北鎌倉の明月院あたりから、鎌倉の瑞泉寺あたりまでのトレイルは「天園ハイキングコース」としてよく整備されています。コース中の勝上巘や大平山からは、富士・箱根、三浦半島の山々と海とを広々と望めます。
天園から鎌倉宮方面に通じる獅子舞の谷は、鎌倉随一の紅葉の名所。他所の紅葉の終わった12月に、色鮮やかな紅葉を楽しめます。
地理院地図: 獅子舞
鎌倉の天気: 鎌倉市
レポ: 鎌倉・天園
12月8日、仲よしの友人たちと鎌倉アルプスを歩いて来ました。今年は紅葉の当たり年だったのに、皆さん、見たのは公園の紅葉くらいなもの。そこで12月からでも間に合う、鎌倉市の獅子舞の谷でのモミジ狩りを計画しました。幸い天候に恵まれ、獅子舞ではその名声に違わぬ美しい紅葉を、十分に堪能することができました。
よく晴れ渡った朝、スタートは北鎌倉駅から徒歩1分の、円覚寺前。登山口は、自動車の排気ガスを吸う建長寺ルートを避けて、閑静な明月院ルートにしました。明月川沿いに、葉祥明美術館や明月院を見ながら歩く気分は悪くありません。もちろん、立ち寄る予定はないので、入口の前を素通りするだけです。
この日は、「鎌倉アルプス・トレイルラン大会」が行われていました。胸にゼッケンを着けたランナーたちと、狭い登山道で次々とすれ違うことになります。ランナーに尋ねてみると、参加者は300名、走行距離は、12kmと24kmの2部門があるとのこと。ルートは港南台から円海山、六国峠、大平山、六国見山などを経て稲村ヶ崎に至るもので、これは山岳耐久レースほどではないとしても、立派なクロスカントリー。ついランナーたちに声援を贈りたくなります。
ランナーたちは、息を切らせながらも、「こんにちは!」、「こんちわ!」と明るい声で挨拶してくれます。私たちのような一般ハイカーへの気遣いでしょう。この声を聞くと、立ち止まって道を譲ってあげたくなります。
鎌倉アルプスには、海から激しい風が吹きつけていました。勝上巘(しょうじょうけん)あたりからはその風が、グォオォーーグォオォーーと凄まじい唸り声を発し、もし高山だったら恐ろしくなったかもしれないほど。この風は、鎌倉を背後から攻めようとする敵軍に対しては向かい風となって、進軍の妨げになったかもしれません。あるいは、鎌倉軍にとっては敵の物音が聞こえにくくなって、不利に働いたかもしれません。そんな戦国の風雲を想わせるような、この日の鎌倉アルプスでした。
大平山の頂上で小休止しました。腰を下ろすのによい小さな岩がいくつもあります。ハイカーの弁当を狙って空を舞うトビに注意しながら、おにぎりやパンを取り出します。でもトビはたった1羽しか飛んでいませんでした。あまりに風が強すぎるのでしょう。かわりに可愛らしいセグロセキレイがピコピコと尾羽を立てに振りながら近づいて来ました。すっかりおねだりの仕方を学習しているようです。ちょっとだけパンくずを分けてあげました。
山頂広場から鎌倉市街地を見渡すことができますが、ここも海側から強烈な風が吹き上げ、落葉が舞っていました。天園の展望岩から見下ろす獅子舞の谷は、残念、すでに紅葉が終わってしまったのか、赤や黄色の代わりに褐色の樹木がたくさん見えます。富士山は、霞んではいましたが、なぜかとても大きく見えました。
天園から、右折して獅子舞の谷に下りました。下り始めるとすぐに、目をうばうように鮮やかな黄葉が展開。さらに下ると赤や朱色のモミジが次々と溢れるように現れて来ました。「うわぁ、きれいだ!」「すてきね!」「おお、来て良かった!」「大当たり!」口々に感動の言葉が飛び出します。
紅葉は下から見上げると、天から注ぐ光が透過して、とても鮮やかです。残り少ない日々なのに、惜しみなく生命を輝かせる無数の木の葉。さあ、ここで昼食タイムに決定。おにぎりもお茶も、とびきりおいしくいただけそう。美しい紅葉のエリヤはかなり広く、あちらこちらで、ピクニックを楽しんでいるグループが見られます。
地面もまたきれいです。すでに散りつくしたイチョウの葉の上に、赤や紫のモミジの落ち葉。どこを撮影しても、そのままスカーフのデザインになりそう。もし規則が許すなら、この林間に、"甘酒"を暖めて紅葉を・・・と行きたいところ。火気厳禁?
帰路は、谷をそのまま下って鎌倉宮へ。境内の休憩所に入り、皆で甘酒を飲みながら親交をいっそう温めました。続いて鶴岡八幡宮では、静御前が舞ったという場所に建つ「舞殿」で結婚式を見物。楽士たちの奏でる雅やかな音色を耳に、倒れた後にも芽を出した大銀杏に静かなエールを送ります。こうして道草をたっぷりと食った私たちは、若宮大路の段葛(だんかずら)を歩き、ゴールの鎌倉駅に向かいました。
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