなみに、鍋割山頂には、8本立ちのミズナラがあります。根が生きていてくれることを願いますが、どんなことになっても、大楢峠の名にその記憶が残るでしょう。

段落見出し 鳩ノ巣駅へ

越沢林道の工事が完了したので、大楢峠から城山を越えずに鳩ノ巣駅に行けるようになりました。山道からは、樹間に大塚山、広沢山、金毘羅山、越沢バットレスなどを垣間見ることができます。真新しい林道に入ると、法面に山肌の露出した箇所があり、すみれ類が群生していました。コンクリートの吹き付けがなければ、もっとたくさんのすみれが見られたかもしれません。すみれの同定は苦手なので、撮影して、帰宅後に種名を調べることにします。

寸庭・鳩ノ巣分岐に立つ、「ゆずジャム」看板の東屋でお茶休憩にしました。眼下を流れる多摩川のほか、北面から西面にかけて大きな展望があります。本仁田山とチクマ山の雄姿、ゴンザス尾根と花折戸尾根の穏やかな稜線など、鳩ノ巣周辺の山や里が箱庭のように見える、すてきな休憩所。ここで電車の時刻表を見ながら時間調整をしてもいいでしょう。西へ坂道を下れば、きれいなトイレまで5分、鳩ノ巣駅へは、のんびり歩いて20分程度です。

暖かな日でしたが、山の花の多くは、まだ咲くのをためらっているようでした。でも探しに来た花を、1輪、2輪でも見せてくれたのは、自然の粋な“おもてなし”だったのかも知れません。おかげで、がっかりはしませんでした。今、花と言えば人里の桜です。朝には二部咲きから五分咲き程度だった車窓の桜は、夕方にはほとんどの場所で満開になっていました。

木の葉ライン

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