天女山は、八ヶ岳連峰の南部に位置し、権現岳への登山ルートがあります。現在、天女は住んでいませんが、天女のような人が訪れることはあるそうです。
観音平から天女山を経て美し森に至るトレッキングルートは、八ヶ岳、南アルプス、富士山、金峰山などの雄大な展望で知られます。
中央自動車道: 長坂IC → (八ヶ岳高原ライン) → 県立まきば公園
地理院地図: 天女山
天女山の天気: 山梨県北杜市大泉町
10月9日、三連休の中日、山梨県北杜市の「まきば公園」に行った折、天女山に登ってきました。登山口から標高差わずか154m。地形の上では山というより、八ヶ岳の広大な裾野に、ちょこっと盛り上がった可愛い丘といったイメージです。それでも美しい樹林や雄大な山々、広々とした牧場などに囲まれ、天女伝説が言い伝えられるのにふさわしい舞台と言えるでしょう。
私を含めて4家族11名が、午前10時に「まきばの館」前を出発。天候は快晴。県道11号を甲斐大泉駅方向に下って行きます。連休中とあって、マイカー、観光バス、単車などがビュンビュン走る道ですが、道路わきに歩行者専用の幅広な舗道があって、安心して歩けます。「天女山入口」の交差点で右折して天女山の方に行くと、すぐに登山道の入口がありました。
登山道の取り付きは階段になっていますが、土が流し取られて少し歩きにくくなっています。きつくも緩くもない階段道をゆっくりと登って行くと、秋の爽やかな空気に満ちた美しい樹林に、赤るい秋の陽射しが差し込んで、絶好のハイキング日和です。
静かなカラマツ林の中を歩いて行くと、次第に赤い色が増えてきたように思いました。ところどころに、真っ赤な葉のツタ(ツタウルシ)が松の根元から上の方までしっかりと巻きついています。小学校で教わった「もみじ」の歌を思い出します。タムラソウ、ヤマトリカブト、ヤマラッキョウなどの花も、数は多くありませんが咲いていました。
苔の生(む)した古い石塔の横で休憩したのですが、再び歩き出したらすぐに天女山頂でした。「天女山」と彫られた大きな石碑が立っています。展望は、わずかに権現岳の山頂が見えるだけ。他に見るものもないので、「八ヶ岳中信高原国定公園案内図」と「天女山の由来」をゆっくりと読みました。
15分ほど山頂で休憩し、することもないので八ヶ岳牧場に下りることにします。道標に従って、「美し森」の方向に進んだら、いきなり急で滑りやすい下りがありました。真っ直ぐな坂道なので、小さな子供には難しそうな道です。直滑降しないように気をつけながら、立ち木の助けも借りて、ゆっくりと下りて行きました。
坂道は下の方でロックガーデン風になり、笹が茂ってきます。下りきると車道を横切るようになっていました。上から下って来る車は音も静かに急カーブから現れることがあるので、右、左をよく見て渡ります。再び林の中を歩き、岩石がゴロゴロした沢を渡って少し登り返すと、明るい放牧場に飛び出しました。
放牧場は有刺鉄線でいくつかの牧草地に仕切られ、その間が遊歩道になっています。広々とした牧草地は、とても気持ちよく歩けます。残念ながら遠くの山々は霞のようなものが濃くかかって、はっきりとは見えません。快晴の日といえども、高原の秋の空気が澄んでいるとは限らないのです。それでも金峰山の五丈岩を何とか認めました。
牧草地をつなぐ通路を跨ぐ橋を越えたところがやや広くなっていたので、そこで昼食にしました。家族ごと青草の上にレジャーシートを広げ、お弁当や果物をいただきます。残念ながら赤岳は絶えず発生し続ける雲で顔を隠され、権現岳はすっかり濃い雲の中に入ってしまいました。それでも近くの山々は十分に美しく、牧草地にも緑が残っています。開放感たっぷりの空間で、美味しい高原の空気を吸って、皆満たされた顔をしています。
しばらくすると、赤岳中腹から発生している霧が薄くなり、山頂が見え隠れするようになりました。私はカメラを構え、霧が途切れる瞬間を狙います。陰影は薄いものの、何とか撮影できました。
帰路は、来た道をそのまま進み、初めの十字路で右に折れました。その先に牛の集積場があり、乳房も睾丸もぶら下がっていないホルスタインが70頭ほどいました。かなり体は大きいように見えましたが、まだ若い牛なのでしょうか。
さて、この道はここで行き止まりでした。先ほど曲った十字路に、「この先、行き止まり」と書いておきたいところです。来た道を戻るのも悔しいので、有刺鉄線のゲートを二度くぐって、車道に出ました。ここからまきば公園は目と鼻の先です。
まきば公園に戻ったらソフトクリームを食べようと楽しみにしていたのですが、長い行列を見て気力を失い、代わりに「動物ふれあい広場」に行きました。山羊、羊、ポニーなどに触れることができます。中でも白い仔山羊は、柵越しでなく触れることができ、生きものを可愛がりたい欲求を満たすのに最適です。柵のすぐ内側で草を食んでいたポニーは、時々顔をこちらにぐっと寄せ、青い目でじいっと見つめるなど、「ふれあい」精神を発揮していました。
天女山は、山慣れしていない人でも無理なく登れるので、家族ハイキングにお奨めです。眼前の八ヶ岳が与えるインパクトは大きく、子供たちにも山への憧れが芽生えることでしょう。私もいつか、展望の利きそうな日を選んで、天女山から権現岳に登ってみたいと思います。
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