丹沢山は、山頂の眺望にこそ恵まれませんが、西に0.1kmほど行くと小峰があり、すばらしいパノラマが得られます。その手前の小さな鞍部では、冬にしばしば美しい霧氷が見られるようです。
神奈中バス: 渋沢駅 ⇔ 大倉(終点)
地理院地図: 丹沢山
丹沢山の天気: 丹沢山 , 秦野市 , 大倉
レポ: 丹沢山 , 丹沢山2015
3月16日、前日丹沢に雪が降ったので、霧氷が見られるかも知れないと思い、塔ノ岳経由で丹沢山まで行ってきました。天候ははじめ晴れでしたが、やがて曇り、そして雪に。肝心の霧氷は塔ノ岳とその北稜では見られず、丹沢山まで行って、ようやく見られました。約3ヶ月ぶりの本格登山だったので、足が重くて疲れましたが、行った甲斐が十分にありました。
早朝、小田急電車の車窓から、桜色の大きな富士山が見えました。きょうは好い日になるぞ、何かと出会えるぞ! そんな気がしました。渋沢駅のトイレの窓から表尾根を眺め、改札を出てもう一度、富士山と丹沢表尾根を眺めます。塔ノ岳には雪が残っていて、スノーハイクも期待できそう。雪が解けてしまわないうちに、早く行きたい! 大倉バス停に着くと、簡単なストレッチをして、すぐに大倉尾根に向かいました。早咲きの桜の優しい春の色が目に和みます。
登り始めると、すぐに体の不調を感じました。足が重いなあ! 気が急いて、ややハイペースになっていました。途中でバテてはいけないので、やむを得ず省エネモードに移行します。速度はスローダウン、ピッチは小さめに。このまま省エネモードで行くと、塔ノ岳登頂は10時20分頃の見込み。この天気では、その前に雪が消えてしまうかも知れません。体が汗ばんできたので、観音茶屋で服装を春秋モードに替えました。
堀山の家では、鮮やかな富士山を望めました。ところがたちまち空が曇って来て、萱場平では雪もちらほら。駒止茶屋では、「きょうは『当たり』ですね」と話して来たのに、ウソみたいな急変。これが山の天気というものでしょうか。晴れれば海の見える花立直下の階段も、今は荒涼とした雰囲気。その時、前方からチャンプさんが下りてきました。私がカメラを向けると、チャンピオンポーズ。「こんにちは、ありがとう!」あれ、行く手の空が真っ青になりました。
しるこ旗のない花立山荘に到着。休んでいる人はいません。富士山はおろか、目前の鍋割山稜もかすんで見えます。でも時々青空が出ることもあるので、運に期待することにしました。花立山荘の寒暖計は+3℃。すぐに上を目指します。花立まで登ると、雪の着いた蛭ヶ岳や檜洞丸を望めました。この分なら、丹沢山まで行けば、霧氷が見られそうです。金冷シの手前のヤセ尾根では、霧氷の名残りが見られました。昨日来た人は、ここで霧氷を見たことでしょう。
金冷シから塔ノ岳山頂まで、霧氷は全くありませんでした。南面なので、もう融けたのでしょうか。来る途中、省エネモードの私を追い抜いて行った人々に、山頂直下で追いつきました。そして塔ノ岳山頂に到着。富士山は全く見えませんが、丹沢主稜を眺めるには十分の視界がありました。八ヶ岳と南アルプスの一部が真っ白に光っています。鍋割山稜は、南から吹き上がる雲で覆われ視界ゼロ。私は熱いお茶でパンをパクつくと、丹沢山に誘われるように立ち上がりました。
塔ノ岳北稜に入ると、積雪が増えました。これから丹沢山まで片道約1時間の快適な稜線漫歩です。晴れていれば、富士山をはじめ、素晴らしい展望と、メルヘン的な笹原を楽しめる稜線なのですが、きょうは望めません。ただ北に進むにつれ、木々の枝に白く咲いた花のような着雪が増えて行きました。かき揚げのような樹氷が風下側に成長しています。待ち遠しかった「丹沢山0.1km」の道標。そして丹沢山頂に至り、ようやく典型的な霧氷が見られるようになりました。
丹沢山は、山頂広場にほとんど展望がありません。そこで、すぐ西の小峰に行きます。鞍部に下ると、美しい霧氷が周辺の木々にびっしりと着いていました。南面から風が吹きつけ、湿った空気を運んでくるようです。「ああ、きれいだなあ!」と見とれていると、日が差してきました。霧氷がキラキラ輝いてとてもきれいです。よし、ここぞとばかりに撮影しようとしたら、無情にも電池切れ。すぐさま電光石火で電池を交換。2枚撮影したら、また曇ってしまいました。
桜の花にも言えますが、晴天下で青空を背景にしたとき、花が最も美しく映えるように思います。この時、北の空には青空があったのですが、太陽が出ないと霧氷が輝いてくれません。この時は南の風が吹き、遠く南方に明るい空が見えたので、1時間ほど待ってみようと思いました。あたりの木々の霧氷を観察していると、さまざまな造形があり、結晶特有の繊細な質感があり、氷の芸術だなあ、と感じます。「花のいのちは短くて...」それ故いっそう美しく思えます。
体が冷えてきました。南の風に乗って、丸い小粒のあられのような雪が飛んで来て、プチプチと顔に当たります。空が暗くなってきました。黒っぽいのは雪雲に違いありません。もうどれほど待っても日の差す見込みはないと判断し、下山することにしました。きょうは、最高のシチュエーションで霧氷を見ることはできませんでしたが、心は十分に満たされました。また次のシーズンに来ましょう。
みやま山荘の寒暖計は、+1℃を示していました。塔ノ岳に向かいます。主脈の稜線は、来たときはぬかるんでいましたが、小粒の雪が撒かれて、歩きやすくなっていました。スリップ防止の砂みたいです。軽快に下って行ったのですが、途中、日高への登り返しで、脚がとても重くなりました。脚を持ち上げるのに使う筋肉に疲労が蓄積し、しかも丹沢山の寒い場所に長く居過ぎたせいで、筋肉が休息モードに入ってしまったようです。
その先の平坦地を歩いて行くと、眠気を催しました。昨夜は午前2時まで仕事をして、今朝の4時に起きたので、2時間しか睡眠をとっていません。同じような事情は過去に何度もありましたが、山で歩いている最中に眠くなったのは、これが初めてです。体温が下がったのかも知れません。夏場なら笹原に身を沈めて昼寝をしてもいいのですが、私は今、雪山にいるのです。気を張って歩き続けましたが、塔ノ岳への登りでは、脚が上がらなくて、超スローになりました。
塔ノ岳山頂広場には誰もいませんでした。風が強く冷たく、視界はナシ。この日、ここが最も寒く感じました。金冷シへの途中で、肩甲骨が変にだるく不快になったので、リュックを下ろし、中身の左右バランスを整えました。ついでに熱いお茶を飲み、パンをほお張ります。すぐに力が湧いてきました。疲れた時、炭水化物は即効でエネルギー補給ができる、ありがたい栄養素です。これ以降は、ほとんど下りのみの一本調子。問題なく大倉バス停にゴールインできました。
最近忙しくて、肉体の鍛錬を怠っていたので、今回の山行で筋力の衰えを実感させられました。でも、無事に帰宅することができ、感謝です。しかもすばらしい世界を見て来ることができました。つくづく山はいいなあと思います。
冬に丹沢山に行かれる方は、ぜひ西の小峰まで、あと0.1kmだけ足を延ばしてみてください。広大な展望があります。また、5月中旬~6月初旬に塔ノ岳まで行かれる方は、あと5分だけ北に足を運んでみてください。シロヤシオの群生地があります。いずれも強くお奨めします。
今回、軽アイゼンを携行しましたが、使う場面はありませんでした。スパッツは面倒で着用しなかったので、表丹沢名物のぬかるみでズボンの裾が汚れました。誰か、丹沢クリステルの乗馬ズボンを洗ってくれないかな。
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