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花いっぱいの苗場山

花いっぱいの苗場山の山頂湿原

苗場山の山頂湿原

苗場山は「日本百名山」と「花の百名山」とに選ばれています。

苗場山の山頂湿原には、多くの池塘が点在し、湿原の植物と高山植物の宝庫になっています。

駐車場 関越道湯沢IC ⇔ 和田小屋 登山口

地図 地理院地図: 苗場山

天気 苗場山の天気: 湯沢町 , 苗場山


コース & タイム 駐車場 和田小屋 6:31 --- 7:29 下ノ芝 7:37 --- 8:11 中ノ芝 8:19 --- 8:31 上ノ芝 8:31 --- 8:40 股スリ岩 8:41 --- 9:13 雷清水 9:18 --- 9:24 お花畑標識 9:24 --- 10:04 苗場山頂湿原 --- 10:14 苗場山頂 11:00 湿原散策 11:45 --- 12:18 お花畑標識 12:18 --- 12:23 雷清水 12:28 --- 12:45 神楽ヶ峰 12:45 --- 12:55 股スリ岩 12:55 --- 13:02 上ノ芝 13:12 --- 13:21 中ノ芝 13:21 --- 13:48 下ノ芝 13:59 --- 16:44 和田小屋 駐車場 == 街道の湯
※歩行時間には写真撮影の時間が含まれています。
苗場山 なえばさん:標高 2145.2m グループ 2017.08.04 全8時間13分 満足度:❀❀❀❀ ホネオレ度:❢❢❢

8月4日(金)、山の友たちと苗場山に登りました。新潟地方は梅雨が明けた直後で、まずまずの天候。山上には絶え間なくガスが流れ来て、遠望は利きませんでしたが、時折り日が差すと、山も水も花も、あらゆるものが美しく輝きました。広々としてなだらかな山頂湿原にはいくつもの湖沼(池塘)が見られ、さまざまな植物群に彩られた、夢のような光景。下山時には、金緑色に光るヒカリゴケまで見れて、最初から最後まで思い出深い登山になりました。

段落見出し 和田小屋に前泊

今年の関東地方は「梅雨明け十日」の好天がなく、むしろ梅雨時を思わせるような天候が、梅雨明けとともに始まりました。せっかく遠出の登山をするのなら、できるだけ晴天の日に行きたいものです。でも、苗場山なら、多少の雨が降っても、雲に包まれても、湿原の池塘や花を見るのには差し支えないでしょう。友人のマイカーで、東京を午前8時に出発し、関越道で湯沢ICに向かいました。インターを出たら、まず清津峡を観光する計画です。

私は、この日まで清津峡を知りませんでしたが、何でも「日本三大峡谷」の一つだそうです。1996年にできたという全長750mの清津峡渓谷トンネルに入り、600円の「入坑券」を購入。トンネル内の4か所に設けられた見晴所から、切り立った深いV字峡谷を望みます。NHKが先月23日に放映した、「列島誕生 ジオ・ジャパン 奇跡の島はこうして生まれた」の教材そのものと言ってもよい、高く聳える柱状節理の荘厳さは、目を見張るばかりでした。

和田小屋に到着し、受付に行くと、食事は「魚沼産コシヒカリ」使用と書かれていました。この表示は義務化されているそうです。2階の寝室に案内されると、蚕棚式の二段造りではなく、天井の見えるゆったりした空間。お風呂があり、男性は5時からというので、それまで小屋周辺の花や虫を撮影しに出ました。ここは苗場山五合目。若草色をしたゲレンデを見上げると、神楽ヶ峰の方向に上るリフトの柱が、点々と列をなしています。苗場山は神楽ヶ峰に隠され、見えません。

段落見出し 歩きにくい登山道だけど

翌朝は、まずまずの晴天でした。雲が多そうですが、問題ありません。中学校の生物部のグループが、朝食と昼食の弁当を受け取って、早々と出て行きました。国立公園内で植物採集をするのだそうですが、特別な許可を受けているのでしょう。私たちは6時から朝食をいただき、6時半に出発しました。登山道はゲレンデ尾根の北面にあります。多くの山行記に書かれている通り、岩石がゴロゴロして歩きにくい道でした。濡れた岩も多いので、滑らないように注意が必要です。

和田小屋(1370m)から1時間弱で、下ノ芝(1680m)の休憩所に着きました。早くも大汗を書いています。汗がぐっしょり浸み込んだ下着を脱ぐと、蝶がやって来て汗を吸い始めました。私もスポーツドリンクを飲みます。暑い上に湿度も高くて大変ですが、キンコウカ、ゴゼンタチバナ、ほか色々の花に慰められます。ここでこんなに多くの花があるのなら、「お花畑」ではどれほど咲いているだろうかと、楽しみです。これ以降、上はシャツ1枚だけで歩きました。

中ノ芝(1880m)の休憩所あたりから、ニッコウキスゲが見られるようになりました。周辺は、ワタスゲ、イワイチョウ、キンコウカなどがいっぱい。断続的に木段が設置され、登山道の荒れを最小限に抑え、植生を保護しています。多くの人が歩く ⇒ 草が生えなくなる ⇒ 雨や雪で土が流される ⇒ 岩石が露出する(荒れる)ということなのでしょう。雲が多く、遠望は利きません。上信越の名山を見られないのは残念ですが、樹木が減って、森林限界に近い開放感があります。

段落見出し 花、花、花 .....

上ノ芝、顕彰碑、小松原分岐と過ぎて行くと、「天下の霊観」と書かれていました。もしや絶景ポイントかと思いましたが、きょうは眺望の日ではありません。でもよく見ると、下の方に人造湖のようなものが見えました。地図を見ると、カッサダムと田代湖です。そこから少し歩くと、股スリ岩。さほど難しい岩場ではないので、ロープも鎖もありません。この岩を下りると、イワカガミやツマトリソウなどの高山植物が次々と現れ、頻繁に立ち止まるようになりました。

神楽ヶ峰(2029.7m)山頂付近で、保育園児のグループとすれ違いました。保育士らしい女性に尋ねると、30名プラス大人だとのこと。これはただただびっくり。苗場山の登山道がいくら整備されていると言っても、小さな子供たちにとって難所になり得る箇所は多くあります。先ほどの股スリ岩もその一つ。ザイルやハーネスで一人ずつ安全を確保しながら通過させるのでしょうか? 親たちの同意は得ているはず。とはいえ、規律のよくとれたグループのようではありました。

その先も続々と、初見の花が咲いていました。こうなったら、友たちには先に行ってもらいます。富士見坂に入り、もったいないけどぐんぐんと下降。晴れていれば、この坂から富士山が見えるのでしょうが、すぐ目の前にあるはずの苗場山すら見えません。20歳の慶大生の遭難碑があり、心を引き締められます。雷清水で休んでいた友たちに追いつくと、私もその清水でのどを潤しました。氷水のように冷たく、美味しい水です。コップと茶漉しも置いてありました。

段落見出し お花畑本番、急登、山頂湿原

神楽ヶ峰と苗場山の鞍部に来ると、俄然、花が増えました。いよいよお花畑の核心部。「お花畑」と書かれた道標も立って、心が躍ります。咲いていた花の名前を列挙するには多すぎるので、省略します。そして、九合目の標識あたりから傾斜が急になってきました。「雲尾坂」と呼ばれる最後の登りは、まさに胸突き八丁。でも花の撮影で、事実上こまめに休憩しているので、足腰も心肺も元気です。時おり日の差す瞬間があり、その時ばかりはあらゆる色が輝きました。

突然のように、山頂の平原に飛び出しました。夢のような緑の草原、花が咲き、池塘が配置され、まさに雲上の庭園です。どうしてこのような景観が生ずるのでしょうか? 山頂湿原の水源は、天からそこに降る雨と雪以外にありません。NHKが言う「奇跡の島」は、美しい「宝の島」でもありました。アキアカネやカオジロトンボが飛び交う中、花や池塘をうっとりと眺めながら、木道を歩いて行きます。もう、時間の感覚がなくなりそう。とりあえず山頂に向かいます。

山頂標と一等三角点のある山頂は、すぐでした。展望はありません。いつの間にか、夏の明るい日差しが満ちて、真新しいニッコウキスゲの黄色の花と、その花に潜り込んだキアゲハとを際立たせています。花にとって蝶は蜜泥棒だとも言われますが、ニッコウキスゲの花粉はキアゲハの体にしっかりと付くことでしょう。私たちは、湿原を見渡せる休憩所まで戻り、お昼にしました。先ほどから、小さな晴れ間が出たり、消えたりして、湿原の色々な表情を見せています。

段落見出し 湿原散策

昼食と大休止の後、湿原の散策に出ました。まずは、苗場山頂ヒュッテの見学。ここは山頂湿原で唯一の山小屋で、湿原の夕暮れや夜明けなどを体験するには最適です。トイレ利用は100円。「苗場山自然体験交流センター」という名も持つ、長野県栄村の施設です。付近には「役行者」の石碑、小さな仏像の立つ岩に嵌め込んだ「大平晟(あきら)先生壽像」、錆びた鳥居の伊米(いめ)神社などがほぼ一か所にあり、自然史とは別に、登山史を偲ばせます。

次に、小赤沢方面の道に入ってみました。湿原は大らかに南方へと広がり、緑色の何とも優しい風景です。山麓からここに至る道が決して易しいとは言えなかったことを思うと、正に別世界。苗場山が火山であることを忘れてしまいそうです。この風景がいつまでも存続して欲しいと思いますが、すべて形あるものには限りがあるのが常。大噴火が起これば、一たまりもなく姿を変えてしまうかも知れません。でもその先には、また新しい奇跡が生ずるのかも....

ところで、湿原は白いワタスゲ以外にも、目を凝らせば凝らすほど、いろいろと見つかります。クリーム色のネバリノギラン。とても小さな青い花はタテヤマリンドウ。花が終わって風車になったチングルマ。結実したショウジョウバカマを見つけましたが、猩々色の花は全部終わったのでしょうか。私たちは木道を歩いて残雪まで行き、カメラを岩の上に置き、どうにかこうにか記念撮影をしました。この山頂湿原には周回コースがないので、来た道をゆっくりと戻ります。

段落見出し 下山にもプレゼントが

名残を惜しみながら、でも満たされた心で、下山の途に就きました。来た時と同じ祓川(はらいがわ)コースを、余裕を持って下ります。ある場所で、友の一人が、ある登山者から教えてもらったという、ヒカリゴケの自生する岩を教えてくれました。ワクワクしながら、その岩穴の奥の暗がりを覗き込むと、金緑色の苔がネオンサインのように光っていました。これは発光ではなく反射光なので、真っ暗闇では光らないそうです。撮った写真は、全部ブレていました。

和田小屋に戻ると、手と顔を洗いました。冷たい水で顔を流すたびに、塩辛い味が口に入ってきます。10回ほど洗って、ようやくスッキリしました。今回の山行では、雄大な眺望にこそ恵まれませんでしたが、たくさんの美しい花と出合うことができました。そして当り前のように全員無事に下山できて、心から感謝です。山を下りると、国道17号沿いの「街道の湯」で全身の汗を洗い流して、心身ともに爽快になって家路に就きました。

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