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猿橋から九鬼山

九鬼山より望む、滝子山、小金沢連嶺、楢ノ木尾根、牛ノ寝通りなど

九鬼山より望む、南大菩薩連嶺、楢ノ木尾根、牛ノ寝通りなど

御前山(駒橋)は南東面が断崖絶壁で、富士山をはじめとする展望に優れています。

九鬼山は、定評のある北面の展望に加え、富士山の方向が景観伐採されました。

バス停 富士急山梨バス: 猿橋駅 ← 朝日小沢 登山口

地図 地理院地図: 御前山 , 九鬼山

天気 九鬼山の天気: 大月市 , 都留市

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コース & タイム 鉄道駅 猿橋駅 9:54 --- 10:07 登山口 10:07 --- 10:51 神楽山 10:52 --- 11:10 御前山 12:00 --- 12:23 沢井沢ノ頭 12:24 --- 12:41 馬立山 12:41 --- 13:10 札金峠 13:11 --- 13:38 紺場休場 13:40 --- 13:59 朝日小沢分岐 14:00 --- 14:16 九鬼山 14:33 --- 14:49 朝日小沢分岐 14:49 --- 15:41 深桂橋 15:41 --- 15:50 朝日小沢バス停 バス停 16:02 == 16:19 猿橋駅 鉄道駅
※歩行時間には道草と写真撮影の時間が含まれています。
九鬼山 くきやま:標高 969.9m 単独 2018.1.10 全 5時間56分 満足度:❀❀❀ ホネオレ度:❢❢

1月10日(水)、猿橋駅から尾根通しに九鬼山まで歩いてきました。出発地点からいきなり眺望に優れた、手軽で楽しいハイキングコースです。あいにく富士山は雲に包まれてしまいましたが、その他の山々はスッキリきれいに望めました。風が強かったので、名付けて「風雲九鬼山遠征!」桃太郎の鬼ヶ島遠征をプチ体験できそうな、岩稜、ヤセ尾根、急斜面のトラバースなどが次々と現れます。でもロープが各所に設置されているので、注意して歩けば問題ありません。

段落見出し 猿橋駅から歩く

朝方の所用で、家を出るのが遅くなりました。猿橋駅に着いたのが、9時50分。すでに日は高く昇り、空気も冬なりに温んでいました。駅の南口を出ると、青空を背にデン、デンと控える百蔵山と扇山。行ってらっしゃい、と言われているようです。上々の気分で、まずは地図を取り出し、歩く方向を確認。そして駅から西方に5分ほど歩くと、三叉路に九鬼山を指す道標が立っていました。これで、もう安心。きょう歩くのは、道標のよく整備された道だけなのです。

車道は上り坂になり、その脇の歩道をしばらく歩いて行きます。短いトンネルを抜けると、右手の展望が俄然よくなりました。百蔵山と扇山を撮影するなら、この坂道がお奨めです。この後、すぐに登山道入口に至りました。熊出没注意の標識があります。さっそく階段を登り、杉林を抜けると、明るい落葉樹林になりました。振り返ると、木の間越しに猿橋の町と、先ほど見た山々が望めます。これより先、九鬼山に至るまで、周辺の山々を眺めながら歩くことになります。

まもなく、大きな岩やロープが現れるようになりました。ロープは使わなくても登れますが、使う場合は古いロープを避けるようにしましょう。すでに擦り切れてしまったロープもありました。登山口の階段から40分ほどで、神楽山と御前山の鞍部に到着。「鬼」に向かう前に、まず神様と言うことで、神楽山に往復します。片道2分ほどの距離に、テレビ受信アンテナの立つ山頂がありました。大した展望はありません。三角点石にタッチだけして、御前山に向かいました。

段落見出し 御前山から馬立山へ

御前山に登頂すると、真っ先に富士山に目が行きました。残念ながら、雲によって山頂部が暗くなっています。雲は流れているので、そのうち取れるかな、と期待しながらしばらく待ったのですが、取れないどころか、富士山の真上で雲がムクムクと発生しているようです。他方、富士山以外の展望は良好で、特に高柄山から大桑山にかけての秋山山稜がきれいに望めました。眼下には、幡野、小沢、朝日小沢の集落。さらに手前をのぞき込むと、これはすごい断崖絶壁です。

真っ白な富士の嶺を見たくて、正午まで粘りましたが、あきらめました。この御前山にも「秀麗富嶽十二景」の標識がありますが、秀麗の富士を見るには、朝なるべく早く来るべきでしょう。今回は、出遅れました。正午のメロディーが風に流れて来たのを機に、九鬼山に向かいます。尾根道を行くと、すぐに出合うのが八五郎岩。南側の八五郎クドレ(崩れの意?)をトラバースする道があります。通過後に八五郎岩を振り返ると、その西面の岩稜が難所だろうと思いました。

登り返しの途中で菊花山からの道を右から合わせると、すぐに沢井沢ノ頭でした。取り立てて何もなさそうなので、写真だけ撮って素通り。でも、その先の平坦な尾根道は、明るくのどかで、足が弾みました。標高740m+の小峰を越え、馬立山(またてやま:797m)の登りに入ります。長いトラロープが連続して現れますが、落ち葉の積もった季節の下りでは、とても有難いものでしょう。ロープに沿って登って行き、南面から折り返すようにして、馬立山頂に立ちました。

段落見出し 札金峠と紺場休場

馬立山頂から5分ほど行くと、道標が左の尾根を指していました。直進の尾根道は、植野山経由、田野倉駅です。道標に従って左折すると、行く手に九鬼山がよく見えるようになりました。その稜線の木々を、1本、2本と数えられそうです。そして704m峰を越えて南下して行くと、立ち木に赤ペンキの矢印がありました。これに従い、下った鞍部が札金峠(さっかねとうげ)。古い方の道標に、札金鉱泉と朝日小沢の名があります。この道標には何故か、熊手が付いていました。

札金峠の先は、しばらく檜と松の混植林を歩き、その後また落葉樹が優勢の明るい道になりました。725m峰は、西面を巻きます。この巻き道は、ぽかぽかの陽だまりになっていました。しかも富士山と、三ッ峠山をはじめとする南大菩薩連嶺に続く峰々を望めます。こうして高揚した気分が最高潮に至ったのが、紺場休場。思いがけずに現れた、すばらしい展望地です。急いで通り過ぎてはもったいないので、しばらく足を休めて、パノラマを堪能して行きましょう。

ところで、「紺場休場」は何と読むのでしょうか?「こんばのやすんば」でしょうか? その前に、紺場って、何でしょうか? 足下にはロープで囲まれた、植物の保護地のような区画があり、冬姿になったエビネの萎れた葉がありました。春になれば、その他にどんな山野草が咲くのでしょうか。こんな絶好の展望地に、心なごむお花畑! 想い浮かべるだけで夢のようです。でも帰宅後に画像検索をしたところ、これは私の勝手な空想でした。

段落見出し 九鬼山へ

いよいよ、九鬼山の核心部に入ります。地理院地図では、九鬼山北尾根を直登する登山道が記されていますが、現在の道は東面を巻き、北東尾根に乗ってから、山頂に至るように付けられています。まず権現山稜の好展望地を経た後、急斜面のトラバースに入りました。ここにもしロープが全くなければ、鬼ヶ島を髣髴させる景観かもしれません。底知れぬ谷、樹木の乏しい斜面、狭いザレ道など。幸いこの日は、地表が低温で固まっていて、足をしっかりと支えてくれました。

九鬼山北東尾根に乗ると、そこは朝日小沢への分岐点(830m+)でした。ここから山頂に向かい、残り約140mの標高差を一気に登ります。途中のヤセ尾根や岩稜の各所にトラロープがあり、「鬼」と「虎」がしっかり結びついていました。先回は愛宕神社コースを登り、池ノ山コースを下ったのですが、同じ九鬼山でも今回のコースは随分と様相が異なります。高尾山や滝子山のように、幾つもの登山路があることが、九鬼山の魅力を強くしていると言えそうです。

山頂には、誰もいませんでした。広大なパノラマを独り占めです。ここに至るまでコマ切れに見て来た山なみが、樹木に邪魔されずに、きれいにつながりました。で、富士山は? 完全に雲に包まれていましたが、ちゃんとありました。富士山と御正体山の方向が景観伐採されています。富士山がきれいに見えていたら、天狗岩まで足を延ばしたでしょう。今はここで十分です。私だけの山頂と、私だけの時間。昼食の残りを全部ほおばり、熱い紅茶をゆっくりと飲みました。

段落見出し 朝日小沢へ下山

下山路は朝日小沢に取りました。行く機会のめったにない場所だからです。来た道を慎重に下り、鞍部から暗い植林帯に入りました。眺望のないこのルートは、あまり歩かれていないようです。一部、踏み跡の不明瞭なところもありましたが、オレンジ色のテープを目印に下りて行きました。日の当たらない山道は、すでに日暮れの雰囲気。必ずしも楽しいとは言えないルートでしたが、小沢川に下り立つと、青みを帯びた岩の間を走る清流に癒されました。

時間調整をしながら下山したので、バス停には丁度よく到着しました。すぐ隣の諏訪神社で休憩しながら、バスを待ちます。境内には何の木か、大人二人が腕を伸ばしても抱えられないほど幹の太い木が立っていました。この木から、バスのやって来る道がよく見えます。ほどなく、朝日小沢上(あさひおざわうえ)行きのバスが、時刻表通りにやって来ました。そしてその4分後、大月駅行きとなって、時刻表ぴったりに戻って来ました。登山経験上、めずらしいことです。

バスに乗り込むと、右の窓ぎわに座りました。ところが、道幅の狭いところでは、路肩すれすれを走ります。自分の体が、道路からはみ出しているような感覚になりました。幡野入口では、鈴ヶ尾山への取り付きを探しましたが、車窓からではさすがに無理。名勝猿橋は、関屋が最も近いようです。バスは国道20号を走り、猿橋駅北口で下車。駅の階段を上り、南口に回って百蔵山と扇山をもう一度眺めると、扇山の山頂にだけ、わずかな光が残っていました。

木の葉ライン

↓ 紙芝居



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