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巣雲山

巣雲山

巣雲山展望台より望む富士

巣雲山には、開放感いっぱいの山頂広場があり、海・山・山麓を広大に見渡せます。また「大丸山展望ひろば」では、空を飛ぶ鳥のように、海と町と丘陵とを俯瞰できます。

宇佐美駅を起点とする「峰コース」と「阿原田コース」は駅から歩いて登れます。前者を登りに、後者を下りに取る「時計回り」がお奨めです。

地図 地理院地図: 巣雲山 , ヤマレコ

天気 巣雲山の天気: 伊東市宇佐美


コース & タイム 鉄道駅 宇佐美駅 7:48 --- 7:53 ファミリーマート 7:59 --- 8:12 円応寺 8:20 --- 8:24 花岳院 8:32 --- 9:24 伊豆巣雲台別荘地管理事務所分岐 9:26 --- 9:36 巣雲山登山口 9:36 --- 10:08 行者の滝 10:08 --- 10:14 伊豆スカイライン出合 10:14 --- 10:24 大島桜(電池交換) 10:28 --- 10:29 巣雲山 11:00 --- 11:02 阿原田コース・峰コース 分岐 11:02 --- 11:30 阿原田峠 11:33 --- 11:37 大丸山 11:38 --- 11:47 富士見展望ひろば 11:54 --- 12:11 どっこい処 12:13 --- 12:30 グランピング施設わき 12:32 --- 13:24 宇佐美駅 鉄道駅
※歩行時間は道草と写真撮影の時間を含みます。
巣雲山 すくもやま:標高 581m 単独 2025.3.10 全 5時間36分 満足度:❀❀❀❀ ホネオレ度:

2025年3月10日(月)、伊豆半島東海岸の低山、巣雲山を歩いてきました。桜を見るには、やや遅すぎたかとも思いましたが、近くで見ると、花も葉もみずみずしいパステルカラー。温暖な伊豆の春を体感するに十分でした。とは言え、巣雲山の真価は広大な展望にあります。巣雲山の山頂広場でも、大丸山の展望広場でも、心の翼を広げたくなるような自由空間を満喫してきました。

段落見出し 伊東線、宇佐美駅から歩く

駅から歩いて登れる巣雲山。一足早く春を感じられる伊豆にあります。計画時には、春の青春18きっぷを使って行ってくるつもりでした。ところが今では、連続する5日間または3日間でしか使えません。そこで小田急線を利用してみたら、青春18きっぷの1日分とほぼ同額の交通費に抑えることができました。乗り換え回数も同じです。ただ、熱海駅で弁当を買いたかったのですが、駅内はみな開店前。思えば、自由に駅の外に出られる青春18きっぷは便利でした。

午前7時12分、伊東線ホームに行くと、閑散としていました。しかも予想外に殺風景。もう少し、夢を誘う工夫をしてもいいと思います。発車間際になって、通勤・通学の人たちが乗ってきましたが、まだ朝が早いのか、空席を残して発車しました。熱海駅を出ると、伊東線・伊豆急線の魅力である、海と海辺の町を展望できるようになります。きょうは明るく穏やかな海。東海道線の海とは味が異なります。宇佐美まで短区間ですが、単線鉄道で「春の海」を楽しみます。

宇佐美駅に到着。無人駅なので、簡易改札機をピッと鳴らして外に出ます。すると、駅舎の隣に小ぎれいな建物がありました。「旅のアシンル」なる、不思議な名前がありますが、これはトイレ。丸型郵便ポストに「ここは海抜12.6m」とあるのをチラリと見ます。さて、ここからルートファインディングが始まります。登山口までの長い道のりを、正しく選ばねばなりません。ヤマレコ情報に従い、線路に沿って熱海方向に少し歩き、「宇佐美踏切」を渡りました。

段落見出し 2軒の禅寺を見学

踏切直近のコンビニでおにぎりを調達しました。コンビニを出ると、そこは三択の交差点。巣雲山は、宇佐美駅のほぼ真西方向にあるので、基本的には西に進むのですが、時計回りコースと反時計回りコースとがあります。私の計画は時計回りコースですが、念のために地図を見ると、反時計回りコースを進んでいました。早めに気が付いてよかった! 踏切から来た場合、宇佐美中学校を右に見るのが時計回りコース、左に見るのが反時計回りコースです。

道路沿いには早咲きの桜が咲き、八朔でしょうか、ミカンの木には、大きな実がたわわに成っていました。でも道標の類は見当たりません。道を間違えないよう、ヤマレコアプリを開きっぱなしにして歩きます。すると圓應寺(えんのうじ)が見えてきました。道草ですが、少し見学します。正門から入り、本堂と、右手の鐘楼、左手の大きなヤシの木を拝見しました。ヤシはカナリーヤシ(フェニックス)で、デーツに似た実(未熟果)を着けていました。

圓應寺に別れを告げ、5分も行かぬうち、花岳院に着きました。満開の桜が外からも見えます。伊東小室桜という品種で、自然交配により生まれ、地元で発見されたそうです。葉桜になっているので、遠くから見たときは色が濁って、もう終わりかと思いました。でも寺の中で見ると、花も葉もみずみずしい春の色。とてもきれいです。他に大輪のバラのような椿や、びっしりと咲いた紅梅などが見られました。禅寺は、いずこの寺もきれいに造られています。

段落見出し 長いアプローチ、ようやく登山口

花岳院から30分ほどで「巣雲山ハイキングコース」が二手に分岐していました。左は「巣雲山(峰)コース」、右は「みかんの花咲く丘(峰)コース」です。え、どうしよう? と思いましたが、今はみかんの花の季節ではないので、左に進みました。約5分後に合流します。この頃から、行く手の右方に見えるハゲ山が気になり始めました。何山? 巣雲山のようではありません。(この疑問は下山時に解消)その後、桜山(289m)を巻きながら「巣雲山別荘地」を通り抜けました。

しばらく行くと、運動場のような広場がありました。その隅に桜の小木があり、「早咲きオオシマ×カンヒ 2007」というタグが付いていました。どうもこの地方には、普通よりも早咲きの大島桜がたまたまあって、寒緋桜と同時期に咲いたことで、新しい品種が生まれたということのようです。この奥には桜山の別荘地よりも大きな、伊豆巣雲台の別荘地があり、無断立入禁止、駐車禁止などの立札がありました。ハイキングコースは、その南縁を巻いていきます。

9時36分、ようやく登山口に到着。登山道に入ると、年季の入った道標が幾つか見られ、2か所の沢には新しそうなグレーチング桟橋がありました。杉に中低木の広葉樹が混じる森を登っていきます。地面には杉の落ち葉が積もって、踏む足にフカフカ感がありました。「行者の滝」は辛うじて水が細々と滴っていましたが、大雨が降ればどうでしょうか。この先で「巣雲山地層」を見られます。説明板によると、13万年前に巣雲山が噴火して積もった火山灰の地層だそうです。

段落見出し 天地開放の特等席

地層のすぐ先に「生仏の墓」なるものがありました。源氏に捕らえられた平家の落武者の悲哀モニュメントです。誰が、いつから「生仏の墓」と呼ぶようになったのでしょうか? ここで登山道と伊豆スカイラインが一旦出合います。目の前の古びた道標に「巣雲山あと少し」と書かれていました。伊豆スカイラインと別れて、明るい尾根を登っていきます。ほどなく、中低木の茂ったトンネルに入りました。常緑広葉樹のイヌツゲが多いようです。

そのトンネルを抜けて少し行くと、カヤトの丘に飛び出しました。丘の上に展望台が見えます。まだ花も葉もないオオシマザクラの木が、水平方向に長い枝を伸ばしています。ここは普段、風が強いのでしょう。この木は立っているというより、座るように植わっています。花が咲いたら、さぞ美しいことでしょう。花を想像し、蒼い空に昇るような気持ちで、カヤトの丘を登っていきました。何故か、高い樹木がほとんどありません。開放感抜群の巣雲山頂に到着しました。

登って来る道すがら、雲に隠されていないかと心配した富士山でしたが、きれいに見えました。陰影も輪郭もやわらかな、春の富士です。三角点は二等ですが、展望は一等。好い日によい山に来ました。まずは展望台に上がります。そこは、360度、遮るものの一切ない、天地開放の特等席。ここに自分一人しかいないのがもったいない。富士山から時計回りにざっと見て、箱根山、大山、三原山、天城山、達磨山、沼津アルプス、南アルプス、そして富士山に戻ります。

段落見出し あのハゲ山は

巣雲山頂は風が強いと聞いて覚悟してきましたが、きょうは穏やかなぽかぽか日和。展望台で昼食にします。石の円形テーブルに腰を下ろすと、お尻がほかほかになりました。太陽熱で石が暖まっていたのです。そこで、汗の沁み込んだマフラーとベストをテーブルに広げてみました。すると、どんどん乾いていきます。10分も経たぬうちにサラサラになりました。殺菌もなされたこのベストを着て、気分爽快。こうして天と地から力をいただいて、下山の途に就きました。

下山は阿原田コースです。下り始めは、左右に箱根笹の茂る道でした。樹木の説明板があって、楽しく読んでいきましたが、あまりに頻出するので、カメラに収めて、後で読むことにします。「シラキ(トウダイグサ科)」の名は知らなかったので、立ち止まって読んでいると、単独の男性と出会いました。この日、山で出会った唯一の人です。山頂から約30分で阿原田峠に下り立ち、再び伊豆スカイラインと出合いました。ここから大丸山へと登っていきます。

大丸山頂上(503m)には四等三角点がありました。箱根の神山と駒ヶ岳がよく望めます。少し下って、青緑のペンキの塗られたトイレを左に見て、また少し登り返すと「富士見展望ひろば」でした。「富士山はこちら↑」の標識がありますが、そこは富士山の好展望地。富士山が見える日には無用の標識です。特筆すべきは、その反対側、宇佐美の町と海です。対岸の見えない、無限の大海原を望み、翼があったら、鳥のように飛んで行きたいと思いました。

段落見出し 海を見ながら下山

「富士見展望ひろば」に絶景ともいえる展望があるのは、ハゲ山だからです。山林火災か、景観伐採か、何かがあったのでしょう。現状では、枯草に火が点けば、あっという間に燃え広がりそうです。ハイカーは一般に好展望地を歓迎しますが、こんなに広い裸地は必要ありません。見方によっては怖い「展望ひろば」。人の命と自然を守ってくれるのは常緑照葉樹林ですが、地元の方々は百も承知だと思います。でも今は、桜が咲いて、とてもうららかな山です。

宇佐美駅から時計回りで巣雲山に登ると、海を見ながら楽しく下山できます。もちろん、足元もしっかり見なければなりません。道幅は車が走れるほど広く、轍がえぐれないよう補強してあります。オフロード車が登ってくるのかも知れません。少し下ると「どっこい処」なる休憩所がありました。宇佐美の町と海を撮って、帰宅後に拡大すると、宇佐美小学校、同中学校、宇佐美駅などがしっかり写っていました。海面は優しくうねり、浜辺に打ち寄せる白波も穏やかそう。

以後、駅まで車道を歩きます。野の花や桜を見ながら、スタコラ下っていきました。時々「展望ひろば」を振り返ります。往路で疑問を抱いた、あのハゲ山は、鮮烈な思い出の丘になりました。茶畑やミカン畑が「ここは静岡県」だと想い起こさせます。やがて、市街地を流れる仲川の先に真っ青な海が見えてきました。この仲川の両岸は、遊歩道のようになっています。二人並んで歩くのは難しそうですが、市街地での車道歩きを避けたいハイカーにはお奨めです。

段落見出し宇佐美海岸へ

宇佐美駅に到着すると、黒っぽい電車がすべり込んできました。車体に「黒船電車」と書いてあります。車内には窓向きに座っている人々が見えました。これでもLOCAL、普通列車です。私も乗りたいと思いましたが、この電車は伊豆高原行き。残念、逆方向です。熱海行き電車が来るまで20分余りあったので、海岸に行きました。駅から徒歩たった5分で、きれいな浜辺に到着。砂浜に打ち寄せては引いていく波と戯れます。もう海水に手を浸さずにはいられません。

電車に間に合うギリギリの時間まで海とふれあい、宇佐美駅に戻りました。やって来た熱海行きは「アロハ電車」。乗り込むと、大きなスーツケースを携えた外国人が大勢乗っていました。みなさん、美しい思い出を国に持ち帰ってくれるといいですね。

木の葉ライン

↓ 紙芝居



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