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武川岳・二子山

武川岳

武川岳山頂より、南面を望む

武川岳山頂は、南面が景観伐採され、蕨山や奥多摩の山々を望めます。

大展望は、焼山山頂にあります。また二子山雄岳からも、武甲山と両神山を望めます。

バス停 国際興業バス: 東飯能駅 → 名郷 登山口

地図 地理院地図: 武川岳 , 二子山雄岳

天気 武川岳の天気予報: 飯能市 , 横瀬町 , 芦ヶ久保駅


コース & タイム 鉄道駅 東飯能駅 バス停 7:48 == 8:38 名郷 8:39 --- 9:06 登山口(石段と小さな標識) 9:09 --- 9:18 青い手すりの石段 9:23 --- 9:50 採掘場の上 9:52 --- 10:04 男坂女坂分岐 10:04 --- 10:16 天狗岩頂上 10:29 --- 11:11 前武川岳 11:17 --- 11:35 武川岳 12:00 --- 12:12 蔦岩山 12:16 --- 12:40 林道の展望地 12:49 --- 13:08 焼山 13:15 --- 13:58 雄岳 14:06 --- 14:13 雌岳 14:14 --- 15:00 兵ノ沢水場 15:15 --- 15:50 芦ヶ久保駅 鉄道駅 15:53
※歩行時間には、道草と撮影時間が含まれています。
武川岳、二子山(雄岳) たけがわだけ:標高 1052m、ふたごやま(おだけ):標高 882.8m 単独 2018.10.22 全 7時間11分 満足度:❀❀❀ ホネオレ度:❢❢❢

10月22日(月)、奥武蔵の武川岳と二子山を歩いてきました。まだ紅葉には早すぎることを承知で行ったのですが、木々の葉は、それぞれの色で美しく輝いていました。花は乏しかったものの、焼山山頂のパノラマに大満足。天狗岩では浮いた岩に手を掛けてヒヤリ。久しぶりにガッツリと山歩きをして、心身ともに満たされた一日でした。

段落見出し名郷から歩く

前日の日曜日は、この秋初めてと言ってよい完璧な快晴。自治会の一斉清掃や役員会を午前中に済ませた後、しばらく続きそうな秋晴れをどこで楽しむかをあれこれと考え、夕方になって、武川岳に決めました。計画の参考にしたのは、「山と高原地図」に付いている小冊子。「四季を通じて草花に恵まれ...」の一節が決め手になりました(残念ながら期待外れ)。コース取りは、天狗岩と焼山を含めると、一通りしかありません。小冊子と全く同じコースの計画になりました。

名郷行きのバスは、入間川沿いに走ります。一般の乗客が降りてしまって、いつしか車内は登山客だけになりました。河又・名栗湖入口で8名、小殿で1名、名栗車庫で2名が降り、終点名郷で私を含めて3名が降りました。こんなことを憶えているのは、皆さんがどんなところに行くのかに関心があったからです。名郷から武川岳に向かったのは私だけ。一応熊鈴を着けますが、効果のほどは分かりません。武川岳への取り付き方は、その小冊子の説明でよく分かりました。

バス停の先で橋を渡り、郵便切手を売る店を右に見て、入間川沿いの道を上流へと歩きます。ここでは名栗川と呼ぶ方が適切かも知れません。流れが清らかで、早くも「きょうはここに来てよかった!」と思いました。流れが岩を滑て落ちるところなど、「おおっ、名栗ブルーだ!」。でも、すぐに名栗川とはお別れです。右折して、西山荘の方向にコンクリート道を登ります。すると、小さな案内板があり、「天狗岩(約40分)から武川岳(約90分)へ」と書かれていました。

段落見出し石段 No.1、No.2、No.3 (と仮に呼ぶことにします)

段落見出しフィトンチッドがいっぱい

石段No.3までの道は、地理院地図にきちんと示されています。さて、石段No.3を登ると、いよいよ本格的な山登りです。相変わらずの杉林で、その木々から発散されたフィトンチッドが充満していました。自然界は、微視すると生存競争の激しい戦場ですが、巨視的には安定域で調和を成すところに妙味があります。これを「地球生命圏ガイア」の概念で説明する科学者もいます。そこに人間の活動が作用したことによる、劇的な光景を目にするまで、あと15分でした。

登り始めの登山道は尾根すじに付いていたのですが、途中に「旧登山道通行不能」と書かれた看板が立ち、左にトラバースするよう図示されていました。登山道の崩壊でもあったのかと思いましたが、後で考えると、石灰岩採掘の発破現場を迂回させるためだと思います。そのトラバース道を1~2分ほど歩くと、大きく「頭上注意」の文字と「此の先右側上部、鉱山に付き落石等に注意してください」と注意を喚起するイラストがありました。もちろん、石灰岩の鉱山です。

右上方に注意しながらトラバース道を進むと、大小の角張った石灰岩がゴロゴロ落ちている箇所がありました。おそらく稜線ギリギリまで発破をかけて採掘するのでしょう。やがて標高710mあたりでその稜線に立つと、採掘場を俯瞰することができました。ここ武川岳南稜で、最も展望の利く場所です。近くには古御岳や高畑山、遠くには奥武蔵南東部の山なみを望めました。奥武蔵には、武甲山を筆頭に、石灰岩の採掘場がいくつもあって、山の形を大きく変えています。

段落見出し天狗岩も落石に注意!

きょう予定したルートでは、この採掘場上から二子山雌岳まで、ずっと尾根歩きです。その尾根には、さっそく石灰岩の露出が見られました。人の顔や動物の姿に似た岩もあって、少し楽しめます。登山道は稜線の少し左寄りに付けられているので、まだ岩の上を歩く必要はありません。こんな尾根を正味10分ほど歩いたころ、天狗岩直下に至り、そこが男坂・女坂の分岐点になっていました。私は岩稜を直登する男坂に進んだのですが、女坂はどこを通るのでしょうか?

さて、その男坂ですが、三点確保をしながら慎重に登れば、特に難しそうではありません。最良のルートはテープで示されているので、これを追って登れば大丈夫です。ただし、岩稜ですので、危険がないわけではありません。ほとんどの岩は安定していましたが、ある岩に手を掛けたら、ぐらりと動きました。その拍子に小さな岩がどこからか落ちて、脛に当たりました。イテテテ! 2kg程度の小岩でしたが、勢いよくぶつけられていたら、立往生していたことでしょう。

その浮いた岩は、何度も揺さぶって、下に蹴落としておきました。岩石の状態は、風雨その他の作用で、変化します。今安全な岩が、いつまでも安全だとは限りません。天狗岩は人にお奨めするほど楽しい岩場だとも思えませんが、もし登るのなら、ヘルメットの着用を強くお奨めします。ともあれ、慎重に登って約10分、天狗岩の頂上に達しました。ここにも少し展望があります。ここで小休止と水分補給。これより先、二子山の手前まで、大きな急登はもうありません。

段落見出しちょっと、ノスタルジアのひと時

前武川岳への尾根歩きは、快適でした。木々の葉の緑、黄、オレンジ色が太陽光を透過して、とてもきれいに見える季節と日和です。右手の樹木を透かして、台地状の武川岳が辛うじて見えますが、冬枯れの季節なら、もっとよく見えて楽しいことでしょう。前武川岳の10分ほど手前で、左手に大持山、子持山、武甲山がどうにか見えました。きれいな写真になるような眺望ではありません。けれども、歩いている場所自体が美しいので、歩く喜びがあり、足どりは軽快です。

前武川岳のベンチで、初めて腰を下ろしました。標高1003m。お茶を飲んでいると、私と同じ年頃の男性が、山伏峠方面から来て、スタスタと武川岳に向かって行かれました。きょう初めて山で出合った人です。この日は下山終了までに、あと3人と出会っただけでした。会話をした人とは「出会った」、しなかった人は「出合った」と書きたいと思います。そして私も武川岳に向かったのですが、この区間は林相が美しく、この日最も心の満たされる20分間でした。

小学校に入り、初めてクレヨンを一式買ってもらった日、その1本1本の色に、夢のような楽しさを覚えました。山には色々な色彩があります。萌え出づる新緑はもちろん美しい。でも、秋の山の緑って、実はこんなに美しかったんだ。この色は、あのクレヨンで塗ろうと思った色だ! それは、親にねだって透明水彩絵の具を買ってもらった時にも抱いていた情感。今、部分的には紅葉も進み、グラデーションの美もありました。でもここで最も感動したのは、透き通る緑色です。

段落見出し武川岳から蔦岩山へ

ずっとこんな道が続けばいいなあ、と思っていると、武川岳山頂の変則十字路が見えてきました。そして十字路に立つと、目の前が山頂広場です。武川岳の山容から、広い山頂広場を予想して来たのですが、そこは決して広すぎはしない、陽だまりの広場でした。横瀬町の道標と、名栗村の山頂標とが立ち、ベンチが4脚あります。南面のみ景観伐採され、奥武蔵の南部や奥多摩の一部を望めますが、北西方向にある武甲山は見えません。ベンチの一つに座って、昼食にします。

前武川岳を見やると、山が錦模様になり始めていました。まだしっとりと水分を含んだミズナラの葉、おもむろに金色を帯び始めたカエデ類、早くも紅くなった一部のモミジ、こうした素敵な広葉樹林があり、それを包む澄んだ空気と明るい陽ざし、高い青空と白い雲、これらすべてが成した賜物が、きょうの武川岳なのだと、この山頂でよく分かりました。何も特殊な素材はありません。「何ゴトノ不思議ナケレド....光リコボルル」と詩った、白秋の一節が想い出されます。

武川岳山頂で25分ほど休憩して、立ち上がりました。まだきょうの行程の半分も来ていないのです。引き続き美しい広葉樹林の尾根を緩やかに下り、軽く登り返した小峰が蔦岩山(つたいわやま:1004m)。ここで武川岳を振り返ることができます。頂には目立たない小さな私製標識があるだけなので、知らずに通り過ぎてしまうかも知れません。また南東に伊豆ヶ岳や古御岳も、近距離に望めます。そして標高差160mを一気に下って行きました。ああ、もったいない!

段落見出しああ、焼山!

そのもったいないほどの急下降が終わると、そこが焼山との鞍部で、林道が通っています。林道を左に少し下って見ると、武甲山が雄大な姿を現しました。子持山、大持山なども峰を連ねています。ただ、林道わきの草木の背が高く、山々の上の方しかよく見えません。焼山への登山道に戻ります。この時、左目に虫かゴミが入りました。涙と共にすぐ流れ出るだろうと思ったのですが、目頭の方に移動したり、目尻の方に動いたりするばかりで、なかなか出て来ません。

こんな状態が10分以上も続いて、これでは目の中が傷ついてしまうと思い、目を洗うことにしました。万一の怪我に備え、応急手当て用の水を300mlほど携行しています。手に取った水を目に当てて、瞬きすることを何度か繰り返したら、楽になりました。その数分後には違和感もすっかり解消、ほっとしました。携行した水が山中での応急処置に役に立ったことは、今回が二度目ですが、持っていて本当によかったと思いました。非常時には飲用にもなります。

こんなことをしていたので、気づいた時は、焼山山頂が目前でした。林道を横断した鞍部から正味約15分で、約110mの標高差を知らず知らず登り返したことになります。その焼山(やけやま:850m)は、眺望に極めて優れた峰で、文句なしの大パノラマがありました。特に武甲山は上から下まで全身が見え、大迫力です。その右肩のやや遠く、両神山がゴツい要塞のような雄姿。秩父市街地のかなたには、私にとって未知の山なみ。そして北にはこれから行く二子山...。

段落見出し二子山にも好展望

焼山山頂からは、草叢の道を北に下ります。行く手の二子山がよく見えるのはいいのですが、また相当に下らなければなりません。その標高差は約70m。もったいないのですが、仕方がありません。とにかくアップダウンの激しいのが、きょうのコースです。焼山山頂から約15分ほど下ると、林道への道を右に分けました。地形図を見ると、その沢沿いの林道はバス道路に通じているので、エスケープルートとして、あるいは逆に焼山への最短登山路として使えそうです。

いくつかの起伏を越えて、ようやく二子山雄岳への急登に差しかかった時は、ため息が出そうでした。これからまた標高差120mを登り返すのです。楢ノ木尾根の泣坂ノタルを想い出しました。まあ、仕方ありません。10分程度の辛抱ですから、何とか花でも探しながら登りましょう。そして雄岳の肩に至ると、また武甲山と両神山のすてきな展望がありました。芦ヶ久保駅から登って来た人にとっては、劇的な展望地と言えるでしょう。雄岳山頂自体は展望に優れません。

雌岳は右から巻くようにして登頂しました。こちらも展望はありません。これより芦ヶ久保駅への下山路は二つありますが、兵ノ沢コースの方が少し短いので、迷わず右に進みました。急勾配の登山路ですが、太くて握りやすいロープが延々と張られていて、大いに助かります。ロープ場を過ぎ、770m峰の手前で左に下りると、小区間ながら私の好きなカラマツ林もありました。相変らず青い空と白い雲もあって、ランラン、軽快な足どりで下って行きます。

段落見出し兵ノ沢を経て芦ヶ久保駅へ

カラマツ林を経て、杉林に入ると、登って来る若者と出会いました。「これからどちらまで?」「二子山にとても景色のよいところがあるので、きょうはそこまで。」「ああ、あそこですね。行ってらっしゃい!」「はい、ありがとうございます!」この人の後姿を見送りましたが、このとき午後2時40分。帰り道は暗くなるでしょう。でも帰宅後に気づきました。あの若者は、『ダイヤモンド武甲山』を見に行ったのだと!

兵ノ沢を木橋で渡るところは、水場になっていました。電車の時間調整を兼ね、15分ほど休憩します。手と顔を洗って、まだ山にいる幸せの時間。この兵ノ沢は、大きな滝がないようなので、夏場のじゃぶじゃぶ歩きも楽しめそうです。そして、早くも夕暮れの雰囲気になった沢沿いの道を下って行きました。最後に線路下を抜けて、横瀬川に至るとまだ日は高く、明るい人里がありました。こうして無事に芦ヶ久保駅にゴールイン。すばらしかった一日に、また感謝です。

木の葉ライン

↓ 紙芝居



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