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蕨山

蕨山のアカヤシオ

蕨山のアカヤシオ

蕨山(わらびやま)の春は、アカヤシオで彩られます。シロヤシオと同じ様に、開花が近づくと、ソワソワと心が浮き立つ花の一つです。

バス停 国際興業バス: 東飯能駅 → 名郷 登山口
バス停 国際興業バス: 東飯能駅 ← 連慶橋 登山口

地図 地理院地図: 蕨山

天気 蕨山の天気: 飯能市 , 蕨山 , 名郷バス停


コース & タイム 鉄道駅 東飯能駅 バス停 7:48 == 8:38 名郷 8:46 --- 9:34 蕨山北稜線 9:38 --- 10:39 蕨山展望台 11:18 --- 11:40 藤棚山 11:40 --- 12:07 大ヨケノ頭 12:12 --- 12:21 林道横断 12:22 --- 12:34 中登坂 12:34 --- 12:42 展望広場 12:53 --- 13:11 金比羅神社跡 13:11 --- 13:30 玄奘三蔵塔 13:42 --- 14:10 連慶橋バス停 バス停 14:14 == 14:57 東飯能駅バス停 14:58 --- 15:00 東飯能駅 鉄道駅
※歩行時間には小休止と写真撮影の時間が含まれています。
蕨山展望台 わらびやまてんぼうだい:標高 1033m グループ 2018年4月13日 全5時間24分 満足度:❀❀❀ ホネオレ度:❢❢

4月13日(金)、山の友たちと蕨山に行ってきました。春の蕨山といえば、何と言ってもアカヤシオです。ところが今年の春は、まるで特急列車。その進行の指標となるソメイヨシノは、あっという間に咲いて、あっという間に散ってしまいました。春の花や虫を見るのに、去年の時刻表を見て計画していては、乗り遅れてしまいます。例年よりもかなり早く咲いた、蕨山のアカヤシオ、まだ大丈夫でしょうか?

段落見出し名郷バス停から歩く

東飯能駅で乗った名郷行きのバスは、ガラガラに空いていました。終点まで約50分、観光バスのように、車窓から沿線の風景を楽しめましたが、土休日ではこうは行かないでしょう。河又名栗湖入口でハイカーのグループが乗車しましたが、ここまでマイカーで来て、その先の名郷までバスを利用する人々も多いようです。一般に周回ルートでは、元気な足で急登をこなし、疲れた足では緩やかに下る方が安全で、逆コースよりも、膝や足首にかかる負荷が少なくて済みます。

名郷バス停には、きれいなトイレがありました。軽くストレッチをし、長いバス乗車で固くなった体をほぐします。ここで私は名物の「なぐりづえ」を1本借用しました。これより武川岳や大持山へ向かう人は北へ、蕨山に向かう私たちは南へと、それぞれ歩き始めます。きょうは一応、晴天の大安吉日。吹く風がちょっと気になりますが、新緑のパッチワークに彩られた山々は笑っています。小学校の春の遠足の日、あの朝のウキウキした感覚が、ふとよみがえってきました。

蕨入橋で名栗川を渡ります。林道を約20分歩いて、その終点に至りました。右手の小沢を越えて、登山道に取り付きます。急登ですが、足場は悪くありません。適度にジグザグが切ってあるので、あまり息を切らすことなく高度を稼いで行けました。間伐で倒された木がゴロゴロいっぱいの杉林は、林床まで太陽の光が差し込んでいます。平地がほとんどない地域なので、林業に力を入れているのでしょうか。たとえ採算割れでも、山を守ることは生命を守る大切な仕事です。

段落見出し強風、それとも暴風?

不思議なすみれが一輪咲いていました。葉に切込みがあるので、はじめエイザンスミレかと思ったのですが、ギザギザだけあって切込みのない葉もあります。2種の葉を持つとは、変なすみれです。(後で調べたら、やはりエイザンスミレでした。)さて、蕨山の北稜に立つと、西面から強い風が吹き付けていました。急登で火照った体が、みるみる冷めて行きます。冷え過ぎないうちに山頂に向かいましょう。ここから蕨山頂まで1.7km、ほとんど緩やかな尾根歩きです。

風は台風のように、時折り暴風となって吹き荒びました。帽子を手で押さえ、足を踏ん張って歩きます。体も冷えびえ、木枯らしのような寒さを感じるほど。明るい尾根なので、風さえなければ、遠足気分で楽しく歩けたでしょう。それでもアカヤシオが咲いていれば.....いいのですが、見られるのは地面に落ちた花ばかり。でも、標高の高いところに行けば.....少しは咲き残っているかも知れない、と期待しながら、山頂に向かって登って行きました。

期待に応えるかのように、まず、ミツバツツジの花が見られるようになり、次いで、わずかに咲き残ったアカヤシオが見られるようになりました。もう本当に残りわずか。風前の灯火です。それでも進むにつれて、残り花も増えてきました。二つ目の岩場では、イワウチワが風に激しく身を震わせながらも、可憐に咲いていました。そしてこの辺りから、アカヤシオがまとまって見られるようになり、見頃の木もまだありました。ああ、よかった! 友たちも喜んでいます。

段落見出しアカヤシオありがとう

「優美な五つのハート花弁に水彩画のような彩色、木綿の夏服のようなシワ、素朴な和菓子にも似た質感。そして、山奥の岩場に咲く不思議。」これは、私が5年前に都県境尾根でアカヤシオを見て心躍った時の描写です。シロヤシオもそうですが、地域によって、微妙な差異はあります。自然界では実生なので個体差もあり、花の色の薄い木や、濃い木があります。いずれも一輪一輪がきれいで可愛らしく、集団美もすばらしい。でも、山奥に足を運ばなければ見られません。

蕨山最高点には行かず、展望台に直行しました。「蕨山」と大きな字で書かれた山頂標が立っています。よく見ると、1,033mの数字のうち「33」は「44」を消して上書きしたものでした。1,044mは最高点の標高です。展望台と呼ばれるように、北面に大きな展望が、南面に狭い展望があります。しかし、展望より先に目が行くのが、山頂のアカヤシオ。まだたくさん咲き残っていて、手の届く花は接写もできました。ここは風も穏やか。腰を下ろして昼食にします。

しばらくすると、名郷方面から熟年のグループが登って来ました。「咲いてる!」と喜びの声が聞こえます。この方々は、河又に下りて、車を置いて来た名郷までバスで戻るとのことでした。また、すてきなカメラで山頂のアカヤシオを接写している方がいましたが、この後、金比羅尾根で山野草の花をたくさん見つけ、ひとり心行くまで撮影したことでしょう。私は「団子より花」派ですが、花を見ながらの昼食で、心もお腹も満たされました。ありがとう、アカヤシオ。

段落見出し種々のすみれと出会う

さて、下山路に取った金比羅尾根は、ウソのように無風または微風でした。萌える若葉の発散する生気を吸い込み、心肺も足腰も軽快です。でも山頂直下の急な下りでは、俊足の若者に追い抜かれました。足の速い後続者に道を譲るとき、自分たちのパーティーの先頭に向かって「急行!」と叫ぶことがあります。ちなみにトレイルランナーが来ると「特急!」 私たちの歳になると、急行の通過待ちが増えてきます。でも待つ間に休めるので、必ずしも悪くはありません。

藤棚山を過ぎた辺りから、小さなすみれの花が目にとまるようになりました。マキノスミレ、フモトスミレ、フイリフモトスミレなどです。マキノスミレとフモトスミレの交雑種かも知れないすみれもありましたが、私にとってすみれの同定は、なかなか難問。交雑種だったり、非典型だったりすると、お手上げです。もし種名が間違っていたら、教えてください。一方、金比羅尾根のアカヤシオは、ごくわずかに残り花がありましたが、実質的に終わっていました。

717m峰と金比羅山の中間あたり、ヤマザクラの咲く広場にやって来ました。天高く伸び上がった、満開のヤマザクラ! その限りなく白色に近い桜色の花と、明るい萌黄色に移り行く新葉とに、樹齢とは無縁の生命感があります。この広場は北面の展望に優れ、大持山、武甲山、武川岳、伊豆ヶ岳などを一望できました。金比羅尾根の数少ない展望地なので、小休止して行きましょう。山を眺めるもよし、山桜を眺めるもよし。笹に交じって、すみれも咲いています。

段落見出し連慶橋に下山

さわらびの湯が臨時休業中なので、金比羅神社跡から鳥居に下りました。急下降で一気に高度を下げて行きます。すると左の尾根に立つ純白の観音菩薩像が見えて来ました。救世大観音と呼ばれる巨仏です。そして急下りが終ると、三層の塔の正面に下り立ちました。説明板によると、この仏塔は「玄奘三蔵塔」と言い、玄奘三蔵法師の霊骨が祀られています。その石棺は昭和17年、当時の日本軍が中国で発掘したとの由。ここは眺望も好いので、もう一休みして行きましょう。

これより舗装された参道を下ります。山と高原地図では、金比羅神社跡から連慶橋バス停までの所要時間が25分となっていますが、私たちが歩いたら、正味45分ほどかかりました。まず参道の坂を下り切ると、鳥居の集落を貫く車道に出ますが、これはバス道路ではありません。南に150mほど行くと「鳥居観音公衆トイレ」があり、さらに300mほど先の連慶橋を渡ると、バス停です。タイミングよく、わずか4分待ちで飯能駅行きのバスに乗れました。

こうして、今回もまた無事に下山できました。蕨山北稜での風は寒かったけれど、見たかったアカヤシオも、すみれも見ることができました。久しぶりに山友たちと一緒に、楽しい山歩きができたことに感謝です。

木の葉ライン

↓ 紙芝居



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