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大倉尾根、七つの宿題

大倉尾根の紅葉

大倉尾根の紅葉

大倉尾根は、表丹沢の代表的な登山口の一つである大倉から立ち上がり、塔ノ岳に至る尾根です。

大倉尾根の登山道は極めて多くの人々に歩かれて荒れました。近年は登山道と植生を保護するために、木段の設置が進められています。

バス停 神奈中バス: 渋沢駅 ⇔ 大倉 登山口

地図 地理院地図: ヤマレコ

天気 大倉尾根の天気: 秦野市


コース & タイム 鉄道駅 渋沢駅 バス停 6:48 == 7:03 大倉 7:11 --- 7:16 山神社 7:17 --- 7:45 上大倉の引き返し点 7:45 --- 7:51 山道取りつき 7:51 --- 8:04 観音茶屋 8:04 --- 8:22 旧大倉高原山の家 8:25 --- 8:26 大倉高原テントサイト 8:33 --- 8:36 雑事場ノ平 8:37 --- 8:39 林道への下り口 8:40 --- 9:12 水無堀山林道起点 9:13 --- 9:21 二俣 9:23 --- 9:33 渡渉地点 9:37 --- 10:25 堀山の家 10:38 --- 10:42 富士山ビューポイント 10:48 --- 11:01 堀山 11:07 --- 11:16 駒止茶屋上の休憩所(三角点跡探索) 11:53 ---(紅葉鑑賞)--- 12:32 見晴茶屋 12:32 --- 12:35 雑事場ノ平 12:35 --- 12:48 観音茶屋 12:49 --- 13:04 大倉尾根(No.0)地点 13:04 --- 13:30 水無寮 13:30 --- 13:48 大倉バス停 バス停 13:53 == 14:06 渋沢駅 鉄道駅
※歩行時間には偵察と撮影の時間が多く含まれています。
大倉尾根 おおくらおね 単独 2021年11月26日 全6時間37分  満足度:❀❀❀ ホネオレ度:❢❢

11月26日(金)、大倉尾根に関して、長らく気になっていた宿題を一気に片付けるための計画を実行しました。その宿題というのは、次の七つです。

  1. 上大倉のメタセコイアの黄葉を鑑賞せよ!
  2. 大倉高原テントサイトを下見せよ!
  3. 遭難者救出ルートを偵察せよ!
  4. 二俣~堀山の家ルートの道迷いポイントを調査せよ!
  5. 堀山に登頂せよ!
  6. 駒止茶屋の上にある、905m三角点の跡を見つけよ!
  7. 未だ見たことのない、モミジ坂の紅葉を愛でよ!

さて、どんな結果になるでしょうか?

段落見出し大倉から上大倉へ

渋沢駅6時48分発大倉行きのバスは、満員になりました。立った人は、私を含めて約20人。途中で降りる人はほとんどいないので、終点まで立ちっぱなしになります。でも長い時間ではないので、皆さんも私も大丈夫です。これが秦野駅発のヤビツ峠行きとなると、計画の時点で座席を確保したくなるでしょう。大倉終点でバスを降りると、花壇の横で準備運動をしました。きょうも絶好の小春日和。塔ノ岳を目指す人は、美しい富士山の眺望も期待できそうです。

さて、きょう私が歩くルートは、かなり変則的です。丹沢の登山届用紙があって、計画ルートに線を引く形式の用紙なのですが、理解に苦しみそうな登山届ができました。これを登山ポストに投函し、いざ出発! まず、山神社(やまのかみしゃ)を目指します。初めて歩く道で、ちょっとだけワクワクします。でも、これといった物もなく、山神社に着きました。正面で表敬した後、「塔ノ岳」を指す道標に従って進むと、舗装道路に出ました。

この舗装道路は、かつて丹沢クリステルが立っていた地点から来て、上大倉の集落を貫く道です。山神社から20分弱で、右手下方にメタセコイアらしい並木が見えてきました。本当にメタセコイアなのか、他種の樹木ではないのかを確認するのも、宿題 1. の一部です。ところがその並木への行き方が分かりません。舗装道路から水無川右岸の方向に下りる道は、いずれも民家の私道のようです。とうとう「この先行き止り」の標識まで来てしまい、引き返すことにしました。

段落見出し上大倉から大倉高原へ

メタセコイア(?)は谷にあって、この時間帯にはまだ太陽光が届かず、美しい色を現していません。そこで宿題 1. は、とりあえず後回しにして、先に宿題 2. に取り組むことにしました。ここで、上大倉と大倉尾根を結ぶショートカットを利用します。送電線[新秦野線]の下あたり、踏み跡のある尾根を探すと、すぐに見つかりました。さっそく取りつきます。途中で42号鉄塔と古びた鹿扉を通過し、正味10分ほどで観音茶屋の前に出ました。大倉尾根に合流です。

ハイカーたちに混じって、大倉尾根を少し登ります。雑事場ノ平への分岐で、大倉高原経由の道に進みました。塔ノ岳に行くには、遠回りになる道で、普通は通りません。ほどなく旧大倉高原山の家のある「大観望」に着くと、美しく紅葉したモミジが迎えてくれました。さっそくテント場に行きます。丹沢では希少なテント場に、一つだけテントが張られていました。近くに便利な水場はなさそうですが、1泊するだけなら、大倉で水道水を汲んでいけばいいでしょう。

このテント場で特筆すべきは、何と言ってもモミジの紅葉の美しさ。紅い葉も、黄色の葉も、緑の葉も、お日様マジックで鮮やかに輝いています。やって来たグループの皆さんも、一斉に撮影を始めました。1本の木に、張り紙があります。読むと、「当面の間、ご利用に関しては個々で責任をもって使用していただくようお願いいたします。管理者:秦野市観光課」とのこと。もちろん、焚火は厳禁。トイレは、古くからの「無臭トイレ」があります。以上で宿題 2. 完了!

段落見出し大倉尾根から二俣へ

大倉高原を後にして、塔ノ岳方向にしばらく歩きます。雑事場ノ平を過ぎ、見晴茶屋に至る直前、左手の立ち木に目印があります。これは何の目印だろうと思った人もいるでしょう。ここから踏み跡をたどって左に下れば、10分ほどで林道に下り立ちます。この踏み跡のような道は、救助隊が遭難者を搬出するのに使われたと聞いたことがありますが、本当のことは知りません。必ずしも歩きやすい道ではありませんが、林道への最短ルートだと思われます。

林道に下り立った地点に、黄色のビールケースがありました。仮に救助隊の車両が林道を上ってきたとしたら、暗い夜でも黄色のビールケースはよい目印になるのでしょう。ここに救助車両を置いて、大倉尾根に取りつくことができる訳です。でも、大倉発着の方が救出路として安全で確実ではないでしょうか? また、一般ハイカーにとって、この「救出路」を使うメリットは、ほぼ無いと思われます。ただ、大倉高原で幕営する人にとっては、二俣への近道になります。

林道わきの標識を見て、この林道の名が「水無堀山林道」であることを知りました。少々長ったらしい林道ですが、初めて歩く道であることに加え、鮮やかな紅葉を目にしたり、鍋割山と堀山の好展望があったりして、飽きずに歩けました。そして西山林道と交差する地点にゲートがあり、そこが水無堀山林道の起点です。「マイナールートを歩く者は、道標を裏から見る」と言われますが、このゲートを初めて裏から見ました。ゲート脇を通り抜けます。宿題 3. 完了!

段落見出し二俣から小草平ノ沢渡渉点へ

ゲートの前には古い道標と並んで、新しい道標がありました。古い方では、大倉3.5km、新しい方では戸川公園4.6km 1時間10分となっています。古い道標の「大倉」は「大倉バス停」のことではなかったのです。さて、ここから二俣へ、西山林道を5分ほど歩きます。尾関広氏の胸像を経て、二俣に到着すると、勘七沢を越える木橋を眺めました。木橋は安泰のようです。この木橋の手前から右の道に進み、小草平ノ沢の渡渉点と小草平ノ尾根を経て、堀山の家を目指します。

その道の入り口に、「登山者の皆さんへ」という注意書きがありました。「ここから堀山の家に抜ける道は、道迷い等の遭難事故が多発しているため危険です」と書かれています。同様の注意書きは、堀山の家の側にもありますが、その「道迷い」箇所を調べるのが、きょうの宿題 4. です。道迷いは登りよりも下りで多く発生し、特に小草平ノ沢の渡渉点で間違えるようなので、そこを重点的に調べるつもりです。緊張感をもって登っていきました。

登り始めて約8分、「丹沢自然休養林」の大きな看板がありました。「国有林です。マナーを守り、自然環境を大切にしましょう」と書かれています。ここはかつてハイキングコースだったのかな?と思いました。もしそうだったのなら、道迷いの多発個所に道標をしっかり立てれば、遭難を防げるのに!とも思ってしまいます。登り始めて約10分で、一つ目の沢に来ました。涸れていたので、普通に横断します。続いて二つ目の沢に至りました。小草平ノ沢です。

段落見出し小草平ノ尾根を登って堀山の家へ

小草平ノ沢には少し水がありました。渡渉しても、靴を濡らすほどではありません。その少し上流に、落差約5mの滝があります。この渡渉点のどこが間違いやすいポイントでしょうか。登りの場合は間違うことはないと思いますが、堀山の家から下ってきた人は、惰性でこの沢を下ってしまいそうな気もします。正解は沢を水平方向に横断し、その先に道が続いていることを確認すること。今はテープ類がたくさんあるので、濃霧でもなければ大丈夫でしょう。

その先は、小草平ノ尾根をひたすら登ります。私は久しぶりの登山なので、急登の区間では息が切れました。腿の筋肉が疲れ、足が重くなっています。でも尾根道を単純に登るだけなので、進路の判断に迷うことはありません。「小草平ノ沢」と「小草平ノ尾根」は分かったけれども、「小草平」はどこにあるのだろう?とか考えながら登っていきました。そして単調な尾根に飽きた頃、ようやく堀山の家の前の休憩所が見えてきました。ああ、長い尾根だった!

堀山の家の前の休憩所に到着して、宿題 4. を完了しました。富士山は残念ながら雲が発生して、頭がモヤモヤしています。腰を下ろし、熱い紅茶と菓子パンで小休止にしました。かなり汗をかいています。10分ほど休み、富士山のよく見えるポイントに向かいました。大倉尾根を登ること約4分で到着。そこで5分ほど待っていたら、雲のモヤモヤが消えて、富士山の頭がスッキリと見えるようになりました。塔ノ岳山頂にいる人々も喜んでいることでしょう。

段落見出し堀山に登頂、そして三角点探索

堀山の家に戻り、堀山に向かいます。実は堀山には以前、塔ノ岳の帰りに一度立ち寄ったことがあるのですが、本当に立ち寄っただけ。今回は水無堀山林道から堀山を見上げました。そして小草平ノ尾根を登ってきました。投入したエネルギーが違います。とはいえ、大倉尾根からは1分もかからず、あっさりと登頂しました。堀山の山頂を示すものは、何もありません。北西面に展望があり、鍋割山稜と小草平ノ尾根、小丸尾根、マルガヤ尾根、鍋割山南稜などを望めます。

宿題 5. も完了したので、次は楽しい(?)三角点探しです。何年か前のことですが、「東丹沢登山詳細図」を見ていた時、駒止茶屋のすぐ北に標高905mの三角点が記されていることに気付きました。それ以後、実物を見たことはありませんが、この三角点石を見つけてタッチするのが、宿題 6. です。駒止茶屋上の休憩所から探し始め、付近を行ったり来たりしました。なかなか見つからないので、スマホで地理院地図を見ると、何と、その三角点が表示されません。

これは盲点でした。その905m三角点は廃止されたのでしょうか? そこで「三角点の」を見つけることに課題を変更しました。何か痕跡が残っているかも知れません。ところが30分余りの捜索も空しく、何も見つけられませんでした。仕方なく、捜索は中止。あきらめることにしました。ちなみに、等級は三等三角点、基準点名は一ノ沢です。衛星測位システムが発達した今日、三角点の重要性は下がっているのでしょう。宿題 6. は「不適切課題」だったのでしょうか?

段落見出しモミジ坂の紅葉に陶酔

次は、モミジ坂の紅葉を愛でることです。大倉尾根は何度も歩いたのに、紅葉の季節に歩いたことはありませんでした。きょうその宿題をやろうと思ったのは、今が紅葉の季節の真っただ中だからです。そして太陽光が燦々と降り注ぐときに来なければなりません。「手のひらに太陽を」の歌のように、光の吸収と透過が創り出す絵巻物を鑑賞するのです。モミジ坂は一本松あたりを中心に、延々と立ち並ぶモミジの極彩色。至福のひと時を与えてくれました。宿題 7. 完了!

最後に、もう一度上大倉に行きます。宿題 1. が残っているからです。今度は、大倉尾根《No.0》標識から舗装道路を歩いて行きました。今朝来た時もそうでしたが、誰とも出会いません。メタセコイアと思われる並木は、午後の光をいっぱいに浴びて、黄金色になっていました。円錐形の樹姿、45度に伸び上がる枝などから、メタセコイアだと思いますが、できれば至近距離で観察と鑑賞をしたいところです。宿題 1. は大甘で完了としました。

きょうは好い日になりました。宿題をやって、100%すっきりした訳ではありませんが、もとより山の魅力は一生をかけても知り尽くせません。コロナ禍で弱った筋肉を鍛えなおし、山に行き続けようと思います。

木の葉ライン

↓ 紙芝居



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