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小坂志川中流から連行峰

小坂志川中流

小坂志川中流

秋川の支流、小坂志川は、中流においてジャブジャブ歩きができます。もちろん、水量が多いときは注意が必要です。川沿いに林道がありますが、川へ容易に出入りできる箇所はわずかです。

湯場ノ尾根付近には、多くの作業道が複雑に走っています。迷路のように行き止まりになることもあるので、これに惑わされず、地形図をしっかり見て歩くのがいいでしょう。

バス停 西東京バス: 武蔵五日市駅 → 笹平 登山口
バス停 神奈中バス: 藤野駅 ← 和田 登山口

地図 地理院地図: 湯場ノ頭 , 連行峰

天気 小坂志川の天気: 檜原村 , 武蔵五日市駅


コース & タイム 鉄道駅 武蔵五日市駅 バス停 7:10 == 7:44 笹平バス停 7:46 --- 8:03 市道山登山口(入渓)8:12 --- 10:22 川と林道の二俣 10:44 --- 12:05 湯場ノ尾根出合 12:05 --- 12:26 万六尾根出合 12:26 --- 12:33 湯場ノ頭さがし 12:53 --- 13:24 連行峰 13:36 --- 14:05 山の神石碑 14:06 --- 15:26 和田バス停 バス停 15:42 == 15:57 藤野駅 鉄道駅
※歩行時間には道草と写真撮影の時間が含まれています。
湯場ノ頭、連行峰 ゆばのあたま:標高 927m、れんぎょうほう:標高 1016m 単独 2016.7.23 全 7時間40分 満足度:❀❀❀ ホネオレ度:❢❢❢

7月23日(土)、小ぬか雨の降る奥多摩の小坂志川中流を、じゃぶじゃぶと歩きました。林道の終点から複雑な作業道を経由し、道のない急斜面を登って何とか湯場ノ尾根に乗り、さらに万六尾根に乗り換えて連行峰まで登りました。下山は南側の和田へ。山は終日雲と霧に覆われ、眺望はほとんどありませんでしたが、しっとりした梅雨時の山ならではの魅力を味わってきました。

段落見出し笹平バス停からアプローチ

近場でじゃぶじゃぶ歩きのできる沢を探していたら、「ウォーターウォーキング-水歩き日和-」というブログで、いくつも紹介されていました。その中で、小坂志川中流は、湯場ノ尾根と万六尾根の近くにあり、沢の装備がなくても歩けそう。「湯場ノ尾根から万六ノ頭北東尾根」は「静かなる尾根歩き」(松浦隆康氏著)で紹介され、見通しの利く冬枯れの季節に歩いてみたいと、図書館でそのページをコピーしておきました。でも川を歩けるのなら、夏場もよさそうです。

五日市線の車窓から見上げる空は、好転の兆しの見えない曇り空でした。まあ、梅雨時はこんなもの。土曜日ですが、数馬行きのバスは、空いていました。バスが払沢の滝入口に近づいた頃、気づくとフロントガラスのワイパーが、せかせかと動いています。私はリュックから薄いビニールのヤッケを取り出しました。雨具ですが、保温効果もあります。着ると、ちょうどよい暖かさになりました。笹平では私だけが下車。こぬか雨が降っていました。

バス停から左手の小坂志林道に進み、すぐに笹平橋を渡ります。橋の上から小坂志川を見下ろすと、広めの河原と浅そうな流れとが見えました。ブログに書いてあったとおりです。林道にはヤマユリの強烈な香りが漂っていました。花が多いからでしょうが、ちょっと強すぎてたじろぎます。ヤマユリの次に目を引くのがオオバギボウシ。咲き始めと、咲いてからとで、別の花のように見えます。イワタバコもたくさんありました。花がみな、おとなしそうに下を向いています。

段落見出しきれいな川

市道山への登山道が左に分岐する地点で、スニーカーを脱ぎ、マリンシューズを履きました。濡れた岩や苔の上で滑りにくいのと、裸足で歩くのに近い感覚で歩けるので、じゃぶじゃぶ歩きには十分です。木製の桟橋を下りると、川に鉄の橋が架かっていますが、橋を渡らずに左岸に下りました。とてもきれいな流れです。ゴミ、流木、折れた枝などがありません。カメラは首に掛けて、雨具のお腹のポケットに入れました。私はこれをカンガルーポケットと呼んでいます。

澄んだ水を通して川底の石がよく見えます。濃い緑の空間は、涼しくて快適そのもの。岩で流れに段差が生じますが、通過に困難な箇所は、中流にはありませんでした。段差の手前(下流側)は深くなっているのが普通で、暑い日なら気持ちよく泳いで行けそうです。この日は涼しかったので、歩けないほど深いところは、泳がずに迂回しました。またこの日の水量では、背の低い小学生にはライフジャケットを着せたいと思いました。

中流では、小下沢のように林道がずっと川に隣接しています。でも林道へエスケープすることは、護岸壁に阻まれて容易ではありません。林道が左岸から右岸に移るコンクリート橋の下まで川を歩き通すか、入渓点に戻ることになります。ところで、人の声のような音がする小さな急流がいくつかありました。岩に空洞でもあるのでしょうか。二人の男性が、低い声で話し合っているような気がしました。魚が水面からジャンプした時などは、思わず心もジャンプしました。

段落見出し湯場の尾根へ

そのコンクリート橋まで来ると、川にトラロープが渡され、「伐採作業中に着き、この先200mの間、立入禁止です。」となっていました。一旦林道に上がります。松浦本にも書いてあるように、ここから林道をわずかに戻った地点が、湯場の尾根の末端です。私はもう一度川に下りようと思って、林道を上流方向に歩いて行ったのですが、安全に下りられそうなところが見つかりませんでした。コンクリートの護岸壁があるのです。

川と林道とが二俣になっている箇所まで来て、川遊びをあきらめ、マリンシューズを脱ぎました。足を拭いて、昼食にします。印刷してきた地理院地図を見ると、この先林道もしくは作業道が延々と続いていて、その一部が湯場ノ尾根を通っています。これをうまく歩けば、かなり楽チンができそう。ちょっとズルいのですが、時間も節約できそうだし、いい考えだと、この時は思いました。スニーカーを再び履いて、いざ山歩き、出発です!

作業道は複雑に交錯していました。迷路みたいです。とにかく右へ進むこと、上に進むことの2点を心がけました。迷路がそうであるように、何度も行き止まりにぶつかります。しかたなく山の斜面を登ると、また作業道に飛び出すといった具合でした。急傾斜ですが、幸い立ち木が多くあり、休憩も取れます。登りながら、これは野球に似ていると思いました。塁上に立っているときは、アウトになりません。木から木へと、盗塁するように登って、湯場ノ尾根に立ちました。

段落見出し湯場ノ頭はどこだ?

山と高原地図を見ると、湯場ノ尾根に「野生サル生息地」と書いてあります。これを見て、サルたちが山中の温泉に浸かっている様を、勝手に想像してきました。「湯場」というからには、かつて温泉が出たのかも知れません。でもこんなに作業道が多く造られた今でも、サルがいるのでしょうか? 私は、人の気配もサルの気配もない、霧に包まれた尾根を静かに登って行きました。踏み跡は明瞭で、靴の跡こそありませんでしたが、動物たちは利用しているようでした。

湯場ノ尾根が万六尾根と出合う地点に、「作業道、通行止」と書かれた小さな標識が、湯場ノ尾根を指していました。ここで左折します。すぐ近くにあるはずの湯場ノ頭をキョロキョロと探しながら歩きました。でもどこが湯場ノ頭なのか、判りません。何度も行ったり来たりしましたが「頭」を特定できず、「まあ、通過したのだからいいか」ということにして、連行峰に向かいました。ヤマレコには、「湯場ノ頭」と書かれた二つの標識の写真があります。

連行峰へ続く万六尾根の登山道は、よく整っていました。一旦緩く下ってまた登り返すと、標高900mあたりで急登に直面します。ここで左に分岐する巻き道に進みましたが、生い繁った草木が雨で濡れていて、衣服がずぶ濡れになりました。きょうは濡れても全くかまわない服装をしてきたのですが、半袖シャツのまま歩いたので、腕に多くの引っ掻き傷ができました。やがて直登ルートと合流し、まもなくして連行峰に到着。湯場ノ尾根の終点から正味30分ほどでした。

段落見出し下山

連行峰で小休止していたら、寒くなりました。笹尾根を東に向かいます。ここでも相変わらずガスが濃かった上、木々の葉にたまっていた冷たい雨水が、ショボショボと落ちてきました。雨具を取り出すのが面倒なので、速めに歩くことで体を暖めます。こんな天候でも、さすが笹尾根、トレイルランナーや単独行者と、時々出合うようになりました。連行峰から30分ほどで、「山の神」と呼ばれる鞍部に到着。昔は拝む人もいたのか、由緒不詳の四角い石があります。

「山の神」から南の和田にジグザグ道を下ります。この道は、傾斜が程よく、濡れ落ち葉や尖った岩石片などもない、ほぼ理想的な登山道だと思いました。整備の手が入っているのかも知れません。「山の神」から正味30分ほど下ると、竹林がありました。山と高原地図に「一軒家」と記された地点です。すると本当に一軒の家が立っていて、どなたか暮らしているようでした。ここから先は、この家の生活道路でもあるので、純粋な意味での登山道は早くも終わりです。 

バスの時間に余裕があったので、以後はゆっくりと歩きました。「転倒は難所で起こるのではなく、油断した時に起こるのだ」と自分自身に言い聞かせ、最後まで気を緩めないようにします。和田の集落へは、一軒家から25分ほど要し、バス停へはさらに15分を費やしました。私は和田の茶畑のある風景が好きです。笹尾根の北面から南面へと歩き、陰から陽へと変化する自然の味わいも楽しめました。長引く梅雨の一日を、思いのほか豊かに過ごせて、好い日になりました。

段落見出し念のため

マリンシューズは、山で渡渉するときに履くため買ったものです。沢歩きで足をしっかりと守ってくれるものではありません。

木の葉ライン

↓ 紙芝居



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