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枕状溶岩とユーシンブルー

玄倉川中流域のユーシンブルー

玄倉川中流域のユーシンブルー

小菅沢の枕状溶岩は、地球の活動が「奇跡の島」日本列島を誕生させたとき、溶岩が海中で噴出してできたものです。

光の散乱、青い空や緑の樹木の反映、青みを帯びた岩石、などの要因で、水が青や青緑色に見えることがあります。いわゆる「ユーシンブルー」は、玄倉ダムと熊木ダムの貯水でその典型が見られます。

バス停 富士急湘南バス: 谷峨駅 ⇔ 玄倉登山口

地図 地理院地図: 玄倉川(仏岩直下)

天気 ユーシン渓谷の天気: 玄倉

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コース & タイム 鉄道駅 谷峨駅 バス停 7:51 == 8:05 玄倉 8:17 --- 8:30 小菅沢橋(枕状溶岩を見学)9:20 --- 9:32 玄倉 9:32 --- 11:12 青崩隧道 11:12 --- 11:20 玄倉川中流域の散策 13:09 --- 13:14 青崩隧道 13:14 --- 14:59 玄倉 バス停 15:10 == 15:25 谷峨駅 鉄道駅
※歩行時間には道草と写真撮影の時間が含まれています。
小菅沢、玄倉川 単独 2017.9.21 全 6時間42分 満足度:❀❀❀❀ ホネオレ度:

9月21日(木)の天気予報が晴れであるのを見て、小菅沢(こすげさわ)の枕状(まくらじょう)溶岩を見に行くことにしました。でも、これだけではすぐに終わってしまいます。せっかく玄倉(くろくら)に行くのだからと、ユーシンブルーを見に、玄倉川中流域まで足を延ばしました。

段落見出し 玄倉から小菅沢へ

海外出張で約1か月半、山から遠ざかっていました。足腰の筋力、心肺ともに、ならし運転が必要です。まずはリハビリのつもりで、枕状溶岩を見に小菅沢に行き、残り時間でユーシンブルーを見ることを計画しました。枕状溶岩は、7月にNHK総合で放映した、「列島誕生 ジオジャパン」で、かつて丹沢は南の海の火山島であったという話の中で出てきました。私は先月、新潟県十日町市の清津峡で大規模な柱状節理を見て感動し、ぜひ枕状溶岩も見たいと思っていました。

西丹沢ビジターセンター行きのバスは、約10分遅れて谷峨駅を発車しました。素晴らしい天気ですが、車内はガラガラ。玄倉でようやく小学生4名が乗りました。私のほかに、3名ほどが下車しましたが、皆さんユーシンの方に行かれたようです。私は神縄方向に少し戻って、丹沢湖の彼方の富士山を眺めました。私は玄倉から丹沢湖を前景に眺める富士山が好きです。きょうもスッキリ気品ある富士の姿。丹沢湖の水位はかなり低めです。

玄倉バス停に戻り、右折して秦野峠林道に進みます。約15分で小菅沢橋に到着。頑丈そうな鉄橋です。橋の上からも美しい富士山を望めました。橋を渡り切ったところで川原に下ります。私は右手の踏み跡を辿って川原に下りたのですが、左手の広い道を行けば、もっと楽に下りられたことが後になって分かりました。川原に下りて、2~3分ほど上流方向に歩くと、ああ、あれだ、枕状溶岩!すぐに分かります。石鹸の泡立ちと似ていますが、これは硬い岩石。すごい!

段落見出し 玄倉からユーシン目指して

幾つかの枕状溶岩を触ったり、ゴミを除いたり、撮影したりしました。よく見ると、水中のものも含めて、たくさんあります。また、枕状溶岩とは別に、青みを帯びた石も無数にあります。ここもユーシンブルーの発色圏内なのでしょうか。見学を終え、一旦玄倉に戻ります。玄倉川橋から上流を望むと、2台のバックホー(重機)が見えました。玄倉川の中州を削り取っています。丹沢湖の水位の低いときが好機なのでしょう。川原を大型のダンプカーが往来しています。

玄倉林道に入っても、ダンプカーが頻繁に通行していました。少し上流でも浚渫工事をしているのでしょう。その一部は、採石場のダンプだったかもしれません。狭い林道のわきに寄って、緊張しながら歩きます。車止めゲートを越えると、ようやく騒音も振動もない、静かな世界になりました。花や虫を探しながら歩けます。二つの洞門と境隧道を抜けると、シラヒゲソウが咲いていました。私が花にカメラを向けている間に、何人か軽装の若者たちが通り過ぎました。

新青崩隧道にやって来ました。327mもある上に、途中でカーブしているので完全に真っ暗になります。照明はないので、ヘッデンが必携。独りで歩くのは怖いトンネルです。でも玄倉ダム以遠でユーシンブルーを見るには、このトンネル通過が避けられません。ところが、西丹沢登山詳細図には、このトンネルの手前から、青崩隧道方面に進み、川原に下りて行く、「仏岩展望ルート」が赤い実線で示されています。今回はこのルートを利用するつもりで来ました。

段落見出し 玄倉川の青い水を歩く

今は封鎖されている青崩隧道の手前まで行くと、川原に下りられそうな、荒れた道がありました。トラロープがあります。でも、このロープは短かすぎて、ほとんど役に立ちません。慎重に下って行くと、ここは落石の通り道。ヘルメットも必要です。無事に左岸の川原に下り立つと、そこは堰堤のすぐ上でした。渡渉して右岸の川原に移ります。上流方向に歩いて行くと、すぐに広々とした空間に出ました。新青崩隧道東口の洞門が見えます。仏岩はどこでしょうか?

洞門の上の山肌が大きく崩れ落ち、その岩石が洞門の上に堆積しています。ここに崩落が起こる以前は、仏様の姿が浮かび上がっていたのかも知れません。それよりも、積もった岩石の重みで洞門が下方に撓んでいるように見え、これの方が気がかりです。目の錯覚ならいいのですが ...。石崩隧道とか青崩隧道という名称は、おそらく地名に由来するのだと思いますが、もともと岩の崩落が多かったのでしょう。青崩というのは、青い岩石の崩落のことでしょうか?

これより、玄倉川をじゃぶじゃぶと歩いて遡行します。流れの浅いところは、河床の青みが透けて見え、深いところは水自体が青く見えて、とてもきれいです。ただ、深くてしかも流れの強いところでは、歩けません。そんなところは、岸に上がって巻きました。ただ、流量は日によって、また上流のダムの放流によって変化するものです。放流を知らせるサイレンの音だけは、聞き逃さないように気を付けました。さて、どこまで行けるでしょうか?

段落見出し 帰りはスイスイ

見上げれば、真っ青な空と白い雲。気持ちよく歩いて行くと、大きな岩が増えて来ました。白っぽい岩が多く、青い水がいっそう映えます。浅瀬が減って、ゴルジュ状の深い流れが増えました。歩けない深みは下りのお楽しみとします。岩から岩へと移り歩くのも楽しいし、岸に上がれる場合は、岸を歩きます。やがて、川幅いっぱいに広がるナメが現れました。段差は僅かですが、水流を見て、ヘルメットがないとやや危険と判断し、ここで引き返すことにしました。

川の真ん中の大きな岩に上がり、昼食にします。時計は12時15分。きょうは山登りではないので、あまり空腹感はありません。家で作ったミルクティーが、午後の紅茶になりました。靴を脱ぎ、足の血行を回復させます。空も青、水も青。ユーシンブルーの真っただ中での休憩。聞こえるのは、流れの音だけ。この岩での休憩が、この日最高のぜいたくな時間になりました。

さて、休憩終了。大きな岩から下りて、水に入ります。そして静かに流れに身を任せると、泳がなくても流れが体を運んでくれます。筋肉運動はほとんど要りません。気持ちよく流されて行きますが、こんなことができるのは、往路で安全な箇所を確認してあるからです。童心に帰って遊泳を楽しんでいたら、調子に乗り過ぎて体が冷えてきました。明後日は秋分の日。今年の夏は、すでに最終章です。浅瀬に上がり、あとは歩いて仏岩の下まで戻りました。

段落見出し 玄倉に帰還

仏岩の下の岸壁には、イワシャジンが咲いていました。岩から繊細に垂れ下がって、風に揺れています。お別れの場に、慎ましげに咲いた青い花。「じゃ、さよなら」と心の中でつぶやいて、はじめに下り立った、堰堤直近の川原まで戻ります。最後は気を引き締めて、上からの落石に注意しながら、青崩隧道へと登り返しました。これより、玄倉まで林道をテクテク歩いて帰るだけです。往路で見逃した花はないかと、最後まで山野草を物色しながら歩きました。

きょうは、見たかったものをしっかり見ることができました。光、水、岩、花など。それらは、いずれも想像していた以上に魅力的で、自然と対話する喜びを与えてくれました。少し残念なのは、今回使った防水カメラが、白っぽい被写体へのピント合わせが甘かったということ。水の青さも、現場で感じたようには写っていません。とはいえ、自然史に触れ、プチ冒険もあり、とても満足の行く一日でした。感謝。

追記:「青崩隧道」の読みは、「あおくずれずいどう」または「あおざれずいどう」です。どちらが本来の読みでしょうか。なお、ヤマビルのことは全く念頭になく、何も対策をしませんでしたが、この日、ヤマビルを見ることはありませんでした。また川で遊泳をなさる方は、ライフジャケットの着用が必要かもしれません。

木の葉ライン

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