このピークから仙丈ヶ岳を特色付ける、雄大なカール地形を一望できます。
仙丈ヶ岳は、山容の美しさ、花の豊かさ、標高など、「南アルプスの女王」の名を欲しいままにする訳が十分にあります。
中央自動車道: 甲府昭和IC ⇔ 芦安 乗合タクシー: 芦安 ⇔ 広河原 南アルプス市営バス: 広河原 ⇔ 北沢峠
地理院地図: 仙丈ヶ岳
仙丈ヶ岳の天気: 仙丈ヶ岳(夏山) , 南アルプス市 , 北沢峠 , 仙丈ヶ岳
7月24日から25日にかけ、南アルプスの仙丈ヶ岳に行ってきました。前々日まで出ていた天気予報は「晴れ、時々雨」で、気をもみましたが、前日になって「晴れのち曇り」に変わり、出発を決断。小学六年生1名を含む、山仲間6名のパーティーです。
第1日 午前4時半に東京を発って、芦安駐車場に6時48分到着。駐車場は既に満車状態でした。7時発の乗合タクシーが列を作って、客を人数に応じてワゴン車に割り振っています。運賃はバスよりも100円増しですが、速く楽に行くことができます。
夜叉神トンネルを抜けたところで、運転手さんが「景色の良いところがあります」と言って、林道脇にタクシーを止めてくれました。そこからは北岳と間ノ岳を高く見上げることができ、いよいよ南アルプスの懐に入ってきたなと実感します。
広河原では、9時発の北沢峠行きバスを1時間15分も待ちました。朝のゴールデンタイムをもったいないのですが、狭い林道の通行規制も関係あるのでしょう。できれば南アルプス市営バスを、芦安あたりから北沢峠まで直通にしてもらいたいものです。
北沢峠に着くと、バス停付近にクリンソウ、ミヤマバイケイソウ、ヤマオダマキなどが咲いていましたが、埃をかぶっていて美しくありません。簡単にストレッチをし、さっそく行動開始。大平山荘に向かいます。林道を少し歩き、左に下ります。
大平山荘で冷えた美味しい水をごくごく飲み、心身をリフレッシュ。藪沢コースをぐんぐん登って行きます。先週のNHK「ためしてガッテンで」学んだ「超ラク山登り」に従って遅筋だけを使うように心がけます。若者たちのパーティーには道をゆずって、先に行ってもらいます。彼らの足の速いのは、日帰り計画なのでしょう。
やや暗い針葉樹林が、ダケカンバの明るい緑に変わり、藪沢の心地好い流れの音が聞こえてきました。振り返ると、双児山の背後から甲斐駒ヶ岳と摩利支天が巨人のように頭を出し、一同おおっと感動の声を上げます。これ以後、仙丈ヶ岳まで、ずっと甲斐駒が背中を押してくれ、足も軽快に動きます。
藪沢を渡る橋は絶好の休憩ポイント。後には鋸岳(のこぎりだけ)の眺望、沢には冷たい清流、足下には高嶺の花、天には真っ青な空、ぜいたくの極致かもしれません。これから花を撮りまくって登る、楽しいコースです。
12時26分、馬の背ヒュッテに到着。ここで昼食をいただいていると、片足を引きずるようにしてゆっくりゆっくり登ってくるご婦人が到着しました。きょうはここで泊まるのかと思っていたら、仙丈小屋まで行かれるとのこと。午後3時までには小屋に着かないかもしれないから、その旨を先に仙丈小屋に伝えておいて欲しいとのことです。足がつってしまったとのことですが、精神力は強靭のようです。
森林限界を抜け出し、馬の背の稜線に出ると、ハイマツと高山植物の世界です。ゴゼンタチバナ、コイワカガミ、ハクサンイチゲ、シナノキンバイ、チングルマ、等々、ロープにも護られて、ここかしこで微笑んでいます。見上げれば仙丈ヶ岳の頂上を覆っていた霧が薄くなり、仙丈小屋が直ぐ近くに見えます。もちろん、背後には常に甲斐駒が白く輝いています。
14時10分、仙丈小屋に到着。三階建ての大きな小屋です。谷川には風力発電機の列、山側の屋根上には太陽光パネル、小屋の裏手にはディーゼル発電機が静かに回っていました。風力発電機はあまり回っていないので、設置場所を変えるほうが良さそうです。
ニ階で受付をし、三階の屋根裏部屋に入りました。外側からは木造の小屋に見えますが、内側からは、頑丈な鉄骨の構造が分ります。夕食は5時からなので、それまで各自が好きなように過ごすことに。さっそく毛布を掛けて眠りをとる人もいます。私はクロユリを探して、小屋の正面を少し登ってみることにしました。
午後4時半に夕食の鐘が鳴り、温かいご飯、温かい味噌汁とお茶をたらふくいただきます。「ためしてガッテン」によれば、山では温かい味噌汁が疲れを取ってくれるとのことです。
夕食後、外に出ると、藪沢カールが頂上まで晴れて、青空が見えました。思わず心が踊耀する青さ。明日も好天でしょう。
仙丈小屋のおじさんの話に、夕暮れには甲斐駒ヶ岳が赤く染まるというので、多くの宿泊客が小屋の外で周辺の山を見ています。しかし、木曽山脈の方が曇り、太陽光は南アルプス北部には届きそうにありません。北アルプス方面は赤みを帯びているのですが。甲斐駒の向こうでは稲妻が光っています。午後7時の消灯時刻になり、夕焼けを見ることはあきらめて就寝しました。
第2日 翌朝は4時に起床。すぐに小屋を出て、ご来光を見に、正面の稜線に向かいます。少し寒い風が吹き付けますが、大したことはありません。稜線では東雲に青い富士山、白根三山、鳳凰三山、甲斐駒をはじめ、北アルプス、八ヶ岳などの山々が静かに聳えています。ただ残念なことに関東方面の空は曇っていて、日の出の瞬間は見られませんでした。それでも東の地平線が赤熱し、やがて金峰山が金色に燃え、甲斐駒にまぶしい後光が差すのを撮影できました。
仙丈小屋に戻って朝食を腹いっぱいいただき、出発準備完了。小屋の前でおじさんに記念写真を撮ってもらいます。5時45分、山頂に向かって元気いっぱいに出発。よく晴れた素晴らしい朝です。チングルマやハクサンイチゲに「おはよう」と挨拶を交わします。小屋の上の無名のコブに至ると、いよいよ夢に見たカールの縁を歩くことになります。カールに残った雪渓、眼下に小さくなった仙丈小屋、その向こうになだらかな馬の背、荘厳な甲斐駒と摩利支天、すべての夢が叶えられた天上の散歩道です。
6時9分、仙丈ヶ岳山頂に到着。さっそく山頂の岩に腰を下ろして順番に記念撮影。風で髪が舞い上がります。ここまでよく見えなかった赤石山脈がはるか南まで延々と続いています。大仙丈ヶ岳、小仙丈ヶ岳も、この山頂から立体的に眺められます。心霊の地平線まで快晴になった瞬間です。
いつまでも居たいような山頂を後にし、藪沢カール・小仙丈カール共通の縁を小仙丈ヶ岳に向かって下ります。これ以後、甲斐駒、栗沢山、鳳凰三山を前方に見ながらの大パノラマ散歩になります。もちろん、中央アルプス、北アルプス、八ヶ岳など、いくらでも見放題です。
7時25分、小仙丈ヶ岳に到着。美しい小仙丈カールを心ゆくまで眺めます。歩いてきた稜線との別れを惜しみながら、アルペン的な風景をカメラに収めます。
森林帯に入ると樹の香りが漂っていました。香りの強くなる時間帯なのかも知れません。涼しい樹林帯をぐんぐん下ります。大滝の頭、三合目、二合目などの道標がありましたが、低山のハイキングコースのように距離や歩行時間が書かれた道標はありません。地図とコンパスは、山のナビゲーションの必需品だと、改めて思います。
9時35分、北沢峠に降り立ちました。南アルプス市営バス乗り場にはすでに長い列ができ、9時45分発の広河原行きを待っています。全員が座って、3台のバスが発車。途中、運転手が無線機で対向車情報をやり取りしながら下って行きます。11時15分にバスを増発することも無線機で連絡。野呂川出合では、北岳から降りてきたと見られる4人の客を拾いました。
広河原では、山梨交通の11時20分発甲府駅行きバスに、時間の無駄なく連絡しました。11時23分、芦安駐車場に無事帰着。白峰会館の展望風呂を浴び、山菜そばで昼食。万事順調で、予定より早めに帰宅することができました。
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