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物見山~鎌北湖~入

物見山~鎌北湖~入

春の「入」集落

毛呂山町の西部に「滝ノ入」という大字があります。そのまた最西部、毛呂川の源流域に「入」の集落があります。

地図 地理院地図: 物見山 , 滝入峠 , ヤマレコ

天気 鎌北湖の天気: 毛呂山町 , 物見山

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コース & タイム 鉄道駅 武蔵横手駅 7:00 --- 7:29 五常の滝受付 7:37 --- 7:55 中野(山上集落)8:10 --- 8:31 小瀬名の民家 8:31 --- 8:53 物見山一等三角点 8:53 --- 8:54 物見山 9:03--- 9:05 ヤセオネ峠 9:05 --- 9:37 宿谷小滝 9:42 --- 9:44 小園地(福寿草あり)9:48 --- 9:50 宿谷の滝 10:06 --- 10:25 四季彩の丘公園路 10:53 --- 10:56 鎌北湖第1駐車場 10:57 --- 11:32 林道鎌北線分岐 11:32 --- 12:02 獅子ヶ滝 12:10 --- 12:41 滝入峠 12:47 --- 13:09 入集落(登山道終了)13:09 --- 14:06 おたかの足湯 14:06 --- 14:48 毛呂駅 鉄道駅
※歩行時間には道草と撮影の時間が含まれています。
物見山、滝入峠 ものみやま:標高 375.3m、たきのいりとうげ、たきいりとうげ:標高推定 375m 単独 2020.03.18 全 7時間48分 満足度:❀❀❀ ホネオレ度:

3月18日(水)、奥武蔵の武蔵横手駅から、毛呂駅まで歩いてきました。きっかけは、山と高原地図「奥武蔵・秩父」を広げていたら、「入」集落に赤い字で『ハナモモ(3月下旬は桃源郷)』と書いてあるのに目が止まったこと。“果たして「桃源郷」は本当だろうか? もし本当なら、今年は桃や桜の開花が早いので、すでに見頃になっているはず ” ― そう思って、「桃源郷」を実地踏査することにしたものです。ついでに、三つの滝を訪ねるように、コース取りをしました。

段落見出し 武蔵横手駅~五常の滝入口

西武秩父線、武蔵横手駅に到着。プラットフォームに下り立ったのは、私だけでした。ちなみに、この駅は有人駅です。電車がホームを去るのを待って「やぎの家」を見ると、横たわった白い足だけが見えました。まもなく7時ですが、寝ているのでしょう。ホームを降り、線路を横断して駅舎を出ます。五常の滝に通じる林道に入るため、電車の線路と並行する国道299号を横断しなければなりませんが、ビュンビュン走る車の流れは、なかなか切れませんでした。

林道に入ると、静かになりました。朝日を浴びた梅林で、白やピンクの花が輝いています。広い緑地に差しかかると、2本の長い丸木が置かれていましたが、これはベンチでした。緑地の奥には小さな墓地が見えます。この緑地はやがて霊園になるのでしょうか? ここを過ぎると林道は針葉樹林に入りました。道は緩やかな勾配で、知らず知らず高度を上げて行きます。赤い顔の天下大将軍を図案にした日高市の道標を見て、北向地蔵方面へと進んで行きました。

駅からゆっくり30分ほどで、五常の滝の入口に到着。閉まっていますが、新型コロナウィルスのためではないようです。ここは有料施設で、午前9時の開門時刻までは入れないのでした。残念。きょう見るつもりで来た、三つの滝の第一番目を諦めます。一種の聖域なので、横から不正に入ることは慎みましょう。その5分ほど先の三叉路で、日高市の道標を見て右に進み、さらに5分先で毛呂山町の道標を見ると、右に物見山への山道を指していました。左は中野の集落です。

段落見出し 中野~小瀬名

暗い林道を歩いてきたせいか、明るい山上集落に心を引かれました。五常の滝を見なかった代わりに、この中野集落に行って見ます。山と高原地図に「啓明荘」と書かれているのは、民宿でした。看板に「もちつき」とあります。人の姿は見えず、声も聞かれず、ひっそりとした山里。家並みはきれいで、ハナモモ、ラッパ水仙、ムラサキハナナなど春の花が、明るい道でのどかに咲いています。集落の外れまで行きましたが、人と出会うことはなく、そっと立ち去りました。

毛呂山町の道標まで戻って、右の小橋を渡ります。山道に入ると、俄然足が喜びました。昨日、鶴見川の堤を延々と歩き、きょうもここまで舗装道路ばかり。スニーカーを履いた両足のかかとが、じわじわと衝撃を受けて痛かったのです。平地のウォーキングに適した運動靴を探さねばなりませんが、6Eの靴を見つけるのは容易ではありません。山道を軽快に登って行くと、すぐに明るい展望地に飛び出しました。斜面が菜園になっています。小瀬名の住人のものでしょう。

この山上菜園は見晴らしがよく、南方に丹沢山塊を望めました。丹沢の手前、幾重にも並ぶ山なみが、郷愁を誘う水彩画のようです。視線を戻し、菜の花や白梅を愛でつつ歩いて行くと、こんなところに?と、家が一軒ありました。石垣の根元を埋めるピンクやうす紫色の花は、プリムラ(桜草)です。その家の前を過ぎて、ちょっと行くと、大きな馬頭観音碑がありました。昔は峠道だったのでしょう。そして、日和田山から北向地蔵に続くメインルートに合流しました。

段落見出し 物見山~宿谷の滝

物見山に向かいます。途中のヤセオネ峠から、物見山の一等三角点まで往復するのですが、大した距離ではありません。まず物見山頂を素通りし、その奥の三角点に行きました。展望はありません。きっと樹木が成長する前は、見晴らしが利いたのでしょう。でも三角点石は大きくて、貫禄を感じます。記念のタッチだけして、山頂に戻りました。先客はいません。お気に入りのベンチに独り腰を下ろし、おやつで小休止します。傍らで、一輪のヤブツバキが咲いていました。

ヤセオネ峠に戻り、宿谷の滝へと下って行きます。途中、大きな伐採地がありました。遠望はありませんが、なかなかの景観です。パンパンと手をたたくと、パンパンと山びこの返事。ただし足元は悪く、急下降で、しかも荒れているので、景色に見とれてはいられません。慎重に下り切ると、「パワースポット、宿谷小滝」と書かれた小さな看板が立っていました。沢に下りると、落差の小さな2段の小滝があり、それぞれの小さな釜に、静かに沢水が流れ落ちていました。

宿谷の滝への途上、二つの東屋のある園地がありました。入ってみると、そこはフクジュソウの花畑。太陽に向かい、パラボラアンテナのように開いた黄色の花。わさわさと茂った濃緑の葉の上で、光沢も鮮やかです。蕾もあるので、桜が咲く頃まで見られるでしょう。これはうれしい出遭いでした。こうして少々道草を食いましたが、宿谷の滝に到着。真正面から望むと、縦一文字の美しい滝です。ゴミが全くありません。なぜか「赤穂の天塩」1kg入が置かれていました。

段落見出し 鎌北湖~林道工事現場!

次は鎌北湖です。地形図を見ると、道が複雑に錯綜しているようにも見えますが、道標にしたがって歩いたら、すんなりと鎌北湖第1駐車場の目前まで行けました。そこは「四季彩の丘公園路」の分岐点で、すぐ近くに東屋があります。ここでそのまま鎌北湖畔に下りてしまえばよかったのですが、結果的にマズい選択をしました。鎌北湖がよく見えるのではないかと期待し、その園路に入ったのです。約30分の園路を最後まで歩いたのですが、残念、ハズレでした。

園路の終りで、鎌北湖レイクビューホステルの横に降り立ちます。鎌北湖の工事期間中、ホステルは休業でしょうか。きょうは、ここから湖頭まで南岸を歩く予定でしたが、通行止めでした。歩けるのかもしれませんが、途中で進めなくなるといけないので、北岸を回ります。その道が余水吐を回り込むあたりから、湖底がよく見えました。耐震工事のため、水が抜かれたのです。ところで、鎌北湖は「農業用ため池」ですが、固有名詞なので「湖」の字を使います。

鎌北湖を過ぎ、林道鎌北線を左に見送ると、右に鎌北の集落が見えてきました。目を引くのは古い大きな萱葺きの家。かなり老朽化しているようですが、雨漏りはしないのでしょうか? 集落のすぐ先、林道阿諏訪線に沿って、ユズ畑があります。ユズは毛呂山町の名産品ですが、見るとたくさんの実が地面に落ちていました。需要が減ってしまったのか、農業の後継者不足なのか、もったいないことです。その先で、何と、この道が通行止めになっていました! 重機もあります。

段落見出し 獅子ヶ滝~滝入峠

ここに至って、引き返す気にはなれません。迂回路も示されていないし、少し思案しました。時刻は11時49分。少し待てば、昼休みになるかもしれませんが、言い訳を用意し、恐る恐る進入しました。工事は林道法面の修復または補強のため、大きな石を重機の巧みな操作で持ち上げ、積んでいます。道は狭く、歩行者には絶対に入ってほしくないはず。申し訳ない思いで、素早く通らせてもらいました。そこは、一本杉峠への山道が分岐する、ヘアピンカーブの直前です。

獅子ヶ滝に来ました。水量の少ない時季なのか、獅子だ!というほどの迫力はありません。でも、ゴミのないきれいな滝です。滝の横の細い参道を上り、落下する水を眺めました。上部の小さな石窟が祠になっていて、小さな狛犬が一対、向かい合わせにちょこんと座っています。見たところ普通の狛犬のようですが、唐獅子ではあります。獅子ヶ滝は緑蔭にあり、真昼でもやや暗い印象を受けました。でも夏場にひっそりと訪れ、涼を求めるにはいい穴場かも知れません。

獅子ヶ滝に水を供給する沢の源頭、滝入峠に向かいます。その沢沿いの林道には、通行止め表示がありましたが、構わず進ん行くと、左斜面から崩れ落ちた土砂が林道に堆積していました。歩いて簡単に越せますが、四輪車両は通れません。林道の終点から右の小沢を越えて山道に取り付くと、難なく滝入峠に到りました。ここから愛宕山方面に行く道は通行止めで、遮断のロープが張られています。毛呂山町役場の張り紙があり、獅子ヶ滝を迂回するようにとなっていました。

段落見出し 入~毛呂駅

滝入峠に立つ道標に、落書きがありました。毛呂山町の道標は、もろ丸くんという可愛いキャラクターがあるのはいいのですが、現在地が書かれていないことが多く、地名等の落書きがしばしば見られます。滝入峠の道標ではそれに加え、「入←」と下り道を示してありました。もちろん、地図を見て歩く人には、間違えようのない明瞭な山道です。この道を10分余り下ると、左から来るまっすぐな山道と出合いました。逆コースの人は、ここで進路に迷うかもしれません。

さらに5分ほど下ると、小さな草地を通り抜け、林道に下り立ちました。美しい山里風景が広がっています。(上の写真) あの緑地のピンク色は、ハナモモでしょう。私は今、林道が南向きにヘアピンを描く地点にいます。左に緩やかに上って行く林道は、桂木峠や天望峠に通じる道です。ようやく「入」にやって来ました。ゴールの毛呂駅はまだまだ遠いのですが、花を愛でながら、のんびりと歩きましょう。ハナモモのほか、桜、梅、菜花、サンシュユなどの咲く、爛漫の道を。

「入」集落に限らず、滝ノ入地区全体にわたって、花の道が続いています。すれ違ったおばあさんに、「きょうは好い日ですね」と言われました。「本当に好い日ですね」と私。すっかり足が軽くなり、長い舗装道路も、全く苦になりません。花を見たいだけ見て、撮りたいだけ撮って、道草を食いたいだけ食って、おもむろに毛呂駅にゴールインしました。今回もまた、素晴らしい一日に感謝です。

木の葉ライン

↓ 紙芝居



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