高取山は、大山の南稜にあって、山頂の白い電波塔がよく目立ちます。小田急電車の車窓や東名高速道路などからも、容易に見つけられます。
聖峰は高取山の東面中腹にあって、円い頭の可愛らしい峰です。京浜地域の平野と海を望める好展望台です。
神奈中バス: 秦野駅 → 東中学校前 神奈中バス: 秦野駅 ← 東中学校前
地理院地図: 高取山
高取山の天気: 伊勢原市 , 東京カントリー倶楽部
レポ: 蓑毛から浅間山・聖峰 , あじさい散歩道・高取山
レポ: はなじょろ道∞ループ , 御殿森∞ループ
1月9日、表丹沢前衛の高取山を歩いてきました。昨年末に大掃除をして腰を痛めた上、正月に餅を食べすぎて体が重くなったので、リハビリを兼ねての軽ハイキングです。ただ1回登るだけではもの足りないので、∞の字を描いて2度登りました。あまり展望の利かない高取山ですが、ゴルフ場と聖峰とをコースに含めることで、すばらしい眺望も満喫できました。
日本海側に住んでいる人々には申し訳ないと思うほど、関東地方南部は連日すばらしい晴天に恵まれています。この日も朝の窓から顔を出すと、富士山と丹沢の山々が招いていました。透明な空気を通して、その姿と声とが伝わって来るようです。小田急線に乗ると、海老名駅付近より望む丹沢山に、大きな白い月がかかり始めるところでした。そしてまもなく、大山の南に長く延びる稜線上に、白い塔が見えるようになります。これが高取山。そのまばゆい塔を基点に、聖峰も容易に同定できます。
秦野駅から乗った蓑毛行きバスは、ガラガラに空いていました。ヤビツ峠行きとは大違いです。東中学校前で下車すると、「清水湧水池跡(記念碑)」と書かれた小さな石碑がありました。その隣には古そうな萬霊塔と、注連縄の着いた石塔があり、この道が古くから歩かれた道であることを偲ばせます。ここから「東京カントリー倶楽部」の大きな案内板にしたがって右折し、農道風の道に進みました。畑の北に、大山、岳ノ台、二ノ塔の山並みが、真っ青な空を背景に、絵巻物のようにきれいです。
この道は、ゴルフ場に向かってぐんぐんと高度を上げて行きます。上るほどに展望がよくなり、丹沢、富士山、箱根の山々を何度も撮影してしまいました。やがてクラブハウスが見えてくると、そのすぐ手前に「ハイキング道路」と書かれた赤い矢印がありました。ガードレールに人の通れるほどのすき間があります。そこを進むと、また同じような矢印がありました。高取山が真正面に見える道に進みかけたとき、ゴルフ場の従業員の方が後から声を掛けてきて、正しい道を教えてくれました。
正しい道は二つ目の矢印から左手に坂を上って、「山神社」の横に出て、右手のカート道を進みます。少し歩いては富士山を振り返り、また少し歩いては丹沢を振り返り、というようにして登って行きました。高取山の山頂からは、このような展望を得られません。樹木の枝、建造物、電線など、目障りなものが一切なく、思う存分眺望を堪能できるのは、ゴルフ場ならではの特典です。
ところで、私の故郷の山河は、すべてゴルフ場になってしまいました。ヤマモモの実やシメジを採りに行った山も、フナやメダカを捕った小川も、すっかり姿を変えた上、自由に歩くこともできません。ただ夢の中で、ときどき遊ぶ「彼の山」「彼の川」に、懐かしさを覚えるのみです。ゴルフ場建設には経済効果もあり、一概に賛否を論じることはできないかもしれませんが、せめてこのゴルフ場のように、ハイカーを自由に歩かせてくれたらと願います。
ゴルフ場のはずれのゲートにやって来ました。すべての通行人が守らなければならない鉄則、開けて、通って、またしっかり閉じます。そのすぐ先に、折り返すような感じで左に登る山道がありました。「高取山」と書かれた小さな標識があります。柱上変圧器2個を備えた電柱が立っているので、目印になるでしょう。体が暖かかったので、ここで上着を脱いで、身支度を整えました。
登山道を登り始めると、すぐに右手の柵に設けられた、あまり目立たない扉を開閉して尾根に乗ります。左手の景色に見とれていると、この扉を見逃すかもしれません。その後は、落葉をサクサクと踏みしめながら、明るい尾根道を軽快に登って行きました。足に心地よさが伝わってきます。一部、階段もありました。頭上には、黒い電力ケーブルが山頂へと延びています。
やがてNHKの白い無線塔が見えると、あっけなく山頂に到着しました。誰もいません。木々の葉が落ちて、伊勢原の市街地方面に展望がありました。視野は限られていますが、蛇行する東名高速道路や、遠方の横浜ランドマークタワーが望めます。東京スカイツリーは、確認できませんでした。この山頂に来て、∞ループの四分の一を歩いたことになります。
次は、伊勢原市側に下ります。山頂の道標が、「大山・蓑毛」を指す方向に7分ほど下ると、道標とよく似た、「山火事注意」の古そうな標識が立っていました。右の腕木に「鶴丸」と落書きがあります。鶴丸がどこにあるか知りませんが、ここから東に延びる尾根が鶴丸尾根です。鶴巻と関連があるのでしょうか。
鶴丸尾根は、概して明るく、開放感があって、歩き易い尾根でした。右(南)の聖峰の向こうで、黄金色に輝く相模湾。右前方(南東)には伊勢原の町と湘南の海。足も心も軽かったので、歩いた時間を感じませんでした。鶴丸分岐から40分ほどで、山道が林道になります。二度折れ曲がると、道いっぱいに動物除けの簡単な柵が設けてありました。右手の狭い扉に緑色の紐があり、これを解いて通過するのが正解です。通過して、しっかりと紐を結ぶことさえも、何だか楽しく思えました。
その扉から5分ほど下ると、ゴルフ場の枯れたグリーンがありました。旗の向こうに、饅頭のような丸い山が二つ見えますが、右の山がこれから目指す聖峰です。さらに2分ほど下ると、青いベンチの休憩所があり、眼下の伊勢原カントリークラブと、大山南東尾根のエボシ山などが望めました。これより右折して、ゴルフ場を左に見ながら、その縁を周る車道を下って行きます。機材置き場や駐車場の前を通り抜け、さらにゴンドラ乗り場を過ぎると、せせらぎ音が聞こえてきました。
小川に沿って右へ分岐する道があり、動物除けの柵と、通行人用の扉が設置されています。熊の目撃情報と、ヤマビルへの警告板もありました。ここから聖峰に登山道が通じているのでしょうか? よく分からないので、その道には進まず、来た道を先に進みます。道路の右わきに冬枯れアジサイの群生があり、左側はみかん畑になりました。撮影しようと近くに行って見ると、ほとんどのみかんは鳥につつかれていました。その先、コスモス畑の横で、右手の車道に合わさります。
そのY字路に、「三段の滝↑」と書かれた標識が立っていました。↑が指すのは、先ほど覗き見た小川沿いの道に違いありません。行ってみることにしました。来た道を少し戻って、扉を開閉し、暗い道に進みます。じめじめして、いかにもヤマビルの巣窟のような道を登って行くと、10分足らずで「三段の滝」が見えてきました。「比々多神社お水取り」と書かれています。滝の由緒や説明は見られません。またこれより先、登山道はありませんでした。きょうの∞ループは、ここで折り返すことにします。
コスモス畑のY字路に戻り、鋭く右折して聖峰の方向にカーブする車道を登ります。2分ほど先で「栗原一般廃棄物最終処分場」の建物の前を通過すると、みかん畑の道が右に分岐していました。まだみかんがたくさんあります。好奇心で行ってみると、やはりほとんどが鳥につつかれていました。これはもったいない。まだ無事だったみかんを見つけて、味わってみると、酸っぱい味と、懐かしい青い香りがしました。子供の頃に家の畑で食べたみかんの味と香りです。このみかん畑から海が見えました。
車道に戻ります。道が処分場の上縁を周って、東に下り始めたところで、聖峰の登山道と思われる道が右上方に分岐していました。赤白の車止めと熊の目撃情報があります。道標はありませんが、迷わずこの道を登ることにしました。登り始めるとすぐに大きな丸い山が目の前に現れましたが、山頂は見えません。すぐに動物除けの柵に至り、この日6度目の扉を通過すると、見覚えのある聖峰不動尊の参道に飛び出しました。コンクリートで簡易舗装されています。
山の神社を右に見送ると、ほどなく参道九十九曲(ジグザグ道)と女坂の分岐に至りました。九十九曲を下ったことはありますが、上るのは初めてです。ジグザグの回数を数えながら、ゆっくり登って行きました。60回折れ曲がったところで、聖峰不動尊前の広場に到着。ここは東面にすばらしい展望があります。江ノ島をはじめ、湘南の海や新宿新都心のビル群などがよく見えました。いくつかあるベンチの一つに腰を下ろし、昼食にします。それにしても、都会の空は汚いなあ、と思いました。
昼食を終えると、すぐに高取山に向かいました。聖峰の頂を越え、その先に咲いていたヤブツバキの花を眺め、なおも緩やかな道を高取山直下まで歩きます。白い電波塔が頭上近くに見えるようになって、ようやく急な階段の道になりました。なかなか傾斜が強く、これは大倉尾根の花立直下の階段に匹敵するかも知れない(?)と思いながら10分ほど頑張ると、大山南稜の縦走路に立つことができました。伊勢原市の道標と秦野市の道標が、競合するように立っています。
高取山の山頂では、熟年男女6人組みがバラバラに到着するところでした。阿夫利神社下社から鶴巻温泉まで行くのだそうです。全員揃ったところで、記念撮影のシャッターを押してあげました。私の方は、∞ループの4分の3を歩いたことになります。家から持ってきた甘いみかんを1個食べ、最後の行程に取りかかりました。
高取山から鶴丸尾根分岐までは、朝歩いた道です。その先の平坦な道は、午後の穏かな光が差し込み、ちょっとした癒しゾーンになっていました。でもすぐに道は急降下します。下りきって再び平坦になった道を進むと、不動越でした。石の不動明王像があります。ここから道標が「バス停才戸入口」を指す方向に下るのですが、もう一つ、観光道標のような道しるべがあり、「大山古道(坂本道)」と書かれていました。
この「大山古道」の下り始めは、道の中央が雨でえぐられた、歩きにくい道でした。でもゴルフ場のわきに出たあたりから徐々に歩き易くなり、落葉をガサガサ踏みしめ、ぽかぽか陽の当たる里山風情になりました。そして久保橋で登山道が終わり、以後は車道歩きになります。「手打ちそば石庄庵」の手前から農道のような道を左に分けましたが、もしかしたらそれが大山古道だったかもしれません。私は石庄庵の先で広い車道から左下に分岐する道を歩いて、東中学校を目指しました。
バス道路(県道70号)に出るところに、「大山古道出入口(坂本道)」と書かれた観光道標がありました。近くに中丸橋バス停がありますが、∞ループを完結するために東中学校前まで歩きます。すると、後からバスがやって来ました。自由乗降区間かもしれないと思って手を上げてみましたが、止まってくれませんでした。腕時計を見ると、バスは時刻表どおりの運行です。私は1分遅れて東中学校前バス停に到着しました。残念、時間調整の失敗です。
次のバス停、藤棚に行きました。何と、絶妙のタイミングでバスがやって来たと思ったら、手前の十字路で右折して行ってしまいました。藤棚バス停は、もう一つあったのです。再び残念。そこには居たくなかったので、次の上原入口バス停に行って腰を下ろし、丹沢の山々を眺めながら次のバスを待ちました。塔ノ岳には尊仏山荘、大倉尾根には花立山荘が点のように見えます。あのあたり、そのうち雪が積もったら行きたい場所です。
帰りの電車から望む富士山と箱根は、美しい切り絵のようなシルエットになっていました。
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