火山活動にあわせて、登山規制のレベルが変わります。私たちは「レベル1」のときに登りました。
前方の緑の山々は、第一外輪山です。
上信越自動車道: 小諸IC → 浅間山荘
地理院地図: 浅間山
浅間山の天気: 浅間山 , 群馬県吾妻郡嬬恋村 , 浅間山溶岩樹型
9月25日、山の友たちと、浅間山に行ってきました。この日、台風12号が本州の東の海上を北上中で、強く冷たい北風が吹く中、素晴らしい青空と、澄み切った空気とに恵まれました。現在、浅間山の登山規制は「レベル1」で、火口から500mまでが立入禁止。第二外輪山の前掛山まで「自己責任」で登ることができます。
曇り空の下、午前8時17分に浅間山荘の駐車場に到着。すぐ下側に無料駐車場があることに気付かず、駐車料金500円を支払いました。
浅間山荘前に、皇室の記念植樹があります。「皇太子殿下 もみ、美智子妃殿下 白樺、浩宮さま かや」と書かれています。もみ(樅)と白樺は大きく育っていますが、かや(榧)が見当たりません。でも良く見ると、一旦枯れたような株の根元から、生き生きとしたかやの枝が何本も伸びています。
8時30分、古い白木の鳥居をくぐって出発。登山案内所に入山者への諸注意が大きく書かれています。過去の噴火は前兆なしに起こっていること、規制区域外の登山であっても自己責任で登ること、などが強調されています。
雨の降った登山道は湿っていました。大きなカゴシダが目立ちます。いずれも、すり鉢のような形にきれいに整った葉が伸びています。川の底は黄土色になっていて、火山にやって来たことを認識する第一歩です。落ちている緑色のどんぐりは、コナラのものでしょうか。
9時7分、暗い谷間の「一の鳥居」を通過。ここで撮影した写真には手振れがあります。なおも谷間の登山道を進んで行くと、さっと明るい光が差し込んできました。雲が切れたのでしょう。朝もやを貫いて、幾条もの光が放射され、きょうの登山を祝福しているかのような美しさです。
これより、苔むした幾つもの岩も緑色に輝きだし、登山道はロックガーデンの趣になりました。見上げれば、赤や黄色に染まり始めた葉、まだ緑色の葉、真っ青な空と真っ白な雲。鮮やかな初秋のコントラスト、これで心の中まで晴天です。9時36分、「二の鳥居」を通過。
明るい草原に飛び出すと、空の青さがいっそう濃くなりました。ノハラアザミ、ノコンギクなどの花も、降り注ぐ光を満喫しています。右前方、牙山(ぎっぱやま)の切り立った断崖の向こうに、浅間山のはげ頭が見えます。「見えた!」「すごい貫禄!」感激の始まる瞬間です。
10時18分、カモシカ平と書かれた場所を通過。後で火山館の職員の方から聞いた話では、そこはカモシカのテリトリーの4つが接する地点で、カモシカと遭遇する機会が高いとのことです。またカモシカのテリトリーは約1平方キロで、そこに1家族が棲み、歩き回っているので、見たい人は1箇所にずっと留まっていればカモシカに会えるそうです。人を見ても逃げない点は、丹沢のシカみたいです。残念ながら私たちはこの日、1頭も見ませんでした。
10時30分、硫黄の臭いのする蛇堀川(じゃぼりがわ)を渡ると、火山館はすぐそこでした。無料の休憩所、また避難所ということですが、山小屋ではありません。職員は火山活動の観測をしています。館内には浅間山の模型、写真、書籍などの資料、薪のストーブ、灯油ランプなど、登山者を魅了するアイテムがいっぱいです。外に出て、第1外輪山の岩峰を眺めながら大休止。
火山館から5〜6分で、草すべりへの分岐(湯の平口)に至ります。左手に巨大な屏風のように立つ、第1外輪山がアルペン的な美しさを惜しみなく見せています。目を凝らすと、トーミの頭(あたま)の方向へ登って行く登山者たちが見えます。
もう少し進むと、左にJバンドへの分岐があります。これは鋸岳へのルートで、途中に「賽の河原」という、クールな名称の平原もあります。いつか歩いてみたい気もします。
背の低い林を抜けると大きく展望が開けました。前に雄大な浅間山、後ろに秀麗な第1外輪山、その間に湯の平と呼ばれるなだらかな高原。疲れも一気に吹っ飛ぶ感動の舞台です。
登山道は、はじめ少しジグザグについていますが、次第に急斜面をほぼ斜め一直線に登るようになります。これにより、登山者起源の落石事故は少ないと思われます。登山道自体の傾斜もかなり急ですが、何といっても浅間山の引力で、ぐんぐん足が上に進みます。
紅葉したオンタデが斜面を秋色に彩っています。細かい穴を無数に持つ溶岩石、緻密で硬そうな火成岩がごろごろしています。吹きつける北風は真冬のように身を切る冷たさ。フードを被っても頭が痛くなるほどです。とはいえ、高揚した胸を鎮めるほどではありません。
ついに、立入禁止の札のある地点までに達しました。ロープも張ってありますが、かなりの人々が禁断の区域に入っています。私たちは真面目(?)に規則を守り、第2外輪山の前掛山に向かって進みます。
シェルターの横を通り過ぎ、第二外輪山の尾根に入ると、強烈な寒風が右から吹き付けてきました。外輪山上を弧を描いて進んで行くと、次は左から凄まじい風です。尾根は細いので、体が吹き飛ばされないように腰をかがめて歩きます。
12時38分、前掛山頂に到着。山頂の標柱にあったはずの「浅間山」と書かれた板は失われていました。なぜか大きな手形があります。強風に乗って雲が南へどんどん飛んで行きます。その雲の切れ間に八ヶ岳が見え隠れします。眼下には小諸市街地。浅間山の火口は、雲か煙か、常に噴き上げています。
昼食を食べたら、体の冷えぬ間に下山することにしました。再び強風に耐えながら、来た道を慎重に下って行きます。
下るほどに風は穏やかになり、森林地帯ではほぼ無風に。浅間山に登ってきた充実感を胸に、赤い実(ゴゼンタチバナ)、白い実(シラタマノキ)、黒い実(ガンコウラン)、青い実(クロマメノキ)の実る、のどかな高原散歩を楽しみます。
火山館に戻ったら、煙突の煙がやさしく立ち上っていました。この日は完全なピストンコースです。合わせて五つの鳥居を往復で10回くぐり、16時2分、出発地の浅間山荘に帰って来ました。
今や必修科目同然になった下山後の入浴は、「あぐりの湯 こもろ(大人500円)」です。火山が温めた露天風呂に浸かって眺める、その浅間山は、いっそう雄雄しく、誇らしく見えました。
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