南山遊歩道は、雄大な東丹沢の山々と、キラキラ輝く宮ヶ瀬湖とを眺められる、すばらしいトレッキングルートです。無雪季なら子供連れでも楽しく歩けるでしょう。
雪の季節には、蛭ヶ岳の東の白馬尾根に、山を駆け上る白馬の形が見られます。鳥居原園地と南山山頂からよく見えるでしょう。
神奈中バス: 本厚木駅 → 宮ヶ瀬(終点) 神奈中バス: 本厚木駅 ← 愛川大橋
地理院地図: 南山
南山の天気: 愛甲郡愛川町 , 宮ヶ瀬 , 鳥居原 , 半原
3月4日、南山遊歩道を歩いて来ました。権現平はまだ真っ白な雪原でしたが、登山道の雪は日当たりのよい場所で既に消え、残っている雪も踏み固まっていました。
今年は2月に大雪が降り、各地に大きな被害をもたらしました。それを思うと私的なことで申し訳ないのですが、2月の登山計画が流れてしまいました。今でも奥多摩ビジターセンターのホームページには、『奥多摩での登山・ハイキングはお控えください(平成26年3月4日)』と書かれています。どこか安全に遠慮なく登れる山をと、地図を広げて物色していたら、宮ヶ瀬湖北岸の南山に目が止まりました。
南山は交通アクセスがよく、路線バスは、
などが利用できます。私は、虹の大橋を歩いてみたかったので、「宮ヶ瀬ダムハイキングパス」を利用して、小田急線本厚木駅から宮ヶ瀬に入りました。家を出たとき空を埋め尽くしていた暗いまだら雲(層積雲)は完全に消え、どこを見上げてもきれいな青空ばかり。気分上々で歩き始めました。
宮ヶ瀬から鳥居原に通じる道は、車道だけが除雪されていました。雪で歩道を歩くことができない箇所では、やむを得ず車道を歩かねばなりません。車が来ても、とっさに逃げることをガードレールが阻むので、怖い思いをしました。鳥居原行きのバスに乗ればよかったなあと、少し悔やみながらも、虹の大橋から蛭ヶ岳や焼山の雄姿を望めて、まずまず満足しました。
ログハウス風の「森のカフェレストラン」まで来たら、「森の展望台」と書かれた道標がありました。今日は時間にゆとりがあるので、行ってみることにします。展望台へ上る階段は雪が深そうなのでスパッツを着けようと思い、リュックを下ろせる場所を探していたら、外で作業をしていた女将さんらしい人が、「中でどうぞ」と言ってくれました。主人らしい方は、「返さなくていいですから」と言って、杖にする棒をくださいました。数日前に行ったら、すごく雪が深かったそうです。
スパッツを装着し、奥の階段から登り始めると、いきなり股座までズボッともぐりました。これは大変、南山まで行けるでしょうか?でも日の当たるところに出たら、雪は少なくなっていました。深い雪が残っているのは、日当たりの無い北面だけのようです。
森の展望台からは、キラキラ光る湖水のむこうに、やまびこ大橋や虹の大橋を望めました。もちろん、仏果山や丹沢の一部も見えます。展望台のベンチでストレッチ体操をし、菓子パンとミルクティーで一息つきました。ミルクティーは、粉末とお湯とを魔法瓶に入れただけのものです。目論見どおり、歩いているうちにかき混ぜられ、おいしくなっていました。
森の展望台を東に下りると、鳥居原園地です。きれいに造られた公園で、眺望も天候も素晴らしいのですが、平日なのでほとんど人がいませんでした。丹沢と宮ヶ瀬湖を眺めるだけなら、ここに来るだけでも十分に満足できそうです。白馬尾根の馬の形をした雪形が、ちょうど本間の頭の北稜を駆け上るような位置に見えました。(上の写真)
公園の案内板で、南山遊歩道の取り付き点を確認し、芋窪橋(いもくぼはし)まで歩きました。「鳥居原ふれあいの館」バス停からなら、徒歩5分くらいの距離だと思います。その取り付き点には、ヤマビルへの警告板と忌避剤の入った小ポストがありました。同じようなものは、あいかわ公園側にも、コース途中にもありました。春から秋にかけて入山する場合は、ヤマビルに注意しましょう。
ハシゴを昇って遊歩道に入ると、雪がしっかりと残っていました。でも踏み固められていて、難儀はありません。登り始めてすぐのところに小さな展望地があり、不動ノ峰から蛭ヶ岳を経て、北端の焼山に続く丹沢主脈をパノラマ的に望めました。ここから見る白馬の雪形は、手前の稜線によって脚の部分が隠されています。
しばらく檜林を登って行くと、急に明るい草原に出ました。送電線の通り道になっている、南東方向と北西方向の眺望が雄大です。スノーボードのオリンピック選手なら、送電線に乗って宮ヶ瀬湖を越え、高取山までジャンプできるんじゃないかな、などとソチの興奮を思い出しながら空想しました。ベンチはありませんが、この草原は南山遊歩道中で最も広大な展望地だと思います。ただ、風が強い日は寒いかもしれません。
反対側の展望もすばらしく、眼前の茨菰山(ほおづきやま)と三角山、少し離れて石老山と石砂山(いしざれやま)、さらに離れて笹尾根や奥多摩の山々が望めました。ここでも圧巻は、何といっても焼山から蛭ヶ岳に連なる丹沢の稜線です。この日歩いた南山遊歩道で、北面の展望がよいのは、この草原だけだったと思います。
再び樹林帯に入り、登った尾根道が緩やかになると、きれいな小屋が見えてきました。近づくとそれはトイレで、「毎年12月15日から3月15日までの間、排水凍結防止のためトイレの使用を中止させていただきます」と、張り紙がありました。冬場の花摘みは、鳥居原園地、またはあいかわ公園で、と覚えておくことにします。
トイレの100mほど先が、権現平(南山園地)でした。樹木に囲まれた広場は、すっきり明るい銀世界で、登山路とベンチ道だけにトレースがありました。広場を囲む樹木によって風が遮られ、暖かく静かな空間になっています。すでに正午過ぎだったので、ベンチに腰を下ろして昼食にしました。私の場合、冬場の主食は、たいてい菓子パンと紅茶です。棒杖をテーブルに立てかけ、魔法瓶を取り出し、熱々のミルクティーをすすりました。
お腹が満たされてから、権現平展望地に行きました。観光のためでしょうか、宮ヶ瀬ダムと相模原方面だけが開け、展望デッキもあります。東京湾は遠くかすんでいましたが、よくよく目をこらせば、房総半島まで見えていたのかもしれません。それより私は、園地内のすりばち状のくぼ地の方が気に入りました。グループで来て、山の歌のコーラスなんて、どうでしょうか。
さて、居心地の良かった権現平を後にして、南山に向かいます。緩やかな尾根を下って行くと、熟年の男女三人組と行き交いました。「この先に、雪はたくさんありましたか?」と尋ねられたので、見て来たとおりを答えました。登山靴もスパッツも足取りもしっかりしたこのパーティーは、権現平できっと楽しい時間を過ごしたことでしょう。
その後あまり起伏が無くて、正味30分ほどで南山山頂に着きました。山頂は狭いのですが、展望は、権現平よりもはるかに優れています。ただ丹沢方面は逆光になって、陰影が物足りません。晴れた日の午前中に来れば、色鮮やかでダイナミックな丹沢を望めるのではないかと思います。
光る湖水のかなたに、丹沢表尾根の一つ一つの峰が確認できます。大山は、『山』という漢字を髣髴させる、すばらしく均整の取れた姿。大山三峰山は、四峰山か五峰山と言ってもいいかな?白馬の雪形は、水田で力強く代かきをしている農耕馬のように見えました。
南山から東の尾根を下り始めると、鎖場がありました。といっても岩場ではなく、狭くて歩きにくい急傾斜というだけです。さらに少し下ると、樹木の間から宮ヶ瀬ダムの頂上部が見えました。そして南山から20分ほど下った場所に、東屋と鉄塔が立っていて、視界が開けていました。あいかわ公園から登る場合には最初の見晴らし台で、一息ついてお茶でも飲むのに良さそうな場所です。あいかわ公園へは、ここで右に分岐し、直進は、韮尾根(にろうね)地区に至ります。
ここで、先のグループとは別の熟年男女三人組と出会いました。雪の状態を尋ねられたので、また見て来たとおりを答えました。すると、「スパッツがなくても大丈夫ですか?」とのご質問。これには、「大丈夫でしょう。」としか、答えを思いつきませんでした。
「冒険広場」と「花の森」への分岐では、「花の森」の方へ進みました。何か花が咲いているといいな、と思ったからです。そこから15分ほどで車道に下り立ち、「花の森」のベンチまで行って、靴を履き替えました。花はありませんでしたが、バスの時刻表を見てのんびりと時間調整。その後「森のわたり橋」という、当たり前のような名の吊橋を渡り、あいかわ公園を通り抜けました。こうしてタイミングよく、愛川大橋バス停に到着。定刻どおりに来た厚木バスセンター行きに乗りました。
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