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丹沢表尾根に花を訪ねて

サガミジョウロウホトトギス

サガミジョウロウホトトギス

サガミジョウロウホトトギスは丹沢の固有種です。環境省のレッドリストで絶滅危惧種に指定されています。盗掘がなされたせいか、現在はアクセスの困難な場所にしか自生していないようです。

多くの人々が行き交う丹沢表尾根でも、数こそ少ないものの、見ることはできます。いつまでもこの花が咲き続けられるよう、大切に見守ってゆきましょう。

バス停 神奈中バス: 秦野駅 → ヤビツ峠(終点)登山口
バス停 神奈中バス: 渋沢駅 ← 大倉 登山口

地図 地理院地図: 政次郎の頭

天気 丹沢表尾根の天気: 秦野市 , ヤビツ峠 , 大倉


コース & タイム 鉄道駅 秦野駅 バス停 8:18 == 8:55 ヤビツ峠 9:00 --- 9:21 富士見橋 9:22 --- 10:25 ニノ塔 10:35 --- 10:53 三ノ塔 11:10 --- 11:49 烏尾山 12:04 --- 12:35 行者岳 13:10 --- 13:44 政次郎ノ頭 13:45 --- 15:54 戸沢 16:06 --- 16:41 新茅山荘 16:49 --- 17:36 竜神の泉 17:39 --- 18:29 大倉バス停 バス停 18:52 == 渋沢駅 鉄道駅
※三ノ塔以降、大倉到着まで、歩行速度が大幅に低下しています。
三ノ塔、政次郎の頭 さんのとう:標高 1204.8m、まさじろうのあたま:標高 1209m 単独 2013.08.29 全9時間29分
満足度:❀❀❀ ホネオレ度:❢❢❢❢

猛残暑厳しき8月29日、丹沢表尾根に行ってきました。この季節限定の花を見るためと、新調した登山靴の履き慣らしのためです。花は期待どおりに咲いていました。登山靴はあらかじめ1週間ほど普段履きにして足になじませ、今回初めて山で歩いたのですが、下り部分で問題が発生しました。

段落見出し マツカゼソウの丹沢?

小田急線秦野駅から、ヤビツ峠行きのバスを利用しました。終点で丹沢・大山フリーパスBを運転士さんに見せながら下車。車内で記入した登山者カードを提出箱に入れ、リュックを下ろして準備運動をします。特に腰を左右に回す運動は念入りに行いました。腰椎が定位置からわずかでもずれた状態で山歩きをすると、後々腰が疲れるからです。右にひねってプキプキ、左にひねってまたプキプキ。これで腰は大丈夫です。

ヤビツ峠から富士見橋まで林道を緩やかに下って行きます。さっそく目に付くのが、林道脇のマツカゼソウ。風情のある名ですが、これは、「シカのキライな植物」だそうで、あちらこちらに大群落が見られます。この日、下山後に歩いた戸沢林道にまで繁茂していて、そのうち丹沢を代表する植物になるのでは、と気がかりです。

段落見出し 軽快に二ノ塔と三ノ塔へ

丹沢表尾根を東から西に縦走する場合、二ノ塔まで登ってしまえば、残り部分に大した登りはありません。ペース配分を考えて、おもむろに登り始めると、ありがたいことに涼しい風が吹いていて、楽々登ることができました。曇り空から、ときどき日が射して、その時だけ登山道が明るくなります。登山道の周辺には、紫系の花がたくさん咲いていました。アザミ、ホトトギス、ホタルブクロなどです。トネアザミの花では小さな蝶たちが、吸蜜に熱中していました。そんな時、カメラを近づけても意に介さないようです。

二の塔から西に望む三ノ塔は、ガスに覆われていました。海側から吹く風に乗って北上するガスに濃淡があり、時々うっすらと稜線を表します。花を見るには、まずまずの天気と言っていいでしょう。山頂のベンチに腰を下ろして、パンケーキとお茶を口に入れ、熱中症に備えました。今回もきれいなキアゲハが、その縄張りを守っていました。

さて、引き続き花や虫を見ながら、次の三ノ塔にやって来ました。ガスのため、展望はよくありません。足下には大きな首を垂れたフジアザミが咲き始めていました。予想外の静寂。私はお地蔵様まで行き、ガスの切れ目を待ちました。すると、烏尾山頂にちょうど太陽のスポットライトが当てられました。絵本の挿し絵みたいです。目を転じると、北の丹沢三峰、天王寺尾根、長尾尾根などはよく見えましたが、行く手の新大日や塔ノ岳は見えませんでした。でもお地蔵様には、いつも全部見えていることでしょう。

段落見出し 両足に異変

三ノ塔から烏尾山に向かって急坂を下ります。ここで、両足の異変にはっきり気づきました。新調したミドルカットの登山靴の後部縁が、外くるぶしの上部に当たって、一歩踏み出すごと痛むのです。私は歩行速度を緩め、小幅なピッチで降りて行きました。まだ先が長いので、無理や強行はできません。そして鞍部から登りに差しかかると、足が楽になりました。おそらく、履き慣らしを始めた一週間前から、足のその部分が、繰り返し小さな虐待を受けてきたのでしょう。今、その受容限界を越えてしまったようです。

烏尾山から行者ヶ岳に至る区間の下り坂と登り坂でも、同じことが起こりました。靴を脱いで見ると、痛む部分の皮膚が真っ赤になっています。分厚い靴下を足首で二重に折って履いたら、多少楽にはなりましたが、まあ大して変わりません。東面の展望がよい行者ヶ岳山頂で、足を休めるため大休止にしました。この登山靴は、つま先と足首周りが安全靴のように堅固にできています。頚骨が足首の真上に垂直に立っているような脚ならよいのですが。

これより先は、大事を取って、政次郎尾根を下ることにしました。塔ノ岳まで登ること自体は問題なさそうでしたが、そうすると下りが長くなってしまいます。「山と高原地図」によれば、政次郎の頭から大倉までは2時間30分。その2倍の5時間を見れば、大倉までたどり着けるのではないかと、この時点では思いました。

段落見出し 我慢の下山

13時45分、政次郎の頭から下山開始。少し下ると、東面が開け、行者ヶ岳から三ノ塔までを望めました。岩場に2本の鎖の見える行者ヶ岳。どっしりした三ノ塔。可愛らしい山小屋を頂いた烏尾山。いずれの山も青空を背景に、微笑んでくれているように思いました。これより下方に展望の利く場所はありません。

足首はますます痛くなりました。大げさに言えば、ほとんど拷問のようです。靴を脱いで歩きたいところですが、そうもゆきません。“どこかに草履かサンダルでもないかなあ”(ある訳ありません。)とにかく1歩ずつでも前に進み続ければ、いつか必ずゴールインするからと、自分を励ましながら下って行きました。最悪でも戸沢までは下りて、ビバークを回避したいと、本気で思っていました。

戸沢バンガロー裏手の渓流に着いたときは、心底から安堵しました。冷たい流れで、思う存分に手と顔を洗い、帽子にも水を含ませて被ります。政次郎の頭からここまで、2時間9分かかりました。5年前に小学生二人を連れて歩いたときは、この尾根を1時間20分で降りました。この渓流で子供たちが大喜びして、じゃぶじゃぶ遊びをしたのを思い出します。

これより大倉に続く戸沢林道はほぼ平坦ですが、それでも歩く足が交互にズキッ、ズキッと痛みました。道路が舗装されている部分では、靴を脱いで歩きました。こうして林道を歩くこと、約2時間半。大倉にたどり着いたときは、すっかり日が暮れていました。夕闇の空に、今までになく美しく見える、「風の吊り橋」。何とか自力でゴールインできたのは、神の護りに他ならないと思いました。不覚をとったことへの反省と、完走できたことへの感謝をしながらバスを待ちました。

段落見出し その後

帰宅後に両足を見たら、傷んだ箇所が赤く腫れ上がっていました。指先で軽く触れても痛みます。そこで、鎮痛消炎効果のあるMテープを患部に張りました。以前に腰を痛めたときに、整形外科医で処方されて、使い残したものです。翌日の晩にテープを剥がしたら、腫れと赤味はきれいに消えていました。指で押すと、軽い痛みが残っていますが、前日のあの激痛は、ウソのように治まりました。

なお、サガミジョウロウホトトギスの自生地には、立ち入ると危険な場所が多くあります。鑑賞や撮影に際しては、十分にご注意ください。私が今回撮影した場所は、あえて記しませんが、花との出会いを望んで歩けばきっと目に入ることでしょう。

木の葉ライン

↓ 紙芝居

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